第九章 後日談と先輩と兄
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高校生としてエロ本は必須である。
また、エロに関した映像も。
そして、寮暮らしとはいえ、隠すのは男の性である。
シンプルな隠し場所はベッドの下。
少しひねって本棚に紛れ込ませる。
上級者はあえて隠さないなど。
そんな思春期の高校生男子上条当麻は令状のない家宅捜索に踏み切られていた。
クラスメイトで友人である人物。
白井紅太だ。
彼、というか今は彼女という呼び名が相応しい容姿である。
どこから仕入れてきたのか自分の学び舎の女子の制服であった。
「当麻くんはベッドの下か。年上系を学ぶ傾向があるね」
「やーめーろーよー。人の性癖をその容姿で口にしちゃだめです!」
ティーン雑誌のモデル並の容姿である。黒髪ロングに大きめのバスト。谷間を見せるように制服のボタンが外れており、スカートも短めで目のやり場に困る。
そんな彼女が自分のエロ本を持ってこれは何だと説明されるのはおかしな性癖の持ち主でなければ恥ずかしい思いをするだけである。
「ほら!」
「わー! スカート思い切り捲り上げましたよこの人!」
発言とは裏腹にばっちり見ていた。
全く持って何しにきたのだと問いたい。
「さて、言葉では否定してるけど身体が正直な当麻くん」
「なんだよ」
本題に入る気だと感じる。
「この前の爆弾事件の犯人は自首したと言ったがその後、事情聴取で風紀委員になりたいと言ったそうだ。何でもバカにしてきた風紀委員の事をよく知って出来るならば、自分と同じ境遇の人を助けたいと言ったそうだ」
「……」
それは良いことを聞いたと思う。
曲がった性根がいい方向に向かったと思う。
「初めからそういった思考になれば良かったんだけどね。ま、あのヒョロイ身体でどこまで訓練に耐えれるか分からないけど」
「台無し! ちょっと良い感じだったのに!」
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「犯人にも思う所があったんでしょうね」
「それにしても、まさか風紀委員になりたいなんて言うとは思いませんでした」
白井黒子と初春飾利は事情聴取の報告を見て驚いた。
多くは無いが、事件を起こした犯人が逆の立場。つまり、風紀委員になるという事例はある。
右の頬を腫らして、頭に小さなコブができていた犯人が自首するまでの間になにかあったのだと容易に推測できた。
お兄様かお姉様のどちらかが何かをしたと思う。
結局、事件が収束したのだが、お兄様はその日見つからなかった。
後日、事件に付いて聞いてみたが、
「気のいいヒーローが現れたんだよ。たぶん」
謎の証言を残していた。
答える気がないものに対して兄は絶対に答えない事を知っているので追求することはなかった。
事件後、風紀委員で人事が行われた。
負傷者の補充と今後凶悪犯に対しても抵抗できるように人事配置がされたのだ。
白井黒子の先輩に当たる固法美偉が第一七七支部に来ることになったのだ。
研修などで世話になった人物である。
レベル3であり、透視能力