小説『魔法少女リリカルなのは−九番目の熾天使−』
作者:クライシス()

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第六話『襲撃』


           


「ふぅ……ああいうのは疲れるな。」

 リンディ提督と協定を結んで四日が過ぎた。

 彼等の情報収集能力は優秀で既に二つ目のジュエルシードの回収に成功している。

 高町はアースラで寝食をしているようだが、俺は地球で過ごしていた。

 いつボロが出るか分からないからな。

 そもそも、この間のような交渉は俺は苦手なんだ。精神的に疲れるよ……。

「さて、食材も少なくなったし……買い物にでも行きますか」

 そして俺は食材を買いにスーパーへと出掛けた。

「え〜と、鶏肉と豚バラ肉……あと保冷用の氷も買っておかないと。あと保存食も」

 家が無いのはやはり不便だ。野宿じゃ冷蔵庫も使えないからまとめて買い揃えることが出来ない。

「よし、こんなもんか……ん?」

 俺は一通り籠に入れると、見慣れない女性が精肉商品を見て唸っていた。

「どうしましょう?どれが良いのか分からないわ……。それに、見たこと無い物ばっかり……」

 その人は女性にしては背がやや高く、ウェーブが掛かった薄紫の髪をして、瞳の色が金色という珍しい容姿だった。

 明らかに日本人じゃ無いな。ま、俺には関係無いから別にいいか。

 俺はそのまま通り過ぎようとしたら……

「あっ、ねぇそこの坊や?」

「……はい?」

 え? 俺?

「私、日本に来たの初めてだからどんな物を選んだら良いのか分からないの。もし良かったら手伝ってくれないかしら?」

 ……何で俺?

 まあ、断ると後味が悪いから、買い物ぐらいなら手伝っても良いのかな?

「え、ええ……いいですけど?」

「ありがとう、坊や」

 そして俺は買い物を手伝ってあげた。

 彼女の名前はウーノ・スカリエッティと言うらしい。数日前から日本に来て色々研究している学者さんらしい。

 彼女には姉妹がおり、6人姉妹でウーノさんは長女だそうだ。……大家族だな?

「本当にありがとうね? とても助かったわ」

「いえ、別に大したことじゃ無いので……」

「うふふ、それでもよ。よかったら今度、お礼にご馳走させてくれないかしら?」

「別にいいですよ。ただでさえ大所帯なのにご馳走して貰うなんて」

 妹が5人もいるのに申し訳ないだろ?

「気にしなくていいわ。別に貧しい訳じゃないもの」

「ま、まあ……機会があったら……」

「楽しみにしてるわ」

 そう言って俺は彼女と別れた。

 それにしても不思議な人だ。なんか普通の人とはどこか雰囲気が違うというか何というか……

【マスター、少しよろしいでしょうか?】

 ん? どうしたんだ?

「なんだルシフェル?」

【先ほどの女性、ウーノさんから金属反応がありました】

 金属反応? それならネックレスや指輪、鍵なんかがあれば当然反応は出るだろう?

【いえ、それが金属反応は彼女の体内から感知しました。それにエネルギー反応も】

「は?」

 体内から感知した? それにエネルギー反応? もしかして……ガノノイドだとうのか?

 ……いや、そんな筈は無い。この地球にそんな技術は…………いや、決めつけるのは早計だ。少し調べた方がいいかもしれない。前に調べたら奇妙な噂があったことだしな。

「ルシフェル、人造人間について調べておいてくれ。勿論、裏も含めてだ」

【了解しました】

 面倒な事にならなければ良いが…………







 それから二日後、俺はいつもの公園で寝ていた。

 相変わらず此処は居心地が良い。

「あ、いたいた!」

「ん?」

 俺が寝ていると誰かの声が聞こえたので目を開けると、先日会ったアリサ・バニングスと月村すずかがこっちに向かって来ていた。

「少しぶりね」

「こ、こんにちわ」

「ああ」

「今日も学校の帰りか?」

「違うわ。今日は土曜日だから学校は無いわよ?」

 あ、そっか。だから今日は制服じゃなくて私服姿なんだな。っていうか、日にちなんて気にしていなかったから曜日なんて忘れてた。

「それじゃあ今日は何で此処に?」

「決まってるじゃない。アンタに会いに来たのよ」

 俺?

「なんで態々俺に?」

「あ、あの……今から私の家でお茶会しようと思って、どうせなら篠崎君も誘ってみようかな? って」

 お茶会ねぇ……俺、そういう貴族っぽいこと嫌いなんだよねぇ……。

「う〜ん……」

 俺がどうしようか考えていると、

「ほら!悩んでないでさっさと行くわよ!」

 そう言ってアリサは俺の腕を掴んで引っ張っていく。

 え? ちょっ!? 『行く』じゃなくて『決めろ』の間違いだろ!?

