小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

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六月十日(水)



―――多馬川大橋



「んー、良い風だ」


橋の鉄骨に魔方陣が現れ光と共に一誠がそう開口一番に言う。丁度そこに橋を通る大和達の姿が見えた。

さらに英雄のクローンの義経と弁慶、清楚もいて大和達の遥か後ろに与一が歩いていた。その光景を見て

鉄骨から降りた一誠は大和達の前に現れる。


「おはよう」


「おー、一誠。おはよう」


百代を筆頭に大和達や義経達も挨拶を交わす。


「一誠、摘まみある?」


「とりあえずちくわでいいか?」


「ん、いいよ」


鞄からちくわを取り出し弁慶の口に入れる。モグモグと咀嚼する弁慶は美味しそうに食べてから

川神水を飲む。


「一誠、準備が良いなぁー?」


「四次元ポケットがある某ロボットなら俺の鞄は四次元鞄だからな」


「ははは、それは面白いな!他にも何か出せるか?」


「出せるけどまた今度な」


「えー」


「はいはい、学校に登校するぞ」


と、さり気無く義経の隣で歩いて行く。清楚もさり気無く一誠の隣に移動して歩く。


「ねね、一誠君」


「ん?」


「今週の土曜日に一誠君の家に遊びに行ってもいいかな?」


「あー、あの件か」


「一誠、あの件とは何だ?」


「清楚に俺の家に遊びに来ないかと聞いたんだ。待ちきれないか?」


「うん、迷惑じゃなければ行きたいなーって」


「んー・・・・・分かった。今週の土曜日な?」


「やった!」


「い、一誠・・・・・」


「勿論、義経達も招待するぞ」


「・・・・・!」


嬉しそうに笑顔を浮かべる義経。弁慶も手を上げて感謝の意味を示す。


「一誠、当然・・・・・私達もだよな?」


「そんな怖い顔をしなくてもお前達も俺の家に招待するよ」


「おおー、お兄様の家に行けるんだぁ」


「ククク、イッセーの弱みを握るものがあれば私は探すよ?」


「京以外は招待するとしようかなー」


「ああ〜ん!冗談だよー!」


「ははは、でも、楽しみだね」


「ああ!なんてたって一誠さんの家だもんな!絶対に面白いもんがある筈だ!」


「一誠さんの家か・・・・・興味深い」


「はい、一体どんなお家なのでしょうかね」


「トレーニングルームがあると俺様は嬉しいぜ」


大和達は一誠の家に興味を抱き、一誠の家に行く事を楽しみと笑顔を浮かべる大和達だった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――屋上


