小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

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武神と覇王と最強


『今年の武闘を競うイベントに優勝者が出ました!それもなんと2名です!今まで優勝者が出た事も複数の

選手が優勝した事は無かった事です!これは歴史的瞬間な光景を私達は目撃しております!』


「「「「「「「「「「わああああああああああああああああああああああああああっ!」」」」」」」」」」


会場は熱気に包まれテンションがMAX。


『しかし、まだ終わっておりません!優勝者にはこのイベントの主催者と勝負する権利が与えられます!

川神選手と葉桜選手。どうしますか?』


「勿論、その主催者と戦う!」


「当然な事を聞くな」


百代と清楚は主催者と戦う気満々だった。実況者は頷き口を開いた。


『2人の選手は主催者と戦うき満々です!果たして主催者に勝てるのでしょうか!?』


「おい、その主催者と戦う場合はまた1人ずつなのか?」

『いえ、主催者が2人同時に戦っても良いと述べるのなら川神選手と葉桜選手は同時に主催者と戦って

もらう事になります』


「ふーん」


『それでは準備良いですか?』


「「ああ」」


『では、主催者を呼びましょう!未だ、優勝者がいなかったので私達にとってもどんな人なのか全く

知らないので緊張と共に楽しみです!』


そう言って実況者は主催者を呼ぶと入場口に煙が発生した。次第に煙の向こうから人影が見えて来て煙から

ゆっくりと登場した。その人物は―――


「よっ、優勝おめでとう。百代、清楚」


「「っ―――!?」」


現れたのは背に金色と漆黒の二つの大剣を背負って登場した兵藤一誠だった。


『な、なななんと!このイベントの主催者はこの大陸を創った創造主―――兵藤一誠だったぁあああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!』


「「「「「「「「「「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ

ええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?」」」」」」」」」」


一誠の登場で会場は驚愕の声音に包まれた。


「・・・・・お前だったのか。このイベントの主催者は」


「ああ。びっくりしただろう?」


「そうだな。だが、俺はお前と戦いたかったから丁度良かったがな」


「清楚・・・・・いや、項羽と呼んだ方が良いか?」


「項羽・・・・・?」


「好きにしろ」


「それじゃあ、そうさせてもらう。―――さて、主催者と戦う事を望んでいるからその主催者の俺と

勝負をする事に成る」


二つの大剣を掴んでオーラを纏い戦意を示す。百代と清楚―――項羽も攻撃態勢に入る。


「ゴンザレス。試合の合図を」


『は、はい!それではエキビションマッチを行います!最終決戦―――開始です!』


一誠と百代と項羽の戦いが始まった。


「いくぞ」


「「っ!?」」


2人の背後から一誠の声が聞こえた。後ろに振り向くより横に飛び出すと二つの大剣が振り下ろされて

ステージを切り裂いた。


「い、何時の間に・・・・・」


「前は徒手でやったからな。今度は武器で戦ってみるとするか」


『さて、私達の攻撃にどれだけ保てるか』


『頑張ってねー!』


「大剣が・・・・・喋った?」


「先に言うが松風のようなものではないからな」


二つの大剣を振って金色と漆黒の衝撃波が2人に襲う。その衝撃波に百代と項羽はガードして耐え凌ぐと

一誠に向かって駈け走る。


「はっ!」


「ふん!」


拳と戟の乱舞が一誠を襲う。その乱舞を軽やかな動きで避けたり防いだりして2人の隙を見切ると

大剣を振るって切り裂いた。


「「ぐあっ・・・・・!」」


「大振りで隙だらけだぞ」


金色の大剣をステージに突き刺した。


「地雷」


バチチ・・・・・ッ


地面から電気が鳴る音が聞こえたその瞬間


バチチチチチチィッ!


