小説『魔法少女リリカルなのは−九番目の熾天使−』
作者:クライシス()

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第十一話『蒐集』





             

「どうしてだ……! どうして気付けなかった!?」

「ごめん、ごめんなさい! わた、し!」

「シャマルのせいじゃない。シグナムは自分に腹を立てているんだ」

 あの楽しい日々から二ヶ月あまりが過ぎ、事態は突然暗転した。

 はやてが倒れたんだ。心臓の辺りを抑えて苦しそうにしていたのを俺が見つけ、すぐに救急車を呼んだ。

 最初は持病がと思っていたが、どうやらそうでないらしい。……『闇の書』、これがはやての病因だった。闇の書がはやてのリンカーコアを浸食しているのだ。シグナムが悔やんでいるのもそこにある。

 治療は不可能らしく、このままでははやての命が危ない。麻痺が足から段々と上がっていき、最終的には内臓や心臓の麻痺まで達するとのことだ。

 今までにも兆候があったはずだが、恐らくはやてが我慢して隠していたのだろう。

「私達が主の魔力を少ないながらも使用していることも無関係とは言えないだろう」

 そしてシグナムはそう言っていた。そして現在、俺はとあるビルの屋上の影に隠れている。

 理由は簡単だ。シグナム達4人が少し出掛けてくると言って出たので、後を付けたのだ。

 恐らく目的は魔力の蒐集活動。はやてとの約束を破る気だろう。

 それと、俺が家を出たときに視線を感じたんで撒いてきた。ジェイル・スカリエッティとは交渉をしたので、恐らく別の人物だろう。

「主はやての身体を蝕んでいるのは『闇の書』の呪い」

「はやてちゃんが『闇の書』の主として真の覚醒を得れば……」

「我らが主の病は消える。 少なくとも、進みは止まる!」

「はやての未来を血で汚したくないから人殺しはしない。だけど、それ以外なら……なんだってする!」

 ふむ、やはり誓いを破る……か。

「申し訳ありません我らが主。ただ一度だけ……貴女との誓いを破ります!」

 そしてシグナム達は光に包まれ、騎士服のような物を着た。

 さて、そろそろ頃合いだろう。コイツらだけにそれを背負わせる訳にはいかないな。

「やはり誓いを破る……か」

「「「「っ!?」」」」

 全員が驚愕して俺の方を見た。

「煉……お前、聞いてたのか!?」

「煉君……」

「……」

「煉……悪いが止めても無駄だ。私達は主を救う義務がある。だから……邪魔をするなr「まあ待てよ」……?」

 まったく、少し早とちりし過ぎだ。人の話を聞け。

「誰もお前達を止めるなんて言ってないだろう?」

「では、煉は何をしに此処へ……?」

 そんなものは決まっているだろう? 俺ははやてに恩を返さなきゃならんのだよ。

「なに、ちょっとした手伝いをな?」

「なっ!? 危険だ! これから行く場所は危険な場所なんだ。私はお前の事を弟のように思っているが、それとこれは別だ。僅かに魔力はあるかもしれないが、魔法を知らない煉が行っても正直、足手纏いになるだけだ」

 ひでぇな? 誰が足手纏いだって?

「そうだぜ。煉、気持ちは嬉しいけどよ……」

「煉君には申し訳ないけど、家で待ってくれるかしら?」

「我らの事は心配無い」

 ……はぁ。まったく……心配してくれるのは嬉しいが、こちとらそういう訳にもいかないんだ。

「ならば、足手纏いじゃなければいいんだな?」

「え? そ、それはそうだが……どうするつもりだ?」

 仕方ない……本当は最後まで隠しているつもりだったがな。

「ナインボール・セラフ……起動」

 一瞬眩い光に包まれ、俺は装着を完了させた。それを見た四人が再び驚愕する。

「れ、煉……その姿は?」

「これが俺のもう一つの姿だ。ほらルシフェル、挨拶だ」

【初めまして、ヴォルケンリッターの皆様。私は独立支援戦闘ユニットのルシフェルと申します】

「デバイスか? もしや、煉……お前は魔導師なのか?」

 いやいや、あんな反則と一緒にしないでくれ。

「いや、違う。これは魔法なんかじゃない。純粋な科学技術で作られた兵器さ」

「兵器……これが?」

 ヴィータが訝しんだ目で見てくる。証拠を見せたら納得してくれるか?

