小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

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2−S



「義経と弁慶、与一だ。皆、転入生とは仲良くするんだぞ」


2−S担任、宇佐美巨人が新しくSクラスに入った3人を自己紹介していた。


「き、緊張する事無いぞ、弁慶!与一!」


「義経こそリラックスして」


「ヒュホホ。分かっておるが・・・・・英雄を名乗るからにはそれなりの力を示してもらわねばならぬ」


「我の名前を呼んだか?」


「おっ、そのボケはいつ来るかと思ってました」


「我が友トーマは、ポーズをつけて何をしているのだ?」


「ひたすら義経さんに流し目をしているのですが、中々反応してくれませんね」


「フハハ、義経は真面目だから余計に緊張してしまうぞ」


「さぁ、私が相手です。弁慶、来なさい」


弁慶に勝負を申し出るマルギッテ。その表情がイキイキとしていた。そんな彼女に内心、あずみが呆れていた


「(・・・・・ったく、猟犬も勝負ふっかけるの好きだなぁ)」


「んー・・・・・だるいなぁ」


「だるい?不健全な表現は止めなさい」


「べ、弁慶!コミュニケーションは大事だぞ」


「じゃあ、俺は義経と勝負をしようか」


「い、一誠!?」


「ほら、手紙に再会したら義経と勝負してくれって書いてあったし約束を果たす為にも良いだろう?」


席から立ち上がり義経の前に移動して微笑む一誠は自分のワッペンを義経に突き出す。


「義経、俺にお前の強さを見せてくれ。新入生歓迎と称してお前と決闘を望む」


「おいおい、オジサンを無視して勝手に決闘なんてしないでくれ」


「でも、いいだろう?『尊敬』する宇佐美先生」


「・・・・・あー、その言葉で言われるとオジサン、クラッとしちゃうな・・・・・しょうがない、

本人が良ければ決闘をしろ」


「わかった。義経、お前の意志は?」


「・・・・・義経は・・・・・一誠と決闘をする!義経の力を見てくれ!」


「ははは、そうこなくちゃな。不死川、義経の力を見て判断しろ」


「う、うむ。分かったのじゃ」


「時折り、俺は隙を作る。そこを突いて攻撃して来い」


「分かった!」



―――2−F


「僕達のクラスには、誰も来ないんだね」


巨躯で太った体の持ち主である熊飼満は柿ピーを食べながらそう呟くと教卓から鞭が放たられ直撃した。


「熊飼!HR中に柿ピーを食うな!」


「ああぁっ、すいません。つい、口寂しくて」


「全く、ビールが飲みたくなるだろう」


「ふっ、発想がなんというか・・・・・」


「誰がババくさいだと、大串!」


バシンッ!