ステージ中に雷が這うように発生して百代と項羽の足下から全身に駈け巡って苦しめだした。


「ぐああああああああああああああああああああああああああっ!?」


「ぐううううううううううううううううううううっ!」


「俺の前では武神と覇王なんて可愛い子供だよ」


金色の大剣を抜くとステージに這っていた雷が無くなって2人は跪いた。


「ぐっ・・・・・瞬間―――」


「いや、さっきの雷でお前の回復機能は麻痺した筈だから瞬間回復はできないぞ」


「―――っ!?」


「その表情だと瞬間回復はできないようだな」


傷が治らない事に驚愕の色を染める百代に対して不敵の笑みを浮かべて大剣を突き付けた。


「お前の強みは瞬間回復だ。それさえなくせばお前を倒せる」


「私の瞬間回復を・・・・・!」


「ヒュームや鉄心辺りは気付いているだろうよ。お前の瞬間回復に対する技を持っているだろうし」


「・・・・・っ」


「とあるラスボスが雷に弱いというな。はは、ラスボスの百代は雷が弱いと」


バチチッ!


金色の大剣に光る雷、漆黒の大剣に黒い雷。二つの雷が迸った。


「あんまり瞬間回復を頼り過ぎるとお前は敗北するぞ?いや、何度も敗北してもらうか」


ガッ!


項羽が不意打ちに背後から戟を振り下ろした。―――だが、


「なっ・・・・・なんだ・・・・・その腕は・・・・・!?」


一誠の背中に生えた蛇の鱗を浮かべる黒い腕が戟を掴んだ事によって当る事は無かった。


「ん?ああ・・・・・初めて見せるんだったな。俺の力の一部だ。まあ―――」


ズリュリュリュッ!


「まだ出せるがな?」


更に黒い腕が生えて自前の腕と合わせて計6つ。その姿を見て百代はこう呟いた。


「阿修羅・・・・・」


「乱気流」


背中に生えた四つの手から気のエネルギー波を放った。ビーム状の気は乱れ撃ちをしながら百代と項羽を

徐々に追い込む。


『凄い!凄いぞ!これが創造主の力!優勝者を赤子如く扱い場外エリアに追い込んでいくうううううっ!』


「「「「「「「「「「創造主!創造主!創造主!創造主!創造主!」」」」」」」」」」


『スタジアムにいる観客達が総立ちして興奮がMAX状態です!この私も興奮して

どうしようも有りません!』


「(くっ!隙間がない攻撃だな!?あんな力があるとは思いもしなかった!アレだと他にも何か隠している

力があるに違いない!)」


「(この俺ですらあいつに届かないというのか・・・・・!?俺は覇王・項羽だぞ!例え、別世界から来た

人間でも俺が負けると言うのか!)」


『(項羽ちゃん!頑張って!まだ諦めるのが早いよ!)』


「(当然だ!分かっているわ!)」


膨大な闘気を纏い戟を持つ力を更に強くし突貫する。百代も負けじと一誠に乱れ撃つ気の最中で駆け走る。


「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」


「武神と覇王の共闘・・・・・面白い。なら、少しだけ俺の力を見せてやろう!

