小説『真剣でD×Dに恋しなさい!S』
作者:ダーク・シリウス()

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四月二十四日(金)



「さあて、学校に行くぞー」


『行ってらっしゃーい!』


「行ってくる・・・・・お前達も一緒だがな」


『うん、そうだねー。だって心の中にいるんだもん』


『それと、あいつらが暴れたいと言っているが・・・・・』


「しょーもない。今夜にでも闇の組織に放り込んで暴れさせるか」


『ですね』


『今度はどこの?』


「中国の国のとある闇の組織だ」


『中国ですか』


「最近になって組織が拡大したようでそれを潰しに行かせる」


『・・・・・早く暴れさせろと言っているよ?』


「サマエル、寝かせろ」


『うん、解ったよ』


サマエルに指示して川神学園へと赴く一誠。


―――2−F


「転入生を紹介しよう。入りたまえ」


と、2−Fの担任である小島梅子の言葉と同時にこの教室の扉が開け放たれた。今日このクラスに転入生が

入ってくる事になっている。


「グーテン・モルゲン」


歳をとった軍服を着込んだドイツ人が開口一番にドイツ語で挨拶をしてきた


「え?あ、あの人が転入生だっていうの?ちょっと老けてる感じが無いかしら?」


「そこが問題じゃねーよ!」


「こらぁ!身体的特徴を指摘してはいけません!」


「突っ込むところ違う違う。転入生そのものが突っ込める塊でしょーが」


「ツッコムとかエロ・・・・・勃ってるだけで席から立てん!」


「ああ!?あの時の―――」


「おお、君か。また会ったね」


「本当に転入してきちゃったよ・・・・・」


「こんなオッサン補強してどーすんだ」


「皆、勘違いしないよう。この方は転入生の保護者だ」


「あ、そーなんだ、びっくりしたなぁ・・・・・」


「こら熊飼!HR中だぞ!ピザを食うな!」


ビシャンッ!


