小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>






六月二十日(土)



―――グラウンド


「姉上ぇー!」


「紋!」


一誠に呼ばれたメンバーが川神学園のグラウンドに集結する。最後に来た紋白と英雄、

ヒュームとクラウディオがやってきた。紋白が揚羽に抱きつく光景を見て一誠は頷く。


「これで全員だな」


「おうよ!一誠さん、さっさと祭りに行こうぜ!」


「その前にお前達に渡しておくものがある」


一誠がそう言うと大和達の目の前に小型の魔方陣が発現して腕輪のような物が光と共に出てきた。


「これから行く場所は広いところだから仮に道に迷った時の為の装置だ。腕輪のこのボタンを押して誰かの

名前を言えば瞬時でそいつの場所に行くように作った」


「おお・・・・・是非とも商業を総べる我にとっては生産したい物だ」


「最後に返してもらうからダメだ。ほら、腕に付けろ。終ったら直ぐに行くからな」


皆に促して腕輪を嵌めさせる。全員が腕輪を腕に装着し終わると一誠は足下から大和達の足下まで届く程の

魔方陣を展開して祭りが行われている場所へ移動する。


―――日本海 下層の大陸


大陸にある煉瓦と岩でできた城壁から離れた場所で魔方陣と共に現れた。魔方陣は光を一瞬だけ強く放って

一誠達を現わした。


「此処は・・・・・?」


「周りを見渡すと大地で目の前には城壁が見えるな。それも中国風だ」


「此処は日本海にある大陸だ。俺の力で大陸を隠している。この大陸の存在を知っているのは俺の家に

住んでいる揚羽以外の奴等のみだ。でも、一度も来た事は無いけどな」


「大陸って・・・・・どんだけ凄い物を創っているんですか、貴方は・・・・・」


「ははは、照れるなぁ。さて、行くとしようか」


一誠の先導の許に大和達は城壁にある城門へ歩を進める。近づくにつれ、城壁の上や城門に複数の

人間がいる事に気づく。


「ん、守りはいるな。そこの所はぬかりないようで安心だ」


「止まれ!」


「・・・・・また俺の事を認識していない奴を配備させた事以外ではな」


門番に重火器、あるいは武器で突き付けられその場に呆れながら足を停めた。門番が一誠達に近づき顔を

見ると慌てて銃を下げて敬礼した。


「ひょ、兵藤様!申し訳ございません!」


「ん?・・・・・あっ、この前の門番か?久しぶり。彼女とはどうだ?」


「はい!無事に結婚できました!」


「そっか、それは良かった。幸せな家庭を築くんだぞ?」


「はい!妻を幸せにして温かい家庭にしますよ!」


「うん、お前なら出来る。今日は建国記念日だから祭りだろう?俺達は祭りに来たから通してくれるか?」


「はっ!」


門番が一誠の指示に従い無線で開けるように指示を出すと巨大な門が重い音を立てて開いていった。


「どうぞ!楽しんでいってらっしゃいませ!」


「ああ、お前も休暇が取れたのなら祭りに行けよ」


門が開く最中に一誠は歩を進める。大和達は慌てて一誠に続いて歩を進め―――門の向こう側に入った。


「・・・・・凄い」


「おお・・・・・!」


「これは・・・・・」


「なんという・・・・・」


大和達が城内の光景を見て感嘆の声を上げる。全員の視界には様々な屋台や道路らしき道に華やかな衣装を

身に付けた大勢の男女がパレードをしていてそれを見る為に大勢の男女の群衆が佇んでいた。


「すげぇ!はは、なんだよこれ!」


「うん、風鈴市でやる祭り以上だよ。この祭りの規模は」


「良いお姉ちゃんがいっぱいるなー!」


「これ全部・・・・・この大陸に住んでいる人達・・・・・?」


「そうだ。様々な国から来た人間だ」


「皆、楽しそうな笑顔をしているで候」


「この大陸に五万人が住んでいる小さい独立の国だが他の国に負けない賑やかな国だと俺は自慢に

思っている」


パチンッ!