まずは―――『追憶の鏡』!」


一誠の前に装飾された巨大な鏡が出現する。


「そんな鏡で何が出来るという!」


「盾にしては脆過ぎる物だな!」


戟を振るってその鏡を粉砕する。拳を突き出してその鏡を粉砕する。


ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


「「―――ッ!?」」


割れた鏡から波動が生まれ、百代と項羽を襲った。困惑した表情を浮かべたまま、百代と項羽は鮮血を辺り

一面に噴出させていた。


「―――俺の世界には神が作ったシステムに人間だけ宿す不思議な能力が存在する。俺はその不思議な能力を

持っている。大天使や漆黒の鎧、背中に生えている腕もその不思議な能力の1つだ。その不思議な能力の名は

 ―――神器」


「「がはっ・・・・・!」」


ステージに転がる百代と項羽は苦しそうに口から血を吐きだした。


「さっきの鏡は神器―――『追憶の鏡』。この鏡は破壊された時に、衝撃を倍にして相手に返す

 カウンター系の神器。パワータイプの2人の威力で鏡を粉砕したのが間違いだったな」


冷笑を浮かべる一誠。倒れ込んでいる2人は血を流しながらもヨロヨロと立ち上がる。


「ぐ・・・・・っ」


「っ・・・・・」


「おいおい、もう終わりか?百代に至っては瞬間回復がないと弱いなぁ・・・・・」


手のひらを突き出して金色のオーラを出して2人に浴びせた。すると、みるみる内に傷だらけの

体が治っていく。


「さて、もう一度こい。もっと俺の能力を見せて稽古してやるからよ」


「―――なめるなぁ!」


「瞬間回復だけ取り柄だと思うなよ、一誠!」


足を思いきり踏んで一誠に飛びこんでいく。戟を振り下ろし、拳を突き出すが―――。


「―――『時空と次元の航路』」


百代の目の前に穴が出現して百代はそのまま穴の中に入った。その瞬間、


ドゴォンッ!


「ぐあっ!?」


項羽が誰かに殴り飛ばされた。そして殴り飛ばしたのは・・・・・唖然とする百代だった。項羽は横から

 殴ってきた百代に激怒する。


「・・・・・はっ?」


「武神!俺を殴ってどうする!?あいつを倒す前に俺を倒す腹か!」


「いや、ちょっと待て・・・・・確かに私は一誠に向けて拳を突き出した筈・・・・・」


「ええい、もういい!」


百代の返答に苛立ち一誠に向かって戟を振り下ろす。項羽は今度こそ―――と思った瞬間。今度は項羽の

目の前に穴が現れて彼女はそのまま入ってしまい。


ザシュッ!


「がっ・・・・・!?」


背後から百代を斬った。その光景に項羽は目を大きく見開く。


「お前・・・・・!」


「・・・・・なんでだ・・・・・?」


「自分は確かに・・・・・」と項羽は疑問に思いながら呟くと一誠がその疑問を解消した。


「神器、『時空と次元の航路』。対象の攻撃を別の対象に向けて攻撃する。他にも―――」


一誠の目の前に現れた穴を自分から入って百代と項羽の背後から現れた。


「こんな風に移動もできる」


「・・・・・武神が俺に殴った時や俺が武神の背後から斬った時はお前の能力の

仕業だという事か・・・・・!」


「そう言う事だ」


悪びれもなく、また百代に金色のオーラを浴びせて傷を治す。


「不死龍の鎧」


と、呟いた瞬間に膨大な熱量を持った黒い火柱が一誠を包み込む。一拍して火柱が焼失して底にいたのは

背中に炎の翼が生やす漆黒の全身鎧へと着込む一誠がいた。


「あの時の鎧・・・・・!」


「―――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


突然に叫ぶ一誠は漆黒の炎を全身に纏いだす。炎は奔流していきながら大きくなって一誠の姿を隠す。

―――すると炎が形を成していく。その光景を見ていた1人の観客が呟いた。


「・・・・・鳳凰・・・・・?」


炎は巨大な鳥へと変わった。その姿に唖然とする2人をよそに火の鳥は炎翼を羽ばたかせステージから

離れる。―――そして、


『焔球!』


翼から膨大な熱量を持った火炎球がステージへ降り注ぐ。百代と項羽は戟や気のエネルギーで自分に

 振りかかる火炎球を防いでいく。しばらくして火炎球が落ちて来なくなるが火の鳥がステージに降り立つ。


「「・・・・・」」


「今度は・・・・・うん。これだな」


火の鳥の形が崩れ焼失すると一誠が次の攻撃を決めたと同時に姿を現わした。


「―――水よ、我に従え」


腕を夜空に突きあげた―――刹那。場外エリアに溜まっていた膨大な量の水に変化が起きた。激しく揺らぎ、

波打ち、ステージを囲むように水柱が発生した。


「何を・・・・・!?」


「・・・・・」


夜空に突きあげた腕を2人に振り下ろした。水柱が一誠の指示に従い四方八方から百代と項羽を襲った。

成す術もなく2人は水に飲み込まれ巨大な球体になった水の中に閉じ込められた。


「「・・・・・っ!?」」


「―――雷散」


バチチチチチチチチチチッ!


手のひらから雷が発生して百代達を閉じ込めている水の球体に放った。―――その結果


「「―――ッ!!!!!」」


水に電流が流れて2人の全身に直接直撃した雷以上の痛撃が襲った。


バシャンッ!