「実力は保障するぞ? そこら辺の魔導師なら数十人相手にしても勝つ自信はある。勿論、実証済みだ」

 さすがに高町を数十人を相手にしたくはないが、1対1では先ず敗北は無い。

 ……想像してみると結構怖いな。 数十ヶ所からあのレーザー砲のような物を撃たれたら割と焦るぞ? いや、死ねるな……。

「……分かった。取りあえずこのまま無人世界へ行くから、そこでお前の実力を見せて貰おう」

「なっ!? いいのかよシグナム!?」

「仕方あるまい。人手は多いほど良い。あまり時間が無いのも確かだ」

「けどよ……」

 ヴィータはまだ不安なようで、渋っている。

「ヴィータ、心配してくれるのは嬉しいが、俺は大丈夫だ」 

「……分かったよ」

 少し思案げにしていたが、どうやらヴィータは納得してくれたようだ。

「それじゃ行くぞ。シャマル!」

「ええ!」

 そしてシャマルが魔法陣を展開し、俺達は別の世界へ旅立った。

 だが、俺はこの時感じていた。

 先ほど撒いたはずの視線がこちらへ向いていた事に……。





「ふむ……デカいな……。」

 俺の目の前にはデカい百足のような生物がいる。大きさは全長1000m程の巨大な百足だ。

 まったく……こんなものが存在しているなんて……本当に異世界は面白い。

「……さすがにコレは予想外だ。煉、ここは私達がやろう」

 シグナムもこれほどまでに巨大な生物は予想外らしく、俺の力試しを中止にしようとした。

 だが、ただ図体のデカいだけのようで、問題は無いだろう。

「いや、腕試しには丁度良い相手だ。俺がやる」

「なっ、大丈夫なのか?」

「いや、いくらなんでもこれはちょっと無理があるんじゃねぇの?」

 まったく、さっきから失礼だな?

「問題無い。シグナム達はそこで見ていろ。……さ、行こうかルシフェル」

【イエス、マスター】

 俺は飛び立つと巨大百足に向かって飛行し、『Stardust』を乱射する。

 一応は効いているみたいだが、大きさが半端じゃないので効果は微々たるものだ。

【『Chaser』射出】

「爆ぜろ!」

 俺はホーミングミサイルを五発を展開し、射出する。それぞれのミサイルは巨大百足のあちこちに命中し、爆発する。直撃した場所は甲殻が抉れ、肉が四散している。

 ふむ、効果はあるようだ。ま、OFを一撃で破壊する程の威力だから当然か。

「どうした? もっと足掻いてみせろ!」

 俺は『Akatuki』を展開し、巨大百足をあちこち斬り裂いていき、巨大百足は段々と弱っていく。

 時々、触手の様な物で応戦してくるが、速度が遅すぎる。

 つまらない……本当に図体だけが取り柄の生物だ。期待していたのだが……この程度なのか?

【敵性生命体、行動力低下】

 数分経つと、巨大百足は力なく身体を横たえ、何とか頭だけを持ち上げている状態だった。

 悪いな、恨みは無いが……こっちも必死なんでな。

「……っ。煉! 殺してはダメだ! 魔力を蒐集できなくなる」

 え? ああ、そうだったな。目的は魔力の蒐集だった。つい高揚して殺してしまう所だったよ。

 そしてシャマルが巨大百足に手を翳し、魔力の源であるリンカーコアを引きずり出して闇の書に吸収させた。

「さて……これで俺の実力は問題無いな?」

「あ、ああ……大丈夫だ。」

 シグナムは若干唖然としていたが、認めてくれた。

「す、すげぇな煉! お前すげぇ強いな!」

 ん? そんなに力を見せたつもりじゃ無いが……? 少し遊んでしまった所もあるしな。

「ありがとうヴィータ。まあ、まだまだ本気じゃ無いが……」

「えっ? あれで本気じゃなかったの!?」

 シャマルが蒐集を終えてこちらへやって来た。

「ああ、まだ一割程度しか出していない」

「……あれで一割か。凄まじいな……」

 ここでザフィーラも口を開いた。

「それじゃ、認めて貰った事だし、手分けして魔力を集めようか?」

「ああ、そうしよう」

 そして俺達は手分けして片っ端から魔法生命体を狩って魔力を蒐集した。

 今日一日だけで12ページ集まった。


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