指を一誠が成らすとまた大和達の目の前に魔方陣が現れて今度は札束が出てきた。


「この祭りに使うと良い。今回は俺からのプレゼントだ。建国記念日で行う祭りは

今日と明日の夜12時まで行う。それまで存分に楽しむと良い」


「一誠さん!太っ腹ぁ!」


「大和からたかろうと思っていたが一誠が出してくれたお陰で思う存分に楽しめるぞ!」


「一誠さん・・・・・本当に感謝します」


「それじゃあ、予定を言うぞ。夜の6時まで自由行動。俺に用事があるのならグラウンドで教えて機能を

使って俺の所に来い。若しくは腕輪にもう一つ付いている通話機能のボタンを押して俺か他の皆と会話だ」


「一誠、武闘会は何時やるんだ?私はそれが楽しみでしょうがないんだ」


「夜の6時だ。それまで祭りを楽しんで来い。因みにお前等が泊まる場所はホテルだから」


「それはどこにあるの?」


「今から俺はそのホテルに向かうんだ。その間に祭りを楽しめって言うのはそう言う事だ」


「お前はどうするのだ?」


「俺はやる事があるからそれが終わるまで祭りに参加しない。お前達だけで祭りを楽しめ。じゃあな」


ヒュンッ!


「あっ、一誠君!・・・・・行っちゃった」


「しょうがない、私達だけで祭りを楽しもう」


「姉上!兄上!一緒に祭りを楽しみましょうぞ!」


「うむ。よかろう」


「であるな。我も英雄も紋も3人で祭りを楽しむのはこれが初めてだからな。思う存分に楽しもうぞ」


「フハハハ!ヒュームもクラウディオも好きに行動をするがいい!我は兄上と姉上と共に祭りを楽しむ!」


「では、そうさせていただきます」


「何かありましたのなら直ぐにお呼びください」


「お姉様!一緒に行きましょうよ!」


「マルさん!自分も一緒に行こう!」


各々とペアを組むか単独で祭りを楽しむメンバーが決まって全員は散らばって行動を起こす。一方、大和達

から離れた一誠は城内の中央にそびえ立つ建物の中に移動していた。とある扉を開けると部屋の中には数人の

少女達が忙しそうにパソコンと対峙してキーボードを操作していたり、書類にハンコを押していた。


「お前等、来たぞ」


「あっ、一誠様!」


「お、お待ちしておりました〜」


「随分と忙しそうだな」


「毎年の事ですから慣れましたけど、それでも大変ですよ」


「はい〜、風も寝る暇もないですよ〜」


「寝たら鼻にワサビを塗ってあげるから心配するな」


「むー、お兄さんは酷い人です」


「さて、俺も手伝おう。重要な書類持って来てくれ。あと、見て欲しいものもあればそれも全て持ってこい」


6対12枚の金色の翼を展開して一誠は少女達に向かって言うと山のような束の書類を次々と持って来た。

それを見て呟く。


「今回はこの量か・・・・・数十分はかかりそうだな」


「おや、何か用事でも?」


「ああ、俺の友人達をこの祭りに連れてきたんだ。だから成るべく早く終わらせたいからな」


「そうですか、私達も出来る限りお手伝いしますので」


「よろしく頼む」


そう言って最初の1枚の書類を手に取って―――瞬時でハンコを押した。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――北地区