少しして水の球体が一誠の意志によって解かれた。それによって百代と項羽は水と雷の牢獄から

解放されステージに倒れ込む。


「あ・・・・・ぐ・・・・・ごほ・・・・・がは・・・・・!」


「ぐ・・・・・う・・・・・ぐふ・・・・・!」


「・・・・・」


2人にまた金色のオーラを浴びせてダメージを回復した。また攻撃して来いと言わんばかりに。


『そ、創造主・・・・・もう、この辺で良いのでは・・・・・?』


「・・・・・そうだな。お前の言う通りにこの辺でしよう。ダメージを回復しても体力が回復した

訳じゃないしな」


一方的な力の前で倒れる2人に見兼ねて実況者が声を掛け一誠もそれに同意した。

その答えにホッと安心した実況者は口を大きく開いた。


『この試合は創造主の―――』


「待て!」


『・・・・・はい?』


「ま・・・・・だ、ま・・・・・だ・・・・・できる・・・・・!」


「此処まで・・・・・コケに・・・・・されて・・・・・負けなど・・・・・屈辱的・・・・・だ!」


身体を震わしながらゆっくりと立ち上がる。そんな二人に慌てて声を開く実況者。


『ちょっ!川神選手と葉桜選手はもう戦える身体ではございません!これ以上戦ったら危険です!』


「それでも・・・・・一矢を報いるぐらいは・・・・・したい!」


「刺し違えても・・・・・俺の・・・・・攻撃を・・・・・当てて・・・・・やる!」


瞳に戦意を乗せて一誠を睨む。その睨みに苦笑を浮かべる。


「体力的にはもう限界に近い筈なんだがな・・・・・。しょうがない。お前達のその根性に敬意を払って

俺のとっておきの力を見せて終わらせてやろう」


ボゴッ!バキッ!ボコンッ!ドンッ!


一誠がそう言った刹那。身体が突然、盛り上がり、異様な身体つきに成って行く。そして、身体がどんどん

膨れ上がり、尾が生まれ、巨大な翼が背中から出現した。口元が牙むき出しとなり、

手の爪が鋭利になっていく。一誠の身体が巨大化していった。


「なっ・・・・・なんだ・・・・・と・・・・・!?」


「この姿は・・・・・まるで・・・・・!」


「「―――ドラゴン」」


そう呟いた2人に横から衝撃が襲った。一拍して自分達は大木のような尾で薙ぎ払われていた事に気づくが

 その頃には既に場外エリアの向こう側の壁に衝突する瞬間だった。


ドッゴオオオオオォンッ!


ドッガアアアアアァンッ!


『・・・・・また、俺の勝ちだな。・・・・・はは、俺が能力を使うと呆気なく勝ってしまう』


自嘲するような薄笑いをする。その様子を水に落ちる最中に百代は見た。



「(・・・・・ああ、また・・・・・私は一誠に負けたか)」


心の中で一誠にまた敗北したと呟いた。そして、また一誠と勝負したいと思った瞬間、

水の中に身体が沈んだ。


―――ステージ


『き、決まったぁあああああああああああああああああっ!勝者は―――創造主ぅぅううううううううっ!』


「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」」」」」」」」


「「「「「「「「「「創造主!創造主!創造主!」」」」」」」」」」


『会場の観客達は創造主の名が声を張り上げながら呼び続けております!流石は我等の創造主!圧倒的な

その力で世界中に救済を求めている人々を救済する!それがこの国が生まれた理由でもあり存在理由と

成っている!私達もそんな創造主に救済され私達も救済してくれた恩を返すために日々、努力し続けます!』


「・・・・・やっぱり、一誠さんは凄いな・・・・・最後にドラゴンになるなんて信じられないぜ」


「ええ・・・・・お兄様は凄いわ」


「またモモ先輩が負ける所を見る事に成るなんてな・・・・・」


「これで二度目だね」


「フハハハハ!イッセーはやはり凄いのだ!絶対に何が何でも従者に復帰してみせるぞ!