「・・・・・」


俺は心地良い風を受けながら屋上の貯水槽の上に寝転がっていた。この場所は誰からも見つからない上に

昼寝に最適のスポット。


「(良い風だ・・・・・こういう風が吹く時にのんびりとするのが一番だな)」


よく屋上に来る俺だけの特等席とも言える場所だ。


「(もう少しで授業が始まるが・・・・・サボるとするか)」


心地良い風を受ける事に授業より最優先だと瞑目して意識を落とそうと―――


「おっ、こんな所で昼寝している男のコはっけーん」


不意に俺の上から少女の声が聞こえた。しかも懐かしい声だった。目をゆっくりと開けると俺の視界に

川神学園の制服を着込み腰に装備品をつけている背中にまで伸びた黒い髪の少女がいた。


「お前は・・・・・」


「・・・・・お久しぶり、旅人さん」


「・・・・・ああ、久しぶりだな。燕」


「―――やっと会えたぁー!」


ガバッ!と寝転がる俺に抱きついてきた。


「ははは、見間違えたなぁ。数年間会わない間にこんなに綺麗に成長したのか」


「旅人さん、見たよ!武神を倒す所を見て私、感動しちゃったよん!」


「おー、やっぱり燕も見ていたか?まあ、当然か。全世界に放送されていたしな」


「ただ者じゃないって思っていたけどまさか武神を倒すなんて凄い!おとんも称賛していたよん!」


「久信さんもか・・・・・。元気にしているか?」


「私もおとんも松永納豆を食べているから何時も元気!」


「あれは美味しいよなぁー。今度また注文するよ」


「ありがとうございまーす!」


「それにしても燕・・・・・その制服は?」


俺が不思議に聞くと立ち上がってクルリと回って口を開いた。


「私も今度この学校に転入する事になっているんだよん。似合っているかな?」


「ああ、とても似合っているよ」


「ふふ、嬉しい♪」


「それで、どうして此処に?」


「散歩がてら、サボリスポット探しているんだよん」


「おお、なるほど」


「・・・・・いいねぇここは。涼しい風が吹いていてさ」


「そうだろ?俺の特等席でもあるんだ。他にも涼しい風が吹く場所やのんびりとできる場所も知っているぞ」


「おー、流石は旅人さん。良い場所を既に熟知しているんだね」


「あと、俺は旅人じゃないから。今の俺は『兵藤一誠』と名乗っている。因み本名だ」


「そっか、じゃあ・・・・・一誠君とこれから呼ぶ事に知るよ」


「ん、これからは宜しくな」


「うん!よろしくね、一誠君!」


ニッコリと明るく笑う燕、この少女の名前は松永燕。俺が旅をしている最中に出会った少女。

とある事情で彼女と彼女の父親を救済したら燕が懐いてきた。


「それじゃ、再会の印に・・・・・じゃじゃーん!松永納豆をあげちゃう!」


「おー、ありがとうな」


松永納豆を貰った。昼に成ったら早速食べよう。


「一誠君、近い内にまた会いに行くからそれまで待っていてね?」


「待っているよ。何時までもな」


「・・・・・ふふ」


「ん?」


「何でもなーい♪」


そう言って貯水槽から降りる燕。


「屋上クリアー。引き続きたんさーく!」


「俺は2−Sにいるからなー!」


軽やかな足取りで行ってしまう燕の背後から俺が所属しているクラスを教える。・・・・・聞こえたかな?


「しかしまぁ・・・・・可愛いくなったなぁー。久信さんも自慢できるだろう」


彼女の父親の顔を思い浮かべ微笑む。


ビュオオオオオオオォォォォォォォッ。


その時、今まで以上に強い風が吹き抜けた。


「んー。決めた。昼休みまでサボろう」


燕との再会に俺は嬉しく思いながら涼しい風が吹く中で寝る事に決めた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――放課後


「さてと、帰るとするかなぁー」


「イッセー♪」


「ユキ?」


「一緒に帰ろー?」


「ああ、良いぞ」


「わはーい♪」


「おー、一誠さんも今帰りか」


「クリス。まだ校内にいたんだな」


「茶道部で茶をご馳走になってたんだ」


「なるほど、茶道は日本の文化の一つだからな」


「ああ、そこですっかり和菓子トークに花が咲いてな。何でも、くず餅パフェというものがあるらしい」


「ああ、あれか。食べたぞ?」


「なに、そうなのか?」


「おう。食べた瞬間、口の中で甘い味が広がって人を幸せにしてくれるデザートだった。くず餅だけでは

なく、そこにパフェを加えるなんて大した発想だよ。あれは間違いなく大人気メニューに成るに違いない」


「「・・・・・」」


クリスとユキの瞳がランランと輝きだした。そんな様子を見せる2人に笑いが込み上げてくるが堪えた。


「なんなら食べに行くか?」


「ああ!食べに行こう!」


「僕も食べるー!」


「あー、一誠さん。俺もいいか?」


「おっ、大和じゃないか?なんだ、食べたいのか?」


「昼食少なめだったから、割と腹が減ってなぁ・・・・・」


俺達の背後からクリス同様に校内に残っていた大和が近づいて来て同行を求めてきた。


「いいぞ。なんなら今回は、特別に俺が奢ってやろう」


「流石は一誠さん!ありがとうございます!」


「わーい♪ありがとぉー」


「自分は自分で払うから大丈夫だ」


「クリス、遠慮するな。特に一誠さんは何かしたり言ったりすると頑固になる。殆どは俺達の為にして

くれる事だから尚更、無化にできないぞ」


「むっ・・・・・」


「そうそう、家族を大切にする思いやりを俺はしたいだけだ。こいつらも後に俺を感謝して

お返しをしてくれるんだからな」


「されっぱなしは嫌だから当然だよ。俺達も一誠さんに何かお礼がしたいんだ」


「・・・・・あーもう、嬉しい事を言ってくれるな」


大和の言葉に感動して頭を撫でてやる。


「・・・・・分かった。ご馳走に成ります」


「そうそう、素直に好意を受け取れ。それじゃ行くとしようか」


ユキとクリスを抱き抱えて大和を翼で掴む。


「なっ・・・・・!?」


「瞬光」


シュンッ!