「ふんふんふ〜ん♪」


「お姉様、ご機嫌ね?」


「だって、一誠から札束を貰って嬉しいだもん♪それに、周りは極上の美女が一杯だ!」


「それに、警備している人が武器を持っているわ。ここは武器を持っても良いのかしら?」


「一誠が創った大陸なんだ。いいんじゃないのか?」


「でも、日本じゃあ銃刀法違反になるでしょ?」


一子の疑問に百代も理解している。だが、ここは日本ではなく一誠が創った大陸。つまりは一誠の国だ。

さっきも独立の国と言っていたし非加盟国の国だと百代は理解していた。


「すまない、そこの者よ」


「うん?・・・・・っ!」


「この辺りに赤毛の小さな少女を見掛けなかったか?」


百代の背後から声を掛けてきた人物は美しい黒い長髪をサイドテールに結び、肩を露出させ制服のような

服からでも分かる豊満な胸で黒いスカートを穿き手には龍を模した青龍偃月刀を持つ少女。百代はその少女の

美しさに見惚れて―――


「私は3年の川神百代だ。よろしくな」


自己紹介をした。対していきなりの自己紹介に呆然としたが気を取り直して少女も名乗りを上げた。


「私は愛紗という。ところでこの辺りに赤毛の少女を見なかったか?途中で逸れてしまったのだ」


「いや、見てはいないが。ワン子、お前は?」


「ううん、見てないわ」


「そうか。楽しんでいる所を邪魔してすまなかった。では・・・・・」


「ああ・・・・・」


「・・・・・全く、今日は建国記念日だから警備をしないといけないというのにあいつは・・・・・。

これでは一誠様に申し訳ないではないか」


「「―――っ!?」」


去っていく愛紗の口から一誠の言葉が聞こえた。それに驚愕する2人だが愛紗は人混みの中へと器用に

すり抜けてゆきながら2人から遠ざかった。


「ワン子・・・・・」


「うん・・・・・あの愛紗って言う人・・・・・強いわ。悔しいけど私よりも・・・・・」


「しかも青龍刀・・・・・いや、あれは青龍偃月刀だった。昔の中国が使用していた武器と同じだ」


「ええ、もしかするとこの国にあの人みたいな人が他にもいるかもよ・・・・・」


「――――ははっ!一誠に関わっている人はどいつもこいつも強敵ばかりだな!

あー、早く戦ってみたいぞ!」


百代は深い笑みを浮かべ待ち遠しいといわんばかりに手に持っていたピーチジュースの缶を握り潰した。


「ぎゃー!アタシの服にー!」


「あっ!私のピーチジュースが!」


―――南地区


「いろんな国の店がありますね」


「本当だねー」


「一体どうやって五万人という人数を集めたんだ?」


「それは気に成りますが今は祭りを楽しみましょう。それに美しい女性が選り取り見取りですよ!」


「トーマははしゃいでいるねー」


「まあ、確かに綺麗な女性はいるけど俺は幼女しか興味ないね!」


「この男もはしゃいじゃって・・・・・」


『ただいまより、北地区で男の子の部と女の子の部のマラソンをします。最初は女の子の部のマラソンを

始めます。ご家族の方はゴール地点に移動して下さい。見物する一般の皆さんは応援をよろしく

お願いします。繰り返します―――』


「なぬっ!?どこだ!幼女がマラソンする場所はぁー!?お兄ちゃんが応援するぞぉー!!!!!」


ドドドドドドドドドッ!


