小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

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兵藤一誠の秘密



「あっ、お姉様!どうだった?ドラゴンと戦って!」


「ああ・・・・・完敗だった」


「なぬっ!モモ先輩でもドラゴンに勝つ事が出来ないのか!?」


「寧ろ、ダメージすら与えられずドラゴンの方が呆れて帰った方だぞ」


「ヒューム、そうなのか?」


「・・・・・はい」


「おやおや、九鬼家従者部隊零番隊のヒュームの攻撃でも効きませんでしたか」


「クラウディオ、お前の言葉に嫌味が含まれているように聞こえるが」


「そんな事はございませんよ」


「実際、2人の攻撃はドラゴンには効かないだろうなと思ってはいた」


「うわ、そんなに強いんだ・・・・・?」


「強いし硬いぞ。・・・・・それじゃ、そろそろあいつ等を呼ぶとしよう」


「えっ、なんで?」


「俺の秘密を知りたくないのか?」


「あ・・・・・」


「今日はその為にこの家に呼んだんだ。お前等は俺の事を知りたがっていたしな」


壁に掛けられているマイクを手に取って口を開いた。


「全員、リビングルームに集まれ。俺の秘密を語る。知りたい奴だけこっちに来い」


「それで、家全体に伝わるのか?」


大和の問いに一誠は頷く。しばらくするとリビングルームの扉が開き冬馬、清楚、京、岳人、翔一、

天衣が入ってきた。


「辰以外の板垣三姉弟は興味がないか・・・・・。まあ、気にしないだろうな」


「それで一誠君。貴方の秘密を教えてくれるんだね?」


「一度しか言わないから良く聞けよ。取り敢えずは座れ、それから話す」


一誠の指示に従い各々と椅子に座る。


「さて、どこから話そうか・・・・・」


「一誠さん」


「なんだ?」


「・・・・・ずっと訊きたかった事だ。姉さんと決闘したあの時、ドラゴンが『この世界』と

言っていたんだけどあれはどう言う事だ?」


「そういえば、私とヒュームさんが戦っていたドラゴンもそう言っていたな」


「あの時か、良く覚えていたな。まあ、その答えを言うと俺は―――別世界から来た人間だ」


「「「「「「「「「「・・・・・はっ?」」」」」」」」」」


「別世界、つまりはパラレルワールドと言った方が分かりやすいか?俺はもう一つの地球からこの世界に来た

人間だ。それが俺、兵藤一誠だ」


「ちょっ、待ってくれ!幾らなんでもそれは無いだろう!?一誠さんが別世界から来た人間って

 有り得ねぇ!」


「岳人、お前の気持ちは分かる。でも俺が別世界から来た人間だと既に証拠を出しているぞ」


「っ!じゃあ、あのドラゴン達や一誠さんが天使だって言うのも全て、

別世界のものだって言うのか・・・・・!?」


「その通りだ。由紀江、お前に渡したエクスカリバーも別世界から持って来た物だ」


「そんな・・・・・」


「というか、お前等は疑わなかったのか?ドラゴンや金色の翼を持つ存在が普通はいる訳無いだろうが。

ましてや、この日本海に巨大な大地をそれも複数浮かばせる技術なんて九鬼家でも絶対にできない事だ」


「そ、それは・・・・・」


「もう一度言うぞ。俺は別世界から来た人間だ。この世界の人間じゃない」


「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」


一誠の言葉に大和達は沈黙する。一誠が別世界の人間だと誰も微塵も思いもしなかった。自分達は一誠の事を

一切知ろうともしなかった。知ろうとしたが一誠が頑にとして話してはくれなかった。まるで知られたく

無かったかのように。だが、弓子のお陰で一誠は自分の秘密を語ってくれると言ってくれた。それが嬉しくて

しょうがなかったが今となっては一誠の秘密を聞いて衝撃を受けた。


「・・・・・」


徐に立ち上がって大天使化に成った一誠。―――次の瞬間、


「禁手」


カッ!


