小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

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六月九日(火)



―――川神学園図書室。



武道に定評のある川神学園だが、図書室の蔵書量も普通の学園より遥かに多い(学長談)。

本来なら静寂に包まれた空間だが、今は少し騒がしい。


「・・・・・」


図書室の席に3−Sに編入した葉桜清楚が席に座って静かに読書をしていた。その様子を同じく図書室にいる

男子達が見ていた。


「おい、清楚ちゃんが読書しているぞ・・・・・呼んでいるのは、ジャック・フィニイだ。

良いセンスじゃねぇか・・・・・短編の『愛の手紙』は名作だよな。古風だがそこが良い」


「はぁ・・・・・可愛いよなぁ・・・・・清楚ちゃんマジ清楚」


読書する清楚の姿が文学少女好きの心を掴んでいる。


「図書室では静かにしたまえよ」


と、着物を着た男性が少し騒がしい皆に窘めると着物を着た男性の正論に、浮かれている皆が我に返った。

着物を着た男性の名前は京極彦一。清楚と同じ3−Sの生徒でエレガンテ・クワットロの1人。その京極は

興味深そうに清楚を観察するように見詰める


「(立ち振る舞いだけで人を心酔させるか・・・・・。確かに可憐な容姿だが原因はそれだけではあるまい。

滲み出るカリスマ・・・・・。葉桜君の正体は想像の遥か上を行く人物やも知れぬな)」


不意に清楚が、京極の姿に気づいて小さく手を振る。京極も扇子を振り、挨拶を返した。


「(ま、誰でも構わぬがな。見守る事にしよう)」


『今より第1グラウンドで、決闘が行われます』


「(それにしても退屈しない学園だ。・・・・・ここは・・・・・)」


心の中で呟く京極。清楚を見守る最中、とある男子が読書する清楚に近づく光景を見た


「(あれは・・・・・2−Sの兵藤一誠・・・・・?どうして此処に・・・・・いや、

彼女に何か用事でもあるのか?)」


京極が興味を持っている1人が増えて清楚と同じように観察する。一方、一誠と清楚はというと

図書室なので声を殺して隣に座り会話をしていた。


「と、言う訳だ」


「そっか、一誠君の秘密を教えてくれるんだね」


「ああ、説得されてな・・・・・負けたよ」


「ふふふ、その人に感謝しないと。訊きたかった事がようやく聞けるんだから」


「やっぱり気になっていたのか?」


「当然だよ。私だけじゃない、義経ちゃん達も知りたがっていたし私も知りたかったんだよ」


「そうか・・・・・」


「ねぇ、一誠君。私はどんな過去を持っても一誠君は一誠君だと思うからね」


「そのセリフは義経達と清楚にも言える言葉だがな。英雄のクローンだからって清楚は清楚、

義経達は義経達だ」


「うん、そうだね。ありがとう」


ニッコリと一誠に向かって笑った。


「清楚」


「なにかな?」


「今度、俺の家に遊びに来ないか?俺の家に本がたくさんあるんだ。

きっと清楚が気に入る本もある筈だと思うぞ」


「本当に!?」


「清楚、声が大きい」


「あ・・・・・」


清楚らしくない大きな声を発した清楚に奇異な視線が自分に向けられた事に気づいて

恥ずかしそうに顔を赤く染め俯いた。


「それで、来るか?俺の家に」


「勿論、行くよ。一誠君の家にあるであろう素敵な本を読んでみたい」


「よし、決まりだな。予定が決まったら教える」


「楽しみだよ。一誠君のお家に行くの・・・・・そうだ、一誠君」


「なんだ?」


「キッチン借りても良いかな?一誠君の為に料理を作りたいの」


一拍して


「「「「「「「「「「な、なんだってぇー!?」」」」」」」」」」


文学少女が好きな男子達が青その言葉を聞いて驚愕の色を染め大声を張り上げた


「「静かに(したまえ)しろ」」


京極と一誠が言った瞬間、図書室が再び静寂に包まれた。


「(言霊を扱える奴がいたとは・・・・・これは驚いた)」


「(ふむ、彼も私と同じ言霊が使えるようだ。ますます興味深い)」


お互い、相手の顔を見て手を上げたり、扇子を振ったりして挨拶した。


「それじゃ、俺は戻る」


「うん、またお昼休みね。屋上でしょ?」


「ああ、屋上で待っている」


椅子から立ち上がり清楚からスタスタと離れて図書室から出て行った。その様子を見て小さく

笑って再び読書をする清楚だった。


―――放課後、第2茶道室。


俺は宇佐美先生と将棋を指して遊んでいた。予備の茶道室を私物化してしまうような宇佐美先生に

少し親しみが持てている。宇佐美先生もいるし第2は空き教室と化となっているから迷惑は掛からない筈だ。


「あー小島先生と結婚してぇ、新婚旅行に湯河原いきてぇ」


「剥きだしの心の叫びだな・・・・・仲、進展していないんだろう?それに武士道プラン。

それでいま疲れているんじゃないか?」


川神水を飲みながら歩の駒を進める。


「いや、思ったほど疲れねーな。義経は優等生だしよ。逆に気を使ってもらってるわ」


「義経への勝負希望者が後を絶たなくて忙しそうだな」


「今も第1グラウンドで決闘やってるぜ。相手、生徒会長」


「・・・・・ああ、あいつか。忘れるにも忘れられない生徒会長だな。

ギャラリーは皆、そっちに行っているだろうね」


「だからこそ今は静かにまったりできる訳だ。で、話しを戻すがよ。那須与一・・・・・

こいつは問題児なんだ」


「小さい時はあんなんじゃなかったんだがなぁ・・・・・。まあ、与一の事は俺に任せてくれないか?

