小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

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五月五日(火)



『ゾラード、そちらに異変はありましたか?』


『今の所は問題ない。我等を恐れてこの地に進入しようとする人間はいないだろう』


『グレンデル達は主の中に、ここにいるのは我とゾラード、サマエルだけですが我らだけでも

十分のようですね』


『侵入して来たら死を覚悟してきた人間だから殺しても構わないと言っていたが・・・・・できるかぎり

人間を殺さないように追い返そう』


『侵入してきた場合ですがね』


『・・・・・今頃、主や我等を探しているのだろうな』


『・・・・・そうですね、主は楽しそうにこの世界を暮らしていますが早くあの場所に戻りたいと

思っている筈です』


『ねー、そっちはどう?こっちは何も起きないからつまんないけどぉー』


『サマエル・・・・・』


『何も起きないのは良い事ですよ。寧ろ、こうして現世に出られのんびりと過ごせるのですから』


『あいつ等の場合は人間を殺したく、有機物を破壊したくて仕方がないがな』


『邪龍だもん、しょうがないよ』


『それもそうですね』


『・・・・・あっ』


『どうしました?』


『ヘリコプターがこっちに来るよ』


『なに・・・・・?』


『・・・・・サマエルの言う通りですね』


『どうする?』


『取り敢えず様子見だ。偵察をしに来ているだけかもしれん』


『うん、分かった』


『我々から手を出す訳にはいきません。手を出すのなら―――正当防衛の上で手を出しましょう』


―――箱根


「一誠さん、帰っちゃったな」


「急にどうしたのかしら?」


「いきなり表情を変えて『悪い、急に用事ができた』と言って行ってしまいましたね」


「でもよー、一誠さんは連絡手段という物が一切ないのにどうして用事ができたんだ?」


「だが、あの真剣な表情はただ事ではないと思わせるものだった」


「んー、家で何か遭ったんのかな?」


「家って日本海に浮かぶあそこでしょ?どうやったら何か遭ったなんて分かるの?」


「一誠さんだから何かに気づいたんじゃないか?」


「ああ、私もそう思う。きっと何か嫌な予感を感じて行ったんだろうな」


急にいなくなった一誠に不思議と疑問が百代達を抱かせる。


「まあ、一誠さんだから解決するだろうさ!残念だけど一誠さん抜きで俺達だけで箱根旅行を楽しもうぜ!