「・・・・・あー、行っちゃったねー」


「ははは、準は相変わらずですね」


『西地区で今年のミス・コンテストを行います。ミス・コンテストに参加する女性の美の審査員を今から

30分間まで応募します。受け付けは西地区の―――』


「―――ユキ、西地区に行きましょう」


「えー、準はー?」


「準なら大丈夫です。仮に迷子に成ったらこの腕輪で来るでしょう」


「うーん・・・・・分かった」


「では行きましょう。美しい女性が集まる場所へ!」


「はぁ・・・・・」


―――西地区


「姉上!是非、ミス・コンテストに出られてください!」


「絶対に姉上が今年のミス・コンテストに選ばれますぞ!」


「いや、我はこういうものは興味など無いんだが・・・・・」


「ですが見て下さい!ミス・コンテストに選ばれた者は優勝カップの他にこの街の中にいる男性を1人だけ

選び口づけをするシステムですぞ!」


「これは義兄上にも適用されます!義兄上もこの街の何処かにおりますので姉上はその権利を獲得する

チャンスがございます!」


「むっ・・・・・」


「その瞬間を我は写真を収めて母上に見せます!きっと母上は写真を見て許してくれると思いますぞ!」


「だが、それだけで母上が許すとは・・・・・」


「失礼ながら私が先ほど受付で揚羽様の参加を記入してきました」


「なっ、なんて事を・・・・・!クラウディオ。お前は、我に恥かかせたいのか・・・・・!」


「いえいえ、揚羽様なら今年のミス・コンテストに選ばれると信じておりますので」


「時間がないですので直ぐに会場に向かってください」


「ヒューム、お前まで・・・・・」


四面楚歌。揚羽は逃げ道がないと知り、諦めて参加者が集う場所へと重い足取りで赴く。


「(まったく、我が出たところで優勝する訳がなかろう・・・・・)」


ミス・コンテストに出る為に渡される参加者の番号を受け取り、スタッフに案内された建物の中には大勢の

美少女、美女、美人の少女や女性が己の美を更に見せる為に用意されている様々な服やドレス、着物を手に

取って鏡の前で合うかどうか確認していた。


「(むぅ。やはりミス・コンテストに優勝したい者が大勢いるのだな)」


自分の意志とは関係なく、強引に参加させられた自分と自分から望んで参加した少女や女性達との違いが

明らかだった。すると、女性達の声が揚羽の耳に届いた。


「私、優勝したら兵藤様を指定するわ!」


「わっ、凄い人を選ぶんだね」


「だって、一目惚れしちゃって・・・・・私の初恋の人だもの」


「そうなんだ。でも、この大陸の創造主だから口づけなんて出来るのかな?」


「出来なかったらお姫様抱っこしてもらって写真を取ってもらう!」


「うん、それならできそうだね。私もそうしよう!」


「(・・・・・やはり、一誠は人気があるのだな・・・・・)」


不意に一誠が自分以外の、それも見知らぬ女性や少女とキスをする光景を思い浮かべた。


「(それだけは許さん・・・・・!一誠は、一誠は我の夫と成る男だ!どこぞの馬の骨も知らぬ女とキス

なぞさせる訳にはいかぬ!・・・・・興味は無かったが、何が何でもこのイベントを優勝するぞ!)」


全ては一誠の為にと優勝する決意の炎を燃やして揚羽は用意されている衣装を手に取った―――。


―――ミス・コンテスト会場席


「おや、英雄ではないですか」


「我が友、トーマ。やはりお前も来たか」


「ええ、そうです。ですが、珍しいですね?英雄がミス・コンテストにいるとは・・・・・川神一子さんは

諦めたのですか?」


「フハハハ、我は諦めんよ!一子殿を我に振り向かせるまでは!で、我が此処にいる理由は姉上が

参加しているのだ。我は姉上の応援と言う訳である」


「そうなんですか。それでは、私も応援をしましょう」


「それは心強い」


数分後、ステージに司会者が現れてミス・コンテストが始まった。ミス・コンテストに参加した人数は

37人。中央のステージにまで歩き己の美をアピールして観客に見せつけていく。


「ふむ・・・・・迷いますね・・・・・」


「色んな人がいて凄いねー」


「姉上はまだか・・・・・」


次々と現れる参加者だが、未だに揚羽が出て来なかった。そして、37人目がステージに現れた。


「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」


37人目は揚羽だった。揚羽の登場に会場は沈黙した。―――額に×印がある傷を見せる為に髪を上げていた

髪を前に下げて額の傷を隠し、純白のウェディングドレスを着込んでいた。


「・・・・・ユキ、一誠さんを呼んでください」


「うん!」


揚羽に見惚れる冬馬が一誠を呼ぶよう小雪に指示を出す。少しして、会場に1つの魔方陣が出現して光と共に

一誠が登場した。


「俺に何か用か?いま、仕事をしていたところだったんだが」


「義兄上よ。あれを御覧くだされ」


「・・・・・揚・・・・・羽・・・・・・?」


英雄の指さす方角に見ると純白のウェディングドレスを着込んだ揚羽に呆気にとられる。そして、審査員

として参加した一般人の観客が今年のミス・コンテストを数分間の時間を使って決めた。―――結果


『今年のミス・コンテストに選ばれたのは―――37番、九藤揚羽さんです!』


パチパチパチッ!