一誠を中心に一瞬の閃光が放った。光が収まる頃にそこにいたのは漆黒の龍を模した全身鎧を身に

包んだ一誠の姿がいた。背中には炎翼が生えていた。


「『不死龍の鎧』これも別世界から来た力の証拠だ」


「・・・・・そっか、一誠さんは本当に別世界から来た人なんだね」


「俺は俺だけどな」


マスクを上げて一誠は呟く。


「でも、それだけじゃないんですよね?」


「ああ、当然だ」


フッと全身鎧を消して席に座る。


「俺はとある組織の『王』だった」


「組織・・・・・?王・・・・・・?」


「名前は幽幻龍騎士団。別名、最強の軍団」


「あはは・・・・・冗談・・・・・じゃないですよね?」


「当り前だ。俺が自分の過去に冗談を言う訳があるかよ。続けるぞ。俺の世界では様々な種族が住んでいた。

それもお前等が知っている架空や空想の生物もいる」


「ユニコーンやペガサス、ケルベロスとかも?」


「そうだ、更に言えば悪魔と天使、堕天使、ヴァンパイア、妖怪、魔法使いも存在して、

様々な神も存在している。様々な力を持つ存在もいた」


「・・・・・信じられないが、お前が言うのであれば事実なんだろうな」


「世界中に存在するもの達の中で俺達が一番強かった。どんな強敵も倒し、他の勢力と友好を結んできた。

今では幽幻龍騎士団を知らない奴はいなくなるほどだった」


「でも、そんな人がどうしてこの世界に・・・・・?」


「・・・・・分からない。突如に現れた謎の穴に吸い込まれてこの世界に飛ばされた。翔一、

お前と初めて会った前の日の事だ」


「なっ・・・・・!?」


翔一が目を大きく見開いて絶句した。


「それからだ。お前と関わって、大和と一子が加わり、岳人と卓也も加わり、京と百代も加わった。ユキ、

冬馬、準を助け、数年後。俺は世界中に旅をした。俺がいた世界に帰る為の手掛かりを見つける為に」


「・・・・・じゃあ、私やおとんを助けたのはそのついで・・・・・?」


「―――違う。あれは紛れもなく俺の本心から来た行動だ。ついでなんかじゃない。

英雄と帝を助けたのも同じだ」


「そう・・・・・」


「結果、帰る為の手掛かりは見つからなかった。そして、俺はある答えを出した。無いのなら作ればいいと」


「・・・・・まさか」


「そのまさかだ。いま、俺がいた世界に帰る為の装置を開発している。まだ、完成してはいないけどな」


「―――イッセー、帰っちゃうの?」


「俺を待っている家族が別世界にいる。何時か俺は帰らないといけない」


「・・・・・」


「弓子、それが今の俺の立場だ。別世界には愛しい仲間や親友、女がいるんだ。だから、

この世界で友人を作ろうが俺は異性と付き合う事ができない」


「・・・・・」


「誰かと付き合って何時か別世界に帰る際に彼女と別れるなんて事は嫌だからだ。なら、作らないでいた方が

お互いの為に―――」


「そんなの・・・・・そんなのイッセー君の身勝手な思いで候!」


「・・・・・」


「確かに、イッセー君が別世界の人間だからその世界にいる貴方が関わっている人達も大切だと

思うで候・・・・・。でも、イッセー君と関わった私達も同じぐらい大切だと思っているので候!」


「ああ、ユミの言う通りだぞ、一誠。一誠に女がいるとは驚いたがそれは違う世界の事で

今の一誠はこの世界にいる」


「同時に俺はこの世界に閉じ込められた籠の中の鳥のような存在だがな」


「っ!?」


英雄が目を見開く。一誠の言葉と以前、一誠の家に訪れた時にドラゴンが言った言葉と酷似していたからだ。


「・・・・・そこまでお前は別世界に帰りたいのか?」


「天衣・・・・・?」


「私や他の者達を置いてお前は帰ってしまうのか・・・・・!?」