また、夏休みに何処か一緒に旅行すれば良いしよ!」


「うん、そうだね。今度は海が良いな」


「海!それは男を更に磨かせる季節!俺様の時代でもある!」


「お前の時代・・・・・黒歴史だな」


「はぁ・・・・・、はぁ・・・・・イッセーの上半身が曝け出す季節!私はその身体に抱かれて

―――私の時代が来る!」


「おーい、意味不明な事を言っている奴等がいるぞ。それと私の時代だぞ」


「意味不明な事を言っている存在が3名になったな」


「イッセーさんの体・・・・・あわわわ!」


「ん?まゆっちがいきなり顔を赤くしたわ」


「どうせ、エロい事でも考えていたんだろ?」


「い、いえ!小さい時にイッセーさんと一緒にお風呂に入った時を思い出しまして・・・・・」


「なっ!一誠と一緒に風呂だと!?私はしていないぞ!」


「あっ、それなら私もイッセーとお風呂に入ったね。・・・・・下半身がタオルで隠されて

良く分からなかったけど、良い身体をしていたなぁー」


「くっ・・・・・!何時か絶対に私も一誠と風呂に入る!」


「わっ、お姉様が燃えているわ・・・・・」


「よっぽど悔しいんだろうね」


「くはー、俺様も歳上の女と一緒に入りたいぜー」


「ガクトは絶対に無理だな。逆に高確率で男と入っているからいいじゃないか」


「俺様は男なんかより女が良いんだ!」


「はいはい、取り敢えずやろうぜ。俺とクリスの決闘を」


「ああ、早くこの男と決着をつけたいぞ」


「絶対に俺を認めさせてやる」


「ふふん、やってみるがいいさ」


―――日本海


「まったく!どうして『あいつ』が俺の家に来るんだよ!」


『さぁな、俺はゾラードから伝えられた事を言ったまでだ』


『グハハハ!なんなら踏みつぶしてやろうかぁ?』


「ダメだ」


グレンデルの申し出に一刀両断していると日本海に浮かぶ巨大な複数の大地が見えてきた。その大地に

巨大な身体を持つ生物も肉眼で捉えた。さらに速度を上げ一誠は1つの大地に到着すると

ヘリコプターが停まっていて数匹のドラゴン達もいた。


『あっ、イッセー!』


「話しは聞いたぞ」


『すみません、旅行中の所を呼びだしてしまい・・・・・』


「相手が相手だ。面倒だがしょうがない」


『見覚えのある人間だったがそれでも追い返そうにもこの人間が引き下がろうとしない上に主に会いたいと

言い出す始末だ』


「・・・・・それで、俺に用ってなんなんだ?箱根旅行中の俺を呼びだしておいて重要な事じゃなかったら

怒るぞ。英雄とあずみ」


ゾラードの話しを聞きながら一誠の目の前に金色の服装に×印の傷がある銀髪の男と

その後ろのメイドに問い掛けた。


「それは申し訳がない事をした。だが、一誠殿にどうしても頼みたい事があったので

ドラゴン達に殺される覚悟してここに来たのです」


「頼みたい事?」


「一誠殿、この海域の上空に浮かぶ複数の巨大な大地を我が九鬼家の所有地とさせてほしいのです」


「・・・・・なんだと?」


一誠は新たに複数のドラゴンを現世に顕現して目の前にいる英雄に微笑んだ


「お前・・・・・いま自分が何を言っているのか分かっているんだろうな?仮にもお前が尊敬してお前の

命の恩人の俺に俺が作った家と庭をお前等、九鬼家の所有地にさせて欲しいだと?

冗談にしちゃあ面白いなぁ?」


「・・・・・っ」


『いい度胸ですね。この人間は』


『殺してもいいか?主の家を貴様等の所有地にしようなどとふざけた事を言うではないか』


『殺すなら俺がやるぜ!』


『じっくりと恐怖と絶望を味あわせてそれから喰うのも悪くは無いな』


『僕達の家でもあるこの場所を人間の君達に渡す訳無いでしょ。馬鹿なの?馬鹿なんでしょ?』


ズシンッ!と一歩だけ前に近づきながらドラゴン達が敵意を向ける。


「(これがドラゴンの敵意と殺意というのか・・・・・!?なんて恐ろしいのだ!心が挫けそうであるぞ・・・・・!)」


「(ヤバい、英雄様だけでも逃がせれば万々歳だがこいつ等は絶対にそれを許す訳がない・・・・・!