「・・・・・なに?」


司会者にそう言われ揚羽も呆気にとられた。周りを見ると自分に祝福の拍手を送っている事に自分は

 37人の中から選ばれたんだと理解した。


『おめでとうございます!九藤揚羽さん!今年のミス・コンテストの優勝者は貴女です!では、

優勝者にはこの優勝カップを授与します!』


「あ、ああ・・・・・」


『それでは、九藤揚羽さん。もしご希望がございましたらこの街にいる男性1人にキスをしてください!

写真も撮りますので!』


「―――姉上!」


不意に自分の名を呼ぶ弟の声が聞こえた。英雄に顔を向けると


「・・・・・」


そこには英雄とその友人達と一誠がいた。


『私、優勝したら兵藤様を指定するわ!』


『だって、一目惚れしちゃって・・・・・私の初恋の人だもの』


脳裏に優勝したら一誠を指定しようとした少女の言葉が過った。申し訳ないと思いつつ自分も一誠に

恋する女。―――この手を逃す訳にはいかない


「我は・・・・・あそこにいる兵藤一誠を選ぶ」


『・・・・・はい?』


司会者が有り得ない人物の指名に唖然とするが指名された一誠は瞬時で揚羽の目の前に現れた。


『ひょ、兵藤さん・・・・・!何時の間にこちらへ・・・・・!?』


「指名されたんだ。良いだろう?」


『は、はい・・・・・』


コクコクと首を縦に振る司会者をよそに一誠は真っ直ぐ揚羽を見詰める。


「綺麗だ・・・・・揚羽・・・・・」


「一誠・・・・・」


「見惚れたよ。揚羽のウェディングドレス姿を」


揚羽の腰に手を回して自分の方へ引き寄せる。


「フハハハ、そうであろう?この衣装で出て正解だったようだ・・・・・」


一誠の首に腕を回して絡め自分の顔に引き寄せるように近づけた。


「改めてこの場で告白しよう。―――愛している。揚羽・・・・・」


「我も愛しているぞ・・・・・一誠・・・・・」


2人はどちらかでもなく顔を近づけ―――キスをした。


「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」」」」」」」」


「「「「「「「「「「きゃあああああああああああああああああああああああああっ!」」」」」」」」」」


2人のキス姿にシャッターの嵐が浴びる。その間に一誠と揚羽は唇を離すと一誠が揚羽の額にキスを落とすと

足下に魔方陣を展開して会場から姿を消した。


「―――ヒューム、クラウディオ」


「はい、ちゃんと写真に収めました」


「くくく、兵藤。これで逃げ場はないぞ」


「むー!僕も負けられないよ!イッセーは絶対に僕と最初に結婚するんだから!」


「フハハハ!やはり姉上が優勝したのだ!我は心から嬉しいですぞ!」


―――東地区


「アメリカ、中国、ドイツ、ロシア、イギリス・・・・・色んな人がいるな。しかも英語や他の

外国の言葉じゃなくて日本語をペラペラと話すなんて・・・・・」


「不思議だよねー。私の耳では普通に日本語で話しているよ?」


「この国に来れば誰でも日本語を喋れるのか?」


「どうだろうね、僕達は日本人だからあまり解らないよ」


「モロはガクトと一緒じゃなくてもよかったの?」


「うん、なんか『俺様はナンパしてくるぜ!』と張り切って行っちゃったしキャップは

『よっしゃ!祭りだぜぇ!』て、どっかに行っちゃったしクリスはマルギッテさんと一緒に、まゆっちは

友達と一緒に行っちゃったから」


「皆、フリーダムだな・・・・・」


「ガクトの場合。この国の警察に捕まってなきゃいいんだけど・・・・・」


「来て早々に一誠さんに迷惑を掛ける訳にもいかないな」


「そうだね。チラホラと武器を持っている人達もいるし・・・・・危ないね」


「他の人達は気にしていなさそうだよ?もしかしたらまゆっちが刀を堂々と持っても気にしなさそう」


