小説『とある白井黒子の兄』
作者:葛根()

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第十一章 兄と魔術の話




自称魔術師を名乗る自称シスターが自称魔術結社に追われていて、自称を証明するために服を触ったら全裸で、噛み付かれた。
自称10万3000冊の魔導書を持つと言うシスターには悪いが訳がわからん。
そして、自称シスターの修道服『歩く教会』の一部であるフードを上条当麻の部屋に忘れたもんだから取り敢えず自称シスターの所属するという英国式の教会に届ける事になるかもしれないからその場所を知っておきたかった。
さらに聞けば、その自称シスター曰く

『君の右手の話が本物ならね、その右手があるだけで『幸運』ってチカラもどんどん消していってるんだと思うよ』

それだけは正しいと認めよう。
教会を案内した後、腹減ったと抜かした当人の上条当麻は所持金320円だった。
悲しくなったから牛丼大盛りを奢ることにした。
何故奢るかと言えば、幾つも自称の着いた話が面白かったからだ。

「自称シスターの言う魔導書ってのは恐らく、チップに記憶されたものか、メモリー機能を持った電子機器に入っていたと考えられる。もしくは、記憶だ」
「おいおい、紅太さん。俺の話を信じるんですか? 話しておいてなんだけど嘘くさい話ですよ?」
「ん? 嘘だったのか?」



それは、信頼だ。
俺の話す眉唾な話をまるっきり信じている。
俺自身嘘っぱちだと思う話なのに、紅太は俺の話を全て事実だと信じているのだ。

「紅太は良い人ですねー」

若干恥ずかしくなった。

「はいはい。それよりも、自称シスター。そのインデックスと言う子の服が上条当麻の右手に反応したことが大問題だ」
「何で?」

頭の悪い俺には何が問題なのか分からない。

「悪魔の証明だよ。上条は魔術ってやつをその右手で証明した。あらゆる異能の力を打ち消す幻想殺し(イマジンブレイカー)に反応したって事は魔術がソコに存在していたって事だ。まあ、自称シスターと上条の話が全て真実ならという前提だが」

悪魔の証明。悪魔が存在すると証明したいなら悪魔を連れてこいよってやつだ。
なら、魔術を証明しろと言った俺にインデックスは修道服、『歩く教会』を証明品として差し出した。
それを見事に幻想殺し(イマジンブレイカー)でぶち壊してしまったわけだ。
悪魔を証明した瞬間に悪魔を打ち消したってね。
不幸だ。

「さらに大問題は続くんだけど」
「えー、何ですか? 上条さんの脳はそろそろ限界ですよ」

だが、紅太の真剣な顔を見て冗談が通じない雰囲気を察した。

「インデックスは追われていると言ったな。その追っている敵は『歩く教会』の魔力を発信機としていると。そして、『歩く教会』は絶対の防御力を持っていて、それが壊されている。敵に取っては好都合だな。今度はシュレーディンガーの猫だな。『歩く教会』が壊れているか壊れていないか、それを確認するために、見つけたら取り敢えず攻撃するだろうね」

それはつまり、インデックスは見つかり次第傷つけられるという事実であった。
その事実を叩きつけられたのだ。
しかも、こんな牛丼屋で。

「どうして――」

どうしてそんなに他人行儀でいられる! 冷静でいられるんだ!
叫びたかった。
怒りをぶつけたかった。
でも、紅太にそれをぶつけても意味はない。
それに、俺自身インデックスの話を聞いて、信じなかったのだ。
インデックスと別れて補習を優先したのは誰だ。
『歩く教会』を壊したのは誰だ。
部屋に忘れていったフードを返さなかったのだ何でだ。
後になって悔やむ。
後悔だ。
こんなに想うのなら引き止めておけばよかった。
友人をもっと頼ればよかった。
過去に戻れるなら、インデックスの事を紅太に任せて補習を受ければよかった。
補習なんぞ受けずに一緒についていけばよかった。
どうすればいいか、紅太に聞けばよかった。
だが全ては過去である。
ならば、これからの事を考えよう。

「インデックスを探し出さないと!」

まずはそれだ。



忘れ物であるフード。
それがインデックスとの残された繋がりである。
上条当麻の|幻想殺し(イマジンブレイカー)が触れておらず、『歩く教会』が持つ魔力を辿ってインデックスを追う魔術師が必ずそのフードのもとに現れるだろう。
その予測を立てたのは紅太である。
そして、言う。

「もし自称魔術師が現れても上条当麻の右手がある。それに俺もいる。だから、ノコノコと現れた魔術師を締め上げてインデックスの居場所を吐かすなり、人質にするなりで、何らかの役に立つはずだ」

紅太に米俵を抱えられる様に運ばれている。
そりゃ、こいつが走ったほうが速いさ。
だけど、格好がつかない。
有難いと思う。
インデックスを探しだすと言った俺に何も言わず協力してくれている。
助けてくれるつもりなのか、それともインデックスの話の真相を確かめるためか分らない。
そう言えば、紅太の能力って女体化と怪力以外知らない。

「ところで紅太って強いのか? レベル4だから弱いはずないと思うけど、魔術師相手ってどうなの?」
「そりゃ、お前の|幻想殺し(イマジンブレイカー)があるだろ。俺の強さは、まあ、そこそこだ」



交差した運命に足を踏み入れる。
踏み入れる世界はどんな世界なのか。
配点:(魔術)



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