小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

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「これは予想外な展開に成りましたね」


「まさか、勝ち残ってしまうとはな・・・・・」


「それにあの身のこなし・・・・・。彼女の動きとは思えませんね」


「・・・・・まさか・・・・・な」


ヒュームは一誠を視界に入れる。


「あいつは既に知っていたと思うべきか・・・・・」


「元・九鬼家従者部隊01番隊ですからね。気づいてもなんら、可笑しくは無いかと」


「極一部の従者や関係者しか知らない事をあいつは・・・・・」


「ふふふ、流石ですね。何らかの方法で独自に彼女の出世を見破るとは」


「感心している場合か。これは九鬼家の機密でもあるのだぞ」


「睨むように見られても彼は誰にも彼女の事を口にしてはいないようですよ。でなければ彼女が通っている

学校は騒然に包まれております」


「・・・・・」


「成り行きを見守りましょう。そして、星の図書館に報告をしましょう」


「・・・・・そうだな」


―――控室


「清楚ちゃーん♪」


「わわっ!?」


控室に戻った清楚は百代の抱擁と共に出迎えられた。


「凄いじゃないか!よくあの板垣辰子を倒したもんだ!」


「わ、私も一生懸命だったから・・・・・でも、あの人達は大丈夫かな・・・・・」


「心配ないだろう。というか、心配するほどヤワじゃない奴らばかりだ」


「そ、そう・・・・・」


「さーて、次は勝ち残り戦だ。どんな奴等と戦うのか楽しみだ♪」


「モモちゃんなら絶対に優勝出来るよ!頑張ってね!」


「ああ、一誠も見ているからな。無様な事はしない」


「一誠君の事が本当に好きなんだね」


「清楚ちゃんもだろう?―――譲る気はないからな?」


「ふふ、うん。私も負けないから」


『続いては勝ち残り戦です!川神百代選手!葉桜清楚選手!ステージに赴いて下さい!』


「それじゃあ、行こうか」


「そうだね」


―――ステージ


『皆様!街に待った勝ち残り戦です!今回、勝ち残り戦に挑むのは初出場の川神百代選手と

葉桜清楚選手です!』


「「「「「「「「「「わああああああああああああああああああああああああああっ!」」」」」」」」」」


「どもー♪」


「よろしくお願いします」


『この2人がどこまで勝ち進む事が出来るのかこの場にいる全員が予想出来ません!川神選手、葉桜選手。

この勝ち残り戦は3回連続で戦う事に成りますが自分はどこまで行けると思いますか?』


「出来る限り勝ち進みたいです。応援してくれる観客の皆さんに答えたいので」


『ありがとうございます!次は川神選手、お願いします!』


「はい、それは勿論―――全員を倒して見せますよ」


『全員ですか・・・・・』


百代の回答に唖然とする。今までこのイベントを実況してきた者として何度も聞いた。しかし、

誰も未だに達成した事がない。実況者のゴンザレスはまた最初に負けるだろうと内心は苦笑を浮かべた


「ええ、全員です♪というか、早く戦いたくて仕方ないので進行をしてください」


『分かりました・・・・・。それでは!勝ち残り戦を始めます!』


百代と清楚が来た入場口から反対の入場口に煙が発生した。煙の向こうから人影がユラリと現れ1人の人物が

ステージに登場した。