「今は小さくなっているけどね」


3人は人混みの中を歩き続ける。騒音の中、パレードを見る観客はその場で佇み今か今かとパレードを

来るのを楽しみにしている様子だった。


「そろそろ僕達もな何か食べない?」


「ああ、丁度あそこに中華店がある。あそこで昼食にしようぜ」


「賛成」


とある一件の中華店へ歩を進める大和達。店の中に入ると大盛況のようで席が殆ど人で埋め尽くされていた。

これは無理だろうと思っていると店員が駈け寄り、「同席でよろしければご案内いたします」と言われ


「どうする?」


「俺達は俺達で食べれば良いだろう」


「うん、他の人達と話す必要もないしね」


と、同席で食べる事に決めた。店員に案内された席にはオシャレな服装にそばかすがある少女と首に

ゴーグルをぶら下げ、腰に工具を装備して見た目は大和達と同じ年齢だがそれ不相応に育った豊満な胸に

ビキニで身に包む紫の髪を両サイドに結んだ少女、露出している部分の身体に幾重の傷があり胸、腕、足の

部分に鎧を身に付け銀の長髪に三つ編み、大きめの髪止めのゴムについた二つの玉を付けている少女の3人が

大きめの円卓で中華料理を食べていた。


「お客様、申し訳ございませんがこちらのお客様と同席をよろしいでしょうか?」


「ん?ええよ」


「そうなのー」


「どうぞ、私達に気にせず」


軽く受け入れられた大和達。短く感謝の言葉を言って三人の少女と一緒に席に座る。


「・・・・・」


「・・・・・」


「・・・・・」


「・・・・・っ」


京が銀の長髪に三つ編みの少女の食べている麻婆豆腐を見詰める。見詰められた少女は恥ずかしそうに顔を

朱に染める。それに見かねて紫の髪を両サイドに結んだ少女が口を開く。


「あー、悪いんやけどあんま人の食べるところを見ないでほしいんやけど。特に凪は恥ずかしがり屋だから」


「す、すいません。多分、京は辛党なんでその麻婆豆腐を見ていたんだと・・・・・」


「へー、君も辛党なのー?私達もそれなりに辛党なんだけど凪ちゃんはそれ以上の辛党なのー」


「・・・・・因みにその麻婆豆腐、辛さの度合いは?」


「んーとね?」


おしゃれの服装を着込む少女が大和達に辛さの度合いを教えると


「・・・・・世界って広いんだね」


「まさか、京と同等の辛党がいるとは・・・・・」


唖然とした。京は何故か銀の長髪に三つ編みした少女に手を突き出した。


「・・・・・?」


「私は椎名京」


「・・・・・凪だ」


凪と言う銀の長髪に三つ編みした少女は京に差し出された手を掴み握手をした。


「好きな飲み物とかある?」


「・・・・・最近は天帝ハバネロカイザードリンク」


「―――同士を見つけた!」


嬉しそうに凪との握手を今度は両手でした。


「あはは・・・・・京がようやく同じ辛党の人と巡り合えたよ。あっ、自己紹介するね。僕は師岡卓也」


「直江大和だ。この二人とは幼染みの関係だ」


「そうなんや。ウチ等3人も幼染みの関係なんやよ。ウチは真桜。よろしゅうな!」


「沙和は沙和なのー」


大和達も真桜、沙和と名乗る2人の少女と握手を交わす。


「あー、一つ聞いても良いか?」


「ええよ」


「真桜のその服装って色々と問題が・・・・・・」


「ん?ああ、こっちの方が動きやすくてええんよ。それとも、ウチの胸に興味があるんか〜?」


「・・・・・」


「あはは、顔を赤くしているのー!」


「いや、こんな店の中でその姿で座っていれば誰だって見ちゃうでしょう?」


「周りの視線なんて気にしていないんよ」


「そ、そうなんだ・・・・・」


「ところで真桜達はこの国の住民?」


「そうや。ウチ等が小さい頃からずっと住んでいるんよ」


