第二十四章 終焉と兄
●
光の羽が舞う。
インデックスが放った光の柱が壁や天井を破壊した後に生まれた何十枚もの光り輝く羽。
魔術を知らないが故、白井紅太はその脅威を感じ取っていた。
親友と、強くて愛らしいシスターが危ない。
だから、覚悟を決める。
●
神裂火織とステイル=マグヌスは圧縮された時の中で確かに聞いた。
「on your mark get set――、GO!」
二人の目にはその言葉を発した人物の影しか見え無かった。
●
ステイルの魔女狩りの王は徐々に弱まっている。
上条の頭上では光の羽が舞っている。それを破壊するには上条の右手が必要だが、インデックスの魔術を破壊する方が優先だ。
それを理解しているのかしていないのか。
ひたすら突き進むアホ。
「――その幻想をぶち殺す!」
0.1秒以下の世界。
脳の加速処理に加えて、体内時間の加速。さらに、身体に伝達される指令を加速。
だから上条当麻とインデックスの居場所に追いつき二人を抱えられる。
「信じてたぜ。親友!」
加速された時の中で聞いた。
二人を抱え、小萌宅の窓をぶち抜いて飛び出し光の羽から逃れた。
●
この日、上条当麻は記憶をなくす事もなく、破壊された部屋の説教を受けた。
彼らの知らぬことであるが、人工衛星の一基が撃ちぬかれ破壊された。
●
病院だ。
流石の上条当麻も指の痛みに耐え切ることも出来ずに診断を受けたのだ。
「脱臼ねぇ。今度から掌底で対処しろ」
「それが親友の言葉ですか! 労いの言葉もなし?!」
軽食、というかパンやおにぎりにお菓子とついでに栄養剤やらドリンク類をコンビニ袋パンパンに詰めた相手。白井紅太に苦言した。
「君のがんばりに感動したー。よくやったー」
「棒読みでちっとも嬉しくない!」
昨日から食いっぱなしの紅太。
何でも能力で加速系を使用したらしい。
その加速系を多重に使用すると消費カロリーが異常らしい。
つまり、腹が減るらしい。
らしいが続くのはその辺りの説明を聞いた俺の頭では理解不能な用語を用いられて説明されたからである。
「看護師のねーちゃんも見れたし帰ろうぜ」
「……」
高校生らしい発言である。
俺の診断の為に病院に付いて行くと言った理由はコレか!
だが、あの光の羽に当たっていたら診断結果は異なっただろう。
下手したら死んだかもしれないと神裂お姉さんに怒られた。
「あ、言い忘れてたけど、助けてくれてサンキューな。光の羽って当たったらやばかったんだろ」
「べ、別にアンタの為に助けたわけじゃないんだからねっ!」
ツンデレかい!
まあ、それでもいいか。
何せ、夏休みは始まったばかりである。
●
「――と、まあ、上の判断は表向きは至急連れ戻す様にって感じだけど、実際には様子見というのが正しいかな。僕個人としては……。いや、とにかく上は彼女の動向を観察するということだ」
ステイル=マグヌスの話相手。白井紅太は上条当麻と別れた後、神裂火織からの呼び出しに応じたのだ。
「白井紅太ならどう思いますか?」
私は問う。
「魔術に相反する学園都市にインデックスがいるのが上の判断を様子見にさせたかもな。裏が読みづらいけど、そんな感じじゃない? たぶん……」
たぶん、か。
その先に何か考えているようだが、敢えて聞かないでおこう。
あまり良くない答えを放って来そうだから。
「僕は君達と馴れ合うつもりはない。だからインデックスの魔力が回復するかも知れない可能性を考えて色々と情報を集める。その上で然るべき準備を整え次第、再びあの子を奪還するつもりだ」
心にも無いことを。それに良くスラスラと平然に嘘をつける。
本当はインデックスともっと色々と話しをしたいくせに。
こちらの視線にステイルが反応して、
「そうそう、君は神裂に命を捧げると契約を掲げたみたいだが、それは無事に達成された。今度は魔術師としてその対価に何か返さなければいけないんじゃないか? 命の対価に返すものって何だろうね? 神裂?」
特大の反撃を放った。
「別に気にすることはない。信頼を得るための方便だったわけだし……」
それでも、ステイルは言う。
「いいや。ダメだね。魔術師として借りはきっちりと返すものだ」
それはステイルもインデックスを助けられたから同等なはず!
「ま、奉仕でもしたらどうだい?」
「何を言ってるんですか!」
奉仕といっても、そういった意味の奉仕活動だろう。
「ありがたく受け取りたいが、俺達はもう仲間で友達だろ? 友達の間に貸し借りがあってもありがとうの一言で済む問題じゃねーの?」
白井紅太の言葉に私とステイルは息を呑む。
そして、一呼吸。
「ありがとう」
一つの言葉が交わされた。
●
科学と魔術が交わり物語を紡ぐ。
紡がれた物語は本来あるべき姿とは少しの違いを見せて終焉する。
配点:(とある魔術の禁書目録)
●
このSSには多大な原作のネタバレが含まれております。
今更注意を促してみたり。