『この武闘を競うイベントが始まって以来、未だに誰も優勝者はいません。何故なら、最初に戦う相手に

破られているからです!その戦う相手は―――』


「鈴々なのだー♪!」


「「「「「「「「「「わああああああああああああああああああああああああああっ!」」」」」」」」」」


「「「「「「「「「「鈴々ちゃーーーーーん!」」」」」」」」」」


自分の身長を遥かに超える武器、蛇矛を持って現れた身長が小さく赤いショートヘアに虎模様の上着を着込み

スパッツを穿き裸足で登場した少女。


「・・・・・マジで?」


「えっと・・・・・小さい子だね」


目をパチクリと鈴々の容姿を見て唖然とする。しかし、この国に住む住人達にとってはこのイベントの難攻

不落と称するほどの少女でその力も今まで見てきた上にその愛くるしい言動に人気が高い(特にロリコン)。

会場にいる準は鈴々の登場に興奮していたのは当然だった。


『最初はどちらか対戦しますか?』


「モモちゃんからお願いします」


「即答だな?まぁ良いけど・・・・・今まで戦った事がない相手だなぁ・・・・・」


「にゃ?」


「・・・・・何て言うかやり辛い。小さい子供をいじめる気分だぞ」


「鈴々は子供じゃないのだ!」


鈴々に対峙しながらそう呟く百代に怒る鈴々。


『川神選手、見た目で判断をしてはいけないですよ。相手はたった一撃で今までバトルロワイヤルを勝ち

残った選手達に勝った猛将ですから』


「たった一撃・・・・・」


「お姉ちゃん、もしかして鈴々をバカにしているのか?」


「いや、そう言う訳じゃ・・・・・」


「そう言う訳じゃなくても態度が鈴々をバカにしているのだ!鈴々は怒ったのだ!」


―――と、鈴々の体から怒気を感じたと思えば全身から闘気を迸った。


「・・・・・っ!?」


「お姉ちゃんを徹底的に倒してやるのだ!」


『鈴々ちゃんがヒートアップした所で―――試合開始です!』


「うりゃああああああああああああああああああああっ!」


先手必勝と言わんばかりに一丈八尺の蛇矛を思いきり振った際、地を這うように巨大な衝撃波が発生して

百代を襲う。


「くっ・・・・・!?」


「まだまだー!」


鈴々は飛びかかって百代の服を掴み小さい身長から有り得ない力を発揮して自分の身長を超える百代を上空に

放り投げた。さらに蛇矛を利用して飛び上がって百代の傍に寄る。鈴々の接近に気付き一撃必殺の拳を

突き出すが逆に捕まれ蛇矛に思いきり下に向けて叩き付けた。


「・・・・・ははっ!」


百代の口から笑みが零れた。地面に直撃する事もなく軽やかに着地して目の前に降りてきた鈴々を見詰める。


「鈴々と言ったな?」


「にゃ?」


「―――申し訳なかった。私は心のどこかでお前をバカにしていたと思う」


謝罪の意味を示し頭下げる。そして、頭を上げた百代の表情は真剣な表情だった。


「だが、お前を1人の武人として私は真剣に勝負する」


「にゃ〜、謝ってくれたから許すのだ!」


「それにしても小さいくせに私を上空に投げるなんて大した力だな?」


「うがぁー!やっぱり許さないのだ!」


蛇矛の矛先を百代の顔面に突き付けた。それを首だけ横に動かして蛇矛を掴んだ。


「にゃにゃっ!?」


「だが、小さい女の子を傷つける事はできないからこれで終わりにするがな!」


掴んだ蛇矛を鈴々ごと持ち上げて場外エリアに放り投げた。


「―――また、正式に戦おうな」


「にゃーっ!?」


―――ドッボオオオオオオオオンッ!