「うぐわっ!そんな事言ってねぇ!」


「ただでさえウチのクラス、問題児多いし・・・・・」


「受け持ちの学生が増えたら先生大変系」


「お兄様がいるのにその上、義経達が入るとなると、S組がまた強く成るわね」


「うわぁ・・・・・こっちのクラスに対する圧力が増しそう」


「仲良くしたいと言ってましたし、大丈夫ですよ!」


「そう願いたいもんだ。これ以上騒がしいのは嫌だぜ」


『―――今より第1グラウンドで決闘が行われます。決闘内容は武器を使用――』


「わっ、早速誰かが決闘をするみたいだわ!」


「義経達が来て早々にこれかよ・・・・・」


2−Fの担任である小島梅子が教室からグラウンドを眺め、Fクラスの生徒達に報告する。


「・・・・・Sクラスの兵藤と義経が決闘をするようだぞ」


「なっ!一誠さんが義経と決闘だと!?」


「そういえば、一誠さんは義経達と親しげに話していたような・・・・・」


「多分だけど、九鬼の奴と親しい上に交流を持っているから義経達とも出会っていたんじゃないのか?」


「あっ、それなら納得するね」


「先生!決闘を見る許可を下さい!」


「うん、伝える事は大体終わったからな。よし、教室から出なければ見ても良いぞ」


「義経ってどのぐらい強いのかしら?」


「一誠さんが勝つだろうけど気になる?」


「勿論よ!アタシ、義経と手合わせ願いたいし戦ってみたいわ!」


「自分もだな」


大和達は一誠と義経の戦いを教室から見る。グランドには既に一誠と義経が武器を使って激しく攻防を繰り

広げ―――大和達が兄か父親のように接している一誠の腕が両断されたその瞬間を見るまでは。


―――グラウンド


時間は少しだけ遡る。一誠と義経がグラウンドで川神鉄心の立ち会いの許、2人は戦い始めた。


「はあっ!」


義経がもの凄い速さで刀を振り続ける。一誠はその場から動かず義経の斬撃を避け続けていて義経の実力を

見極めていた。


「うん、なるほど・・・・・速く、鋭くていいな。由紀江と同等ぐらいか・・・・」


「せやっ!」


クルリと周り遠心力で更に素早く降る斬った斬撃が一誠の胴を襲う。


「よっと」


爆発的な脚力で上空に飛んでその斬撃から避け、再び義経の前に降下しながら


「義経の実力は分かった。―――今から攻撃に移るぞ」


胸に下げていた大剣のブレスレットを外して手に持った。すると、手から神々しい輝きを発して光と共

に宇宙にいると思わせる程の常闇の中に星の輝きをする宝玉が柄から剣先まで埋め込まれてあり、

刃の部分は白銀を輝かせ至る所に不思議な文様が浮かんでいる金色の大剣へと変幻していった。


「特別だ、この武器で戦ってやろう!」


ガキンイィィィィィンッ!


「くっ・・・・・!?」


振り下ろされた大剣を刀で受け止めたが振り下ろされた衝撃と重さで義経の表情が険しくなった。

さらに強引で押し出すように薙ぎ払われて吹っ飛んでしまう。


「そらよっと!」


吹っ飛んでいった義経に大剣を思いきり投げた。自分に迫る大剣に気づき刀で大剣の軌道を反らし

、回避した。


「はあああっ!」


気合の声と共に体勢を立て直して一誠に突っ込んでいく。―――ジャラジャラと金属同士がこすれ合う音が

自分の横から聞こえ義経は横に顔を向けると鎖がもの凄い勢いで一誠の方へ

引っ張られていくのを視界に入った。


「大剣はこういう使い方もあるんだ。―――気をつけろよ」


「っ!」


一誠が何をしようとしているのか気付き、素早く後ろに振り向くと大剣が義経の体を裂こうと

もの凄い速さで向かってきていた


ギイイイイインッ!


ギリギリで大剣から刀で守り傷を負う事は無くなったが、一誠は戻ってきた鎖と大剣を振り回し、

義経に向けて振った。


「(一誠の攻撃に隙が無い!あんな攻撃の仕方を義経は始めて見る!)」


鎖に繋がって振り下ろされた大剣から避けて義経は突貫しながら心の中で呟く。


「(でも、時折り隙を見せると言っていた。鎖を引っ張って武器を引き戻すその瞬間が隙だと義経は思う!

だから―――攻めるのなら今しかない!)」


足に力を入れて、一誠に向かって跳ぶ。刀を上に振りあげ一誠を一刀両断する勢いで振り下ろした。


「おおおおおおおおおおおおおおっ!」


「まぁ、誰でもそう思うよな?だけど、その考えは甘い」


素早く鎖を持つ逆の手からドス黒いオーラが集束して漆黒の大剣へと形になって義経の刀を受け止めた。


「武器はまだまだあるんだよ」


「っ、まだまだ!」


地面に着地して一誠に猛攻する。


ガキッ!ギンッ!ギンッ!ギャンッ!ガキンッ!