「今すぐじゃない。何時かだ。まだ装置も完成してもいない」


「・・・・・ならば、その装置を破壊すればいいのだな?」


「紋白。お前、何を言っている・・・・・。仮に破壊しても無駄だぞ。

破壊された装置は俺の力で直せるからな。こんな風に」


コップを割り、一誠は指を鳴らしたその瞬間、破片化としたコップが割れる前のコップに戻っていく。


「俺は時を操る力も持っている。壊れる前の時間に戻せば何度でもこのコップのように戻せる」


「なんと・・・・・」


「お前がそんな考えをするとはびっくりしたぞ。お前は俺が元の世界に帰る事は反対なのか?」


「・・・・・申し訳ないと思う。本来ならイッセーは故郷に帰っても誰も咎めないだろうが、

我はお前を故郷に帰らせたくないのだ。姉上と兄上の為に・・・・・」


「・・・・・お前等も同じ気持ちか?」


一誠が大和達に問う。言葉を口にしないが全員、首を縦に振った。その仕草を見て一誠は瞑目し

言葉を発した。


「・・・・・分かった」


それだけ言うと席から立ち上がる。


「お前等全員、俺と決闘をしろ。俺が元の世界に帰らせない為の決闘だ」


「「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」」


「決闘の勝利条件を満たせばお前達の勝ちだ。だが、俺が勝ったら俺は元の世界に帰らせてもらう。例え、

お前達が泣こうが喚こうが俺は帰る。それが嫌なら俺と決闘して勝て」


漆黒の全身鎧を纏い、一誠は大和達に向かってそう言い放った。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「ルールは俺をこの円の中から出す事だ。時間は30分。それまで俺はこの円の中で佇んでいる」


家の外で地面に円を描いてその中に入り、大和達に決闘のルールを説明する。参加しないメンバーは家の中に

いて貰っている。


「それじゃあ、決闘の開始だ。どこからでも掛かって来い」


「じゃあ、遠慮なく行かせてもらう!」


百代が先に動いた。拳を握り、全身鎧を着込む一誠に振りかざす。


ボッ!


「・・・・・・!?」


百代の一撃が一誠の体に直撃した。だが、一誠の身体が炎のようになって百代の拳が空ぶる。


「今の俺は不死鳥の能力を持っている状態だ。つまりお前達は炎そのものと相手にしている事になっている。

物理的な攻撃は一切効かない」


「なっ!それ反則だろう!?」


「そんな事を言っている暇があれば攻撃して来い」


ドンッ!


「ぐあっ!」


「今この瞬間でも時間は過ぎているからな」


「・・・・・」


一誠の言動を見て大和は攻略を思案していた。そこに一誠に吹っ飛ばされた百代が体勢を立て直し

大和の隣に寄る。


「大和、どうすればいい!物理的な攻撃が効かないとなると絶望的だぞ!」


「円の外に出せば俺達の勝ちだと言う事が重要・・・・・それには一誠さんを動かさないといけない。

だからどうしても物理的な接触をしないといけなくなるが・・・・・」


「ジェノサイドチェーンソー!」


「足技でも効かないぞ」


鋭い蹴り技でも炎を切ったように一誠の体は揺らめくだけで元に戻る。楊志と史進も1対の青龍等や棒で

攻撃するが空を切るだけでダメージを与える事ができずにいる。一子とクリスも薙刀やレイピアで攻撃を

仕掛ける―――動かすどころか全てダメージすら与えられずにいる。


「あれじゃあ、どうにもならない。まるで本当に炎と戦っているようだ」


「炎なら吹き飛ばせば良い事なんだがな・・・・・。でも今は炎と化となっている一誠だ。

どうやってあいつを・・・・・」


「ハンサムラリアットォォオオオオオオッ!」


「ただのラリアットだろう」


ドゴンッ!