マシな程度にまで施すからよ」


「おう。よろしく頼む。それとお前、俺の考えを分かっているようだな」


「与一の兄貴分として学校生活を楽しんでもらいたいだけさ。でさ、弁慶はどう評価してる?」


「んー、あーまだよく解らんなぁ・・・・・飄々としてるから、まぁお前と同じで川神水は飲むけど、

後は大人しいもんだ。良い子だよ。兵藤は結構、弁慶とか好きそうなタイプだな」


宇佐美先生のニヤリとした笑みに対し俺は・・・・・。


「んー、どうだろう。それは本人次第じゃないか?俺は兄のように父親のように接してきていたからなぁ」


「お前、保育園で働いた方が良いんじゃないか?」


「おい、それはどういう意味だ。俺は準のようにロリコンじゃないぞ」


そんな話をしているとスタスタと足音が近づいてきた。


「噂をすれば・・・・・来たようだぞ」


「ん?通り過ぎるんじゃねー。こんな空き教室興味無いだろ・・・・・って誰が来るのか分かるのか?」


「ああ、分かるさ。入って来いよ、―――弁慶」


「それじゃあ、失礼するよ」


空き教室に武蔵坊弁慶が入ってきた。


「あの時以来だな。久しぶり、弁慶」


「お久しぶり」


スタスタと空き教室の中に歩を進む弁慶に一誠が話し掛けた。


「その様子だとのんびりできる場所を探して此処に行きついたようだな」


「いやー、私は決闘とかだるいから逃げてきた。で、何処かに落ちつける場所がないかと思って探したら

此処だったわけ。いていいよね?」


「ここはオジサンと兵藤の聖域だからな」


「なんて汚いサンクチュアリなんだ・・・・・」


「まー冗談だって。好きにしろや弁慶」


「んー・・・・・さ、じゃなくて川神水が美味しい」


「ちくわもあるぞ」


「お♪準備が良いね?」


「俺も川神水を飲んでいたからな」


「なるほど、それに将棋をしているのか・・・・・ふーん、一誠が優勢だな」


「巨人が良い勝負してくれるから楽しいよ。これが鉄心だったらつまらん。巨人と鉄心で将棋をさせたら

絶対に巨人が勝つ」


「そんなに学長が弱いのか?」


「趣味とか言って弱かった。・・・・・ん」


川神水を器に入れ一気に飲み干す。


「ん。一誠は良い飲みっぷりする」


「いいぞ、もっと飲んで頭フラフラになりやがれ」


「もう諦めなって。今回の対局は俺の勝ちだろ」


パチンと駒を相手の陣地に動かす。その駒に巨人が眉を顰め次の一手に心の中で悩みだす。


「2人は何時もここで、ダラッとしているの?」


「俺は仕事だけどね。学生とふれあい」


「俺もたまにここに来て1人でのんびりとするな。学長公認で」


「ふむ。居心地が良さそうだ・・・・・私も、時々来よう。どうだ2人とも。だらけ仲間が増えるぞ」


「質問。雪山に友達と旅行に行きました。さて何をする?」


「んー。温泉につかって美味しい食事して、そしてまた、温泉に入って寝たい・・・・。

スキーとかスノボとか、できるけどめんどい」


「最高だな。こいつはかなりのだらけっぷりだ」


「これからよろしく」


