小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

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別れ


「・・・・・そろそろ探しに行くとするか」


『それでは、あの子供達と別れる事に成りますね』


「ああ、人は何時か別れの時が来る。しょうがない事さ」


『・・・・・そうだな』


テントや外に置いてある器具や道具を異空間に仕舞い、手ごろな荷物を纏め始める。―――そこに


「旅人さぁーん!」


何時ものように大和達が原っぱにいる俺に近づく。最近、一緒に遊ぶようになった小雪ことユキとユキの件で

色々とあってユキの友達に成った2人の子供も別の所から近づいてきた。


「あれ、旅人さん。どうしてテントが無く成っているの?」


「ああ、そろそろまた旅に出ようと思って片づけた」


「え・・・・・」


「だから、お前達と遊ぶのは今日で最後に成る」


「旅人さん、もういなくなっちゃうの?」


「そうだな。もう京達とお別れだ」


「・・・・・やだ」


「・・・・・」


「行っちゃやだ!」


京が小さい身体で俺の足にしがみつく。反対の足にユキもしがみ付いた


「旅人のお兄ちゃん!行っちゃダメ!」


「・・・・・ごめんな、もう決めた事なんだ」


「何でだよ!ずっと此処にいればいいじゃないか!」


「俺は旅人だって言っただろう?今度は違うところに旅をするんだ」


「俺達の事が嫌いになったのか!?俺たちと遊ぶのが嫌になったのか!?」


「いや、嫌ってもなければお前達と遊ぶのが嫌になった訳じゃないんだ。翔一、俺は他の所に

行きたいんだよ。冒険の続きをするだけだ」


「私は認めないぞ!旅人さんがいなくなるなんて!」


「百代・・・・・」


「言ったじゃないか!私の遊び相手に成ってくれるって!約束したじゃないか!」


「言葉が足りないぞ。有限だがそれでもいいなら遊び相手に成ると改めて言った筈だ」


「旅人さん、行かないでぇー!」


一子が涙を流しながら一誠に請う。


「一子・・・・・俺を困らせないでくれ。人は何時か別れの時があるんだ。それをお前等も何時かその時が

来る。そして、それが今なんだ」


「関係無い!関係無いですよ旅人さん!僕達は旅人さんがいるから僕達が此処にいるんだ!」


「卓也・・・・・」


「そうだぜ!旅人さんのお陰で俺達はこうしていられるんだ!旅人さんがいない生活と遊びだなんて

考えたくない!」


「岳人、お前・・・・・」


「姉さん、お爺ちゃんを呼んで旅人さんをここに留まらせるように説得してもらおう!」


「大和、そんな事をしても無駄だ」


首を横に振り大和の考えを否定する。だけど、百代は大和の指示に従い


「クソボケジジイ!」


ドヒュンッ!