ヒューム!クラウディオ!」


「はい、必ず復帰してもらいましょう」


「あいつを野放しにしてはいけませんからな」


「一誠を戦う姿を見ながら川神水を飲むと美味しいねぇ・・・・・」


「弁慶、それ以上飲んでは駄目だぞ」


「イッセーくぅぅぅん・・・・・」


「一誠が勝ったか・・・・・怪我がないようで安心した」


「というか、一誠が怪我した所なんて見た事がないよ」


「そうだな。それほど私達と一誠の差があるという事になるがな」


「だが、それでも何時か我は一誠を超えて見せるぞ・・・・・」


十人十色、様々な思いを呟いて中央のステージにいる一誠を見詰める。そして武闘を競う大会は会場にいる

観客達の興奮が収まらないまま幕を閉じた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――医療室


「・・・・・うっ、ここは・・・・・」


「医療室。保健室って言えば分かりやすいか?」


「・・・・・愛紗・・・・・?」


「実に見事な戦いだったぞ。殆ど一誠様の一方的な戦いだったがな」


苦笑を浮かべ、百代の傍で椅子に座っている愛紗がいた。


「どうして、お前がここに?」


「お互い全力で戦った強敵の見舞いに来て問題があるか?」


「いや・・・・・そういえば、一誠は?」


「葉桜清楚の所にいる。先程までは私と一緒にいたがな」


「そうか・・・・・」


「百代と呼んでも?」


「ああ、構わない」


「では、百代。一誠様と戦ってどうだった?」


「今の私では到底、足下にも近づけない距離を感じた。最後のドラゴンでは尾で薙ぎ払われていたことすら

直ぐには気付かなかった」


「うむ。私も一度は味わった。あの姿になった一誠様は無敵といっても良い」


「あれはいくらなんでも反則だ。それにあんな力があるのなら教えてくれたっても良いじゃないかと

思わないか?」


「私も昔そう聞いた事がある。そしたら『今のお前の実力じゃあ、教える気もない。それに、

あの力じゃなくても他にも様々な力を持っているがお前程度の奴に使うまでもない』とそう言われた」


「・・・・・絶対に私も言われるな」


「―――ああ、当然だ」


不意に第三者の声が医療室に聞こえた。声がした方に顔を向けると医療室の扉が開いて一誠が入ってきた。


「本来は別に見せる気はなかったが、お前達の頑張りに応えて見せた」


「一誠様」


「もう、あの姿を見せる事は無いだろうがな。それに俺が能力を使うと簡単に勝ってしまう。事実、

お前は何度も俺に負けていたぞ」


「なあ・・・・・神器って人間しか宿す事ができないんだよな?」


「そうだな。加えて言えば、人間の血を宿した異種族でも神器が宿る」


「・・・・・私もその神器という不思議な能力が宿されているのか?」


「ない」


「そ、即答・・・・・」


「当然だ。俺がいた世界での話だしこの世界に神なんて存在しない上に俺みたいな奴がこの世界にいない。

言っただろう。俺はこの世界に閉じ込められた籠の中の鳥だと」


「・・・・・」


「一誠様。その、一誠様がいた世界というのはどう言う事なのです・・・・・?」


「ん?愛紗は一誠の事を知らないのか?」


「・・・・・一誠様はたまにしかこの大陸に来られないのだ。だから我々でも一誠様の事は

よく知らないのだ・・・・・・」


「・・・・・あまり、俺の事を詳しく知ってもらいたくなかったから教えなかった」


「何故・・・・・」


「明日にもこいつらをお前達に紹介する時に言うつもりだ。―――俺はこの世界の人間じゃないと」


「・・・・・えっ」


「百代・・・・・起き上がれるのならお前達が今日泊まるホテルに案内するぞ」


「・・・・・いいのか?」


「お前が気にする事じゃない」


「・・・・・分かった」


「愛紗」


「・・・・・はい」


「俺はお前達から離れる事は無いから安心しろ。既にその話は終わった事だからな」


一誠は立ち上がった百代と共に医療室から出て行った。


「・・・・・例え、貴方が私達から・・・・・私から離れようとも一緒についていきます。

我が主よ・・・・・」


ポツリと決意を秘めた声音で医療室の中で呟いた。

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