義経の猛攻の斬撃に二つの大剣で防いでいく。一誠の身長を超える大剣をまるで木の枝を振るう様に

重さを感じさせず、義経の猛攻を防ぎつつ攻撃していく。


「どうした、これがお前の本気か?そうじゃなければ全力で来い。俺を倒すつもりでだ」


「はあああああああああああああああああああああああああああああっ!」


一誠の言葉通りにしようと思いきり叫びながらさらに刀を振るう速さを上げた。一誠はその斬撃の速度に

満足しつつ攻防を繰り広げる。


「終わりだ」


「っ!?」


唐突に一誠が呟き大剣を振り上げた。―――その振り上げた一瞬を義経は一誠を倒す事で

頭が一杯で思いきり地面を蹴り。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


―――ズバンッ!


一誠の右腕を一刀両断した。


キーンコーンカーンコーン


「そこまでじゃ!」


鐘が成りだし、鉄心が決闘を終わらせた。一拍して義経が気を取り戻して一誠に振り返った。


「―――最後の一撃は凄かったぞ。俺がワザと隙を作ったからといって俺の腕を斬り落とすとは成長したな」


斬り落とされた腕の断面から血が大量に出てグラウンドを赤に染める。そんな光景を一瞥して一誠は、

義経に称賛した。


「い、一誠!ち、血が・・・・・!じゃ、じゃなくて義経は何て事を・・・・・!?」


「ん?ああ、これか。別に気にするな」


「いや、そこは痛がるところじゃぞい・・・・・」


「んー、もう慣れたからどうでも良いけど血が大量に出るとなると倒れて大変だな。ははは」


「わ、笑いどころではない!いますぐ義経と一緒に病院に行こう!」


「その通りだぞ!一誠さん!」


「いますぐ病院に行こうよ!イッセーが死んじゃう!」


「いや、病院に行かなくても大丈夫だって」


「止血をせねば!」


マルギッテはこれ以上血が流れ出ないように布で一誠の腕にきつく巻き始めた。


「義経。俺の腕を持って来てくれ」


「え?」


「腕をくっつけるから必要なんだよ」


漆黒の大剣をグラウンドに突き刺したあと、空間に穴を広げて手をその穴の中に入れて高級そうな液体が

入った瓶を取り出した。傍にいたマルギッテ達がその光景を見て目を見開くが直ぐに怪訝の表情を浮かべる。

義経も怪訝な表情を浮かべるが一誠の頼みを聞いて斬り落とした一誠の腕を大剣から外して

拾って一誠に近づく。


「一誠、持って来たぞ」


「ん、その腕と切断面と合わせてくれ。正確にな」


「う、うん・・・・・」


義経は一誠の指示に従い斬り落とした腕と一誠の腕の切断面に合わせると、瓶の蓋を口で外して

切断された腕に振り掛け右腕は傷口から煙を立てながら―――何事もなかったように元通りに成った。


「・・・・・」


手を開いたり閉じたりと仕草をする、元に戻った右腕の感覚を調べ終ると首を縦に振り。


「さて、教室に戻るか。次の授業が始まるし」


右手の指をパチンと鳴らし、一誠の血で赤く染まったグラウンドが元の色に戻して金色の大剣を広い

ブレスレットの状態に戻して首に下げグラウンドに突き刺さっている漆黒の大剣に「ありがとうな」と言うと

フッと消失した光景を見た一誠は、スタスタと教室へと戻っていった。


「あー、目眩がするな。血を流し過ぎたか・・・・・屋上でしばらく寝ていよう」


シュンと一誠の姿が消えた。


「・・・・・一誠さん、貴方は本当に何者なんですか・・・・・?」


―――2−S 昼休み 


「結局、一誠さんは授業をサボったな」


「屋上に行きましょう。一誠さんが屋上で寝ると言っていましたし」


「イッセーの鞄は僕が持つねー」


「待ちなさい。私も行きます」


「いいですよ。マルギッテさんもご一緒に」


「義経達も行くぞ!」


「一誠は屋上にいる事が多いの?」


「まあな、一誠さんが良くサボりスポットと同時に昼飯を食べる事が多い場所だ」


「ふぅん、なるほどね」


「与一、一誠の所に行くぞ。一緒に昼食を食べるんだ」


「別に皆で食わなくたって良いだろう?何で俺まで誘う必要がある。俺は1人で―――」


「一誠が言っていた事を守らないのなら一誠と一緒にお仕置きだな」


「・・・・・わ、分かったよ」


「おおー、何か身体を震わせて面白いねー」


「それほどまでに一誠さんと弁慶のお仕置きが怖いほど身体が反応しちまっているんだろうなぁ・・・・・」


葵冬馬、井上準、榊原小雪、マルギッテ・エーベルバッハ、源義経、那須与一、武蔵坊弁慶、以下7名が屋上に赴く。冬馬達は屋上に繋がる扉に辿りつき開け放つとベンチに一誠が横になって寝ていた。