「でも、その前は別の場所で暮らしていたんだけど事情があって沙和達はこの国に移り住む事に成ったのー」


「じゃあ。兵藤一誠って言う人も知っているのか?」


「知ってるも何も、この国に住んでいる人なら一度は聞く名前なのー!」


「そう言えば今日は建国記念日だから来ている筈や」


「兵藤一誠って何をしている人なんだ?」


「んー、それは―――」


「真桜、それ以上は言うな」


真桜が一誠の事を説明すると凪が声を掛けて阻んだ。


「凪?」


「こいつらは・・・・・もしかすると不法侵入者かもしれない」


「「「・・・・・え?」」」


「凪、どうしてそう思うん?」


「この国に入国する際に一誠様の事を一度は説明される仕組みに成っている。なのに、その男は

『兵藤一誠って言う人も知っているのか?』と聞いてきた。そんな聞き方をこの国に住む住民はしない」


「あっ、そう言えばそうなのー」


「あー、となると『仕事』をせなあかんなー」


「し、仕事・・・・・?」


不意に立ち上がる凪、真桜、沙和。食事していた3人とは一変して雰囲気も変わった。


「我等、兵藤隊の三羽烏は警備隊の総隊長だ」


「警備隊・・・・・!?」


「出会って早々悪いが・・・・・我等と共に来てもらおうか?事情聴取をする為に」


拳を構え、一対の双剣を、どこからか巨大なドリル状の槍を大和達に突き付けた。それには大和は流石に

ヤバいと慌てて弁解する。


「ちょっと待ってくれ!俺達は不法侵入をしていない!一誠さんと一緒に来たんだ!」


「その証拠は?」


「しょ、証拠は・・・・・」


「金色の招待状も持っていなさそうだな・・・・・。お前達を連行しよう」


凪が大和を捕まえようと手を伸ばす。―――次の瞬間。


「―――いや、その必要はないぞ」


「何・・・・・?」


背後から声を掛けられた凪は後ろに振り向く。その瞬間、凪の顔に驚愕の色が染まった。


「そいつらは俺の友人だ。連絡は事前にしていたんだがな・・・・・まあ、連絡しても誰が俺の友人だが

知る訳もないか」


「い、一誠様・・・・・!?」


―――中央地区 某事務室


「ふぅー・・・・・。これで終わったな」


「お疲れ様です。流石ですね、あれだけあった書類を本当に数十分で片づけるとは・・・・・」


「お前達は何時も苦労しているんだ。これぐらいはできないとお前達に申し訳がない」


「いえ、私達は貴方に恩があります。その恩を返すにも我々は日々、努力しているんです」


「朱里ちゃんの言う通りですよ。一誠様」


「そう言ってくれると嬉しいな。と、もう昼か。俺は昼食をしに行く」


「「「「「いってらっしゃいませ」」」」」」


一誠は事務室から出て東地区にある中華店で食べようと思い歩を進める。街は大賑やかで祭りを楽しむ

住人達が立ち歩き、行き進む。そして、お目当ての中華店に入るとやはりと店の中が人で埋め尽くされていて

大盛況だった。


「いらっしゃいませ!・・・・・あっ!兵藤様!」


「おう、席は空いているか?同席でもいいが」


「申し訳ございません。ただいま、満席中でして・・・・・」


「そっか。だが、良い事だ・・・・・と、知り合いがいるな。行っても良いか?」


「はい!どうぞ!」


店員に「ありがとう」と声を掛け一誠が席から立ち上がった3人の少女の方へ近づく。

すると3人の少女の声が聞こえてきた。


「我等、兵藤隊の三羽烏は警備隊の総隊長だ」


「警備隊・・・・・!?」


「出会って早々悪いが・・・・・我等と共に来てもらおうか。事情聴取をする為に」


「ちょっと待ってくれ!俺達は不法侵入をしていない!一誠さんと一緒に来たんだ!」


「その証拠は?」


「しょ、証拠は・・・・・」


「金色の招待状も持っていなさそうだな・・・・・。お前達を連行しよう」