「こらモモ!またワシの悪口を言ったな!?今日と言う今日は―――」


「ジジイ!頼む!旅人さんを止めてくれ!」


「んむ?どう言う事じゃ?」


「ああ、それは―――」


再び一秒の間も置かず現れた鉄心に事情を説明する。


「ふむ。そう言う事じゃったのか・・・・・」


「ジジイ!」


「お爺ちゃん!お願い!旅人さんを行かせないで!」


「まあ、こんな感じで困っていた」


鉄心は百代に顔を向けて申し訳なさそうに口を開く。


「・・・・・モモ、ワシは旅人を引き止める権利は無いのじゃ。じゃから旅人殿をこのまま

行かせるべきじゃ」


「っ!何でだ!?」


「旅人殿は世界中を旅している。いわば旅人の人生なのじゃ。世界を渡り、人々と触れ合い、色んなものを

学び己を知り世界を知る。旅人の人生は旅人の物。モモ、それに子供達。旅人殿の人生はお主達の

玩具ではないぞい」


「・・・・・っ」


「それに俺は今すぐ旅に出る訳じゃない。夕方までいるつもりだ。お前達と最後に遊ぶ為にな」


「それでも・・・・・もう二度と会えなくなるじゃないか」


「おいおい、俺は旅に出たら死んじゃうのかよ?俺は死なないさ。しばらくしたらまた、俺はここに戻る」


「しばらくって何時なんだ?」


「さあ、お前達が大きく成長した頃には戻るかもな?」


未だ、俺の足にしがみつくユキと京の頭を撫でる。


「その頃に百代は最強の武闘家となっているだろうし、お前等に彼氏や彼女ができているかもしれないな」


「私は旅人さんが好きだよ!」


「僕も旅人のお兄ちゃんが大好き!」


「あはは、俺も2人の事が好きだよ」


ギュと優しく二人を抱き締める。不意に頬に柔らかくて温かい感触が伝わった。


「えへへ♪」


「・・・・・」


「ふぉふぉふぉ、お主。好かれておるのう」


その感触に俺は何をされたのか気付いた。鉄心の笑いに俺は苦笑を浮かべるしか出来なかった。


「・・・・・」


「百代?」


「・・・・・うん、決めた」


「・・・・・何がだ?」


「私もする」


「はっ―――?」


近づいてきた百代に顔を両手で挟まれてしまい。百代が顔を近づけて俺の唇に自分の唇を押しつけた。


「・・・・・っ!?」


「こうすれば絶対に戻ってくると本で書いてあった。同時にこれは好きな人とするものだと書いてあった」


「・・・・・鉄心」


「・・・・・なんじゃい」


「これ、不可抗力だよな?」


「完璧に不可抗力じゃのう」


「そうか―――ならその闘気を抑えてくれないか?」


「ふぉふぉふぉ―――旅人殿。ちぃとばかし、ワシと戦ってはもらえないじゃろうか?」


「絶対に怒っているよな!?俺、そんな性癖ではないからな!?」


「ぬかせ!よくもワシの可愛い孫からチューをしてもらいおって羨ましいぞい!」


「嫉妬か!?自分にはしてもらわないからって俺にあたるか!?」


「食らえ!川神流、無双正拳突き!」


「しかもいきなり奥義!?お前等!離れていろ!」


ドゴンッ!


「ぬおおおおおおおおおおおおおっ!」


「いい迷惑だ!こんちくしょうがああああああああああああっ!」


ドガガガガガッ!ガッ!バキッ!ドゴッ!ゴン!ガガガガガガッ!


「・・・・・凄い、ジジイと余裕で戦っている」


「速過ぎて何がなんだが・・・・・」


「それに僕達、金色の光に包まれているね」


「これ、竜舌蘭の時にもしてもらった奴だよな」


「ぬっ!ここまでワシと渡り合えるとは・・・・・!川神流、無双正拳突き!」


「もう見切ってその技は完全に覚えた!川神流、無双正拳突きっ!」


ドオオオオオオオオオオンッ!


「川神流の技をコピーしたじゃと!?」


「というか、ただのストレートパンチが必殺技に昇華しただけじゃないか!」


「なら、これならどうじゃ!顕現の参・毘沙門天!」


「―――っ!?」


バシュンッ!


「なっ―――!?」


「悪いが、俺に異なる力は効かないんだよ!それが気での攻撃でもな!」


黒い籠手を瞬時で装着し、天から伸びた足を消失させた。


「食らえ―――轟龍波!」


腰まで引いた両手の間に気を集束させ鉄心に突き出し龍と化となっている気のビームを放った。


「ぬっ!この攻撃を食らったらただでは―――っ!?」


「何かする前に動きを封じさせてもらったぜ?」


瞳を赤く煌めかせ、鉄心の動きを停めた。


ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!


俺の一撃は鉄心に直撃し天に昇って消失した。


ドサッ!