「あ、ごめんなさい!驚いてお腹空いちゃって」


「罰は百叩き。これも日本の伝統ですな」


「―――あの、ご息女?」


「ご安心を。時間には正確な娘です。間もなく駈けて参りましょう」


・・・・・駈けて参る?なんか、嫌な予感がしてきたぞ・・・・・


「グラウンドを見てみるがいい」


「・・・・・?げっ!?」


「どうした、何が見えるんだ?」


「女の子が学校に乗りこんできた」


「なんだそりゃあ!」


「何かあるらしいな。よし、見たい者は見て良し」


担任の教師が許可を言い渡すと皆が窓の方にザワザワと群がってきた


「うん、確かに乗り込んできたねぇ・・・・・『馬』で」


白馬に乗りこの学校に乗りこんできた金髪の少女。馬を止めて馬上から口を開いた


「クリスティアーネ・フリードリヒ!ドイツ・リューベックより推参!この寺小屋で今より世話になる!」


馬に乗り、風にたなびく金髪が美しい。


「おおお、金髪さん!可愛くね?マジ可愛くね!?」


「超、当りなんですけどぉぉぉぉぉ!!!」


乗りこんできた美少女を目にし男子達が咆哮する。


「だっはっはっはっ、馬かよ!面白ぇ、あいつ面白ぇ!」


「ぐっ、女かよ。まずった!」


「あっ、俺もボロ負けだ!でもそんなの帳消しに成るくらいレベル高ぇよ!」


「うわ・・・・・これはもう完全に負けたわ・・・・・でも馬って」


「日本では馬は交通の手段だろう」


「や、あの、道路とか見ましたよね?」


「自動車が多かった。だがTVでは馬も走っている」


「それ時代劇だと思うんですけど」


「おお、あれはまさか・・・・・」


呆れる女子生徒にドイツ人がグラウンドにいる娘を眺めていると突然感服した。


「・・・・・?うわ!よりによって例外が・・・・・」


グラウンドでは乗馬している転入生に金色の人力車を引いて現れたメイドと人力車に座っている

金色の服を着込み額に×印がある男が現れた。


「フハハ!転入生が朝から馬で登校とはやるな!」


「おはようございますっ☆」


「それは・・・・・ジンリキシャ!」


「うむ。そして我はヒーロー、九鬼英雄である!」


「自分はクリス!馬上にてご免」


「我が名は九鬼英雄!いずれ世界を総べる者だ!この栄光の印、その目に焼き付けるがいい!」


「おお。まるで遠山!」


感激する転入生と人力車で登校した男とメイドを見てドイツ人も感激する。


「人力車で登校の生徒もいるとは流石はサムライの国ですな。ハハハ」


2−Fの生徒達があんぐりとしていた。


「・・・・・この人達ってもしかして」


「ああ・・・・・『日本を勘違いしている外国人』だ」


未だ、グラウンドにいる転入生はクラスから自分を見るドイツ人を見ている事に気づく


「父様はあちらにおられたか。出は自分も!―――行くぞ浜千鳥!」


馬の腹を蹴り校内に入ろうとする。


「・・・・・馬からは降りて来い」


担任の小島梅子は転入生の行動に頭を抱える


――――2−S


2−S・・・・・成績優秀の中で、名門への進学を希望する人間達で結成された特進クラス。

そんなクラスにも転入生が入る事になっている


「あー、お前等。このクラスに転入してくる生徒がいる」


「珍しいですね?」


「ああ、しかもどのクラスに振り分けられるのかテストをしたところ全ての問題を解いた。

このクラスに編入するには文句なしの学力だ」


「それは、それは・・・・・」


「で、転入生は男と女、どっちだ?」


「男だ」


「そうですか、ふふっ。どんな人でしょうかね準?」


「若、男と聞いて嬉しそうだな」


「トーマの守備範囲は無限大なのだー」


「フハハ!我が友、トーマは相変わらずだな!」


「そんじゃあ、そろっと入ってきてもらおうか。おい、入っても良いぞ」


2−Sの担任、宇佐美巨人がドアの方に声を掛ける。ドアが開け放たれ、教室に入ってくる1人の男。

―――その男を見て目を大きく見開く数人がいた。


「じゃあ、自己紹介をしときな」


「―――今日からこのクラスに入る事に成った兵藤一誠だ。よろしく」


「皆、こいつと仲良くするように。兵藤、お前の席は―――」


「旅人のお兄ちゃん!」


突然、もの凄い速さで白い髪の女子生徒が一誠に抱き付いた。


「おっと」


抱きついてきた女子生徒を抱えてクルクルと回り、改めて女子生徒の顔を見る


「・・・・・ユキか?」


「うん!そうだよ!旅人のお兄ちゃん!」


「―――ははっ、大きく成ったなぁ」


「僕だけじゃないよ!準とトーマもいるよ!」


「ああ、今気づいているよ。他にも懐かしい奴がいる」