―――葉桜清楚の太股に頭を乗せて。


「おや、清楚先輩がいるとは・・・・・」


「へぇ、偶然だな。屋上で会うなんて」


「イッセー、起きてー?イッセーの鞄を持って来たよー」


小雪が一誠の鞄を渡すと同時に起こそうと近寄った―――刹那。


「―――俺のものに触れるな」


「っ!?」


赤い瞳から殺意が小雪に向けられた。同時に7人は威圧感を肌に突き刺さるほど感じて押し潰されそうになる


「な、なんだ・・・・・この感じは・・・・・!?」


「葉桜先輩の瞳が赤い・・・・・っ?」


「違う、朝に会った人じゃないよ。・・・・・誰・・・・・?」


「貴女は・・・・・誰ですか・・・・・!」


冬馬と準もマルギッテも直ぐに葉桜清楚の様子が可笑しいと気付く。


「おいおい、面倒くせぇことになっているじゃんかよ・・・・・」


「まさか、初日で表に出るなんてね・・・・・」


「ど、どうするべきだ?」


冷汗を掻きながらも与一、弁慶、義経の3人は呆れたり、困ったりした表情を浮かべた。


「おい、先輩の様子が可笑しいがお前等は知っているのか?」


「まあ、知ってはいるけど・・・・・私達の口から教えられないんだよね」


「どうしてです。この押し潰されそうな感じは、全校集会の時では感じさせなかった上に葉桜先輩の瞳が

赤くなっている理由がある筈です。答えなさい・・・・・!」


「それは・・・・・」


「んー、良く寝た・・・・・。ん?ユキ達か。というと今は昼休みだな?」


葉桜清楚の太股から起き上がった一誠が冬馬達の存在に気づく。この場に支配されている

威圧感をまるで感じていないように自然と。


「って、何で清楚がここにいるんだ・・・・・?」


「・・・・・お前と早く会いたいから来ただけだ。来たら来たで、お前は寝ていた」


「・・・・・おいおい、『そっち』かよ。大丈夫なのか?出て来てさ」


一誠も葉桜清楚の様子に気づいた。今の葉桜清楚は瞳が赤く結んでいた髪を流していた状態だった。


「お前が気にする事ではない。それに清楚が俺と強引に入れ替わったんだ」


「そっか、清楚は優しいな」


そう言いながら葉桜清楚の頭を撫でる。


「おい、気易く俺の頭を撫でるな。俺を誰だと思っている」


「―――覇王・項羽だろう」


「「「・・・・・え?」」」


一誠が葉桜清楚を覇王・項羽と呼んだ。覇王・項羽とは秦末期の楚の武将。その時代と同じく存在していた

前漢の初代皇帝の劉邦という男と戦い続け最期に自害したという過去を持つ武将でもある。


「い・・・・・一誠さん・・・・・。どうして、清楚先輩に覇王・項羽と呼ぶのですか・・・・・?」


「清楚が項羽のクローンだからだ。まあ、この事は一部の奴しか知らない事だけどな」


「な、何だって・・・・・!?」


「まさか、初日でお前が出てくるとは思わなかった。一応、お前の存在は機密事項な筈だけどな」


「ふん、あいつがなんて言おうが俺の知った事ではないからな。それよりお前、腕の方は大丈夫なのか?」


「大丈夫だ、血が足りない程度だ。小雪、鞄をくれ。それとお前は覇気を抑えろ。威圧感でこいつらが

押し潰されそうになっているぞ」


「ちっ、しょうがない」


「う、うん!」


小雪から鞄を受け取って弁当箱と瓢箪を取り出す。そして、威圧感が無くなり6人は安堵する。


「弁慶、約束通り一緒に川神水を飲もうか」


「覚えていてくれたんだ」


「約束は守るさ。ほら、ちくわもあるぞ」


「ふふふ、ありがたい♪」


嬉しそうにちくわを摘まんで食べ始める。冬馬達も各々と座りだし弁当の箱を開けて食べ始める。


「それにしてもお前が自分から出てくるなんて凄いな。あの歌を聞かなくても覚醒するなんてさ」


「何を言っている。元はといえばお前がそういう風にしたんだろうが。お陰で俺と清楚は容易に

入れ替わる事ができるようになった」


「あっ、そう言えばそうだな。なら、今度はお前の肉体を用意して

1人の人間として生活できるようにしてやろうか?」


「・・・・・お前という奴は」


一誠の提案に呆れる。だが、少し笑みを浮かべていて満更でも無さそうだった。


「そんな神がかりな事をできるのか?」


「できるさ、じゃなきゃそんな事を言わないぞ。今の項羽と清楚は自由に入れ替わる事ができるように

なっているから清楚と項羽を分けて魂を取り出し、肉体に定着すれば1人の人間として生きていける筈だ」


「・・・・・さて、清楚と入れ替わるぞ」


「もうか?」


「此処に近づいてくる気配を感じる。俺の覇気を感じてお前を心配している奴等だろう。

俺はお前とこいつらの前しか現れないからな」


「ん、分かった。また明日会おうな。項羽」


「ふん・・・・・」


項羽は瞑目し一拍すると目を開いた。瞳の色は琥珀。あの威圧感がスッキリするほど感じなくなった。

申し訳なさそうに項羽―――葉桜清楚は頭を下げた


「ごめんね。驚いたでしょ?私は覇王・項羽のクローンなの。朝の全校集会の時はああ言ったけど、

本当は既に知っていたんだ。旅人さん―――いえ、一誠君のお陰でね」


「では、25歳まで学問に打ち込むというのは嘘だと?」


「皆に怖がらせたくなかったからああ言うしかなかったんだよね・・・・・本当にごめんなさい」


「いえ、私達は気にしていませんよ」


バンッ!


