小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

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六月二十一日(日)



「皆、おはよう」


―――朝。一誠は大和達が泊まったホテルの入り口の前で出てきた大和達を出迎えていた。


「おはようございます。一誠さんは昨日、何処に行っていたんですか?」


「これから行く所に泊まり込みで行っていた。この日に成るとやる事があるからな」


「大変だねー」


「それがこの国を創造した者としての義務だ」


「他に働いている人はいないのか?」


「いることはいる。だが、そいつらに任せっぱなしだと申し訳がないからな」


「では、人材が充実しておるのだな?」


「この国にいる住民の数を昨日の内に聞いたら既に6万人がいるそうだ。それにこの街は五つに分けてあるからそれぞれ分かれて仕事をしてもらっているから人材は十分にいる筈だぞ」


「五つに分けて・・・・・?」


「北東南西に中央の事だ。北地区、東地区、南地区、西地区、中央地区の街と仕事を分断している。そして、

それぞれの地区にはその地区の最高権力者―――『王』がいるが、特に中央地区の王が他の地区を統括する

存在だ。王が任されたその地区で治安維持、環境整備、etc・・・・・をしてもらって全てその後、纏め上げた

書類を中央地区の役所に送って中央地区の王がそれを確認する」


「因みに一誠さんは何処かの地区に勤めているのか?」


「俺か?俺は中央地区だ」


「あ、やっぱり?」


「今日は特別にお前達にそれぞれの地区の王と中央地区で会わせる。本当なら仕事で忙しい時期なんだぞ?」


「なあ、一誠さん」


「なんだ?」


「どうやって人をここに集めているんだ?一誠さんの事だからまた凄い方法で集めているとは

思うんだけど・・・・・」


「確かに凄い方法で人を集めているな。既に義経と弁慶、ユミが知っている」


「なんだと?」


「ついでにその方法も教えよう。まずは北東南西の王と会いに行こう」


―――中央地区 役所


「デ、デッケぇ・・・・・」


「これがこの地区の区役所だっていうのかよ・・・・・」


一誠達の目の前にそびえ立つ壮観な区役所を見上げて唖然とする一同。


「中国風の建物ね?」


「ああ、区役所は全て中国風に創造した。林冲達にとっては馴染みがあるだろう?」


梁山泊の林冲、楊志、史進に問い掛けると頷いた。歩を進め出して一誠達は区役所の中に入る。外見も

中国風に創造されているので中の風景も中国風だった。


「へぇ、中はこんな構造をしているのか・・・・・」


「階段が見当たらないわ」


「区役所に階段は無いんだ。代わりに魔方陣で移動する事にしている。その方が疲れもせず、

一瞬で上の階や下の階にも行ける」


「では、あの大きな透明な筒もですかな?」


「あれはエレベーターだ。あの中に入ると魔方陣で移動するように構築した」


「現代の移動方法を軽々と覆しているね」


「俺達は一番上の階に行くからあのエレベーターで行くぞ」


一気に50人は入りそうな透明のエレベーターに入る一誠達。全員が乗った事を確認するとエレベーターには

不要なキーボードにパスワードを入力して懐から異様な鍵を取り出してキーボードから出てきた

鍵穴に刺した。すると、足下が一層に光輝きだして一誠達を最上階にまで飛ばす為に一瞬の閃光が放った。


―――最上階。


一誠達は最上階にまで光と共に移動した。その場所は広い空間で食堂のような机や席もある場所だった。

中から外の風景を見られるように壁がなく代わりにガラスが幾重にも張られていた。そして、一誠達を

出迎える4人の少女がいた。


「待たせたな」


「いえいえ、さっき来たばかりですから」


「はい、一誠さんは何も悪くは無いですよ」


「昨日のイベント見たわよ。愛紗や春蘭達を倒した者を異常で異質で異様な力で倒すなんて貴方は本当に

人間かしら?」


「一誠♪今度私も戦ってよ♪」


「桃香と月は良い子だな。華琳、俺は人間だぞ。雪蓮、戦った後のお前を冥琳が

慰めなきゃいけないんだから自重しろ」


愛紗と酷似した制服の服装を着込んでいるがどこかホワホワとした天然そうな少女だと思わせる雰囲気を

惜しみなく出す少女、青い瞳で桃色の長髪に真紅のチャイナドレスを着た長身の少女、金髪にツインテールで

群青色の服に短いスカートを穿く少女。3人の中で一番身長が小さく、ウェーブが掛かった髪に気が弱そうな

少女に声を掛けた。


「それで?私達に会わしたいという者は貴方の後ろにいる者達でいいのね?」


「その通りだ」


「わー、色んな人がいるねー」


「強い人もいるわね・・・・・一誠ほどじゃないけど」


「一誠さん、その人達がそれぞれの地区を総括している人達か?」


「そうだ。自己紹介をしてもらうか。まずは北地区を総括している『王』」


