小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

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リュウゼツラン




「ふむ・・・・・これがもう五メートル以上に成ったな」


天に伸びるように成長している草を眺めながら呟く。


「しかし、この植物がこんな場所で育っているとは最初は驚いたぞ」


「旅人さぁん!」


「今日も遊ぼうぜ!」


もうこの原っぱの常連となっている子供達が走ってきた。京も一緒だ。


「オイオイ、この草もう五メートル越してるよ!?」


「実は妙な生き物じゃね。ある日ワン子の姿が消えた。・・・・・するとこの植物はワン子の身長分に背が

伸びていた」


「怖いでしょうが!」


「ある日、ガクトの姿が消えた。すうとこの植物が花をつけた時、そこにガクトの顔が!」


「キャー!気持ち悪いわ!」


「全くだ、人面草なんて見たくもない。ましてや岳人の顔をした花なんてキャンプファイアーの

材料にした方が世の為だ」


「ヒデェッ!旅人さん、凄くヒデェッ!」


「ぬぬ・・・・・だが、物理的に殴れるなら化物も平気だ」


「お前等、百代はお化けが苦手のようだぞ」


「なっ!別に私は・・・・・ちょっとだけ怖いだけだ」


「ははっ、百代の弱点を見つけたところで今日は何して遊ぶ?」


「その前に旅人さんはこの植物を知っていますか?」


「ああ、知っているぞ。この植物は―――」


ドドドドドドドドッ!


「こらガクト!学校の先生からちゃんと宿題させるようにって電話来ちゃったじゃ―――」


俺達に猛進と駈け走る一人の女性が現れた。


「あ、ガクトのお母さん。丁度いいや。聞こうぜ」


・・・・・人が教えようとしているのにこいつは・・・・・!と大和に睨んでいたら女性が俺達の前に

立ち止まったと思えば俺の顔を見た。


「おや、アンタが何時も家のガクトが言っていた旅人さんと言う人かい?」


「初めまして俺は旅人と言います。まあ、偽名ですがね」


「私はガクトの母親の島津麗子と言います。何時も家のガクトがお世話になっていますよ。

何時か会いに行こうと思っていました」


「はは、それはそうですか。そういえばガクトが言っていましたよ?『母ちゃんには感謝している』とかね。

息子に感謝されている母親は幸せ者ですね」


「なっ!ばっ!旅人さん!」


「おや、家のバカ息子がそんな事を・・・・・」


「ところで既に俺は知っていますが子供達がこの草の事を知りたがっています。

教えてあげてもらえませんか?」


ガクトの母親が五メートル以上ある植物を見て頷くと呟いた。


「この草はアレだよ、竜舌蘭だよ」


「リュウゼツ・・・・・ラン?」


「そうさ。こんなレアな植物がこんな空き地にねぇ」


「リュウゼツラン、またの名をセンチュリー・プラントと呼ばれている植物だ」


「なんだ、その漫画の敵キャラのような名前は」


「数十年に一度しか咲かない花だ」


「旅人さん、良く知っていますねぇ。ガクトも見習ってほしいもんですよ」


「ははっ、本人の努力次第という事で」


「まぁ、百代ちゃんのお爺ちゃんがもっと詳しいんじゃない?」


「では呼んでみよう。・・・・すーっ!」


百代が思いきり息を吸い込んだ。俺達は反射的に耳を指で塞いでいた。


「ボケはじめのブルセラじじい!」


ドヒュンッ!