「が・・・・・はっ!?」


「出直してこい」


「九鬼家決戦奥義、古龍昇天破!」


「俺に物理攻撃は効かないとは分からないか?」


「くっ・・・・・!水に拳を突っ込んだような感じで身体に当らない!」


「残り、20分」


「一誠君!」


燕が突貫して飛び蹴りを放つ。一誠は身体を横にして燕の攻撃を避ける際に―――」


「隙だらけだぞ」


手刀で燕の体に叩きつけそのまま地面にぶつけボールを蹴るように燕を蹴り飛ばした


「っ〜〜〜!」


「参ります!」


「由紀江か」


「はぁあああああああああっ!」


「義経も来たか。―――なら」


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


「迎撃だ」


地面から膨大な質量の火柱が出てきた。その火柱は次々と現れ大和達の所にまで発生する。

義経と由紀江は紙一重で火柱から回避し続けていくが、一誠から離されていく。


「くっ!これが一誠の力だと言うのか!?」


「おいおい、俺はまだほんの一部しか出していないぞ。これで俺の本気だと思わないでくれよ」


「なら貴様は、俺と戦った時はどのぐらいの力を出していた」


「俺の拳の一撃で負けたお前に本気になる訳が無いだろう」


「――――――」


一誠の答えがヒュームの逆鱗に触れたのか、殺す勢いで猛攻を始めた。


「・・・・・俺には物理攻撃は効かないって何度言えば分かる?」


人差し指を掬い上げるように動かした瞬間、ヒュームの真下から火柱が出てきてそのまま飲みこんだ。


「ヒューム!」


「ヒュームさん!」


「そら、炎嵐」


ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


炎の嵐が発生した。嵐は渦巻きながら百代達に近づく。


「川神流・大爆発!」


ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


炎の嵐に突っ込んで自分を中心に爆発を巻き起こした。その行動に炎の嵐は爆発の衝撃波で吹き飛んだ。


「―――瞬間回復」


「へぇ・・・・・初めて見る技だな。気でダメージを回復する技・・・・・。それに自分を中心に

大爆発を起こす・・・・・うん、『覚えた』」


「・・・・・なんだと?」


「―――超大爆発」


ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!