「ま、待て! 俺はまだ行くとは「うるさい! 私達みたいな美少女が誘ってるのに断るなんて許さないわよ!」えぇ……」

 横暴だ! っていうか自分で美少女言うな!

 こら! 手を は な せ!

 いやぁああああああああ!!!! 


 前にもこんな事があったような気がするのは気のせいか?
 





 そして、俺はすずかの家にやって来た。

 いや……正しくは『連れてこられた』だ。もっと正確に言えば『拉致られた』である。

「着いたわよ」

「ほえぇ〜……」

 此処、何処からどう見てもの貴族の豪邸だ。

 っていうか、警備が異常に凄すぎなんですけど?

 監視カメラが門と壁に五台。しかもそれはフェイクで見えないようにカモフラージュされている監視カメラが十台前後。

 中に入ると一見普通の庭と道だが、道の外れにはいくつか地面が僅かに盛り上がっていた。

 ……考えたくないけど、地雷の可能性がある。

 それに、数台しか見つけられなかったが、木に紛れてセントリーガンもある。

 ……実弾じゃなく、ゴム弾であることを祈りたい。

 とまあ、俺の感覚で分かったのはこれぐらいだ。

 ルシフェルに調べさせたらもっと出てきそうなのは気のせいだろうか?

 多分、防衛システムはオフにしているはずだ。でないと、俺を含めてアリサとすずかが蜂の巣になると思う。

 すずかの親……アホだろ?

 ああ、そう言えばこの前にルシフェルに裏を調べて貰ったら、面白いことが分かった。

 この世界には『夜の一族』という吸血種がいるらしい。見た目は人間とあまり変わりないが、筋力は常人の何倍もあり、
真っ暗な所でも見える。

 そして、色々ハッキングさせて調べた結果、どうやら月村家はその種族のようだ。

 すずかをこっそりスキャンしてもらったらそれがハッキリと分かった。

 正直、調べるまで殆ど分からなかった。だが、あの時感じた違和感は多分このことだったんだと思う。

「ただいまー、お姉ちゃん。お友達を連れてきたよー」

「こんにちわ、忍さん」

「あら、おかえりすずか。アリサちゃんもいらっしゃい。それと、そっちの子は……?」

「この人は篠崎煉君と言って、この間知り合ったの」

 一応挨拶した方が良いよな?

「篠崎煉です。よろしく」

「すずかの姉の忍よ。よろしくね、煉君」

「忍様……」

 そして忍さんの後ろからメイドが一人現れた。

【マスター、この人物から金属反応とエネルギー反応を感知しました】

 決まりだな。やはりこの世界には人造人間が存在している。

「ノエル、すずか達にお茶の準備を」

「はい、かしこまりました。それではすずかお嬢様、こちらへ」

「うん、ありがとうノエル」




 俺は今、お茶を飲んでいる。

 お茶以外にはケーキやクッキーなどがあり、ノエルさんお手製だそうだ。

 周りには猫だらけ。入ったときはビックリしたが、慣れれば可愛い物だ。

 そしてすずかやアリサ達と一緒に談笑しているが、ハッキリ言って居づらい!

 何故か? 理由は簡単だ。視線が痛いんだ!

 俺の8m後方でジッとこっちを見ているんだよ、ノエルさんが!

 俺、何か悪い事でもしたのか? 心当たりが全く無いんですけど?

「それでね煉……って、聞いてるの?」

「あ、ああ……聞いてるけど? アリサの友達の事だろ?」

 い、いかんいかん……ちゃんと話を聞いておかないと。

「そうよ。それで、そいつが最近ずっと一人で考え事してたのよ」

「そうそう。いつも声を掛けても上の空だったから、ついこの間アリサちゃんが怒ったんだよね?」

「う〜……ちょっとカッとなっただけよ」

「へぇ……でもそれってつまり、アリサはその友達の為に何も出来ない自分が嫌だったんだろ?」

 アリサの正確は少しだけだが、理解できた。こういう奴は何だかんだ言っても友人を大切にするからな。

「うっ……何で分かるのよ?」

「なんとなく」

 でも、あまり大人びた発言は控えます。後ろが怖いので。

 …………ちょっと、トイレに行きたくなったな。

「すずか、スマンがお手洗いに行きたいんだが、場所を教えてくれるか?」

「あ、それならノエルさんに案内してもらうよ」

 え?