川神水を飲み次に一誠から貰ったちくわも食べ幸せそうに笑む。


「あー、ちくわ美味しい。川神水にあう・・・・・」


「おでんとかエイヒレとかも好きそうだなぁ」


「そうだね、マニアックに山芋とかもいい」


「今度、摘まみとして持って来てやるよ。・・・・・王手」


「なに?・・・・・あっ」


やられた、と言った感じで巨人が溜め息を吐いた。


「お前、強いなぁー」


「巨人こそ。またやろう」


「今度な」


鞄を持ち一誠は立ち上がる。


「弁慶、途中まで一緒に帰るか?」


「うん」


弁慶も誘い一誠は弁慶と共に空き教室から出て下駄箱に歩を進めた。


「お前等は大扇島の九鬼財閥ビルに住んでいるわけだ」


「楽しくやってるよ。門限もゆるめだし」


弁慶が自分の下駄箱を開くとその中に1通の手紙が置かれていた。


「お・・・・・?靴箱に手紙が入ってたなう」


「ラブレターか決闘状か。どっちもありうるな。どうだ?」


「ラブの方だ。3年生から・・・・・年上に興味無いんだよねー。あと、手紙は気持ちが伝わりにくい気が

してどうも・・・・・」


「歴史の方では腰越状分かってもらえなかったからな。それにしても年上に興味がないと言うが風呂で俺に

あんな事をして矛盾しているぞ」


「一誠は特別って事。それに年上にも関わらず年下と思わせる何かを感じさせてくれる」


「そうか・・・・・」


靴を履き替えてグラウンドに出る最中に弁慶の言葉に少しだけショックを受ける。


「俺って年下に見えるかねぇ?」


「見えると言うよりは・・・・・何て言えばいいんだろう。母性がくすぐられるんだよね。

一誠の言動を見るとたまにさ」


「俺の方が年上なのに・・・・・」


「また一緒に風呂に入ろうね」


「・・・・・えー」


「いや?」


「・・・・・ノーコメント」


「ふふ」


「それじゃ、俺はここで」


金色の翼を展開して弁慶に言う。


「また明日な」


「うん、また川神水を一緒に飲もうね」


「摘まみも持ってくる」


バサァッ!


金色の翼を羽ばたき空へ飛翔する。そして、一瞬で一誠の姿が空から消えた。


「・・・・・一誠といると昔のようにのんびりとした空間ができて幸せなんだ。

それを一誠は理解しているのかな?」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


―――日本海 


「ただいま」


日本海に浮かぶ巨大な複数の大地の一つ、巨大な建物がある場所に一誠が声を掛けた。現在、

この家に住んでいるのは一誠と外にいるドラゴン達のみ―――


「おかえり〜」


一誠の言葉に反応が返ってきた。一拍して青い長髪に緑の瞳を持つ少女が現れ一誠の背中に抱きついてきた。


「ん〜、これこれ・・・・・ぐぅ・・・・・」


「おいおい・・・・・」


溜め息を吐いて苦笑を浮かべる。背中に抱きついてきた少女を背負って家の中を進む。


「おーい、帰ったぞぉー」


「ん?ああ、お帰り。今日は早かったねぇ」


「おー、お帰りぃー」


スパンッ!