「モモ!お前いい度胸しとるのう!」


一秒の間も置かず現れた老人。写真で見て知ったがこうして会うのは初めてか。


「んむ?お前さん・・・・・」


「初めまして川神院総代の川神鉄心。俺は旅人と言う」


「ほう、お主が・・・・・(なんと膨大な闘気。その闘気の正体はこの者だと言う事か)」


「(大雑把で言うと世界で一、二ぐらい強い存在か・・・・・)」


「ワシの孫娘が世話になっているようで申し訳が無い」


「なに、少しヤンチャだが歳上としてこいつらの面倒をよく見てくれている可愛い女の子だよ。

将来が色んな意味で俺は楽しみだ」


「か、かわ・・・・・っ!?」


「ほう、そう言ってくれるとこちらも有り難い事ですじゃ。どうですかな?今度、ワシの家で食事でも」


「それでしたら私の家にも来て下さい」


「ん、何時か必ずお邪魔します。それで鉄心、この植物の事なんだが・・・・・」


鉄心にリュウゼツランの事で事情説明する


「なるほど、こりゃまさに竜舌蘭じゃのうありゃ50年前かのう。確かに咲いとった」


「50年。壮大だな。人間50年と同じ年数か」


「この花はその子供ってところかの。裂いて枯死する前に子株を根元近くに作り残すと聞いたが、

よくは分からん」


「分からん?」


「リュウゼツランは個体変異が大きくて、変種も多いため分類は難しんだ。咲く年期も花によって違う」


「まぁ、明後日には黄色い花が咲きそうじゃの。おっと、ルーと将棋の途中じゃったわい」


そう言った刹那、鉄心はその場から消えていた。・・・・・速いな


「明後日開花かぁ。楽しみよねぇ楽しみよねぇ」


「まぁな。粋なイベントがやってきたもんだ」


「皆で写真を取ろうよ」


「ガクトが写真撮影する係な」


「俺様が写らない事をどうするつもりだ」


「あはは、卒業アルバムの欠席者みたいに上に」


「そんなネタ的に美味しいのはキャップにまわすぜ」


「確かに美味しいな。・・・・・ん?」


「そこ考えるところなんだ」


「クク、皆子供だね。まぁ、悪くは無いな」


「大和、お前も子供だろう」


「・・・・・旅人さん」


「なんだ?」


「私も・・・・・いいかな」


「何言っているんだ。京もリュウゼツランを背景にして皆と一緒に撮るんだ」


「旅人さんは?」


「俺か?俺は写真を撮る係だ」


一拍して


「「「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええっ!」」」」」」


子供達6人の口から不満の声が上がった。


「・・・・・旅人さん、一緒に写真を取ろう?」


「いや、そしたら誰がお前達を撮るんだよ?」


「それは私に任せてくださいな旅人さん」


「良いんですか?」


「ええ、それに子供達も一緒に撮りたがっているしねぇ」


「・・・・・では、お願いできますか?」


「はい、解りましたよ。―――さて、ガクト!母ちゃんと一緒に家に帰ってお前は勉強をするんだよ!」


「ええっ!そんなのあんまりだぁ!」


「今日中に勉強が終わらなかったら外出禁止にしちまうよ!それでもいいのかい!?」


「げっ!?そ、それだけは勘弁してくれぇー!」


「だったら行くよ!旅人さん、今日はこの辺で。今度、島津寮という施設に来て下さいね」


「必ず行きます」


「では、さようなら」


ガクトは母親に連れて行かれてしまったが俺達は夕方に成るまで遊んだ。―――そして、いよいよ

リュウゼツランの花が咲こうとしたその前夜。強烈な台風がここ関東に上陸した。


ザアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァッ!


「全く、台風が上陸なんて面倒だなぁー」


光るドーム状の結界でテントとリュウゼツランを台風から守っている。被害は無に等しい。


「・・・・・はっ?」


嵐が通り過ぎるのを待っていた時、―――1人の少女が近づいてきた。しかもその少女は・・・・・!


「京!?」


「た、旅人さん・・・・・」


「この馬鹿が!どうしてこの台風の中を、しかも1人で外に出歩いてきたんだ!中に入れ!」


結界に穴を広げて京を中に入れる。雨合羽を着込んでこの空き地に来たようで濡れてはいないがこの天気で

小学生の子供が一人で外に出歩くなんて・・・・・!


「み、皆、旅人さんも、この花、さ、咲くの楽しみだって・・・・・でも、嵐来たから、その・・・・・」


「・・・・・」


京の言葉を聞いて怒りを通り越して呆れてしまった。


「はぁ・・・・・お前、馬鹿だろう」


「うっ・・・・・」


「―――だが、この花を守ろうと自分から行動を起こしたお前は偉いぞ」


「・・・・・」


「大丈夫、この花は俺が守る。必ず―――」


「旅人さぁぁぁん!」


「・・・・・」


どうやら馬鹿がまだいたようだな。雨合羽を着た6人の子供達が結界の外にいた。


「全く・・・・・」


再び結界に穴を広げて中に入らせる。俺は6人の子供達に近づき―――


スパパパパパパンッ!