「た、旅人さん・・・・・?」


「ほ、本当にアンタ・・・・・なのか?」


「おいおい、俺の事を忘れているのか?悲しいなぁ・・・・・」


「いや、ちゃんと覚えているよ。アンタと過ごした日々を一日たりとも忘れた事が無い」


「ええ、また会えて嬉しいですよ・・・・・旅人さん」


「ついでに言うと俺の名前は兵藤一誠だ。旅人は偽名にしか過ぎない。これからは名前で言うようにな」


「―――旅人殿!」


「お久しぶりですっ☆旅人様!」


「ああ、お前達も久しぶりだな。英雄とあずみ」


「お久しぶりです!我の命の恩人よ!また貴殿とこうして再び巡り合えて我は嬉しいですぞ!」


「旅人?お前等、知り合いなのか?」


「こいつらが幼少の時からな。よく遊んでいた」


「はい、懐かしいですね」


「ていうか、旅人さん。顔が老けていないよな?俺達より年上なのに俺達と同じぐらいに見えるぞ」


「俺の身体はそう言う体質なんだよ」


「体質って・・・・・羨ましいな、おい」


「さて、あずみ。再会の祝いと新入生歓迎を称して俺と決闘をしてくれるか?このクラスの中で

お前が一番強いからな」


「うむ。旅人殿の戦いを我も見たい。あずみ、頼めるか?」


「はい!英雄様のご命令とならばこのあずみ、決闘を受理致します!」


「おいおい、今はHR中だぞ。それと、肉体を使用する決闘の場合は職員会での了承が必要だ」


「そんな事は知っている。でも此処の学長が了承すれば問題ないだろう」


「兵藤、何を言って・・・・?」


「なっ、良いだろう?鉄心」


「ほっほっ。いいよ、ワシの特権で了承する」


「学長。何時の間に・・・・・」


「さっきからいたぞい。此奴は気付いておったがの。兵藤、忍足。今すぐやんなさい。

ワシが責任持って見届けよう」


クラス中が大騒ぎとなった。


「新入生歓迎なんてものは勢いが大事じゃからな(それに兵藤の実力を見てみたいしのう)」


「あずみ、手加減しないがいいな?」


「はいっ☆よろしくお願いします!」


「フハハ!これは面白い余興となるに違いない!」


「僕は旅人のお兄ちゃんが勝つって信じるよー!」


「ユキ、旅人さんではなく一誠さんと呼ぶようにしましょう」


「だな、あの人はどんな人でもあの人だ」


「にょほほ。Sクラスに入るからには此方を納得させるほどの力では認めんのじゃ」


「それじゃあ、グラウンドに行こうか」


「きゃるーん☆そうしましょう!」


一誠と忍足あずみと言うメイドは教室から出てグラウンドへと向かった。一拍して


『今より第一グラウンドで、決闘が行われます。内容は武器有りの戦闘。見学希望者は

第一グラウンドへ―――』



―――グラウンド


グラウンドに見物達が集まってくる。本人達の希望があれば見学不可にもできるが。他のクラスや違う

学年の生徒も面白がって集まりお祭り状態となっていた。


「朝飯用の弁当いかがっすかぁ!?」


商魂逞しいところは臨時の決闘でも対応が早い。そんな中、2−Fの生徒達も見学しにきていた。


「2−Sが決闘をするなんて珍しいな?相手は誰だ?」


「あーあー、せっかく私達も決闘をしようとしたのに・・・・・」


「また今度だな」


「よー、弟」


「あっ、姉さん」


「誰が決闘をするんだ?」


「九鬼のメイドだよ。相手はまだ現れていないけど」


「ふぅん・・・・・」


「これより川神学園伝統、決闘の義を執り行う!」


「決闘の義!決闘の犠だ!」


「いいぞー、やれー!」


「でも、相手がいないぞ?」


「そうだな。どうしたんだ?」


観客達は盛り上がる中、相手がいない事に疑問する。すると決闘を見に来た野次馬から腰に二つの剣を

帯剣している1人の男子が現れてグラウンドの中央へ向かって行く。


「・・・・・えっ」


「・・・・・あの人」


「まさか・・・・・そんな・・・・・」


「嘘・・・・・」


「何で・・・・・どうして・・・・・」


「2人とも、前へ出て名乗りを上げるがよい!」


「2年S組、忍足あずみですっ☆」


「―――今日より2年S組、兵藤一誠」


「・・・・・旅人さん?」


「ワシが立ち会いのもと、決闘を許可する。勝負がつくまでは、何があっても止めぬ。が、

勝負がついたにも拘らず攻撃を行おうとしたらワシが介入させてもらう、良いな?」


「了解ですっ☆」


「了解」


「間違いない・・・・・あの人は・・・・・旅人さんだ!」


「旅人さん・・・・・!」


「―――いざ尋常に、はじめいっ!」


「行くぞ!」


一誠が瞬時であずみの背後に回り。


スパンッ!