「いたっ!?」


「人が帰ってきたら相手の顔を見て言えと何度言えば分かる。いい加減にしないとゲーム機と部屋の中にある

娯楽物も全て没収して小遣いは2千にまで下げるぞ」


「ちょっ!それだけはやめてくれよ!?特に小遣い2千はどこかの中学生かよ!」


「返事は?」


「あー、もう!一誠、お帰りなさい!これでいいだろ!?」


「・・・・・まだ不満があるがそれでいいだろう。2度目は無いと思えよ」


「うっ・・・・・分かったよ」


「ふふふ、天が悪いさね。この家のルールをイッセーが守らないと怒るって此処に

住む際に言われただろう?」


「いきなりハリセンで叩かれる身にも成ってみろよ・・・・・アミ姉」


「ルールを守る方に徹しているから成る気はないよ。―――イッセーが怖いんだから」


「・・・・・そうだな」


オレンジ色のツインテールの少女に鋭い眼つきの女性が少しだけ身震いをした。


「あいつらはどうした」


「歓楽街の親不孝通りに何時も通り暴れているんじゃねぇのか?」


「それと買い物に行くと言っていたぜ」


「そっか」


それだけ言うと青い髪の少女をソファーに降ろしてとある場所に巨大な筒状の空間へと進む


「『下層』に行くのかい?」


「たまに顔を出さないと『あいつら』が怒るからな」


「ふふ、人気だねぇ?」


「嫉妬か?」


「そう思うんなら好きに思っていたらどうだい?」


「じゃ、嫉妬していると思っている」


筒状の空間の中に入る。一誠が右手を動かすと青い髪の少女と共に姿が瞬時で消えた。


―――下層


下層、そこは簡単に言うと日本海に浮かぶ巨大な大地を上層と呼べば、日本海に存在する『大陸』の事を

指す。しかし、世界から見れば大陸なんて存在していないように見える。だが、それは一誠の力で大陸を

隠し続けているからだった。一誠と少女は大陸にある煉瓦と岩でできた城壁から離れた場所で

魔方陣と共に現れた。


「んー、久しぶりに来たけど変わっていないな」


一瞥して城壁にある城門へ歩を進める。近づくにつれ、城壁の上や城門に複数の人間がいる事に気づく。


「ん、守りはいるな。そこの所はぬかりないようで安心だ」


「止まれ!」


「・・・・・俺の事を認識していない奴を配備させた事以外ではな」


門番に重火器、あるいは武器で突き付けられその場に呆れながら足を停めた。


「貴様、何者だ!どうしてこの地を踏み込みこの場所に辿り着いた!」


「・・・・・お前、見ない顔だな?」


「・・・・・何を言っている」


「なるほど、お前。自分の国に不満を持った民間人だな?しかも最近この大陸に来たばかりの。

―――違うか?」


「―――っ!?」


指摘され息を呑む門番。そんな門番に気にしないで一誠は口を開く


「この大陸は他の国から来られるように特殊な隠しルートがある。それは自分の国に不満を持っている人間、

家族に虐待されている人間か捨てられる人間、他にも色々とあるがそんな人間に手紙が届くようになっていて

その内容は『今の境遇から逃れたいのであれば全てを捨てて我が国に参られよ。さすれば、

今以上の幸せを掴む事が出来る』とな」


「・・・・・」


「今の境遇から逃れたい人間がそう思った瞬間、この国に移動できる仕組みだ。

お前、この国に来て幸せか?」


「・・・・・ああ、リストラされた俺が絶望を抱いていた時に手紙が来て俺はこの国に来てから独身だった

俺に彼女ができた。もう少しで俺はその彼女と結婚するんだ」


「そっか」


門番の答えに一誠は嬉しそうに笑んだ。


「で、ここを通してくれるか?」


「ダメだ」


「・・・・・ですよねー」


「此処に入国するルートについて詳しいようだが、此処に来た証拠を見せてもらおう。金色の招待状だ」


「それを見せられないのであれば不法侵入としてお前を―――」


「これでいいか?」


門番の言葉が続かなくなった。それは一誠が背中から金色の翼を展開したからだ。


「「――――」」


その翼を見て門番達は目を見開く。そして自分達が誰と対峙しているのかも顔を蒼白して気付いた。

 ―――刹那


「貴様等、何をしている!」