特に・・・・・)」


あずみが一誠を見詰める。ただ英雄に微笑むだけで敵意と殺意のような視線を感じなく

それが逆に恐ろしさを感じさせる。


「(こいつがこの中で一番危険過ぎる!あからさまな敵意を向けてくるのならまだ良い方だが、

それすらも向けて来ないなんて一体何を考えているのか分かったもんじゃない!)」


「で、俺の家と庭を所有地にしたい理由は何なんだ?」


「・・・・・今現在、日本と中国は一誠殿の家のこの大地を巡って水面下ではお互い譲らんばかりに

討論しおるのは御存じか?」


「ああ、俺も情報で知っている。一触即発になってもおかしいぐらいだ」


「一誠殿、あなたの庭に足を踏み入れるのはこれで2度目ですが一誠殿の庭には金色の大地、

黄金郷エル・ドラードがある。中国の政府はその大地を喉から手が出るほどに欲しいと聞いているのだ」


「その大地はこの黄金の体を持つドラゴンの住処だ。こいつに譲ってもらう様にお願いしないと無理だな」


『主の庭であり我の住処を欲しがるなんて許し難いですね』


「ま、こう言って否定や拒否をするだろうがな」


「その中国にも我が九鬼家の九鬼財閥の支部がある。我が夢、世界を総べるのにはどうしてもこの地が

必要になるのだ。経済、商業、産業、鉱業、その他諸々とこの地が当て嵌まる。この地が外交にも

 必要不可欠と成るであろう」


「・・・・・」


「それほどこの地は価値あるのだ!一誠殿、あなたには恩がある上に立場的にも我が悪いであろう。

しかし、中国と日本の関係が悪化してしまうのは九鬼財閥も影響が出てしまうのだ!」


「・・・・・はあ」


一誠は徐に溜め息を吐く。


「つまりは自分の家の為に俺の家や庭を欲しがっている訳か・・・・・」


「「・・・・・」」


「悪いがダメだ。この大地が存在する理由は他にもある。その理由を解決しない限り誰にも渡す気はない」


「一誠殿・・・・・」


「だが、そうだな・・・・・どうしても欲しいというんなら・・・・・こいつらと相手をして

一匹でも勝てたら考えてやる」


『あはは!イッセー、面白い事を言うね?』


『グハハハッ!暴れるのか?暴れても良いのか?』


『たかが人間が俺達に勝てる訳がないだろう?』


『我等の住処を賭けてた戦いですか・・・・・』


『それなりの力を示してもらわないとな』


『殺す』


12の目が英雄とあずみを睨んだ。英雄とあずみの2人は思わず後ろに下がりたじろぐ。


「英雄、それが無理なら今回の件は無かった事にするし忘れる。こんな事でお前達との関係を

悪化したくない。俺はお前達とこれからも交流を持ちたいからだ。できる限り俺も力を貸す。

だがな?俺の家をお前達の家の為に渡す訳にはいかない。―――俺には成し遂げたい事があるんだ」


「それは一体・・・・・」


「英雄、お前には悪いがお前には関係ない事だ」


「っ!?」


初めてハッキリと拒絶され言葉を呑んだ。


「――――――」


ガキンッ!


「あずみ、主を悪く言われて腹が立ったかもしれないがメイドとして致命的な行動だぞ。

ましてや俺だからできる行動だろうけど、それだとお前等九鬼の従者は恩を仇に返す奴だと認識してしまう」


「あずみ!止すのだ!一誠殿に手を出すな!」


二つの小太刀を一翼の金色の翼で受け止め鍔迫り合いをしながら淡々とした声音で

襲いかかってきたあずみに口を開く。


「・・・・・お前、本当に何者なんだよ・・・・・!」


「俺は俺だ、以前は世界を冒険する旅人だったがな」


二つの小太刀ごとあずみを薙ぎ払う。翼を仕舞い英雄に視線を向ける。


「英雄、何かを得るのにはそれ相応の行動と代償が必要だという事を覚えておけ。

―――明日は普通に今日の事を忘れて接しよう」


『なんだよ、暴れられねぇのか?』


「はいはい、お前の相手を後でしてやるからそれでいいだろう?」


『グハハハ!俺はお前のそういうところが好きだぜ!お前といると飽きねぇな!』


「それじゃ皆。自分の持ち場に戻ってくれ」


一誠が指示を出すとドラゴン達は翼を羽ばたかせて他の大地へと向かって飛んで行く。


「これが俺の力だ。俺は世界を何度でも征服や破壊する事も出来る。―――頼むから俺を本気で

怒らさずにしてほしい。それを俺は望んでいる」


シュンッ!と空気を裂くような音と共に英雄とあずみの前から姿を消した。


『主はそう望んでいる。これからも主と親しく交流を持つ事を願っている』


「・・・・・一つだけ聞かせて欲しい。一誠殿は・・・・・何者なんだ?」


『・・・・・我から口にする事はできないが、一言でいえば「籠に閉じ込められた鳥」と言おう』


「籠に閉じ込められた・・・・・鳥?」


『去れ、然もないとお前達を踏みつぶすぞ』


「・・・・・英雄様」


「ドラゴンよ、次にこの地に訪れ我は一誠殿の友として参る」


『・・・・・』


地鳴りと鳴らしながらドラゴンは踵を返して2人から離れる。


「行くぞ、あずみ」


「はい・・・・・」


―――中央の大地


「そうさ、俺には成し遂げたい事がある。それまで俺は止まる訳にはいかないんだ」


家に戻った一誠は自分の部屋にある写真立てを手に取り見詰める


「もし、俺の計画が成功できたなら―――この世界と『あの世界』と繋がる」


その写真には大勢の男女と一誠が並んで写っていた。他にも多くの写真立てがあり壁にも様々な男女と

写っている写真が貼られていた。


「『異次元門』これしかあいつらに会う方法がないだろう。その為には膨大な魔力が必要だ」


写真を撫で懐かしそうに見ながら呟く。


「・・・・・ガイア」

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