「あ、いや―――「ノエルさん、お手洗いまで案内してくれますか?」……」

 勘弁してくれ……

「では篠崎様、こちらへ」

「……はい」

 すずか、気持ちはありがたいが今回は少し恨むぞ?

 そして俺はトイレまで案内して貰い、用を足した。

 そしてトイレから出ると……

「篠崎様、忍お嬢様がお話をしたいと申しております。私に付いてきて下さいませ」

 えぇ〜……何で俺? しかも拒否権無し?

「……なんで?」

「忍お嬢様がお話したいと」

 ……このメイドさん、絶対に俺を逃がさないつもりだ。

「はぁ……まあ、別にいいですけど?」

「ではこちらに」

 俺は仕方なくメイドさんに付いて行った。







「まったく、恭也が居ないときに限ってこんな面倒な事になるんだから!」

 すずかが珍しく……いや、初めて男の子を家に連れてきた時は驚いたわ。

 それと、嬉しくもあった。すずかに恋人なんてまだ早いかな〜とは思ったけど恋に年齢は関係無いみたいね。

 それが普通の男の子だったらの話だけど。

 さっき、監視カメラの映像を再生してみると……男の子が全ての監視カメラに視線を向けていた。しかも、カモフラージュ
しているものまで!

 ただの偶然と思いたかった。でも、その後の映像ではセントリーガンや地雷の敷設場所まで見ていたのよ……。

 もう偶然とは言えなかった。

 私達に仕向けた刺客だろうか? こんな子供を使うなんて奴等も相当腐っているわね。反吐が出るわ。

「忍お嬢様、篠崎様をお連れしました」

 ……来たわね

「入ってちょうだい」

「失礼します」

 入ってきた男の子は髪も瞳も黒い普通の日本人だったわ。

 でも、改めて見ると分かる。

 目つきが歳不相応だったから。











「失礼します」

 入るなり観察するような視線を浴びた。失礼だとは思わないが、もう少し警戒を弱めてくれると有り難い。

「で、俺に何かお話があるって聞いたんですけど?」

 取りあえず用件を終わらせたいから単刀直入に聞いた。

「うん? ただの好奇心よ。すずかが男の子を連れてくるのって初めてだからお姉ちゃん、興味が湧いて来ちゃった♪」

 見事な猫かぶりだな。

 ただ、その発言は……

「……お姉さんってそっちの趣味なんですか?」

 誤解を招く。

「へ? っ! ち、違うわよ!? 私はそういう意味で言ったんじゃなくてn―――「知ってますよ」……くぅ!」

 ちょっとからかってやった。意外と楽しいな、この人。

 さて、そろそろ真面目に話そう。ただ、ここはやはり普通の子供で通すのは無理がありそうだ。

「それで? 本当に聞きたい事は何ですか?」

「っ!」

 俺は目つきを鋭くして聞いた。少し、殺気が漏れていたかも知れない。

 ソレを感じ取ったのか、後ろのメイドさんがそれを感じ取って襲いかかろうとする。

 俺はいつでも展開できるようにしているのでその場を動かない。だが……

「やめなさいノエル!!」

 忍さんに止められた。

 つまらん。

「で、ですがお嬢様!」

「いいから。まだ彼がそうとは決まっていないわ」

 メイドさんは隠し持っていたナイフを袖に入れると下がった。

「いきなりでごめんなさいね?」

「いえ、慣れていますので」

 疑似体験の時なんて裏切りや不意打ちが当たり前だったしね。

「そ、そう。それで、貴方は何の目的ですずかに近づいたのかしら?」

「別に? 彼女と知り合ったのも、この家に来たのもただの偶然。俺の意志では無いし、寧ろ無理矢理連れられたんだけど?」

 アリサのやつ、本当に強引だったな。

「……信じてもいいのかしら?」

「好きにすれば? 俺は別に困らないしね。俺からは何もしないが、もし俺に危害を加えるならその時は……排除するだけだよ」

「「っ!?」」

 俺はここ一番の殺気をぶつけてやった。

「わ、分かったわ。信じるし、私達から手出しはしないわ。でも……もしすずかに万が一の事があれば……」

「承知してるよ。寧ろ、すずかが危ない目に遭っていたら助けてやっても良いくらいだ」

 無駄な……いや、つまらない遊びをするほど暇でも無い。

「……分かったわ。信じるわ」

「そうか」

「お嬢様!?」

「落ち着きなさいノエル。彼は自分からは何もしないと言ってるの。それに、何かしら目的があるならもう行動を起こしているはず」

 それ以前に、俺一人でアメリカ軍を壊滅させることもできるしね。

「し、しかし……」

「これは命令よ、ノエル。それと煉君、私と貴方でビジネスをしないかしら?」

 ビジネス?