成す術もなく水に落ちた鈴々だった。その光景に実況者やスタジアムにいる観客達は呆然とした。


『しょ、勝者・・・・・川神選手』


「「「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」」」


―――観客席


「ははは、やっぱり負けたかぁー」


「その様子だと一誠さんはあの子と知り合いだったんですね?」


「というか、俺が鍛えてやった弟子でもあるがな」


「幼女になんて事を・・・・・」


「面白い子だねー。身体が小さいのに百代ちゃん並のパワーファイターなんて驚いたよん!」


「世界は広い、ということだな。一誠は旅に出ている最中に出会ったのだな?」


「やっぱり自分の足で世界中を旅して自分の目で見て様々なものを確認した方がまだ見ぬ強者と巡り合える」


「紋と変わらぬ身長で百代を上空に放り投げるとは・・・・・」


「巨大な岩を軽々と片手で持つ程だ。百代の体重ぐらいは余裕で出来る技だ」


「そ、そうなんですか・・・・・?」


「とても信じられないや・・・・・」


「信じる、信じないのは個人の自由だ。―――さてと、清楚はどう戦う?」


―――ステージ


「お疲れ様。身体は大丈夫?」


「ああ、かなり重い一撃だったけど大したことは無い」


「びっくりしちゃったよ。モモちゃんが上空に投げられてさ」


「私もだ。流石にあれは驚いたぞ。―――やっぱり世界は広いんだな。一誠の言う通り、

太陽の子のメッシ以上の実力者がいると改めて理解した」


「でも、一誠君より強くないでしょ?」


「一誠のような強さを持った奴が何十人もいたら嬉しいな!」


「ははは・・・・・」


『次は葉桜選手の戦いです!』


「怪我しないように頑張ってな」


「うん、そうするよ」


戟を持って中央に移動する清楚の相手は入場口から姿を現わす。


『葉桜選手の相手は!―――季衣ちゃんと流琉ちゃんだー!』


「ええっ!?しかも今度は2人!?」


「こんばんわー!」


「「「「「「「「「「季衣ちゃーん!」」」」」」」」」」


「よろしくお願いします!」


「「「「「「「「「「流琉ちゃーん!」」」」」」」」」」


先程の鈴々と変わらない身長の2人の少女が巨大な鎖付きの鉄球と巨大なヨーヨーのような物を持って

登場した。


「おい、2人組で相手をするとは聞いていないぞ?」


『勝ち残り戦は上層の方々がランダムで決めるので実況の私やスタッフには一切知らないのですよ』


「それでいいのかそれで」


「でも、負けない!」


『(負けそうになったら俺が出るからな)』


「(うん、お願いね)」


『では始めましょう、試合開始です!』


「いっくよー!」


ブンブンと鉄球を振り回して清楚に向けて投げ放った。


「わっ!?」


迫りくる鉄球に回避する。その回避した先に水色の髪にリボンを付けた少女の流琉が

ヨーヨーを投げ放っていた。


「わわっ!」


清楚は慌ててそれも避けた。再び季衣が鉄球を投げては清楚が避け、流琉がヨーヨーを投げては清楚が

避けるという繰り返しが続いた。


『葉桜選手!2人のコンビネーションに手も足も出ない!これは大ピンチだ!』


「もう、ちょこまかと逃げてないでちゃんと戦ってよ!」


「季衣、しょうがないわよ。これ当ったら痛いんだから」


「(うん、絶対にそれ痛いよ)」


『(まったく、さっきの奴と良いこいつらといい、どうして小さい成りに力があるんだ)』


「(まさかだけど、こんな子達みたいな子しかいないって訳じゃないよね・・・・・?)」


『(流石にないだろう。だが、まだいそうな気がするな)』


「(うーん・・・・・。こんな小さな子達を傷つけたくないなぁ・・・・・)」


「季衣!」


「うん!」


考え込む清楚を挟むように立っていた季衣と流琉が武器を投げ放った。


『(清楚!ボーとするな!)』


「っ!?」


項羽に叱咤されるが既に遅かった。巨大な武器はすぐ清楚の傍に来ていて回避は出来なかった。


ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


清楚に直撃した瞬間、衝撃した音と共に煙が立ち込める。


『おっとぉ!?一瞬、作戦を考えていたのか葉桜選手が立ち止まっている所に容赦ない

 2人の攻撃に直撃したぁー!』


―――観客席


「せ、清楚先輩!?」


「今のは確実に直撃したように見えたぞ」


「あんな物を挟まれて直撃したらタダでは済まないぞ!」


「清楚先輩・・・・・」


試合を見ていた大和達は唖然となった。


「一誠・・・・・どう思う?」


「俺も今の攻撃は直撃したと見えた。―――でも、負けてはいないだろう」


「やっぱり・・・・・?」


清楚の正体を知っている一誠達は冷静に観ていた。


「あいつの中にはあいつがいる。簡単には負けないさ」


―――刹那。


ゾクリ・・・・・。


スタジアムにいる観客達に突然の恐怖が襲いかかった。一誠達も当然その恐怖を感じている。


「―――どうやら、出てきたようだな」


「覇王・・・・・項羽」


―――ステージ


「(な、なんだ・・・・・?この膨大な闘気・・・・・前にも感じた事がある闘気だ)」


未だ、立ち込める煙の中から感じる闘気に百代は気付いていた。


「(清楚ちゃんの気が一変した・・・・・。これはどう言う事だ・・・・・?)」


「る・・・・・流琉。なんか、怖い・・・・・」


「季衣・・・・・!」


2人の少女も既に気づいていた。間近で膨大な闘気と威圧感を感じているためか身体を少しだけ震わせて

いた。立ち込める煙がようやく晴れて来て清楚の姿をスタジアムにいる観客や実況者、季衣と流琉、

百代の視界に入った。


「・・・・・」


両腕を横に突き伸ばして鉄球とヨーヨーを受け止めていた清楚の姿を。実況者は声を張り上げて実況する。


『な、何と言う事でしょう!葉桜選手は無事でした!しかも季衣ちゃんと流琉ちゃんの攻撃を受け止めて!