「はい、初めまして。私は北地区の『王』月です。若輩ながらも一生懸命頑張っております」


「東地区の『王』」


「東地区を纏めている華琳よ。よろしく」


「次は南地区の『王』」


「私が南地区を総括している雪蓮よ。よろしく」


「最後に西地区の『王』」


「はーい♪私が西地区担当の桃香です!他の皆に負けないように頑張って仕事をしています!」


「あら、この間その途中で仕事から逃げ出したと愛紗がまた嘆いていたけど・・・・・」


「あっ、ははは・・・・・」


「桃香・・・・・?」


「はい、ごめんなさい。もうしませんから、その黄金のハリセンをどうか出さないでください」


「次、仕事を投げ出すような事をしたら叩くからそのつもりで」


「はい!」


「それで、さっきも言ったけど中央地区を担当しているのは俺だ。俺達5人がこの国を豊かにし、

この国に住む住民達を安心して住めるように頑張っている」


「小さい月ちゃんも働かせているんですか?」


「あう、私も一誠さんに助けてもらったのでそのお返しに頑張っているんです」


「・・・・・一誠さん、日本の法律では小さい子を働かしちゃいけないんだと知らないのか?」


「岳人。ここは確かに日本の海域だがこの国は別に日本と同盟している訳でもないし他の国の加盟国でも

ない。独立した国なんだ。それにこの国や大陸を創造したのは俺で俺達だ。日本の法律や世界が共通する

ルールなんてこの国には関係ない事だ。で、月の身体が小さいのはしょうがないけど年齢はお前達と

変わらないぞ」


「・・・・・マジですか?」


「といっても由紀江や伊予の年齢だ」


「そ、そうなんですか・・・・・」


「はい、そうですよ」


「・・・・・」


「信じられない表情を浮かべるな。まあいい・・・・・今度はお前達の自己紹介だ」


一誠が呆れながら大和達に自己紹介をするように促す。大和達は一誠の指示に従って自己紹介をした。


「あら、やっぱり九鬼家の人間もいたのね?まあ、額に×の傷があるのが九鬼家の人間の特徴だから

気づいていたけど」


「世界最大の企業の九鬼・・・・・一誠さんは凄い人と知り合っていたんですね」


「お前達と似たような状況で知り合ったがな」


「ほぇー、そうなんですかー」


「なあ、一誠さん。どうして他の国と同盟国にならないのだ?独立した国だと長くは持たないと思うんだが・・・・・」


「・・・・・へぇ、それは私達が無能だと言いたいのかしら?クリスティアーネ・フリードリヒ」


「ち、違うぞ。ただだな、他の国と協力していけばいいのでは?と思って言ったまでだ。それで、

どうなのだ?」


「・・・・・他の国と協力はする気はないな」


「それは何故なのですか?」


「この国を創造した理由は救済をする為に創造した国だからだ」


「救済・・・・・?」


「俺一人ではどうしても救済をするには限界がある。だからこの国を創造した際に俺はあるシステムや

プログラムを構築した」


「それって一体・・・・・」


大和の呟きに腕を突き出して手のひらを開いて魔方陣を展開した。光輝く魔法陣に1通の金色の招待状が

現れた。その招待状に


『今の境遇から逃れたいのであれば全てを捨てて我が国に参られよ。さすれば、

今以上の幸せを掴む事が出来る』


と書かれてあった。


「俺一人では限界がある。なら、別の方法で救済をする事に決めた」


「それがこの金色の招待状とどう関係が?」


「自分の国に不満を持っている人間、家族に虐待されている人間か捨てられた人間、仕事をリストラされた

人間、心に深い傷を負った人間、他にも色々とあるがそんな人間に招待状が届くようになっている」


「・・・・・じゃあ、この国にいる人間達は全員・・・・・」


「ああ、そんな人間達ばかりだ。こいつらも俺が旅をしている際に悲惨な目に遭っていた」


「はい、一誠さんがいなかったら今頃はどうなっていたのか想像ができません・・・・・」


「ん・・・・・?招待状が届いてもどうやってこの国に来るんだ?」


「『今の境遇から逃れたいのであれば全てを捨てて我が国に参られよ。さすれば、今以上の幸せを掴む事が

出来る』。本当に今の境遇から逃げたい人間がそう思った瞬間にこの国に入国できる扉が現れる」


「・・・・・一誠さん、まさかだけど・・・・・ここ数年の間に世界各地で行方不明者が相次いで増え

続けているのは・・・・・」


「察しが良いな、大和。ああ、そうだ。俺の仕業でもある」


「「「「「「「「「「―――ッ!?」」」」」」」」」」


「お前が言う行方不明者はこの国に住んでいる全ての住民達の事だ。だが、行方不明になった人間はさっきも

言ったように今の境遇から逃れたいと思った人間にしか招待状が届かないようにしてある」


「っ、一誠さん!貴方は間違っている!」


「何処かだ?」


「『今の境遇から逃れたいのであれば全てを捨てて我が国に参られよ。さすれば、今以上の幸せを掴む事が

出来る』と書かれてあるが自分の両親も友達も恋人も何もかも捨ててこの国に来いという事なのだろう!?