一誠を中心に巨大な大爆発が発生した。百代以上の大爆発で成す術もなく百代達は巻き込まれた。


「がはっ・・・・・!」


「ぐっ・・・・・!」



爆発の影響で煙が発生してしばらくしたら煙が晴れて一誠達の姿が見えてきた。悠然と立つ一誠の他に立って

いるのは。百代、揚羽、天衣、燕、由紀江、ヒューム、林冲、楊志だけだったが百代以外はボロボロだった。


「も、百代ちゃんの技を見ただけで使えるなんて・・・・・」


「まるで、楊志のようだ・・・・・」


「覚えたけど使う気はないね。自分までダメージを負うんだから尚更だよ」


「百代以外は満身創痍状態だな・・・・・・降参するか?楊志に至っては殆ど気が無い状態だ。

百代の瞬間回復を見ていたから、コピーして使ったな?」


「なっ・・・・・!私の技をコピーしたというのか!?」


「楊志は相手の技を見ただけでコピーが出来て自分も使えるようになる能力があるんだ」


「迂闊だった・・・・・それじゃあ、私の他に揚羽さん達の技も見ていたからコピーしていたという訳だな」


「そーいうことだね。でも、どれもこれも一誠に敵う技じゃないから使わないけど・・・・・瞬間回復って

結構、気を使うんだね・・・・・もう、殆どない」


「さて、残りは10分を切ったぞ」


「・・・・・っ!?」


「まずい、大和はさっきの爆発で気を失っている。あいつに勝利するための作戦が・・・・・!」


「―――作戦なら風が考えましょうかぁ〜?」


「・・・・・えっ?」


「なっ・・・・・!」


突如現れたペロペロキャンディーを口に含み頭に彫像の様な物を乗せている腰まで伸びているベージュの髪の

持ち主の小さな女の子。その女の子に一誠は目を見開く。


「だ、誰・・・・・?さっきまでいなかったよね・・・・・?」


「初めまして、風は風と言います。作戦を考える事が得意なので力をお貸ししましょう〜」


「風、余計な事をするな!これは俺とこいつらの問題だぞ!」


「お兄さんに用事があって参ったのですが家の中にはいないようでしたので外に出たらこの状況・・・・・。

何やら困っているようなのでお助けをと思いまして〜」


「おい、聞いているのか・・・・・・」


「ではでは、お兄さんをあの円の中から出せば良いんですねぇ〜?」


「あ、ああ・・・・・」


「ふむ・・・・・では・・・・・この通りに行動して下さい」


風という少女がポケットから出したメモ帳とペンを出して作戦内容を書いて百代に渡す。その内容を見て

百代は怪訝な顔をする。


「おい、この作戦で本当に勝てるのか?」


「ふふふ、お兄さんを出したら勝利ならそれでも十分なのですよ〜。ですが、お兄さんと戦うのなら複数で

行ってください。勝率がぐんと上がりますよ〜」


「・・・・・分かった」


「ちっ、余計な事を・・・・・」


隠しもせずに一誠が舌打ちをした。勝てる決闘が圧倒的に不利な状況になってしまったのだ。それほど風と

いう少女の知力は一誠が認めるほどのもの。その間、百代は未だに立っている揚羽達にもメモを見せていた。


「なるほど・・・・・この手があったね」


「我等は何故、気付かなかったのだ・・・・・」


「で、でも。このやり方で勝つなんて・・・・・」


「まゆまゆ、一誠と永遠の別れに成りたいのか?」


「いえ、それは絶対に嫌です」


「なら、これで行こう。・・・・・ヒューム」


「はっ、お任せください」


「私も行こう」


そう言って天衣とヒュームは瞬時で移動して一誠に激しく攻撃を仕掛ける。

対して一誠は受け身のままで話し掛ける。


「で、俺に勝つ方法を教えてもらったようだから俺にも教えてくれないか?」


「ふん、なら再び従者部隊に戻れ」


「絶対にお断りだ!」


拳をヒュームの顎に素早く打ち上げた。地面から浮くヒュームにその場で回転して遠心力を乗せた肘打ちが

腹部に直撃する。


「ぐふっ・・・・・!」


「はっ!」


「ふっ!」


速さが乗った拳を片手で受け止めたまま自分の方へ引き寄せてもう片方の拳を天衣の腹部に強く突き刺した。


「がっ・・・・・!?」


「―――残り3分」


「「「「「「はああああああああああああああっ!」」」」」」


ヒュームが吹っ飛ばされ、天衣は一誠の拳の一撃で気を失って地面に倒れ込む様子を見て残り時間を

呟いていたら百代達が突貫した。


「最後の悪あがきと言う訳か・・・・・?」