城壁の上から怒鳴り声が鳴り響いた。一誠と2人の門番はその声に反応して上を向いた。

 黒の長髪をオールバックにして手に幅広い刀を持った赤いチャイナドレスを着込む少女がいた。


「その方はこの大陸を、国を創造した偉大なる創造者でありこの国に入国した

 全ての人間が感謝すべき方だぞ!」


少女が高さ10数メートルから降りてきた。難なく着地して門番に激怒した。その少女の肩を叩いて顔を

 こっちに向かせて首を左右に振った。


「出迎えご苦労様。案内してくれるか?」


「ですが!この者達に処罰を―――!」


「案内、してくれるよな?」


有無を言わせない程、笑顔で一誠はその少女に向けていった。


「う、うん・・・・・」


コクコクと首を縦に振った。一誠は片手で門に触れ押し出す。1人分が通れるぐらいの隙間が開くと

 少女の手を掴み城の中に入った。


「・・・・・まったく、今度から俺だと認識している門番を配備させろよ?お前だろ、配備させたのは」


「は、はい・・・・・」


「今回はお前が直接来たから良かったけど、またあんな事に成ったらお仕置きするぞ」


「お、お仕置き・・・・・」


―――何故か、顔を赤らめて瞳を潤わす。少女が何を考えているのか一誠は考えたくないと話題を変える。


「皆は元気か?」


「はい!妹も他の者も元気です!」


「そうか。それを聞いて安心した。・・・・・それにしても」


「はい?」


「この街に活気が溢れていいな」


夕方になっても関わらず、城壁に囲まれている街に大勢の人間が歩いている。香ばしい匂いを漂わせ道に歩く

人々の食欲を刺激し、おしゃれな服やドレスが展示されている場所に羨望の瞳を向け、物珍しい雑貨を道端に

置いて販売していたり、各世界の状況を街歩く人間達に教える為に色んな場所に大小のモニターが浮かんで

知らせていた。


「それにお前も綺麗になったな。―――春蘭」


「なっ・・・・・!?」


一誠の言葉にカァと顔を赤く染めあげた。春蘭と呼ばれた少女。2人は目の前にそびえ立つ建物の前に近づき

 中に入る。建物中は中国風に創設されているが迷うことなく建物の奥へと進む。


「そういえば、他の皆はどこにいる?」


「それぞれ自分の仕事をしているか休暇の者は街に出歩いているのかと、

 私も今日は休暇で街に出歩いていました」


「だからあんなに早く来ていたのか」


「貴方の気配が感じたので急いで参りました」


建物のとある場所に入るとそこは広い空間で朱に染まった空を眺められ庭のような場所。


「で、俺を此処に案内した理由は・・・・・」


「勝負をしましょう!」


嬉々として幅広い刀を両手で持ち戦意を示す。まるで今までエサをお預けされた犬が主人に許しを

 貰ったような眼差しで一誠に向ける。対して一誠は―――


「はは、いいだろう。久しぶりにお前の力を見せてもらおうか」


両手に神々しい輝きを発する黄金の大剣とドス黒いオーラを纏う漆黒の大剣を交差して口の端を吊り上げて

勝負を受理した。


・・・・・一拍して2人は思いきり地を蹴りだして


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


「はあああああああああああああああああああああっ!」


ガキィィィィィィィィンッ!


剣を交えた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――夜



「(まったく、姉者はどこにいるんだ?そろそろ夕飯の時間だと言うのに・・・・・)」


水色のチャイナドレスを着込む水色の髪にクールな雰囲気を出す少女が建物中、歩き回り人を探していた。


「(今日は華琳と流琉、斗詩、紫苑、他に料理が作るメンバーが既に料理を作り終わって他の皆が卓を囲んで

待っている。なのに、姉者が来ないとは一体・・・・・)」


―――ガキンッ!


不意に、少女の耳に金属同士がぶつかる音が微かに聞こえた。


「(今の音は・・・・・?)」


夜に聞く筈がない音を聞こえ少女は気に成り歩を進める。


ガキンッ!ガキンッ!ギャンッ!ドンッ!ギインッ!