ハリセンで叩いた。


「っ―――!?」


「遅いぞ。これが武器だったらお前は死んでいたな」


「っ、やろう!」


手に持っている小太刀で一誠の首を引き裂こうと逆手で持ち振る。一歩下がって小太刀の刃から

回避して再びあずみに接近する


「そら!」


「っ!」


振り下ろされる拳があずみに襲う。が、間一髪あずみが回避して拳がグラウンドに直撃した。


ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


一誠を中心に巨大なクレーターが生じた。学園が激しく揺れ、窓ガラスが殆ど割れた。


「あっ、失敗した」


「お前・・・・・!あたいを殺す気か!」


「いや、ははは、悪い」


「(接近戦は不味いな。なら、長距離から狙うしか・・・・・!)」


「長距離から攻撃しようと思うなよ?」


「―――っ!」


「月歩」


爆発的な脚力で空高く跳ぶ。ある程度の高さから一誠は足を大きく振るった。


「嵐脚」


足を振って生じた鎌風があずみを襲う。


「くっ!」


あずみが避け続ける最中、グラウンドが次々と裂かれ足場が不安定な状態に成っていく。


「これで最後にするか。ボロボロになっちゃうしな」


そう呟き手のひらに気を集束しあずみに突き出す。


「終わりだ」


ドウッ!


膨大な気のエネルギーがあずみの視界を真っ白に埋め尽くし―――轟音を立てて直撃した。

煙が晴れる頃にはあずみは満身創痍で地面に倒れ気絶していた。


「それまで!勝者、兵藤一誠!」


「まっ、軽くやってこんなものか」


ストンと一誠がグラウンドに降り立った。


「お主、少しやり過ぎじゃぞい」


「ん?これでも軽めだぞ」


「本気を出していないと?」


「本気でやったらこの学校が崩壊するって」


パチンッ!


指を鳴らしたその瞬間、学園とグラウンドが光に包まれた。光が消えると仕合する前の状態に戻った。


「なんと・・・・・」


「さて、今度はこいつを治さないとな」


そう言って―――背に2対の金色の翼を出してあずみを包んだ。その光景に鉄心や見学しにきていた全校

生徒は目を大きく見開く。少しして翼を消失すると傷が完全に治っているあずみが一誠の腕に寝息を立てて

寝ていた。


「兵藤・・・・・お主は一体・・・・・」


「ただの旅人さ」


「―――旅人さん!」


「ん?」


「はあっ!」


突然、拳を突き出してきた長い黒髪に赤い瞳の女子生徒。一誠は、懐かしそうな表情を浮かべ―――突き

出された拳を手で軌道を逸らし、瞬時であずみをグラウンドへ置いて背後に回り首を掴み腕も掴んで

極め地面に倒した。


「・・・・・そうか、お前か・・・・・懐かしく、久しぶりだな。―――百代」


「・・・・・ははっ、やっぱり旅人さんだ。こんな事できるのはあなたしかいない!」


全身に気を迸らせて一誠を強引に引き離す。直ぐに体勢を立て直し、黒い長髪に赤い瞳の女子生徒

―――百代が嬉々として一誠に接近する。


「待っていた!待っていたぞ!あなたと戦えるこの時を!」


「相変わらずヤンチャのようだな!」


ガガガガガガッ!ガッ!ドッ!ドガッ!ドンッ!


一誠と百代が激しく拳を突き出し己の身体を武器にして戦い始める。もの凄い速さで二つの黒い影が

交錯の連続をしていく。


ドンッ!


「あははは!嬉しい!楽しい!やはり旅人さんは最高だ!」


「お前の噂は聞いているぞ!武神、四天王と称されているようだな!」


「私はそんな称号を欲しくて強く成った訳ではない!全ては戦う生甲斐を求め、あなたと快く

戦う為に強く成ったんだ!」


ドゴッ!ガガガガガガッ!


「それで、感想は?」


「―――私は、旅人さんの事が好きだ!」


「・・・・・はい?」


「この勝負で私が勝ったら私と付き合ってもらうぞ!」


「―――いい加減にせんか、この馬鹿者共がぁあああああああああああああああっ!顕現の参・毘沙門天!」


「「な―――っ!?」」


ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!