何という力なんでしょうか!?私、驚きで一杯です!』


「―――ふぅ」


清楚が小さく息を吐いた。―――だが。


「まさか『俺』が受け止める側になるとはな」


「「「っ―――!?」」」


清楚の声音と一人称が変わっていた。姿形は葉桜清楚。しかし、声音と雰囲気は根元から違っていて清楚が

瞑っていた目を開くと瞳が赤く染まっていた。


「清楚・・・・・ちゃん?」


「・・・・・ふん」


ガゴッ!バキャッ!


受け止めていた鉄球とヨーヨーを握りつぶして破壊した。


「あっ!?」


「そ、そんな!?」


「―――終わりだ」


清楚の全身から赤黒いオーラが迸った。そのオーラに季衣と流琉が吹き飛ばされ場外エリアに落ちた。


『し・・・・・試合終了。勝者は・・・・・・葉桜清楚』


「・・・・・」


スタスタと実況者の言葉を聞き流しながら清楚は百代に近づく。


「・・・・・お前、誰だ?」


「今は名乗る気はないな。俺の名を言えば失格に成るかもしれんからな」


冷汗を流す百代に設置されている椅子に座る清楚。様子が一変した清楚の疑問が尽きない百代。だが、

優勝するとは思わなかった清楚が自分と同様かそれ以上の闘気を今でも発しているため清楚も優勝する確率が

格段に上がった。


『2回戦、川神選手。前に出て下さい!そして川神選手の相手は―――』


「ウチやー!」


「「「「「「「「「「わああああああああああああああああああああああああああっ!」」」」」」」」」」


紫の髪を縛り上げ豊満な胸にサラシを巻き、紺色の羽織と袴を着込み百代が祭りの時に出会った愛紗の

青龍偃月刀に酷似した武器を持って登場した少女。


『川神選手の相手は神速の霞!今回は初めての出場となりますが彼女の速さは国一です!』


「橘さんみたいな人か」


「いやー、お前。強いんやな!見てよぉ解るわ!」


「この国に住んでいる住民達は私の事を知らないのか?反応がイマイチ低いような

気がするんだが・・・・・」


「武神・川神百代やろ?この国に住んでいる住民達も知っとるで」


「そうか」


「一度、武神と戦ってみたかったんや〜♪はー、楽しみ、楽しみ♪」


「はは、どうやら私と似ているようだな」


『それでは勝ち抜き戦を開始します!試合―――はじめ!』


「(さぁて、橘さんのようなスピードファイターなのは分かった。どのぐらいの―――)」


―――ザシュッ!


