小説『デッドボーダー』
作者:takeukuri()

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「はあ〜っ、楽しかった!」

「疲れた……」

 現在俺たちはウインドガーデンの中を歩いている。ウインドガーデンは最近完成した大型のショッピングセンターだ。百貨店ほもちろん、飲食店や映画館、他にも様々な専門店が軒を連ねており、幅広い年齢の人々が利用している。最近は、若いカップルにとって人気のデートスポットにもなっているらしい。今日はここで、美鈴の買い物のお供をする約束になっていた。とはいえ、まさかここまで大変だとは思わなかった。
 最初に下着売り場に入った時は、初めてこいつを心から恨んだ。美鈴が下着を選んでいる間、俺は周囲の奥様方の痛い視線に耐え続けるという地獄の時間を満喫した。時々「これなんてどうかな?」と言って美鈴がいくつか下着を見せていたような気もするが、俺にはそんなこと聞かれてもさっぱり分からない。そこを出た後も、次の店に入って服を見て、また次の店に入って、それをひたすら繰り返した。もう荷物持ちも飽き飽きしている。

「このあとどうする?」

 ついさっきまでご満悦な顔をしていた美鈴は、俺の方を向いてそう尋ねる。

「どうって、今日はお前の買い物に付き合う約束だからな。とことん好きな物買っていいぞ」

 半ば諦めながら言う。今日の財布は俺持ちなので、ちゃんと残高が残っているか心配だ。

「うーん、買い物はもういいかな。それよりどこかで休まない?」

「賛成。もう腕が痺れて困ってたんだ」

 俺の両腕には今も大量の買い物袋がぶら下がっている。もうこの状態で三十分以上歩いているので、正直そろそろ一休みしたかったところだ。

「えっと……あそこがいい!」

 美鈴が指差す店はデーメンテール。最近人気のカフェレストランだ。

「じゃあ、入るか」

 そして俺たちは店内に入った。

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