一誠と百代は天から伸びた足に踏み潰された。0.001秒を切る攻撃を回避しきれ―――。


「ぬっ!?」


「―――全く、転入初日から過激な歓迎だな」


『主、怪我はございませんか?』


「ああ、それとよく気がついたな」


『嫌な予感がしたんだよねぇー』


『主には悪いがこれも主を守る為』


「ま、お前達の想いは十分に伝わっているよ。ありがとうな」


―――3匹のドラゴンが一誠と百代を守るように天から伸びた足を受け止めていた。


「なっ―――!?」


「ド、ドラゴン・・・・・!?」


『ふんっ!』


獰猛そうなドラゴンがギュッと握りしめ、天から伸びた足を殴った瞬間に足が消失した。


「旅人さん・・・・・あなたは一体・・・・・!?」


「俺は兵藤一誠。ただの旅人さ」


腕の中にいる百代が目を見開いて一誠に問うが一誠はただそう言うだけだった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――2−S教室


「いやー、驚きました。一誠さん」


「ん?」


「流石に俺も度肝を抜かれたぞ」


「ああ、俺も驚かすつもりはなかったんだがな」


「イッセー!」


「おっと、ユキは相変わらず甘えん坊だな」


「ウェーイ♪」


「お前等も元気そうで俺も安心したよ」


「何言っているんだ。全部、一誠さんのおかげでしょうに」


「はい、準の言う通りです」


「当然の事をしただけさ。ユキ、榊原さんは元気にしているか?」


「うん!何時も元気だよー!」


「今度、榊原さんに顔だしに行くかな。『3人』の世話してもらっているからお礼も言いたいし」


「わーい!イッセーが遊びに来るー!」


「楽しみにしていますよ」


「その時、俺の作った料理を食べてくれないか?」


「おっ、準は料理を作れるのか。それは楽しみだ」


ワイワイと一誠は同じSクラスの榊原小雪、葵冬馬、井上準と雑談をする。


「一誠殿!」


「英雄、どうした?」


「是非、我の家にも来ていただきたい!」


「ん、解った。今度、お前の家にも遊びに行く」


「うむ。我等も楽しみにして待っておりますぞ」


「(我等・・・・・ね)」


―――昼休み


あずみと決闘、百代の乱入戦から数時間後。


「一誠さん、一緒に昼食を食べましょう」


「イッセー、一緒に食べよー?」


「皆で食べる食事は美味いって何時も一誠さんが言っていたもんな」


「ん、解った。一緒に食べよう」


―――ガラッ!


一誠が弁当を持って3人に近づいた時、不意にSクラスの扉が開いた。懐かしい気を感知し

開け放たれた扉に顔を向ける一誠。


「「「「「「旅人さん!」」」」」」


「・・・・・おお、大和、翔一、岳人、卓也、一子、京。お前らか?」


「おー、皆、集まってきたねー」


「そう言えば、彼等も旅人さん・・・・・いえ、一誠さんと小さい時からずっと一緒に遊んでいましたね」


「俺等は途中参加だけどな。で、途中から遊ばなくなった」


「旅人さん!」


紫の髪の女子生徒が一誠に抱き付く。一誠も抱きしめ返して頭を撫でる


「京、お前も元気そうだな。それに見間違えたぞ?」


「旅人さん、会いたかった!ずっと、ずっと会いたかった!」


「ははっ、甘えん坊な所はユキと一緒で変わらないなぁ・・・・・」


「むぅ、イッセーから離れてよー」


「いや」


「離れてよ」


「いや!」


「離れてよー!」


「・・・・・このやりとりもまた懐かしい」


「あはは、旅人さん。全然、顔が老けてないや」


「ああ、寧ろ、俺達と変わらないぜ」


「でも、旅人さんは旅人さんよ!」


「お前等、俺は兵藤一誠と名乗っている。これからは名前で呼べ」


「それも偽名か?」


「いや、本名だ」


「んじゃ、俺は一誠さんと呼ばせてもらうぜ!歳上だからな!」


「アタシはお兄様と呼ぶわ!」


「変な呼び方でなければ何でも言い。なあ?『人生は死ぬまでの暇つぶしかもな』君」


「ギャアアアアアアッ!?旅人さん!いま、それを言うのはやめてくれぇえええええええええええっ!」


「ハハハッ!『まぁな。俺は天才だと思う』」


「本当に勘弁して下さい!本当にお願いします!俺の黒歴史を掘り返さないでくれぇぇえええええええっ!」


「あははー、大和。お兄様にいじられているわ!」


「楽しみにしていたもんなぁー。『大和が成長したらこいつが言った言葉を言っていじってやる』ってさ」


「それがいま、叶って嬉しそうだな」


「おっと、忘れるところだった。一誠さん!一緒に飯を食べようぜ!屋上でよ!」


「ん?屋上か・・・・・この3人も良いか?」


「勿論!」


「ありがとうな、風間」


「ありがとうございます」


「ありがとうねー」


「ああ、本当にありがとうなぁ。キャップ」


ガシッ!


