小説『とある白井黒子の兄』
作者:葛根()

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第十九章 悩む兄と悩む魔術師




Tシャツをまくり上げてヘソをだし、ジーンズの左側は太もも付け根辺りで切れており、黒髪のポニーテールに長身。それに夏なのにロングブーツ。年齢は18、19位か。
こういった手合いは上条当麻が担当すべきだと考える。
正直、エロイ格好だな。
白井紅太は魔術師に対して思考した。
二メートル近い日本刀。
アレでインデックスを斬ったわけだな。
それにステイルが人払いのルーンを、と言ったので確実に魔術師だ。
さて、インデックスを追う魔術師は一体何人でどんな思考でインデックスを追っているのだろうね。
目的はインデックスの回収という名の保護だ。
道徳心とか人権とかが通じなさそうな連中である。
状況として、人払いをしている。つまり、見られたくないような事をするわけだ。
もちろんエロいことではなく、殺し合いとか殺伐としたものであろう。

「この一帯にいる人に『何故かここには近づこうと思わない』ように集中を逸らしているだけです。多くの人は建物の中でしょう。ご心配はなさらずに」

何の心配か問いただしたい所だ。

「白井紅太ですね」

世間話のような気楽さだ。殺気も感じない。
相手の望みは戦闘ではなさそうだ。それでも、気を抜けない。
この女魔術師の評価は笑顔で人を殺せる殺人者程の危険度を設定しておこう。

「アンタは?」
「神裂火織と申します。……、できれば、もう一つの名は語りたくないのですが」

殺し名というやつだろう。

「なら神裂火織でいい。もう一つのは物騒だからな」
「ええ、そうでしょうね」

同意を得たが、やはり魔術師である相手に隙はない。
ステイル=マグヌスの件から恐らく何かしら下準備の必要な魔術が既に用意されていると考えるほうがいいだろう。
ならば、相手が動くのを待ち、後の先を取る方がいいな。



神裂火織は若干の焦りを心に感じながら相手の出方を伺っていた。
実の所、世間話をしつつ相手に探りを入れて情報を聞き出すと予定していたのだが、思えば異性との話はステイル以外ではあまりしたこともなく、また、一般的な世間話というのをどういった風にすればいいのか分からなかったのだ。
つまり、初対面の相手で異性との日常会話というものがわからなくて、

「……」

結局睨み合う形となってしまった。

「ハア」

ついにため息までつかれた。
気まずい雰囲気が流れる。

「神裂火織、君、年幾つ?」
「はあ?」

長身に大人びた容姿は自覚している。
その為年不相応の年齢に見られやすい。

「18ですが……」
「年上だな。神裂さんとでも呼べばいいか?」

相手に驚きはなかった。
結構珍しいことだと内心で思った。

「どうとでも……」
「神裂お姉ちゃん」

ゾワッと背筋に寒気が走る。

「神裂で結構です!」
「なら、神裂。何の用だ? 考えるに、話し合いが目的みてーだけど」

ステイルの評価は正しいものであった。
状況から推察してこちらの意図を読み取ったのだ。
脅威になる。同時に交渉相手に相応しいと考える。

「率直に言って、彼女、インデックスを保護したいのですが」
「はいどうぞ、と言いたい所だけど、理由を聞いてもいいか?」

それは、

「彼女の持つ禁書目録の回収と保護が私達の目的です」
「そりぁ聞いた。あんたらの目的だな。理由だよ。インデックスを追う理由」

語るべきでしょうか。一瞬躊躇して、口を開く。

「彼女は、私の同僚にして――、大切な親友なんですよ」



白井紅太は数多くの返答パターンを思考していた。
その中でも確立の底辺にある返答パターンが返されたのだ。
魔術師というものに初めてあったのはつい先日だ。
ステイル=マグヌス。
彼の魔術は強大であった。だが、その割に決定打に欠けると感じていた。
人目につかない様にインデックスを追っていたみたいだが、多少人目につこうとも手段を選ばずにインデックスを襲えばもっと簡単に捕らえられたのではと考えていた。
可能性として顔見知りか、もしかしたら友人関係にあったのかもしれないと最悪のパターンを考えて頭の隅に置いていたのだ。
俺のいない間に上条当麻が聞いた話だとインデックスは一年位前からの記憶がないと上条当麻に聞いた。
過去がない。
だからこそ、友人の顔も分からずに、追われている理由も分からずに逃げた。
胸糞の悪い思考であったが、それでも可能性がある以上、白井紅太の脳はその結果を弾き出していた。

「256通りある中で最悪の組み合わせのパターンだな」

神裂は先程までの泣き出しそうな顔から、意味が分からないという顔へと表現が変化していた。

「インデックスの記憶が一年程前から無いということに関係があるのか? あるんだろうなぁ……」

できれば敵であって欲しかったが、考えうる最悪のパターンからすると魔術師達は味方である。
上条当麻の不幸が伝染ったな。
不幸が伝染ったと考えると、自分が最善で有って欲しいと願う逆転の最悪の選択が多分正しい正解だ。
最善であるパターンは残虐な魔術師が相手でインデックスをモノ扱いするような外道が良かった。
それなら、躊躇無く相手を"殺せる"から。



女と男。
交渉と話し合い
配点:(エロ魔術師)



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