それでは捨てられた人間はどうなるのだ!」


「クリス。この招待状は強制的にこの国に入国するようにしてある訳じゃないんだ。

―――自分の意志でこの国に来てもらっているんだよ」


「・・・・・っ!?」


「俺は招待状を届けるようにしただけで俺自身が強引にこの国に来るようにしていない。全ては自分の意志で

この国に来てもらっている。ついでに言うと、この国に来たくないのなら招待状を捨てたり破いたり

燃やしたりすれば良いだけだ。それも自分の意志でだ」


「そうか・・・・・この大陸を隠す理由がそう言う訳か・・・・・。あのドラゴンもこの国を守るために?」


「半分正解。残りの半分は俺の家を守ってもらう事と自由にしているだけだ」


「じゃあ、依頼で行方不明と成っている有名な歌手も?」


「多分、この国の何処かに住んでいる筈だ」


「そうね。こうしている瞬間でも来ているんじゃないかしら?」


「今年は多いわよね。1日に数人が来るもの」


「ですが、そんな人達の為に私達は頑張りましょう!」


「私達のような人を増やしたくありませんからね」


月の言葉に桃香達は頷く。自分たちと同じ境遇をした人間を助けたい、助け続ける。一誠に救済された時に

そう言われ自分達は自分の意志で一誠についていった。自分の夢の為に、一誠の夢の為に・・・・・。

そして、お互い協力し合って数年間。ここまで大規模な国が、街が発展した。それが自分達の成果と

誇りだと自慢できるぐらいに。


「それはそうと一誠。私はしたい事があるの。聞いてもらえるかしら?」


「したい事?」


「ええ、この国は他の国より勝る国力の上に良い国に成っているわ。借金なんてしていないどころか

黒字続きだし―――そろそろこの国を世界に明かしてみない?この国が世界の頂点に成った瞬間を私は

見てみたいのよ」


「・・・・・国を明かす・・・・・。そうなると色々と今以上に大変になるぞ?」


「あら、貴方はもう手伝ってくれないのかしら?」


「何言っているんだよ。俺が創造したんだから最後まで責任を取るさ」


「ふふっ、良い返事よ。それで、どうかしら?」


不敵に笑みを浮かべ問い掛ける。一誠は悩む仕草をして数分後。


「・・・・・この国が世界の頂点・・・・・面白そうだな」


「でしょう?」


「ああ、それに何時までも隠しとおせるとは思ってもいないし頃合いだろう」


「それでは、決まりね」


「へぇー、いよいよ私達の国を見せる時が来たのね?」


「わー、緊張するね!」


「へぅ、他の国からどう評価されるのかも緊張します・・・・・」


「因みに聞くが。仮に物理的な攻撃を仕掛けられたら?」


「決まっているじゃない。―――徹底的にこの国の軍事力を見せつけてやるのよ」


「―――華琳。お前をこの国に連れて来て良かったと思う」


一誠は金色の錫杖を発現して掴んだ。


「当然よ。貴方に任された遣り甲斐がある仕事をさせてもらっているのだからね。それに・・・・・ふふっ、