「・・・・・?」


霞に見据えて警戒する百代の耳に斬られた音が聞こえた。その発信源は自分の体だった。百代は視線を下に

向けると、左肩から斜め下に斬られていた事が肉眼で確認して理解した。一瞬遅れて血が噴き出した。


「あれ、ウチのスピードに反応するかと思ったんやけど・・・・・もしかして武神って弱いん?」


何時の間にか百代の背後にいた霞が首を傾げる。


「―――川神流・瞬間回復」


そう呟いた瞬間に百代の細胞が活性化になって傷がみるみる内に塞がっていった。


「・・・・・なるほど、橘さんと同等かそれ以上の速さだな」


「おー、傷が治ったんか?面白い技やなぁー」


「私は何度でも回復できる」


「ええな、ええな。それじゃあ、気を取り直して戦うとしようや!」


嬉々として百代に神速の速度で接近して武器を振った。


―――観客席


「お、おい・・・・・清楚先輩の様子が可笑しくないか?」


「う、うん。僕もそう思う」


「雰囲気も違うし清楚先輩から膨大で禍々しい闘気を感じるわ」


「今まで感じた事がない闘気だ・・・・・放たれる威圧感で押し潰されそうだ・・・・・!」


「(項羽の奴。隠す気も無いか・・・・・)」


「―――兵藤」


「ん?」


「・・・・・」


背後からヒュームに声を掛けられ振り向くと「俺と来い」と言わんばかりの眼光を向けてきた。

一誠は無言でその場から瞬時でいなくなった。


「あれ、お兄様は?」


「トイレじゃねえか?」


―――通路


「それで、なんだ?」


「単刀直入に聞きます。あなたは清楚が何の英雄の遺伝子から生まれたのかを御存じなのですね?」


「今さらだな。清楚は―――秦末期の楚の武将。西楚の覇王と称されていた覇王・項羽のクローンだろう?」


「「・・・・・」」


「大方、項羽の名前を付けたのはマープルだろう?あの名前はギャグか?まるで自分から清楚は

項羽のクローンだと教えているようなものだぞ。まあ、どいつもこいつも

清楚の清楚な言動しか見ていないから誰も気づかないけどな」


「彼女の事は誰かに教えましたか?」


「教えたというよりは・・・・・自分からバラしたぞ?」


「なに・・・・・?」


「因みに清楚が項羽のクローンだと知っているのは義経、弁慶、与一の英雄のクローン組。後は、

マルギッテ・エーベルバッハ、井上準、葵冬馬、榊原小雪だ」


「・・・・・」


「驚いているようだな」


「ええ、同じ英雄の遺伝子から生まれた義経達も知っていたとは驚きました。

それは何時頃から知っていました?」


「俺が九鬼家従者部隊に入って初めて清楚達と出会った日だな」


「その時から・・・・・」


「清楚の名前と雛罌粟の飾り・・・・・それだけあれば頭が良い奴は気付くだろう」


「質問に答えろ。星の図書館は項羽を覚醒するのにはある歌がキーワードだと言った。どうして歌を聞かずに

あれは覚醒した?」


「俺がそうしたからに決まっているだろう?」


悪びれもなく一誠はそう言った。クラウディオは「やはり」といった感じで一誠を見詰め、

 ヒュームは眼光を鋭くして一誠を睨む。


「自分が何者なのかそれが分からない疑問と恐怖。俺はそれを除いてやっただけだ。

 今では清楚と項羽は自由に入れ替わる事が出来て心の中で会話をする事が出来ている」


「なんと・・・・・」


「それと本人が希望すれば俺は項羽を1人の人間として現世に生きられるようにするつもりだ」


「そんな事がお前に出来る訳が―――」


「忘れたのか?俺は元・九鬼家従者部隊01番隊だぞ。不可能を可能にする男と称されていた

俺が出来る訳がない訳ないだろう?」


「「・・・・・」」


『試合終了!勝者、川神選手!』


「何時までも清楚の中にいさせるのは可哀想だからな。悪いが救済させてもらうぞ。例え昔の同僚だった

お前等が邪魔をするのなら容赦はしない」


フッと通路から消失した一誠。未だに通路にいるヒュームとクラウディオは口を開く。


「彼はどこまで不可能を可能にできるんでしょうかね?」


「俺が知るか」


―――ステージ


「はぁー。負けたわー」


「中々すばしっこかったぞ。だが、捕まえれば私が有利だ」


「それにしたって乙女の顔に殴るとは酷い武神やな」


「戦う相手に手加減なんて無粋な事が出来るか」


「はぁ・・・・・イッセーに負けてもその強さは異常やなぁ〜」


「お前、一誠の事を・・・・・?」


「ウチだけじゃないで?他にも何人もイッセーに好意を抱いておる奴もおる。―――皆、イッセーに

助けられているからやけどな」


「・・・・・」


霞は観客席にいる一誠を探して見つけると手を大きく振った。一誠も手を振って返した


「また戦う時がきたら今度は負けへんでモモっち!」


「モ、モモっち・・・・・?」


神速でステージから去る霞に新しいあだ名で呼ばれ唖然とした。


『次は葉桜選手です!そして、葉桜選手の相手は―――』


「私を倒す者はいるかー!」


「「「「「「「「「「ここにいるぞー!」」」」」」」」」」


かけ声と共に黒い髪に白いメッシュを入れ籠手と鎧の足の部分を纏って棘付きの巨大な金棒を持って

登場した。


『焔那だぁー!武器はあらゆる物を全て粉砕する巨大な金棒の『鈍砕骨』!葉桜選手の武器も容易に

破壊される事はまず間違いないでしょう!』


「仲間の仇を取らせてもらう!」


「・・・・・」


戟を掴んで焔那に近づく。


『それでは試合開始です!』


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


一気に清楚に近づき両手で鈍骨砕を持って振り上げて思いきり振りおろした。


ドゴォオオンッ!