ハリセンで頭を叩いた。


「―――で、お前達も京と同じ理由でこの危険な天気の中で来たという訳だな?」


「くっ・・・・・!い、痛い・・・・・!」


「うえーん!痛いよぉー!」


「当り前だ!子供がこんな台風の中で出歩いたら誰でも叱るわ!」


「だ、だって・・・・・リュウゼツランと旅人さんが心配で・・・・・」


「・・・・・見ての通り、俺は無事だし花も無事だ。この結界の中にいるからな」


外では激しく木々や草が吹き荒れて危険な状態だがこの結界の中は外の世界と違い結界で安全になっていた。


「旅人さん・・・・・貴方は一体何者ですか・・・・・?」


「俺は俺だ。それ以外何者でもないさ」


「・・・・・」


「そう不満そうな顔をするなよ。別に俺の事を知ってもどうでもいいだろう?」


「どうでもよくない!」


「・・・・・」


「私は、私は・・・・・旅人さんの事をもっと知りたいんだ!」


「・・・・・お前等、家まで送っていくから帰るぞ」


「旅人さん!」


「―――お前やお前達に俺の事を深く知ってもらいたいとは思ってはいない」


「・・・・・っ」


「お前はまだ心が幼い。俺を知るにはもっと大人になってからにするべきだ」


「・・・・・」


「いいな」


「・・・・・解りました」


「なら行くぞ。俺について来い」


結界から出ると新たな結界を作り俺と子供達を包みリュウゼツランとテントを守る結界から離れて百代達を

家まで送った。家に送る度、子供達の両親が現れて俺に感謝の言葉を言い家の中に戻った瞬間に

怒鳴り声が聞こえた。


―――次の日。花は見事に黄色く咲いていた。


「わーわー。これが50年に1度なのねっ」


俺の肩に座る一子がはしゃぐ。一子の隣には京が座っている。


「・・・・・正直、待たせるわりには凄く綺麗な花でもないな」


「俺も思った」


「ま、50年に1度なら感慨深いがな」


「手触りとか普通の草なのにねー」


「あんまり触るとかぶれるかもよー」


「うわわ、マジで?」


「おい、俺の手に擦り付けるな」


「旅人さんが守った花だ!放っておいても自力で咲けたなんて考えはこの際ナシで!」


「図々しいけど、そっちの方が楽しいよね」


「ったく、本当仲いいねぇあんたら。ほら、写真撮るんだろ。パシャリといくわよ」


「よし、お前等、集合!写真を撮るぞ!」


俺の指示に皆が一ヵ所に集まる。不意にこの場に感じた事が無い気が1つ感じだ。その気を探ってみると


「・・・・・」


遠くでじっと俺達を見ている白い髪に赤い瞳の女の子が佇んでいた。


「お前等、ちょっと待っていろ」


皆から姿を消して謎の女の子の前に移動した。


「!?」


「一緒に撮るか?」


「え・・・・・」


「羨ましそうに見ているからそうじゃないのか?」


「・・・・・」


女の子は控えめにコクリと首を縦に振った。この子、どこか京に似ている。・・・・・放っておけないな。


「よし、おいで。一緒にあの花を撮ろう」


「・・・・・え・・・・・え、と・・・・・」


「大丈夫、緊張しないで」


女の子を抱き抱える。・・・・・!軽い、京も軽いがこの子も軽い・・・・・。だが、今は皆と写真を

撮ることが重要だ。皆のところに戻ると知らない女の子がいる事に気づき不思議そうに俺を見詰める


「この子も混ざりたいそうだ。翔一、いいだろう?」


「旅人さんがそう言うなら問題ないぜ!」


「お、その子新顔かい?」


「今さっき連れてきました。仲間に入りたさそうで」


「皆で撮る写真は人数が多いほど思い出に成るからね。さぁとるよー。はいチーズ」


カシャッ!


ガクトの母親の手によって記念写真が撮れた。その後、俺達はリュウゼツランを見ながら話した。


「資料の色より、真っ黄色だな。この竜舌蘭」


「竜舌蘭の中でも変わり種っぽいよな〜」


目に焼き付くような、純然たる黄色の花弁だ。花の形はさほどではないが、色は美しい。


「ね、またこの花見るとしたら50年後?」


「だな。私達は60歳ぐらいだぞ」


「その時は旅人さんもとっくにじーさんだなぁ」


「ああ、そうだろうな(実際、それ以上生きているんだけどな)」


「私は壮絶な修行より、若々しいままだろうが」


「この人の場合、本当になりそうなんだよね・・・・・」


「また皆で一緒に写真を撮りたいなー」


「はは、面白いな。50年前の今と同じポーズでな」


「俺ギックリ腰になってたりして」


「き、君も。元気だったら、その時は来なよ」


「う、うん」


「・・・・・」


50年後か・・・・・。その時の俺はどうなっているんだろう


「さて、突然の参加で名前を聞いていなかったな。俺は旅人と言う名前だ。お前の名前は?」


「・・・・・ゆ・・・・・き・・・・・」


「・・・・・・」


「僕の名前は、小雪!」


-5-
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