「一誠!」


百代が屋上の扉をもの凄い勢いで開け放ち現れた。


「百代、遅かったな?」


「・・・・・いまさっき、膨大な闘気が感じたんだが・・・・・」


「俺は寝ていたからそんなのは感じなかったが・・・・・。お前等は?」


怪訝な表情で屋上を見渡し百代が感じた膨大な闘気が感じなくなっている事に訝しげるが、

一誠は冬馬達に訊く。


「いえ、私も感じませんでしたが」


「ああ、若と同じく」


「うんうん」


「はい、この3人と同じです」


「・・・・・義経ちゃん達は?」


「私達も何も感じなかった。ね?義経、与一、先輩」


「面倒くせぇ」


「う、うん・・・・・」


「ごめんね?私も感じなかったよ」


「・・・・・そうか、私の勘違いか。(一誠は兎も角、こいつらは何か隠しているな。無理矢理聞くのは

できるが一誠はそれを許さないだろう・・・・・。一誠とは違う膨大な闘気だった。

それもじじいレベルの・・・・・)」


表は納得するが裏では納得していなかった。


「一誠、腕は大丈夫なのか?」


「見ての通り元通りだ。義経は強くなっているな」


「そ、そんな。一誠がワザと隙を作ってくれなかったら義経の実力じゃああんな事は出来なかった」


「なに、ワザとだったのか?」


「事前にそう言う事をするって言ったからな。義経の実力を見る為にも敢えてそうした。結果、

容赦なく俺の腕を一刀両断なわけだ」


「そっか、お前の腕を斬るほどの実力者かと思ったらそういう理由だったのか・・・・・でも、

義経ちゃんと戦ってみたいなー♪」


「わわっ!?」


義経の背後から腕を伸ばし抱き付いて頬ずりする。


「こら、義経が困っているだろう。それより一緒に食べよう」


「よし、一誠の腕がまだ治っていないらしいから私が食べさせてあげよう」


「はっ?いや、とっくに治っているから・・・・・」


「僕もやるー!イッセー、あーん」


「ユキ、だから俺は・・・・・」


「じゃあ私はちくわを食べさせるよ」


「それ、俺が出したちくわだろう」


「イッセー、口を開けなさい。私が食べさせます」


「携帯食料かよ・・・・・。マルギッテが作った弁当を食べたいぞ」


「・・・・・次はそうします」


「はい、一誠君。口を開けて?」


「くっ・・・・・状況は違うが四面楚歌か・・・・・」


一誠は頭をガクリと垂らし諦めた。


―――放課後、


「さてと、弓道部に行くとするか」


「お疲れ様です」


「頑張ってねー?」


「与一、お前も来るか?弓使いだし」


「行かねぇよ。つぅーか、武器が弓だからって弓道に行っても面倒くせぇだけだ」


「ははは。まあ、強制じゃないから気が向いたら見に来いよ。俺もたまに弓を射るからさ」


「気が向いたらな」


教室から出て直ぐマルギッテと会う。丁度、大和達がマルギッテと話し合っていたところだった。


「あ、お兄様!」


「よ、義経達に会いに来たか?」


「ああ、そうだぜ、マジ弁慶さんはどこだ?」


「・・・・・マルギッテ、こいつだけは弁慶に会わすな。下心が丸見えだ、下手すれば襲うぞ。他の奴等は通しても構わない」


「ヒデェ!一誠さん、マジでヒデェ!俺様は、本当に下心は無いんだぜ!?」


「じゃあ、鏡を見てまだそう言えるか?」


鞄から手鏡を取り出して岳人に突き付けた。―――鏡にはニヤついている岳人が映った。