「(誰だ?姉者以外あの場所に揃っている。仮に姉者だとしても姉者相手に

 戦えるのは私が知る限り他には・・・・・)」


そして、金属同士が激しくぶつかる音の発信源に辿り着いた。既に夜に成っている為、辺りは暗闇に支配され

 明りが無い場所で人の目では見え辛い。しかし水色の髪の少女の目は通常の人間の目より良く暗闇から

 金属同士がぶつかる際に火花が散る様子と激しく素早く動いている2人の人物を見つける事が出来た。


「(やはり姉者だったか。それと姉者と戦っているのは・・・・・)」


ガキンッ!


「(―――っ!?)」


火花が散る際、水色の少女が言う姉者という少女と戦っている人物の顔が火花で暗闇から覗けた。

 その人物を見た瞬間、クールな顔が驚愕の顔に一変した。


「い、一誠・・・・・様?」


震える言葉から一誠を呼ぶ。その呟きに一誠と、一誠と戦っていた少女は首を水色の髪の少女に向けた。


「ん?・・・・・・あっ、秋蘭」


「むっ、秋蘭。どうした?」


「・・・・・」


2人の言葉を聞こえていないのか、秋蘭と呼ばれた水色の髪の少女がゆっくりと一誠に近づく。


「一誠様、何時此処に?」


「夕方頃からずっと春蘭と戦っていた。いやー、強くなっているよ。まだまだ俺を倒せないけどな」


「何時か必ず貴方を倒してみせますよ!」


「はは、楽しみにしているよ」


「知らせてくればお迎えに参りましたのに・・・・・」


「たまに顔を出さないとお前等に怒られるからな・・・・・と、もしかして春蘭を探しに来たのか?」


「はい、もう夕食の時間だと言うのに姉者が中々来ないので私が探しに来ていたのです」


「なに、もうそんな時間なのか?気付かなかったぞ」


「そりゃ、あれだけお前は楽しそうに武器を振り回し続けていたからそうだろうな。さて、

 俺も同席していいか?」


「ええ、勿論です。では、行きましょう」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――某室


「遅い」


「遅いねー」


「遅いわ」


いきなり三人の少女が言い放った。それも同時に溜め息を吐いて


「春蘭が中々来ないから秋蘭に頼んで探してもらったのに・・・・・どういうこと?」


「知らないわよ。こっちだって知りたいぐらい」


「お姉ちゃん、食べちゃだめなのかー?」


「お腹空いたよ・・・・・」



「り、鈴々ちゃん。もう少しだけ待ってちょうだい」


「季衣。貴女もよ」


「「はーい・・・・・」」


「ふむ。何か遭ったのでしょうか?」


「あの二人に限って有り得ないわ」


「まったく、あの脳筋には困るわ!何時まで私達を待たせる気なのよ!?」


「桂花。もう少しで秋蘭が連れてくるでしょうから待ちましょう?」


「・・・・・分かりました」


渋々と猫耳フード付きの服を着る少女が従う。―――が、


「―――いや、その必要はない」


「「「―――っ!?」」」


この部屋に男の声が聞こえた。その声に某室にいる数十人が席から立ち上がり警戒する。


「・・・・・誰かしら?」


「・・・・・酷いな。俺の事を忘れたのか?」


―――刹那、何もない空間から黒い穴が開いた。その穴から2人の少女が現れた。


「秋蘭?春蘭?」


「と、俺もだ」


更に1人の男が黒い穴から潜ってきて姿を現わした。その男に全員は目を見開いて驚愕の色を染める。


「あ、貴方・・・・・!」


「あら♪」


「わぁー!お久しぶりです♪」


黒い長髪に漆黒の服を見に包む兵藤一誠が手を上げて挨拶する。


「久しぶりだな、華琳と桃香、雪蓮。それと他の皆。会いに来たぞ」


「「お兄ちゃーん!」」


と、2人の幼女体型の少女が一誠の胸に飛び込んだ。


「おっと、久しぶり。季衣と鈴々」


「にゃー、お兄ちゃんだー♪」


「会いたかったよー!」


赤い髪に虎のヘアピンをつけた少女と桃色の髪を春巻き状に纏め上げた少女を抱き締める。