「今の攻撃は相手の気を奪い取る。鉄心、今のお前じゃあ百代にすら勝てない。ま、

一日もすれば気は元に戻るさ」


原っぱに倒れた鉄心に近づき声を掛ける。


「・・・・・あのジジイが負けた・・・・・」


「えっ、そんなに凄い事なの?」


「ああ、ジジイは現役の時は負け知らずだと聞いている。でも今は現役から引いてもまだまだ強いらしい。

そんなジジイに旅人さんは勝った・・・・・」


「そうなんだ・・・・・」


「ははは・・・・・、私は決めたぞ・・・・・!」


「姉さん?」


「私はもっともっと修行して強く成って何時か旅人さんと戦うんだ!今の私では旅人さんにとっては

赤子だろうが成長した私ならきっと渡り合える筈!」


百代は拳を握りしめ、目標を目指す決意を示す。


「―――さて、お前達。お前達とこれで最後の遊びに成るが今日は思いきり遊ぼう」


ズルズルと鉄心を引きずって近づく一誠に子供達は―――


「じゃあ、旅人さんが鬼で私達が逃げる!」


「皆、散れ!」


既に百代達と囲んでいた金色の光が解かれていたので一誠から逃げていく。


「はっはっは!俺から逃げられると思うなよ?全員、捕まえてやる!」


ドヒュンッ!


逃げる子供達をもの凄い速さで追いかける。子供達と一誠は夕方に成るまで笑いを絶やさず。

鉄心も途中参加で色々な遊びをした。


「―――さて、もう夕日に成った」


夕陽を背景に子供達を見詰める。


「俺は旅に出る。お前等、元気でな」


「旅人さん・・・・・」


「翔一、最初に出会ったのはお前で良かったと思っている。このバンダナ、何時までも付けているよ」


「ああ!友情の印を失くしたら怒るからな!」


「大和、お前はお前らしく生きてみろ」


「分かった」


「本当に行っちゃうの・・・・・?」


「一子、もう泣き虫は卒業しないとな。じゃないといじめられちゃうぞ?」


「うん!アタシ、頑張る!」


「岳人、お前はもう少し勉強をしろ。それとその力で仲間を守れ。男だからな」


「最後の別れだって言うのにそれかよ!?・・・・・ああ、分かっているさ。仲間は俺が守る」


「卓也、もう少し身体を鍛えるようにしないとな。でも、お前しか出来ない事がある。

それを活かしてこいつ等をサポートするんだ」


「はい、僕なりに頑張ってみます!」


「百代」


「ああ」


「お前が強く成る日を俺は楽しみにしている。お前は何時か世界最強の『武神』となるだろう」


「武神・・・・・」


「俺が再びこの町に戻ったら―――百代。お前と戦おう」


「ああ!絶対だぞ!私のファーストキスをあげたんだ!絶対に戻って来いよ!」


「京、ユキ」


「旅人さん・・・・・」


「旅人のお兄ちゃん・・・・・」


「また俺は何時か会いに行く。それまで元気に生きていて欲しい。お前達には

掛け替えのない友達がいるんだ」


「「うん・・・・・」」


「2人とも、ユキと一緒に元気でな」


一誠がユキの傍にいる2人の子供に声を掛ける。2人は何も言わずコクリと頷く。


「鉄心、また何時か戦おうな」


「うむ。今度は負けやせん」


「ははは、まだまだ死にそうにないな」


「ふぉふぉふぉ。ワシはまだまだ現役じゃぞい」


「ふぅ・・・・・行くとするか」


荷物を手に持って一誠はもう一度、子供達を見詰める。


「旅人さん!」


「翔一?」


「俺はさようならって絶対に言わない!俺はこう言うぜ!―――またな!」


「・・・・・!」


またな・・・・・その言葉は何時かもう一度再会すると信じているから言える言葉。

一誠は口の端を吊り上げて拳を突き出して親指を立てる。


「ああ、また会おう!―――じゃあな!」


シュンッ!


一誠の姿が瞬時で消えた。―――刹那。


「・・・・・ん?」


上空から大量の金色の羽が降り注いだ。


「わぁー!きれー!」


「金色の羽なんて超レア!」


「きっと旅人さんだ!よぉーし!一杯集めて宝物にするぞぉー!」


「あははっ!旅人さん!また会おうなぁー!」


「またねー!」


その後、金色の羽を集めた子供達は家に持ち帰り色んな物に詰めて大事に宝物として部屋に置いた。

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