「はっ・・・・・!?」


自分の表情を見て慌てて真剣な表情に変える岳人。その様子を見て呆れ、クリスに顔を向ける。


「クリス、こいつの監視よろしく。邪な気持ちが少しでも感じたら正義という名の許に粛清して良いぞ」


「うむ。心得た」


「イッセー、弓道に?」


「約束したからな。京、弓道部でお前を待っているぞ?」


「まるで、デートの誘いを受けているようで良い・・・・・!」


「腕、大丈夫なんかよ?一誠さん」


「お前を殴って証明しようか?」


「い、いや、大丈夫だ!だから俺を殴らないでくれ!モモ先輩並みのパンチを食らったら俺、死んじゃう!」


「大袈裟だなぁ・・・・・」


クスクスと苦笑を浮かべながら一誠は廊下を歩いて弓道部に赴いた。


―――弓道部


「来たぞー」


「イッセー君!」


弓道着姿の弓道部の主将、矢場弓子が駈けつけてきた。


「腕、大丈夫なの!?」


「今日は俺の腕の事で心配してくれる奴が多いな・・・・・」


「当り前だよ!腕を切断されるなんて普通は重傷で病院に治療してもらうべきなんだよ!?」


「まあ、俺にとっては良くある事で・・・・・」


「それ、どう言う事なの・・・・・?イッセー君」


「・・・・・と、悪い。独り言だと聞かなかった事にしてくれ」


「・・・・・」


弓子は納得できないと怪訝な顔をする。そんな顔をされて一誠は頬をポリポリと掻き困ったような

顔を浮かべる。


「取り敢えずは完全に治ったから弓を射る事はできる。ま、殆どは指導する方だからする事は

あまりないがな」


話しを半ば強引に逸らして大天使化に成り、部員達の方へ歩を進め指導し始める。

そんな一誠に弓子はジッと一誠を見詰める。


「む、兵藤がいるとは・・・・・あいつ、腕の方は大丈夫なのか?」


「ウメ先生・・・・・」


「どうした、お前から珍しく不満そうに感じるぞ」


「ウメ先生、ええ、私はいまもの凄く不満な事があります」


「なんだ?」


「イッセー君です」


「兵藤?」


今まで一誠が部員達に指導してきており部員達の腕も一誠が指導する前の頃より比べると上達しているのが

間違いないのに弓子が一誠に不満を抱いている事に梅子は首を傾げる。一体、一誠のどこが不満なのか

自分は分からないといった感じで梅子は口を開く


「どこか、兵藤の言動に矢場を気分悪くするような事をしたのか?」


「そうじゃないんです。イッセー君が何か隠しているようでそれが不満なんです。もう、

付き合いはまだ短いのはしょうがないけどなんで・・・・・」


面白くなさそうに弓子は一誠を見る。1年生の部員の背後から弓を射る姿勢を教えていた。

1年生は一誠の体に身を預けるようにさり気無く寄り添い、頬を若干赤く染め一誠の指導を受けていた。


「・・・・・」


「・・・・・(ほう、なるほどな。そういうことか)」


梅子は弓子が一誠の指導を見た瞬間にもの凄くつまらなさそうな雰囲気を出した事に合点した。


「時に矢場」


「はい」


一誠を見ながら弓子は返答する。次の瞬間、梅子は爆弾発言をした


「お前―――兵藤の事が好きなようだな」


「――――――」


梅子の言葉に弓子は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。


