小説『とある白井黒子の兄』
作者:葛根()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第十章 終わりの始まり兄と友人




夏休み。
それに伴う停電。
とある不幸な高校生は出会いがあり、その物語の開演が待ち構えていた。
科学とは異なる魔術の世界に足を踏み入れる事になる。

科学と魔術が交差し、不幸な主人公の物語は始まるのだ。



もう一人の主人公である白井紅太の元に妹から連絡が入った。
虚空爆破事件の犯人の少年が意識不明になり病院に搬送されたという知らせであった。
容態は謎の意識不明が続いている状態で、身体のどこにも異常がない。
ただ、意識だけが失われている状態で原因不明で手の打ちようが無いという物だ。
それがある日を境に同じ病状の患者が次々と現れていると医者は言った。
幻想御手(レベルアッパー)事件絡みだという予測に情報不足で判断がつかないと白井黒子は思った。
そして、病院で大脳生理学の専門チームの一人。
木山春生と出会う事になる。

「全員そろった所で改めて自己紹介しておこう」

木山春生の周囲。
白井黒子と御坂美琴と白井紅太がおり、その三人に向かって木山春生が発言する。

「私は木山春生。大脳生理学を研究している。専攻はAIM拡散力場。能力者が無自覚に周囲に放出している力の事だ」

木山春生は制服を見て判断する。
常盤台の制服だ。ならば、説明は省いても問題ないだろう。
常盤台の制服に風紀委員(ジャッジメント)の腕章をしている少女の血縁関係が顔から推測できる男にも特に説明はいらないだろうと思う。
分からなければ後で聞けばいい。

「私は風紀委員(ジャッジメント)の白井黒子です」
「白井黒子の兄です。白井紅太だ」
「御坂美琴です」

やはり血縁関係だったか。似た顔をした兄妹だな。
ん?
ミサカ……。
ああ、レベル5の。

「君が御坂美琴か」
「知ってるのか?」

白井兄が言葉を挟む。
なるほど、この中で主権を握るのは彼か。

「ああ、レベル5ともなると有名人だからね」

もう一つ、思い出した。
身体操作(ボディコントローラー)の白井紅太。
肉体変化(メタモルフォーゼ)は学園都市の中に僅か3人しか存在しない。
その肉体変化(メタモルフォーゼ)よりさらに稀少な能力者だ。
容姿の変化から人間の体内にある物質まで操作出来ると聞く。
詳しくは知らないのだが、能力のデータは研究者の一部では有名だったはずだ。

「そして、君。白井紅太。学園都市に一人しかいない稀少(レア)な能力者……」
「はぁ!?」

御坂美琴は知らなかったようだ。
余計な事を口走ったか。
まあまあとなだめている白井兄となだめられている御坂美琴を放っておいていいだろう。

「あの……、それで何かわかったでしょうか?」

医院長が私に向かって問いかけてきた。

「今の所は何とも言えません。データを持ち帰って研究所で精査するつもりです」

データなら送る事も出来ただの、ご足労かけただのどうでも良い建前だ。
医院長とのやり取りが済んだ所で白井妹が尋ねてきた。

「幻想御手(レベルアッパー)についてお尋ねしたいことがあるのですが」
「幻想御手(レベルアッパー)?」

それはネット上で広まっている能力をレベルアップさせる道具だという。

「それはどういったシステムなんだ?」
「それはまだわかりませんの」
「形状は? どうやって使う?」
「わかりませんの」

まだ存在すら確認されていないのか。
ならば答えは、

「それでは何とも言えないな」

しかし暑いな。脱ごう。

「ふぅ……、暑い」
「おぉ。ナイス……。っ痛っ! 黒ちゃん、蹴るなよ。美琴も殴るなよなぁ」
「何をマジマジと見ているのですかお兄様! 何をイキナリストリップしてますのっ! 貴女は!」
「いや、だって暑いだろう?」

暑いなら脱ぐだろう。
それがこの暑さを回避するための行為であり、別段見られても気にすることはないはずだ。

「アンタは向こう向きなさい!」
「美琴、君にも希望はあるよ」



病院近くのファミレス。
冷房が効いており涼しい。
白井紅太は熟考する。
大人の女性のバストはスバラシイものだと。
妹もいいがたまには違うタイプの女性もいいと思う。
なるほど、無い物ねだりだ。
周りに美少女が多いが美女の大人の女性は初めてだと思う。
木山春生。
都市伝説の脱ぎ女だ。
黒の下着がなかなか似合う人物だ。

「つまり、ネット上での噂。幻想御手(レベルアッパー)なる物があり、君達はそれが昏睡した学生達に関係しているのではないか。そう考えているわけだ」

理論的であり、クールビューティーという言葉が似合いそうだ。
これは、上条当麻の好みだろうなあ。
恐らく、道を聞かれたり探しものがあると、この人が困っていれば確実に手伝うはずだ。



木山春生との話合いは乱入してきた初春飾利と佐天涙子を含めてつつがなく終了した。
途中、佐天涙子のこぼしたジュースがストッキングにかかってその場で脱ぐというハプニングがあったものの、幻想御手(レベルアッパー)が見つかり次第、木山春生に調査の協力を取り付けれたのだ。
そして、その帰り道。
主人公の運命は交差する。

「あ、紅太と、ビリビリかぁ」
「ビリビリ言うな! あとねぇ、あからさまに私の方を見て残念そうな顔をするな!」

親しい友と、毎度イチャモンを付けて勝負を仕掛けてくる女。
どちらが嬉しいかと問われれば前者である。

「こんな所でどうした? 不幸。確か補習だったはずだろ?」
「ああ、その帰りだ。ちょっと英国式の教会を探しててさぁ。知らない?」
「何? アンタ十字教徒だったの?」

ビリビリは放って置いていいのだろうか?

「いや、忘れ物を届けに行かないとなんねーかもだからさ」
「また、不幸に巻き込まれようとしてるのか? まあいい。ソコなら俺が知ってるから連れていってやろう」

重畳という言葉はこういった時に使うのだろう。

「サンキュー。じゃあ、行こうぜ」

紅太に付いて行く様に足を向ける。

「って、コルァ! 私を無視してんじゃないわよぉ。アンタ達!」

電撃が走り周囲の電化製品が不具合を発した。

「おい、不幸。オマエのせいじゃね?」
「いやいや、このビリビリのせいですよ?! どう考えても!」

壊れた電化製品の弁償という末路が見える。
ならば、

「取り敢えず、逃げろぉぉおお」

走った。遁走だ。
一体120万円する警備ロボの故障など見ていない!



不幸絶好調だな。
見るに見かねて付いてきたが、やはりコイツは不幸だ。
聞くと昨日も御坂美琴に絡まれたらしい。
その決着を今つけようと御坂美琴に言い寄られていた。
だが、上条当麻の脅しに御坂美琴はビビった。
マジメにやってもいいのかよと、脅す顔と低めの声で脅したのだ。

「不幸だ。朝は自称(エセ)魔術師。夕方はビリビリときたもんだ」

夏休み初日から不幸だな。
朝に魔術師ってか。

「まっ、まじゅつしって……、何?」

美琴……。心が折れたな。



交わることのなかったはずの運命は神の意志で交差する。

配点:(介入)





-11-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




とある魔術の禁書目録(インデックス)II 一方通行 (アクセラレータ) (1/8スケール PVC製塗装済み完成品)
新品 \5280
中古 \5880
(参考価格:\8190)