「悪かったな。夕食の時間を遅らせて」


「本当よ!それに来ているのなら来ているで、私達に知らせなさいよ!」


「いやー、夕方頃には来ていたんだけど春蘭と戦っていた」


「・・・・・春蘭?」


「は、はい!」


「なにか、私達に言うべき事があるわよねぇ・・・・・・?」


「申し訳ございませんでしたぁ!」


ギン!と凄い睨みで華琳と言う金髪のツインテールの少女が睨むと春蘭がその場でゴンッ!と

 地面に頭突きしながら土下座をした。


「まあ、華琳。許してやってくれるか?俺も半分は悪いからよ」


「・・・・・そうね、条件付きで許すわ」


「なんだ?」


「あなた、私の部屋に後で来なさい」


「えー・・・・・」


「嫌なのかしら?」


「優しくしてくれるか?」


「ふふ、さぁ、どうしようかしら?」


「はは、じゃないと―――こっちもそれ相応の行動をしないといけないなぁ?」


トントンと何時の間にか金色のハリセンを叩く。そのハリセンを見て華琳は冷汗を流す。過去に食らった事が

 あるのか身体が密かに震えだして瞑目しながら口を開いた


「・・・・・貴方と春蘭の件は不問にします。」


「ん、華琳は物分かりが良くて優しい少女なのが変わらないようで良かったよ」


よしよしと、抱き締め頭を撫でる。顔を赤く染め恥ずかしいのか一誠の抱擁から逃げるように離れる。


「それ、やめてくれないかしら・・・・・?何時までも私は子供じゃないわよ」


「愛情表現の何がダメなんだ?それに俺から見ればお前達は子供だ」


キョトンと首を傾げる。華琳は深く溜め息を吐いて席に座りだす。


「はぁ・・・・・いいわ。夕食にしましょう。折角の料理が冷めてしまうわ」


「だな。それじゃあ俺は・・・・・」


「此処に座りなさい」


「ん?」


華琳が指を指した場所は華琳自身が座っている席だった。


「お前の上に乗れと?」


「馬鹿、分かって言っているでしょう。私が貴方の膝の上に座るのよ」


「―――ちょっと待ちなさい」


「何かしら?」


桃色の長髪に真紅のチャイナドレスを着た長身の少女が異議ありと言わんばかりに口を開いた。


「一誠は私の席に座ってもらうの」


「それで?雪蓮は地べたに座って食べると言うのかしら?」


「私?私は一誠の膝の上で食べるわ。例え、一誠が地面に座って食べようとしてもね」


「・・・・・貴女、私と張り合う気?」


「あら、私はそんな気はしないけど・・・・・やるならやるわよ?」


「「・・・・・」」


バチバチッ!と2人の間に火花が散る。しかし、天然そうな少女が2人の肩を叩いた事で終わった。


「あの、一誠様が既に座っているよ?」


「「な・・・・・っ!?」」


バッ!と一誠が座っている場所へ視線を向ける。一誠が座っている場所は―――。


「おとーさーん♪」


「はは、瑠々は甘えん坊だなぁ」


「うふふ、そうですね」


魅惑的なボディを持つ女性とその子供らしき幼女を自分の膝の上に座らせて座っている一誠の姿がいた。

 幼女は嬉しそうに一誠に甘える。その光景は父と子供、そしてそれを見守る母のようで

 家族を思わせるものだった。


「・・・・・何時の間に・・・・・!」


「えっと、紫苑さんが連れて行っちゃいました」


「・・・・・漁夫の利を得たという訳ね・・・・・侮れないわ」


悔しそうに手を握り締める華琳と雪蓮に苦笑いを浮かべる少女。


「・・・・・食べましょう」


「ええ、食べましょう」


「はい、食べましょう!お腹が空きましたよ!」


3人の少女は席に座りだし、ようやく夕食の時間が始まった。その後、一誠が風呂に入ろうとすると騒ぎに

なったり、一誠が客室用で就寝しようとすると一誠の部屋に華琳達が入ってきてまた騒ぎになったりと終始、

 賑やかな日で一日が終わった。

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