「(私はイッセー君が好き・・・・・?)」


今まで一誠と接した日々を脳裏に思い出す。温かな眼差しで自分を見詰める一誠、優しい声音で自分に

話しかけてくる一誠、自分にガラスのように・・・・・でも、力強く触れる一誠、自分と部員達に真剣で

指導してくれる一誠、そして川神百代が自慢げに一誠の事を語った事もあった。『自分を完膚なきまで倒した

男はあいつしかいない。私は楽しく嬉しかった』と、恋に落ちた乙女のように・・・・・。―――金色の翼と

一誠に包まれる時、心の底から安心する自分がいる事も思い出した。同時に胸が、心臓が、

ドキドキと高鳴っていた事も・・・・・。


「(あっ・・・・・)」


弓子を不快にさせていたものが一誠と過ごした時間を思い出していく度に消えて逆に温かさが

胸の奥から湧き上がった。心臓も心なしか何時もより激しく動いていた。


「(私、葵君が好きだと思っていたのに・・・・・何時の間にか私の中は、

イッセー君で一杯になっている。私・・・・・イッセー君の事が・・・・・?)」


「おーい、ユミ」


「っ!」


「どうした、顔が真っ赤になっているぞ?」


何時の間にか目の前に一誠が蒼い瞳で弓子の顔を覗き込むように目の前にいた事に声を掛けられるまで

気づかず弓子は目を見開き、更に顔を赤くする。


「・・・・・大丈夫か?」


「だ、大丈夫!うん、大丈夫だよ!本当に!」


「・・・・・なら、いいけどもう部活が終わっているぞ」


「えっ!?」


弓道場に掛けられている時計を見ると時間が部活動の終了時間より過ぎていた


「何か、深く考えていたようだから声を掛けなかったからこんな時間に成ったんだが・・・・・

悩みでもあるのか?」


「み、皆とウメ先生は・・・・・?」


「俺に『後は任せる』と言って先に帰った」


「―――――」


「京も途中から参加していた。まあ、先に帰させたけどな」


大天使化を解いて一誠は一息を吐く。


「で、悩みがあるのなら相談に乗るが?」


「・・・・・イッセー君」


「うん」


「一緒に帰らない?」


―――多馬川大橋


「「・・・・・」」


一誠と弓子は夕陽に照らされながら無言で歩を進めている。鮮やかに空が染まる朱色に浮かぶ煌めく

星達が2人を見守る。


「・・・・・イッセー君」


「なんだ?」


「なにも聞かないの?」


「言いたくない悩みなら俺は聞かない。でも、助けてほしい悩みなら俺は聞くし助ける」


「そう・・・・・」


「川神から見る夕陽は綺麗だなぁ〜。太陽が燃えているように見える」


「実際に太陽って燃えているんだよ?」


「はは、そうだったな。こんな感じで太陽は宇宙の中で燃えているんだろうな」


ボッ!と一誠の手の平から小さい火球が現れた。


「何でもできて凄いね。マジシャンみたい」


「マジシャンか・・・・・だけど、俺でもできることとできない事もあるぞ」


「イッセー君なら何でもできそうだと思っていたんだけど・・・・・」


「おいおい、いくらなんでも買い被り過ぎだ。俺は神じゃないんだから当然だろう?」


「だって、日本海に浮かぶ巨大な大地はイッセー君が作って家にしたり、ドラゴン達を従えたり、

弓は椎名さんと同等かそれ以上だし、百代ちゃんを倒したんだよ?」


「それでもできない事はある」


「例えば?」