「え?」


「よぉし、先に私は屋上で待っているからなー!」


何時の間にか一誠の襟を掴んで現れた百代が風の如くSクラスから一誠を連れて屋上に到着した。


「ふふ、一誠。ようやく会えたぞぉー♪」


「ご満悦のご様子だな?」


「当り前だ!この日をどれだけ待ったと思う!」


「で、何故に俺にのしかかるのかご説明を願う」


「私の遊び相手がいなくてつまらなかったからなぁ〜。その分、私とたっぷり遊ぼうではないか」


「俺は旅人だから有限だと言ったよな?」


「ああ、言ったな。だが、私には関係ない!」


「おい」


「さぁーて、一誠を弄ぶぞぅ・・・・・」


バンッ!


「「そうはさせない!」」


勢いよく屋上の扉を開け放ったユキと京。2人は百代から一誠を引き離して今度は2人が抱き付いた。


「むっ、意外と早いな・・・・・!」


「残念だったな?」


「ま、いい。これから私は積極的に接するからな、覚悟しろよ?」


「イッセー!一緒に食べよう!ううん、僕が食べさせてあげる!」


「はい!私のお弁当も食べて!」


京から突き出された弁当の中身を見ると一誠は冷汗を流す。


「・・・・・赤ばっかり」


「京は辛党だ。味覚も死んでいるから京の料理は全て激辛だ」


「一誠さん・・・・・頑張れ」


「「はい、あーん」」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



―――放課後


「か、辛かったぞ・・・・・」


「見ている俺達にも辛そうな弁当だったぞ・・・・・」


「イッセー、大丈夫ー?」


「な、何とか・・・・・」


「はい、マシュマロ食べて元気になって」


「ん、ありがとう・・・・・甘くて美味しいな」


「えへへ♪」


「さて、俺達は帰るけど一誠さんはどうします?」


「少し、学校を見回る事にする」


「私達が案内しましょうか?」


「いや、榊原さんが心配するだろう?大丈夫だ、榊原さんによろしく伝えておいてくれ」


「解りました。では、また会いましょう」


「うー、イッセー。いなくなっちゃやだよー?」


「はは、もうどこにも行かないさ」


「一誠さんは約束を破った事は無いんだ。ユキも知っているだろう?」


「うん・・・・・」


「そんな顔をするなよ。俺は2度とユキの前から消えたりしないって」


不安そうな表情をするユキに優しく頭を撫でる。


「冬馬、準。ユキを頼んだ」


「はい、それが一誠さんとの約束の一つですからね」


「そうそう」


「それを聞いて安心した。じゃあな」


「はい、さようなら」


「イッセー、またねー!」


「さようなら」


3人は一誠と別れ家に帰って行った。


「さて、学校を探検しようかな」


2−Sから出て校内を探検し出す。図書室、茶道室、音楽室、未使用の部屋、屋上、食堂、体育館、

校内にある部屋を全て見回った。一誠は外にも見回る事にする。


「・・・・・ん?」


テニスコートを見ていた一誠が弓道場を見つけた。


「へぇ、弓道場か・・・・・面白そうだ。どんな奴等が射ているだろうな」


興味津々に弓道場へと赴く。入口から堂々と侵入し静かに中を覗く。


「・・・・・女子しかいねぇ・・・・・」


―――タンッ!