――――仲見世通り 仲吉


クリスとユキ、大和と川神院前にある『仲吉』の前にもの凄い速さで辿り着いた。(仲吉=クズモチの老舗。

仲見世通りの終点にある)


「到着と」


「おー、早く着いたよー」


「・・・・・新幹線から眺める景色より段違いの速さで景色が次々と変わって行くと思ったら

もう着いてしまったのか・・・・・」


「まだ本気も出していない速度だぞ」


「マジですか・・・・・」


「・・・・・」


「クリス、仲見世通りに着いたぞ」


「はっ・・・・・!」


何故か呆けていたクリスに声を掛けて店に入店する。すると入店した俺の目には準が見たら天国のような

光景が広がっていた。


「おー、紋白も来ていたか。大和、俺が注文してくるから5人分の席を用意しておいてくれ」


「5人・・・・・?」


「紋白も誘うからだ。別にいいだろ?」


「まあ・・・・・良いけど」


「それじゃ、紋白を誘って外の席の確保をよろしく」


そう言ってカウンターに赴いてくず餅パフェを注文して代金を払う。―――数分後


「お待たせしました!くず餅パフェでございます!」


笑顔と共に複数のくず餅パフェを持って来てくれた店員。


「どうも」


ニッコリと感謝する・・・・・何故か顔を赤く染めた。複数のくず餅パフェを乗せたトレーを持って外にいる

大和達の所へ戻る。


「お待たせしました。くず餅パフェでございます」


「あっ、どうも・・・・・って一誠さんか」


「ははは、店員だと思ったか?」


「違和感が全くなかった」


「ま、そういう仕事をした事があるからな」


大和達の前にくず餅パフェを置く。俺は空いている席にコーヒーを置いてもう一つのコーヒーを。


「む・・・・・?」


「奢りだ」


後ろにいるヒュームに渡す。


「・・・・・」


無言で俺からコーヒーを受け取った。


「ん〜、美味しい・・・・・幸せ」


「フハハ、気持ちの良い食べっぷりだ」


「年相応の女の子が見せる顔だなぁー。クリス、口にクリームが付いているぞ」


「あっ!す、すまない。騎士ともあろうものが油断した」


「今は別に騎士じゃなくてもいいんじゃないか?・・・・・ん」


「―――っ!」


クリスの口に付いていたクリームを舐めると甘さが口の中に広がった。


「イッセー、あーんして?」


「ん?あーん」


「ウェーイ♪」


ユキからクリームを掬ったスプーンをこっちに向けてきたからくれるのかと思って口を開けたら、

どうやら悪戯をしたかっただけのようで直ぐにスプーンは、ユキの口の中に入った。


「フハハハ、引っ掛かってしまったようだのう!」


「まったく、やられたよ」


笑う紋白に苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。―――背後にヒュームが口の端を吊り上げていた事も