鈍骨砕は清楚に直撃する事もなくステージに直撃した。焔那の一撃を避けた清楚は―――


「遅い」


焔那の武器の上に乗っていた。清楚は鈍骨砕に乗ったままサッカーボールを蹴るように焔那を蹴った。

その威力は場外エリアの壁にまで吹っ飛ぶ程だった。


―――ドッガアアアアアアアアアアンッ!


『・・・・・』


これには実況者も驚きを隠せないでいた。中央にあるステージの周りは水で囲まれさらに水を溜まるように

造られた中央のステージと壁の距離は10メートル。人一人を10メートル先の壁にまで蹴り飛ばす光景を

見るのはこの場にいる全員が初めてだった。


『しょ、勝者・・・・・葉桜選手!凄い、これは凄いぞ!今まで勝ち残り戦で勝った事がある選手はこの

2人が初めてでありその上、お互い2連勝をしております!これはもしかすると2人は優勝するの

ではないでしょうか!?』


「「「「「「「「「「わああああああああああああああああああああああああああっ!」」」」」」」」」」


「ふん・・・・・」


『(つまらそうだね?)』


「(ただの猪だったからな)」


『(もう、女の子に猪なんて言っちゃダメだよ)』


清楚に窘められるがそれを聞き流して百代の隣の椅子に座りだす。


「清楚ちゃん」


「今の俺にその名で呼ぶな」


「じゃあ、何て呼べばいいんだ?」


「ふむ・・・・・覇王と呼べ。偽名だがな」


「覇王・・・・・」


「次はお前だ、武神」


「分かっている」


清楚に促されステージの中央に赴く。


『さぁ!次がいよいよ最終ステージです!今まで3回連続、勝ち残ってきた選手は彼女が初めてと成ります!

