小説『とある白井黒子の兄』
作者:葛根()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

第二十三章 協力者達と兄




「それで、どうしたいんだ?」

なんとか搾り出した声に相手が、女みたいな男が答えた。

「お前達魔術師の言う、『とりあえず』確実にインデックスを助ける方法を取る前に、こちらの話を聞いてくれて助かったよ。それだけ、俺の話に魅力があったんだな。それとも……。まあいい。簡潔に述べよう」

いいか、と前置きをして、

「まず、神裂の話から教会がインデックスを飼い縛る為の『首輪』として、何らかの魔術が彼女の身体に仕組まれているはずであるという俺の予測の証明と、ソレを完全無効化した際に起こるであろう魔術の反撃――。まあ、インデックスに仕掛けられた魔術をぶち壊すからフォローよろしくって事だ」
「紅太さーん! 後半面倒になっただろ! 絶対に面倒になったよね! はい! 面倒になった!」

面倒になったらしい。だが、ツンツン頭を見て思う。
魔術を打ち消す異常者。
鍵となるのはこいつか。
鍵のセキュリティの弱点を見つけたのが女みたいな男。
解除されたセキュリティに反応して出てくる警備を相手するのが僕らって事か。
ギャーギャーと騒いでいる男二人に期待しても良いのだろうか。



「インデックスの喉の奥に見つけた紋章(マーク)から俺の予測が正しいと証明されたわけだが……」

全員がインデックスの喉の奥を見るというシュールな光景は放っておいて。

「ココからが本番。つまり、上条当麻にもっとも負担がかかってくる。インデックスのリミットまで2日あるがコレを魔術で解除することは難しく、時間的猶予が圧倒的に足りない。簡単に言えば、上条さんよろしく頼みます」
「はいはい。上条さんは都合の良い男ですよー」

お人好しめ。
魔術師達は沈黙状態であり、こいつらを無視しても構わないだろう。
もとより、魔術師達の協力が無くてもやるつもりだったし。
邪魔されない分ましだ。

「失礼しまーす」

軽い。
友人の家に遊びに来たような挨拶でインデックスの喉の奥に右手の指をを侵入させて。

バチン! と。上条当麻が吹き飛ばされた。



余韻に浸る暇もなく、私は彼女の声を聞いた。

「――警告、第三章第二節。――禁書目録の『首輪』、第一から第三まで全結界の貫通を確認。再生準備……失敗。『首輪』の自己再生は不可能。現状10万3000冊の『書庫』の保護のため、侵入者の迎撃を優先します」

概ね、白井紅太の予測が当たっていた事に戦慄を覚えながらも、事前にフォローを頼まれていた事と反撃が来ると聞いていたので、今後の展開に予測がつく。

「反撃が来るぞ! 魔術師達! 気を抜いている状態じゃねーぞ」

白井紅太の声だ。気を抜いていたわけではなく、彼女を救えるんだという余韻に少しくらい浸っていてもいいじゃない、と思ったのだが、その間に見事に先走りされた。
まあ、魔術を知らない彼等には仕方の無いことだと思う。
だが、一言、声をかけて欲しかった。

「――『書庫』内の10万3000冊により、防壁に傷をつけた魔術の術式を逆算……失敗。該当する魔術は発見できず。術式の構成を暴き、対侵入者用の特定魔術(ローカルウエポン)を組み上げます」

背筋が凍る。
どこまで推測と予測をしていたのだろうか。

操り人形の様に浮かび、眼球の中に血のように真っ赤な魔法陣の輝きがある。
彼女は魔術を行使している。
機械音声のように冷たい言葉が響く。

「――侵入者個人に対して最も有効な魔術の組み込みに成功しました。これより特定魔術『聖(セント)ジョージの聖域』を発動、侵入者を破壊します」



「――Fortis931」
「――Salvare000」

インデックスの『眼球』と連動した魔方陣から光の柱の砲撃。
それを受け止める上条当麻はその物量に食い止めるだけで必死に見える。
光の柱は『竜王の殺息(ドラゴン・ブレス)』と言うそうだ。
光の柱についに上条当麻の右手が弾き飛ばされ、完全に無防備になった上条当麻を救うため、神裂火織が巧く働く、インデックスの足元。畳を切り裂いてインデックスが後ろへ倒れこんだのだ。
光の柱はアパートの壁から天井までを一気に引き裂いて夜空の雲までも引き裂いていた。
もしかしたら、大気圏外にある人工衛星までも引き裂いてるかもしれない。
破壊された壁や天井は木片すら残されなかった。
最悪な事に、木片の代わりと言わんばかりに純白の光の羽が何十枚と舞い散るのだ。

「それは、――伝説にある聖(セント)ジョージのドラゴンの一撃と同義です! いかなる力があるとはいえ、人の身でまともに取り合おうと考えないで下さい!」

インデックスの視線が上条当麻に戻る僅かな間に神裂火織が叫んだ。

「ステイル! 上条の援護だ!」
「いちいち僕に命令するな! ――魔女狩りの王(インノケンティウス)!」

身構える上条当麻の前で炎が渦を巻く。
人のカタチを取る巨大な炎が光の柱から上条当麻を守る盾となる。

「行け! 上条」

上条当麻は白井紅太の声に一言も答えることはなくインデックスの元へ走り寄る。
走る。

「――警告、第六章第十三節。新たな敵兵を確認。戦闘思考を変更、戦場の検索を開始……完了。現状、最も難度の高い敵兵『上条当麻』の破壊を最優先します」



砲撃するシスター。
迎撃する協力者達。
活躍のない人物は誰か。
配点:(白井紅太)

-24-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




とある魔術の禁書目録(インデックス) 文庫 全22巻 完結セット (電撃文庫)
新品 \0
中古 \7480
(参考価格:\13482)