「内容は、私達が助けを求めたら駆けつけて対処してくれること、この一点だけ」

 へぇ……それで、見返りはなんだ?

「そっちは何をしてくれるの?」

「私はこう見えても結構パイプがあるの。で色々融通が聞けるよ? それに、資金援助もね」

 要は裏工作と金、だろ? ま、自分達の命に比べたら随分安いだろう。

 こっちにもちゃんとメリットがあり、デメリットは然程無い。

「いいよ。ただ、今は資金は必要ない。必要になったら少し請求するよ」

「そう。じゃ、契約成立ね」

 俺と忍さんは握手を交わす。こうして俺と月村家にパイプができた。

 その後、俺はやっと解放されてアリサ達の所へ戻った。

 そして『遅い! 何してたのよ!』と怒られた。

 一応迷ったと言って誤魔化したが……。









 数日後、俺は海辺を散歩していた。

 この町は海が近く、気軽に立ち寄れる。

「う〜み〜はひろい〜な〜おお〜き〜な〜」

【マスター、急に歌い出してどうなさったのです?】

 いや、何か気分的に歌わないといけない気がしたんだ……。

「それにしても……暇だな」

 刺激が欲しいでこの世界に来たのに、俺は一体何をしているんだ?

 ま、そんな退屈な時間ももうすぐで終わる。そんな気がするんだ。

【マスター、結界が張られました】

 ほれ見ろ。俺の勘は当たったぜ。

 俺は海を見ると雷雲が集まり、海面に落雷が発生していた。

 その中心にはフェイトとアルフがいる。どうやらフェイトが魔法を使って起こしたらしい。

「……アイツ等、何やってるんだ?」

【広域スキャン開始……完了。ジュエルシードと思しき反応が六つ。落雷の魔法を使用して強制発動させている模様です】 

 六つを同時にか!?

「馬鹿か!? 個人がどうにか出来る物じゃないだろ!」

 俺が驚愕していると、海面から竜巻が発生、フェイトが必死に封印しようとしている。

 だが、全く封印出来る気配が無い。寧ろ翻弄されている。

【意外です。彼女がここまで愚かだとは思いませんでした】

 俺もそう思うよ!

「……っち! ルシフェル、行くぞ!」

【了解しました】

 俺はナインボール・セラフを展開し、すぐに駆けつけようとする。

【空間異常を感知。転移魔法と推測します】

 すると、高町とユーノ・スクライア……あと馬鹿二人が転移してきた。

「駆けつけるのが遅いというかタイミングが良いというか……。ま、これで俺が出る必要はn―――【アースラの
リンディ・ハラオウン提督より通信が入りました】おいおい……」

『ルシフェルさん、来てくれたのですね』

 そっちが遅いからね。

 ……だけど、明らかに遅すぎる。まさか、フェイトが墜ちるのを待ってた訳じゃないよな?

【貴女方の行動が遅すぎでしたので。本当に貴女方はジュエルシードを回収しようと思っているのですか?】

『そ、それは……』

 どもるなよ……。図星って事がバレバレだ。これでは契約を見直す必要がありそうだな。

 そうこうしている内に戦闘は始まっている。

 高町と神崎、天城による砲撃である程度は押さえ込んでいるようだが……厄介なことに竜巻自体にバリアの様な物が張られていた。

「くそったれ! この竜巻、バリアを張ってやがる!!」

「巫山戯やがって!」

「き、効かないよ!?」

 魔力ランクSSSだろうと自分の魔力を制御できていない神崎と天城では無理か。天城が使っていた強力な魔法も、使用してない
ことから前もって準備しないと使えないみたいだ。

 あの二人が今後の修行でどれくらい物に出来るか少しだけ楽しみにしてもいいかもな。

「ごめんね……アルフ。私のせいで……」

「馬鹿言ってんじゃ無いよフェイト! アタシはフェイトだけでも守ってみせる!!」

 竜巻にボロボロにされたフェイトがアルフに謝る。だがアルフは諦めずに立ち向かう。見事な忠犬だ。

『ルシフェルさん、貴女の力を貸して下さい!』

 ま、いいか。だが、クロノ・ハラオウンは出さないのか?

【クロノ・ハラオウンはどうしました?】

『……今クロノは医務室で治療中です』

 提督が苦い顔して言う。何があったか知らないが、手を貸してやろう。それに、事情も聞くべきだ。

【事情は後で聞かせて貰います。ですが、今はアレを何とかしましょう】

『っ! ありがとうございます!』

 さて、それじゃ行きますかね?