私は何時か自分の手で国を治めたい夢が叶ったもの」


「国というよりは地区だな。だが、何時かお前達にそれぞれの国を治めてもらうかもしれないな」


シャランッと錫杖を鳴らして床を突いた。その瞬間、天井がゆっくりと鈍い音を立てて開いていく。


「天井が開いていく!?」


「これからこの大陸を隠し続けていた物を解除するからな」


天井が完全に開き、金色の錫杖を光輝かす。光輝く錫杖から金色のオーラを天に向かっていく。―――刹那。

上空でビシッ!と罅が生じた音が聞こえ更に罅が生じた所から徐々に広がって行き


パリィィィィィィィィンッ!


ガラスが割れたような高い音と共に破片が宙に散らばった。その直後、破片が火花のように大きく散って

様々な色の花火へと変わった。


「住民が不安を抱かせないように打ち上げ花火に見せたのね?」


「同時に今日は建国記念日だ。祭りに花火は付き物だろう?何時何処でも花火があっても可笑しくは無い」


「うん、街の皆もきっと楽しんでもらっている筈だよ!」


「花火が綺麗ですね・・・・・」


「・・・・さて、この大陸が世界中の人間に気づかれるのは時間の問題だ。お前等、これから更に面倒で忙しくなるが頑張るぞ。何せ―――世界の頂点を目指すんだからな」


「ふふっ、まるで戦場を駆け抜く言い方ね?でも、それが面白いわ」


「丁度、そこに世界最大の九鬼財閥がいるし宣戦布告でもしようかしら?―――首を洗って首を長くして

待っていなさい。何時か必ず貴方達を私達の前に平伏してみせるわ」


「ぜーったいに私達の力で世の中を平和にして見せるんだから!」


「一誠さんと共に頑張ります!」


「数ヶ月で九鬼財閥と並ぶ目標にするのもいいかもな」


不敵の笑みを浮かべて一誠は揚羽達を見詰める。「うかうかしていると俺達はお前達を呑みこむぞ」と

視線に乗せて。


「・・・・・義兄上よ」


「うん?」


「―――義兄上達の挑戦状を受けますぞ!」


英雄がビシッ!と指を一誠に指した。


「先に天下を平定するのは我等、九鬼である!例え義兄上であろうとも負けはしないのだ!」


「あはは、面白いじゃない。九鬼家の技術は私達の方が上なのよ?軍事力も過言ではないわ」


「ほう、それは興味深いな。九鬼家の軍事力より上とは・・・・・」


「商業も皆と一緒に頑張って増やし続けているから負けませんよ!それに最近は新しい

鉱石も見つけましたし!」


「新しい鉱石だと?それは一体どう言う鉱石なのだ?」


「へぅ、働いてくれる人も大勢います。多分ですが人材不足の九鬼家より充実しているかと・・・・・」


「むっ、我ももっと良い人材を集めなくてはならぬな!」


「戦に出る準備はできているという事だ。待っていろよ、九鬼財閥。直ぐに追い付いてやるからな」


揚羽達に宣戦布告したその後、桃香達と別れて大和達は帰るまでに祭りを堪能した。


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