「(あー、因りによって大和達が捕まりそうな所に出くわしたか)」


自分の友人達が警備隊に連行されそうな所に来てしまった。一誠は苦笑を浮かべ3人の少女達の

背後から声を掛ける。


「―――いや、その必要はないぞ」


「何・・・・・?」


背後から声を掛けられた少女は一誠に振り向く。その瞬間、少女の顔に驚愕の色が染まった。


「そいつらは俺の友人だ。連絡は事前にしていたんだがな・・・・・まあ、連絡しても誰が俺の

友人だが知る訳もないか」


「い、一誠様・・・・・!?」


「凪、真桜、沙和。そいつらは俺の友人だ。捕まえないでくれ」


「・・・・・はっ、分かりました」


「久しぶりなのー♪」


「一誠、久しぶりやなー!」


深々とお辞儀する凪に対して真桜と沙和が一誠に抱き付いた。凪はその事に気づき叱咤する。


「こら!真桜、沙和!一誠様に抱き付くな!」


「えー、ええやん」


「そうなのー。久しぶりに会ったんだからこれぐらいは許して欲しいのー」


「私達は今、仕事中だぞ!」


「今はお休みなんやけど?」


「ぐ・・・・・っ!」


真桜の指摘に言葉を詰まらす。一誠は3人の少女のやりとりに苦笑をまた浮かべる


「ほらほら、店の中で揉め事は駄目だぞ」


「はーいなの」


「へーい」


真桜と沙和は席に座る。凪は立ったままで佇んでいた。


「どうした?」


「一誠様は昼食に?」


「ああ、ここでしようと思ってはいたけど満席でな。違う所で食べようと思ったけどお前達がいて

声を掛けたんだ。お前等も悪かったな」


「いえ、一誠さんが来てくれて助かったです」


「イッセー、一緒に食べよう?私が口移しして・・・・・」


「いや、遠慮する」


「ああん、いけずぅ・・・・・・」


「もしかして、京は一誠の事が好きなん?」


「ククク、小さい頃から身も心も既にイッセーに奪われている」


スパンッ!


「誤解を招くような事を言うな」


「うわ、一誠・・・・・まさか、そんな性癖だったん?」


「沙和・・・・・もの凄く幻滅したのー」


スパパンッ!


「「っ〜〜〜!?」」


「お前等、悪ふざけも程々にな?」


「「は、はい・・・・・」」


「まったく、自業自得だぞ。お前達は」


「ただのコミュニケーションやんけ〜」


「そうなのー、一誠とちょっとしたスキンシップなのー」


「それでお前達は一度、一誠様に給金を半額された事を忘れたのか?」


「「うっ・・・・・」」


「さて、俺は違う店で食べるとしよう。お前等、問題を起こすなよ?」


「一誠様、私も付いていきます」


「ん?お前は休憩中だろう?こいつらと一緒にいなくてもいいのか?」


「たまには別行動も悪くないです。それに・・・・・い、一誠様と一緒に・・・・・」


と、最後辺りに言葉が小さくなって顔を少しだけ赤く染めて言う。一誠は凪の呟きを聞こえ、

凪の頭を撫でた。


「それじゃ、新しく成った場所を案内してくれるか?俺がいない間に幾つか新しく建った建物や

道があるだろう?俺をそこに何か買って食べ歩きながら教えてくれ」


「は・・・・・はい!」


犬の尻尾があれば千切れんばかりに振っているに違いないと大和が凪の背後を見てそう思った瞬間だった。

同時にある意味ワン子みたいな少女だなーと卓也も思った。一誠は大和達と別れて凪と

一緒に店から出て行った。


「・・・・・あれ、京がいない」


「あっ、本当だ・・・・・何時の間に」


「さっき凪と一緒に行ったで?」


「そうなのー」


「「・・・・・しょーもない」」

-37-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




真剣で私に恋しなさい!S 3 (一迅社文庫)
新品 \620
中古 \300
(参考価格:\620)