【了解】

 俺は高町の所まで飛行した。

「お、お前!」

「何しに来た! 邪魔だから引っ込んでろ!」

「ルシフェルさん!」

「あ、アンタ……」

「どうして……?」

 ルシフェル、作戦は任せる。

【テスタロッサとアルフ、今は管理局との契約により協力します。アレは私が抑えますので高町さんとテスタロッサさんは封印を。
ユーノ・スクライアは高町さんの補助。それと、そこの二人は邪魔なので退避してください】

「おい! なんで俺が邪魔なんだよ!」

「巫山戯るなよ!」

 いや、どう見ても邪魔だよ。自分の力も制御出来ていない奴がいても困る。

 俺が呆れているとモニターが現れた。

『天城君と神崎君はアースラに戻ってもらうわ。先ほどのことで処罰がありますので』

 処罰? コイツら、また何かしたのかよ?

「な!? そ、それはそっちが悪いんだろ!?」

「俺は悪くない!」

『黙りなさい! 兎に角こちらに戻って来てもらいます!』

 お? 提督が怒った。それと、二人が強制的に転送されて行った。

【さて、それでは始めましょう。準備は良いですか?】

「はい!」

「大丈夫です!」

「仕方ないさね……今回だけだよ!」

「私は大丈夫」

 問題無いようだ。

【結構です。戦闘モードへ移行します。目標……ジュエルシード】

 さあ、始めよう!

 俺は『Stardust』で近くにある竜巻を撃ち抜く。リミッターは外しているので威力は高い。

 それにより竜巻を消滅。次の竜巻に向けて乱射。

「行くよ、フェイトちゃん!」

「うん!」

 高町とテスタロッサはそれに乗じて本体へ突攻する。

「僕も役に立たないとね!」

「フェイトはアタシが守る!」

 ユーノ・スクライアとアルフが竜巻を拘束して抑える。

 俺はスロットルを上げ、高町達を一瞬で追い越して先行する。

「は、はや!?」

「凄い……」

 そりゃどうも。

 そして竜巻が複数迫ってくるが、『Akatuki』で斬り裂く。

 だが、竜巻は次々と発生してキリが無い。

 それなら……

【サブウェポン、『Chaser』……ロック完了】

 俺はホーミングミサイルを周囲に展開する。

 その数は二十発。威力は数発で高層ビルを破壊できる程だ。

【発射】

 手を振り上げると一斉にミサイルが発射される。

 それぞれが竜巻に向かって行き、大爆発を起こした。

 その威力と爆風により周囲の竜巻は全滅する。

 高町達はもの凄く驚いていた。

【今です】

 ルシフェルの声でやっと我に返った二人が封印を始める。

「う、うん! レイジングハート!」
「バルディッシュ!」

【ディバイン】
【サンダー】

「バスターー!!」
「レイジーー!!」

 二人から桜色と金色の砲撃が放たれる。

 それは真っ直ぐにジュエルシードへ向かい、衝突する。

 僅かな抵抗を示したが、すぐに光に呑み込まれて沈静化する。

 そして辺りは晴れ、竜巻は消滅した。

 やれやれ、これで一先ずは安心だ。後の問題は……テスタロッサだな。

 俺が高町達を方をみると、高町がいきなり友達になりたいと言っていた。

 こいつは本当に不思議だ。どうしてそこまで人に関わろうとするか理解が出来ない。

 ま、人それぞれだから俺にはd――――【空間異常、及び高魔力反応を感知。上空です】っ!? 

 俺が一息吐こうとした時、ルシフェルからその報せを聞いた。

 言われた通り高町達の上を見ると、空間が歪んでいた。まるで穴が空いているかのように……。

 そこから大きな魔力を感知した。

 何かが起きる……。恐らく、彼女達に。

「ゼロシフト起動!」

【ゼロシフト、起動します】

 俺はゼロシフトを使い、一瞬で高町達に接近した。

「えっ? る、ルシフェルさん!?」

「な!?」

 それに答える余裕は無い。何かがすぐそこまで迫っている。

 兎に角、彼女達を此処から離れさせるのが先だ。

 ゼロシフトやバーニアを使おうとしたが、彼女達の身体が急な加速に耐えきれるか疑問だったので却下。

 ならば……

「え? きゃっ!?」

「な、なにs―――うあっ!?」

 俺は高町とテスタロッサを掴んで放り投げた。

 安心出来る距離では無いが、少しはマシだろう。

 そして、彼女達を放り投げたと同時に何かが俺に降り注いだ。


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