そして、彼女が相手を倒した瞬間が優勝となります!川神選手の相手は―――!』


「私が相手だ」


「・・・・・っ!」


「また会ったな。川神百代」


「愛紗・・・・・」


北地区で出会った少女、愛紗が百代の前に現れた。


『彼女は虎五将筆頭にして名前は愛紗!この国では彼女の事を武神と称されております!』


「武神・・・・・。じゃあ、この国で一番強いという事だな?」


「いや・・・・・正確に言うと私は二番目だ」


「はっ?」


「いずれ解る事だ。貴殿とは勝負をしたかったぞ。初めて出会ったあの時から」


青龍偃月刀を百代に突き出す。愛紗は大きな闘気を全身に纏い百代を見据える。


「―――ははっ!凄い闘気だ!武神と称されても過言ではないな!」


「この会場にいる一誠様の前で無様な敗北は許されない。私を救い、私を武神と称されるまで強くしてくれた

一誠様の前で私は負けてはならないのだ!」


次の瞬間、愛紗は大声で一誠の名前を叫んだ。


「私の武をご覧ください!全ては、貴方様の為に武を磨いてきました!私は誓います!目の前にいる私と同じ

武神という異名を持つ武人に私は倒して真の武神の称号を手に入れます!」


「・・・・・」


「改めて名乗ろう。―――我は愛紗。かの関雲長の名を受け継ぐ者。我は一誠様の理想に感銘し、同じ理想を

持つ一誠様に共感してこの関雲長は一誠様とともに世を平和にし我の心身を捧げる事を誓った武人。

武神・川神百代。―――我の義の剣を受け止めてみよ!」


『試合開始です!』


「はああああああああああああああああああああああっ!」


―――観客席


「・・・・・まったく」


俺は愛紗の言葉に苦笑を浮かべる。あそこまで真っ直ぐ俺に慕うとは・・・・・。


「イッセー君・・・・・」


「なんだ」


「あの人、愛紗っていう娘はイッセー君の事が好きなんだね・・・・・」


「普段は生真面目で仕事をサボる奴等を叱咤する気苦労する少し可哀想な少女だがな」


「義を重んじる・・・・・私と気が合いそうだな」


「そうかもな。それに頑固な所もクリス似だし」


「なっ・・・・・!?」


「明日になったら紹介してやるよ。あいつらにもお前達の事を紹介したいし」


「フハハハ!感謝するのだ!良い人材がいたら―――」


「ああ、引き抜こうとするなよ?俺が見つけたんだからあいつらは俺の大切な家族なんだからな」


「あう・・・・・。ダメなのか・・・・・?」


「ダメだ。俺が旅をしている最中に救済したんだ。例え紋白でも俺から家族を奪うような事をするのなら

―――それ相応の事をするぞ」


「・・・・・」


ギンッ!と眼光を鋭くして紋白を睨む。蛇に睨まれた蛙のようにガクガクと身体を震わして首を

何度も縦に振った。


「ついでに言うと英雄とヒューム、クラウディオもだからな?」


「う、分かり申した・・・・・」


「「・・・・・」」


冷汗を流して頷く英雄に無言で肯定するヒュームとクラウディオ。


「ま、俺が止めなくてもあいつらは九鬼家に働く気はないだろうな」


「どうしてなのだ?九鬼家に働く者は優遇をするのだぞ?」


「金で動くような奴らじゃないって事だよ。それに、俺を裏切るような事はしないと俺は信じている」


「凄い自信ですね・・・・・」


「由紀江、ここで友達を作るチャンスでもあるんだぞ?明日に成ったら1人でも友達を作ってみろ」


「は、はい!黛由紀江。友達を作ってみせます!」


『イェーイ!まゆっちの武勇伝が始まるぜぇー!』


「お前は黙っていろ」


『・・・・・一坊ぉ。それはあんまりだぜぇ・・・・・』


―――ステージ


バキッ!ガッ!ザシュッ!ドゴッ!ザンッ!ドッ!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


ドゴンッ!バンッ!ドッ!ガンッ!ゴッ!ドガッ!


「はあああああああああああああああああああああああああっ!」


愛紗と百代は未だに激しく戦いを繰り広げていた百代が拳を突き出し、愛紗は青龍偃月刀を振り下ろす。

2人の武神はその名に恥じない戦い振りを観客達に見せつける


「はははっ!武器で此処まで私と戦う奴は初めてだ!いや、まだしていないが一誠もできるだろうな!」


「当り前だ!一誠様は私達を超える存在なのだ!それも身の丈を超える大剣を二つ使って赤子如く

私達を倒す!」


「それでも流石は虎五将軍筆頭!一誠と出会う奴はやっぱりどいつもこいつも強敵ばかりだ!」


「ふっ、武人としての血が騒いでどうしようもない。お前ほどの武の持ち主は一誠様以外で初めてだ」


「それは私も同じ事だ!」


嬉々として愛紗に拳を突き出す。青龍偃月刀の柄でガードされるが直ぐさま手のひらを開いて両手で

柄を掴んだ。ニヤリと口の端を吊り上げて百代は愛紗に問う。


「お前の武器を封じたぞ。さあ、どう動く?」


「―――そんな事は既に一誠様と経験している!」


青龍偃月刀を持っていた手を素早く百代の顔を掴んだ。


「っ!?」


「答えは・・・・・こうだ!」


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


百代の顔を掴んだ手から膨大な気のエネルギーが撃ち出されて百代の頭は愛紗の気のエネルギーに

飲み込まれた。


「―――川神流」


「なっ!」


「無双正拳突き!」


ドゴンッ!