気づきながら。


「・・・・・のう、イッセー」


「ん?」


「我の悩みを1つ聞いてもらえぬか?」


「いいぞ。言ってみろ」


「甘い物を食べて脳に栄養を与えつつ、我も考えているが・・・・・学生の意見も聞きたくてな。

義経達の件についてだ。あいつら頑張って学校に馴染んでいるが、ギクシャクしてる所もある。

那須与一の問題などでな」


「与一は俺も何とかするつもりだけど最終的には本人次第だからな。その上、時間が必要になる」


「うむ。悩む義経が不憫でな。何とかすると、約束した。で、我は今日閃いたのだ」


「・・・・・英雄のクローンである義経、弁慶、与一との親睦を深める為にパーティを主催しようとか?」


「おお、やはりイッセーも察していたのだな?実はその通りなのだ。宴を開いて、

一気に皆との距離を縮めるのだ」


「所謂、義経達の歓迎パーティだな。いいじゃないか?分かりやすいイベントで」


「で、あろう。更に言うなら、歓迎パーティだけではない。偶然にも義経達3人の誕生日は

6月12日なのだ」


「歓迎会、兼、誕生会だな」


「うむ!与一もこれは嬉しいであろうよ」


紋白の言葉に与一の事を考えると・・・・・、大和を見た。


「ん?」


「・・・・・何でもない」


幼少の頃の大和時に『ふん、別に天才な俺にそんな事をしてもらっても意味がない。何故なら俺は、

既に命を狙われる運命を背負っているからだ』とか言って一度だけ拒否した事が

あったんだよなぁ・・・・・。与一は幼少の頃の大和の生き写しみたいなもんだから

きっと似たような事を言うだろうな・・・・・。


「まあ、俺は賛成するぞ?ユキもそう思うだろう?」


「うん!」


口の周りにクリームを付けながら俺の言葉に肯定した。ああ、ほら。拭いてやるから動くな!


「そうか。此処までは我も心に決めていた。もう1つ意見を聞きたい。主にこれで悩んでいるのだ」


「義経達の歓迎会と誕生日会をする為に必要な場所か?それともパーティの開催に

欠かせない参加者の招集か?」


「前者である」


「んー、6月12日でパーティをしたいけど、それは明後日の金曜日だから誰がどう考えても急だな」


「ただ人を集めるだけなら出来るだろうが・・・・・」


「宴だから、それなりの形は必要だと思うぞ」


「うむ、文化祭レベルの華やかさは欲しいところだ。我が先陣に立とうにも、1年生以外には影響力が無い」


「肝心なのは与一達がいる俺達2年生だ」


「リーダーシップのとれる生徒会長は先日、決闘で負け治療中だしな・・・・・やはり、

この計画は無理か。・・・・・ままならぬものよな」


「・・・・・」


「ふぅ・・・・・」


紋白がアンニュイな溜め息をついた。というか、なに?ヒューム。そんな背後から俺だけ

もの凄い視線を向けて「お前なら紋様の願いを叶える事が容易いであろう」と言う感じで見ないでくれるか?


「2年生にはお兄さんが・・・・・九鬼英雄がいるじゃない」


「兄上は今、仕事が忙しいのだ、流石に頼めぬ。それに・・・・・」


「それに?」


「・・・・・手のかかる妹と、思われたくはない・・・・・」


大和がそう紋白に提案すると紋白が否定した。それも寂しそうな表情で。


「そんな事思う男じゃないでしょ、九鬼英雄は」


「分かっているのだが・・・・・」


紋白はもじもじしていた。


「紋様・・・・・」


「・・・・・はぁ、分かった」


「むっ?」


「一誠さん?」


「紋白、パーティはどうしても学校でやらなきゃダメか?学校にいる生徒だけ呼んで違う

場所でパーティをしてはダメか?」


「それは構わぬが・・・・・どうするつもりだ?」


「―――なに、場所と料理は俺に任せてくれと言いたいんだ。人は・・・・・そうだな、大和、

お前の力でSクラス以外の2年生を呼べるか?Sの方は俺が誘うからさ」


「ああ、それは可能だけど一誠さん。場所と料理は?」


「料理は俺達が作って場所は・・・・・とっておきの場所を用意してやるよ。それも心に残るような場所を」


「・・・・・それは本当にできるのか?」


「じゃなきゃこんな事言わないって」


「おお・・・・・流石は元、九鬼家従者部隊零番隊のイッセーだな」


「「は・・・・・?」」


「零番隊と言うより01番隊だ。な、ヒューム?」


「お前は俺の元、補佐だったがな」


「もう、お前を倒した時点で補佐じゃないだろうが」


「ふん、俺からしてお前は大した赤子―――」


「じゃあ、お前はミジンコだな」


「・・・・・っ!」


ビキッ!とヒュームの額に青筋が浮かんだ。負けず嫌いでプライドが何気に高いお前が

そう言われると怒るよなぁ?


「い、一誠さん・・・・・紋様が言った事は本当なのか?九鬼の従者になっていた事が

あったのか・・・・・?」


「言っただろう?そういう仕事をした事があるって」


「・・・・・」


唖然とする大和。俺はそんな大和に気にせず席から立ち上がる


「さて、俺は帰らせてもらうか。ユキ、帰るぞ」


「分かったぁー!」


「大和、できるだけ多くの人間を集めてくれ。じゃあな」


ユキの腰に回して瞬時で大和達から姿を消した。―――家に戻ったら義経達が喜ぶパーティを

準備しないとな!

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