「例えば・・・・・人に好意を向けられても応えられない事かな」


「・・・・・」


「今の立場じゃあ誰かと付き合ったり結婚したりする事ができないんだ。それができない事だ」


「イッセー君の立場って・・・・・なんなの」


「それは・・・・・」


弓子の質問に言い淀む。続けて口を開く。それも決定的な。


「イッセー君の立場はイッセー君が何か隠している事と関係しているの?」


「・・・・・」


その指摘に沈黙してしまった。沈黙は是也、弓子は「やっぱり・・・・・」と声を殺して呟く。


「さっき私が悩んでいたのはイッセー君。貴方が隠している秘密を気になっていたの」


「俺の秘密の事で悩んでいたか・・・・・」


「教えて、イッセー君。貴方が抱えている秘密を」


「・・・・・」


真っ直ぐと一誠の瞳を据える。弓子が見る一誠の瞳に少しだけ悲しみが乗っていた。


「どうして・・・・・俺の秘密を知りたがるんだ?」


「私、イッセー君の事を考えると胸が温かくなるの。イッセー君と過ごした日々を思い出すと心臓が

ドキドキしちゃうの。私、葵君が好きだったはずなのに何時の間にか

イッセー君で一杯に成っていた事も気づいたんだ」


一誠の手をギュと握りその想いを伝える。


「―――私、矢場弓子は兵藤一誠君の事が好きです」


「・・・・・」


弓子の告白に足を停めた。一誠は数秒間その場に佇み意を決したのか弓子の方へ身体を向けて口を開いた。


「弓子・・・・・」


「はい・・・・・」


「悪い、俺は誰とも付き合える事はできない」


弓子の告白を断わった。申し訳なさそうに一誠は弓子の顔を見るが


「イッセー君、今のイッセー君の立場が好きな人と付き合う事を邪魔しているんだね」


弓子はそんな事がどうでもいいように一誠に話しかける


「教えて、イッセー君の事を。私はイッセー君が抱えている秘密をすべて受け入れる気だよ」


「今の生活と関係じゃあダメなのか・・・・・?」


「私は次のステップに進みたい。百代ちゃんよりも、誰よりも」


「弓子・・・・・」


「イッセー君」


徐に眼鏡を外した。そして、夕陽が2人を照らす。夕陽に照らされ影が出て弓子の影が少しずつ

一誠に近づき―――。


「ん・・・・・」


2つの影が1つと成った。弓子は一誠の顔から離れて言葉を発した。


「私、本気だよ」


言葉に籠もった想いは一誠へ伝える。


「―――はぁ、そこまで俺の事が好きなのか?出会ってまだ1ヶ月なのに」


溜め息を吐いて弓子に問い掛ける。弓子は首を縦に振り肯定する


「大好き。それに人が好きになる事なんて時間は関係ないよ」


「・・・・・分かった。俺の秘密を話そう。俺の負けだ」


「ホント!?」


「だけど、俺の秘密は俺と関わりがある奴等も教える。あいつらも俺の事を知りたがっているから」


「確かに百代ちゃんも知りたがっていたね」


「時間をくれ、必ず俺の秘密を話す」


「うん、分かった」


「・・・・・告白の件は保留にしてくれ」


「仮に断わられても私は諦めないからそのつもりで」


「女は強いなぁー」


「ふふふ、そうだよ」


微笑み、一誠の手を握って歩を進める。


「行こう?」


「ああ」

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