愛紗の腹部に百代の一撃の拳が直撃した。


「がはっ・・・・・!?」


「・・・・・今のは流石に効いたぞ」


腹部を押さえて跪く愛紗に見下ろす百代は顔がボロボロになっていたが瞬間回復で傷が治っていった。


「まあ、私には瞬間回復という技があるから疲れとかダメージは直ぐに回復するんだがな?」


「くっ・・・・・!この拳の一撃・・・・・とんでもなく重い・・・・!」


「降参するか?」


「・・・・・何を馬鹿な事を言う」


ヨロヨロと立ち上がる。


「此処で私が敗北したら一誠様に顔を向ける事が出来なくなるではないか・・・・・!」


「お前・・・・・」


「・・・・・ふー」


息を吐いて痛みを堪えながら瞳に戦意を乗せて百代を見る。


「武神・川神百代」


「なんだ?」


「この一撃を受けてみよ!」


闘気を青龍偃月刀に集中させる。青龍偃月刀は闘気によって光輝き金色の青龍刀へと変わった。


「―――黄龍偃月刀」


愛紗は金色の青龍偃月刀を上に翳して金色のオーラを奔流と化した。オーラは次第に形を成していくと

東洋の細長い龍へと変貌した。


「これは・・・・・!」


「これが私の―――全力だああああああああああああああああああああああああああああっ!」


青龍偃月刀を振り下ろしたと同時に金色の龍は真上から百代を食らいつこうと口を開いて襲い掛かった。


「なら・・・・・私も愛紗の全力に敬意を払って答えよう!」


両手を腰まで下げて両手の間に気を集束した。―――そして、金色の龍が百代を食らいつこうとした瞬間。


「川神流・・・・・星殺しぃ!」


ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


金色の龍の口に両手を突き出し極太の気のエネルギーを放った。金色の龍と百代の技が鍔迫り合いのように

押し合って勢いを殺し続けていた。


「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」


2人の攻撃が拮抗していた。―――刹那。


カッ!―――ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン


愛紗と百代の気が大爆発を起こしてステージは煙に包まれた。


『げほっ!ごほっ!ス、ステージに大量の煙が発生して両者の姿が見えません!』


「・・・・・」


その様子を見ていた一誠が腕を横に払った。一拍して強風がスタジアムに発生して

煙が吹き飛ばされていった。


『突然の突風に煙が吹き飛ばされていきます!』


煙が完全に無くなり百代と愛紗の姿がスタジアムにいる観客と実況者の視界に入った。


『あっ!立っているのは・・・・・川神百代だぁ!』


「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」」」」」」」」


『勝ち残り戦でまず優勝したのは初出場の川神百代選手!今まで誰も優勝した事がないこのイベントに最初の

優勝者が登場だぁあああああああああああああああああああああっ!』


―――医療室


「・・・・・うっ・・・・・?」


「起きたか?」


「・・・・・一誠様・・・・・・試合は・・・・・?」


「お前の負けだ」


「・・・・・っ」


「怪我は俺が治したから私生活や仕事には何も問題がない」


「・・・・・」


一誠がそう言うが愛紗はベッドの布団を頭まで被って一誠に背を向ける。


「今頃は清楚と春蘭と秋蘭の戦いだろう」


「・・・・・」


「愛紗・・・・・」


「・・・・・」


何も言わない愛紗に一誠は名前を呼ぶ。一拍して


「申し訳・・・・・ございません」


「ん?」


「私は・・・・・一誠様の期待に答える事ができませんでした・・・・・!」


身体を震わし、声を震わせて、一誠に謝罪を言う。


「愛紗・・・・・こっちに振り向いてくれないか?」


「・・・・・嫌です」


「愛紗・・・・・」


「・・・・・」


「・・・・・命令だ。俺に顔を見せろ」


「っ・・・・・」


優しかった声音が一変して怒気が籠もった声音で命令されて恐る恐る一誠に身体ごと顔を向けた。


「良く頑張ったな」


「え・・・・・?」


一誠に振り向いた愛紗の視界は自分に温かな眼差しと共に笑顔と優しい声音で労う一誠が頬を濡らした

愛紗の涙を指で拭いた。


「負ける事は何も悪くは無いんだ。寧ろ良い事だぞ」


「・・・・・どうして」


「うん?」


「どうして・・・・・敗北した私にその眼差しと声音、笑顔を向けるんですか・・・・・?

私は武神に負けたのですよ・・・・・?」


「同じ武神の百代に何度も傷を付けたんだぞ。誇っても良い。百代と愛紗の実力は殆ど互角だ。だが、

能力は百代の方が上だった。それでもお前は食らいついて頑張ったんだ。

何で俺が怒るような事をしないといけない?」


「・・・・・」


「それにあの技は独自で生み出したんだろう?―――流石は俺の自慢の弟子だ。

 愛紗はまだまだ強くなれるぞ」


「・・・・・っ」


愛紗がベッドから起き上がって一誠に抱き付いた。自分に抱き付いた愛紗の背中に腕を回して頭を撫でる。


「もっと・・・・・もっと・・・・・私は強くなります・・・・・!」


「ああ・・・・・」


「一誠様の為に私は強く・・・・・強くなります・・・・・!」


「ああ・・・・・」


「一誠様・・・・・愛しい人―――私の全てを捧げられる、愛しい人、私は貴方の為ならどんな事でも

耐えられます・・・・・」


「愛紗・・・・・」


「一誠様・・・・・愛しております」


愛紗が一誠の首に腕を回し絡めて身体を押しつけ足を少しだけ上げて一誠に顔を近づけて

―――唇を押しつけた。


ドッガアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!


『し、試合終了!勝者は・・・・・葉桜清楚選手!』

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