「しかも、まあまあの腕だな。んー・・・・・」


弓道部の部員達の弓の射方を見ているとそわそわしだす。達人級の弓の腕を持つ人物がいればその人物に

指導してもらいもっと上達できるのにこの弓道場にいる部員の中にはそれらしき人物がいない。

一誠はその事に歯痒い思いをしていた所に


「ん?お前は・・・・・」


「あっ、気付かれた」


「お前、ここで何をしている?」


弓道部の顧問の先生に気づかれた。ポリポリと頬を掻いて「学校を見回っていた」と言うと納得したのか

首を縦に振った。


「なるほどな。今日、転入してきたばかりだから何処にどの場所があるのか知ろうとしていたのだな?」


「その通り。で、この弓道部に辿りついた」


「ふむ・・・・・」


「なんだ?」


「いや、お前と忍足の決闘後に直江達が『旅人さんが帰ってきた!』と大はしゃぎしていたもんで

どんな人物かと思ってな」


「あー、あいつらか。あいつらとの関係を言うと小さい時から遊んでいた中だ」


「ほう、そんな昔から知り合いだったとは・・・・・老けてないな?」


「今日で何度目だ?そんな事を言われたのは・・・・・」


「すまない。気を悪くしたのなら申し訳が無い」


「ま、それもしょうがないさ。それと一つ聞いていいか?」


「何だ?」


「誰?」


「・・・・・そう言えば、初対面で私を知らなかったな。私は2−Fの担任を務めている小島梅子だ。

弓道部の顧問もしている」


「小島梅子ね。じゃあ、小島先生と呼ぶよ。まだ学校の中だからな。外で出会ったら名前で呼ばせてもらう」


「お前、歳はいくつなんだ?」


「悪い、それは言えない。確かなのは小島先生より年上だ」


「・・・・・本当にそんな歳だと思えないほどの顔の肌だな」


「そういう先生も若いだろうが・・・・・」


「お世辞を言われても嬉しくないんだが・・・・・」


「・・・・・小島先生、俺も弓をやらせてはくれないか?」


「弓を?兵藤、弓を射る事ができるのか?」


「じゃなければこんな事を言わないさ」


「ふむ・・・・・いいだろう。ちょっと待っていろ」


梅子は弓矢を取りに行って再び戻ってきた。


「弓と矢だ。壊すなよ?」


「失敬な。俺は物を壊す暴れん坊だと思っているのか?」


「実際、グラウンドにクレーターを作ったではないか」


「・・・・・そこを突かれると何も言えないな」


スタスタと遠くに佇む的の前に立った。一誠の登場に弓道部の部員達はざわめきだす。だが、

一誠が矢を弦に番えて射る姿勢に入った途端、静かになった。


―――タンッ!


矢は的のど真ん中に刺さった。その結果に「うん」と呟く


「安心した、鈍っていないようだ」


「・・・・・兵藤、もう一度やってはもらえないだろうか?」


「ああ、いいぞ。もう少し弓の腕の調子を知りたかったからな」


そう言って梅子から受け取った矢を弦に番えて射る。


―――タンッ!


「なるほど・・・・・」


「なにがだ?」


「兵藤、お前は何処か部活に入る気はあるか?」


「いや、帰宅部に成るつもりだ」


「そうか、なら・・・・・こいつらに弓の指導をしてもらえないだろうか?」


「・・・・・はい?」


「お前みたいな弓の腕の者がこの弓道部に必要なんだ。ここは県内ではそこそこ強豪だが、全国を目指すには

まだまだなんだ。その為には戦力の底上げは不可欠。兵藤、こいつらの弓を見てやってくれるか?」


「・・・・・」


一誠は顎に手を乗せて思考の海に潜った。そして梅子に視線を送る。


「じゃあ、条件を飲んでくれたら良い」


「なんだ?その条件は」


「俺はたまに用事があるからあまり指導ができない。それがいいのならこいつらの弓を見て上達させて行く。

その時は真剣で指導するつもりだ」


「むう・・・・・何気に椎名と同じ条件だが・・・・・真剣でやってくれるのなら良いか」


「京も弓道部か?」


「幽霊部員だがな」


「・・・・・なら、京の分まで俺が面倒みてやるとするか」


「では?」


「今から指導してやるよ」


一誠はそう言って1人の部員に近づき指導し始める。その後、一誠の指導は梅子が弓道部に入部させたいと

思うほどの評価だった。




-9-
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