炎翼から膨大な熱量を持った炎の波が発生して津波のように百代達を飲み込まんとばかりに襲いかかった。


「川神流・畳返し!」


百代は拳を地面に突き付け地面をひっぺ返して壁にした。炎の津波は地面の壁にぶつかって一誠の攻撃を免れた。


「一誠君!」


「一誠!」


炎の津波が収まると瞬時で燕と林冲は拳と槍で前から攻撃を仕掛ける。揚羽と由紀江が左右から拳と刀で

攻撃を仕掛ける。


「・・・・・あのなぁ。だから俺には物理的な攻撃は効かないって―――」


「なら、これならどうだ!」


「ん?」


「はっ!」


揚羽が拳を地面に突き刺した。その行動に3人から攻撃を受けながらも首を傾げる。


「せやっ!」


不意に由紀江は刀を一誠じゃなく地面に突き刺した。その行動に一誠は―――。


「・・・・・おい、まさか・・・・・」


「ああ、そのまさかだ!」


揚羽の不敵な笑みを見た瞬間に気づいた。


「させるか!」


自分を中心に衝撃波が発生して揚羽達を吹き飛ばす。―――が、残りの2人がいない事に周囲を探すと直ぐに

居場所が分かった。


「「はぁ!」」


真っ直ぐと駆け走ってきている百代と一対の青龍刀を持つ楊志。そんな二人に炎翼を羽ばたかせ

攻撃しようとするが―――。


「―――」


「っ!?」


「はああああああああああああああああああっ!」


金色の刀を振り払った由紀江。金色のオーラが奔流と化となって一誠を飲み込む。


「くっ・・・・・!?」


激しく由紀江の攻撃を受け、円の中から出されないように両足を地面に強く踏みしめる。


「川神流―――」


「っ!」


「「畳返し!」」


その間に百代と楊志が金色の奔流と化となっているオーラに飛びこみ攻撃を受けながらも一誠に近づいて拳を

地面に突き刺して地面をひっぺ返した。百代と楊志が地面を突き刺した場所は丁度、揚羽と由紀江が拳と刀で

突き刺した場所であり2人がひっぺ返した地面は一誠の足下の地面だった。地面が横にひっぺ返されてしまい

一誠はバランスを崩して由紀江の攻撃に―――円の中から吹っ飛ばされた。


「・・・・・29分49秒。貴様の負けだ」


地面に横たわったままのヒュームの呟きに百代達は歓喜した。一拍して由紀江の攻撃で吹っ飛ばされた一誠が

百代達の方へ近づく。


「・・・・・はぁ、風のお陰で俺は負けちまったじゃねぇか」


「くふふ、それはごめんなさいですよ?」


「まぁ・・・・・、ルールがルールだ。・・・・・お前達の勝ちだ」


「・・・・・お前は、悔しそうな顔をするのだな」


「当り前だろう。俺は元の世界に帰れなくなった上に仲間達と再会が果たせなくなったんだからな」


「「「「「・・・・・」」」」」


その言葉に百代達の心に深く突き刺さった。一誠と別れたくないが為に一誠と決闘して勝利したが同時に

自分達が勝った所為で一誠が会いたかった仲間と二度と会えなくしてしまったからだ。―――自分達の

身勝手な行動で一誠を悲しい思いを抱かせてしまった。本当にこれで良かったのかと、懸念を抱く。


「・・・・・風はもしかして、お兄さんに悲しい事をしてしまいましたか?」


「お前が気にする事じゃない。それで、用事があると言っていたがなんだ?」


「はい。もう直ぐあの日ですのでそのお知らせをしに来ましたのですよ」


「ああ、建国記念日か。分かった。必ず顔を出すと言ってくれ」


「はいなのですよ〜。それじゃ、またお会いしましょう」


風はペコリと頭を下げて一誠の家の中に入って行った。


「・・・・・貴様、まだ何か隠している事があるな?」


「そうだな。まだ隠している事がある。だが、それはどうでもいい事だ。・・・・・家の中に戻るぞ」


「あっ、一誠さん・・・・・」


「今日は遊ぶんだろう?なら、家にあるゲームやカードゲームでも遊んで楽しもう」


燕が呼ぶ声を聞こえていないのかスタスタと家の中に戻って行った。


「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」


一誠がいなくなり場が静寂に包まれた。


「・・・・・なんか、一誠さんの態度が少し変わったね」


「私達は・・・・・間違ったのか?」


「一誠・・・・・」


何時までも外にいる訳にも行かないと百代達は気絶した大和達を担いで家の中に戻った。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――夜 九鬼財閥極東本部



「「「・・・・・」」」


数時間後。一誠の家から戻った揚羽、英雄、紋白が母の局と夕食をしていた。だが、カチャカチャと

食器同士がぶつかる音しかしない食事だった。そんな最中、局が三人に話し掛けた。


「お前達、一誠殿の家に遊びに行ったのだろう?どうだったのだ。楽しかったか?」


「・・・・・うむ。楽しかったですぞ」


「はい・・・・・」


「揚羽、お前はどうだ?」


「楽しいといえば楽しかったです。ですが・・・・・」


言葉を濁す揚羽に局は静かに次の言葉を出るまで耳を傾ける。


「我は一誠の想いを踏みにじった事を思うと心が苦しいのです」


「・・・・・どういうことだ?一誠殿の想いを踏みにじったというのは」


「その事については私、クラウディオがご説明を」


と、自ら買って出たクラウディオが一誠の家で起きた事を全て話した。話しを聞き終わると

局が溜め息を吐いた。


「・・・・・一誠殿が別世界から来た人間だとは・・・・・だが、そう考えると色々と納得がする。

―――しかしだ、一誠殿の故をお前が、我等の恩人の大望をお前が自らの手で握りつぶしたという事実に我は

悲しい・・・・・。恩を仇で返したなどとお前は九鬼家の名に泥を塗った九鬼家始まって

以来の恥さらしである」


「・・・・・」


「一誠殿に好意を抱いているお前の気持ちは分からない訳ではない。永遠の別れをしたくないが為に

お前は一誠殿を自分の我儘の為に―――」


「失礼ながら、申し上げます。今回の事に関しては元、九鬼家従者部隊01番隊の兵藤一誠から

提案した事です。そして、同意の上で揚羽様と俺は他の者達と共に決闘をしました。ですから―――」


「ヒューム。我は今、娘と話しておるのだ。お前は黙っていろ」


「・・・・・は」


局の指示に従い、口を閉ざすヒューム。


「揚羽よ」


「はい・・・・・」


「お互い同意の上でも一誠殿の帰郷を阻止したのだ。一誠殿に謝罪はしたのだろうな?」


「・・・・・いいえ」


「・・・・・」


揚羽の言葉に沈黙する局。無言で揚羽を見詰めて一拍。


「揚羽よ」


「はい」


「お前は今日より九鬼の名を名乗る事を禁ずる」


「「っ―――!?」」


「・・・・・」


「帝様と英雄の命の恩人に謝罪も何もしていないとは・・・・・そのような者に九鬼の名を名乗らす事など

断じて許し難い。九鬼家軍事部門統括の地位も剥奪する」


「は、母上!お待ちくだされ!幾らなんでもそれは酷過ぎると思いますぞ!」


「そ、そうでございます!それに姉上だけではありません!我もイッセーの帰郷に反対しましたし元々の

発端の原因は我でございます!姉上をどうか・・・・・どうか、お許しくだされ!」


「我は九鬼の名を禁ずるだけであり捨てろとまでは言わない。帝様が九鬼の名を捨て路頭に彷徨う

お前を知れば悲しまれる故にこれが我の最大の譲歩である」


「「母上!」」


「・・・・・よい、英雄、紋。母上の言う通り我は愚かな事をした。九鬼家の名に泥を塗った恥さらしだ」


揚羽は席から静かに立ち上がる。そして、局に身体を向け


「―――長い間、我を育ててくれた事を誠に感謝します」


深々と頭を下げた。


「・・・・・何処にでも好きに行くがいい」


それが局と揚羽の最後の言葉の交わし合いだった。


「・・・・・さらばだ。英雄・・・・・紋・・・・・・」


「「姉上ぇ!」」


英雄と紋白は引き止めようと席から立ち上がり揚羽に駆け出すが先に扉を開け部屋から出ていく揚羽の方が

早かった。扉を開け放ち揚羽の姿を探すが左右に首を動かしても姿も、影も無かった。


「母上!これはあんまりですぞ!」


「英雄、九鬼家の名を守るためにはこうするしかないのだ」


「母上は家族より名を大事なのですか!?」


「全ては帝様の為である」


「―――我はいま、初めて母上に怒りを感じましたぞ・・・・・!」


実の母に怒りを露わにし、睨みつける英雄。尊敬する姉を、敬愛する姉を、自分の誇りである姉を

追い出す形にした局に英雄は拳を強く握りしめ声を震わす。


「ヒューム!直ぐに姉上を捜索するのだ!」


「クラウディオ、お前も姉上の捜索を―――!」


「・・・・・申し訳ございませんがそれは出来かねます」


「な、何故だ!?」


ヒュームが揚羽の捜索に従わない事に驚愕の色を染めながら問いだす紋白。更に―――


「英雄様、私もです」


「っ・・・・・!?」


クラウディオも拒否した。その理由は何だと英雄は口を開くとヒュームが先に口を開いた。


「奥方様は揚羽様にチャンスを与えているのです」


「チャンス・・・・・だと?」


「はい、そのチャンスを揚羽様が掴み見事に成し遂げれば直ぐにでもお戻りに成りますよ」


「それは一体・・・・・」


「その答えは私達でも分かりません。ですが、揚羽様自ら答えを導き得なければなりません。

私達はただ待つのみでございます」


クラウディの笑みと共に発せられた言葉を聞いて英雄と紋白は当惑する。


―――某室


「必要な物は全て揃えた・・・・・」


自分の部屋に戻り、トロリーバッグに衣類や小道具など必要な物を全て詰め込んで準備を済ませていた。


「今夜は何処かのホテルで就寝であろう」


取っ手を握り部屋から出て廊下を歩き玄関に赴く。


「・・・・・揚羽様」


「あずみか」


玄関に差し掛かるとそこに英雄のメイドである忍足あずみが佇んでいた。


「・・・・・やはり、お出になられるのですか?」


「今の我は九鬼ではない。ただの揚羽と言う女だ。何時までもここにいる訳にもいくまい」


「どうにかなられないのですか・・・・・?局様は勢いで言った訳ではない事は御理解しています」


「・・・・・」


首を横に振る。揚羽はあずみの肩をポンと手を置く。


「弟を、英雄を頼んだぞ」


「・・・・・はい」


「うむ。お前なら安心だ。ではな・・・・・」


ガラガラとトロリーバッグの車輪を転がして真っ暗な闇の中へと姿を消した。


「・・・・・お前なら、この状況を何とかできねぇのか」


ジッと揚羽が消えた暗闇に見詰めて此処にいない誰かにあずみは助けを求めるような言葉を小さく呟いた。




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