小説『とある白井黒子の兄』
作者:葛根()

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エピローグ




上条当麻の部屋にインデックスは居候する形になった。
俺が遊びに行くと旨い飯が出てくると覚えたらしい。
まあ、それはどうでもいいことだ。
ところで、俺の妹、白井黒子は可愛い。
どうやら、幻想御手(レベルアッパー)事件解決で女が磨かれたように思える。

「良い女の顔になってきたね。黒ちゃん」
「良い男の顔になりましたわね。お兄様」



夏休みに入りてっきり毎日会いに来ると思っていた人物が2日ほどの空白期間を開けて私の元に会いに来たのだ。
それも、常盤台中学の寮に直接乗り込んできたのだ。
寮監には親族であるが男性ということで、客間に通されていたのだ。
だが、そこで兄は両親直筆の紙を提示した。
娘の学生生活が上手く行っているか報告されたし。
つまりは親の代行で兄が自分の娘の学生生活の様子を観察するための許可証だ。
お金を受け取る側の寮監はそれを許可しなければならない。
同時に夏休みで多くの生徒が実家に帰郷していることもあり、1時間という短い時間ではあるが、常盤台中学女子寮に男性の侵入を許したのである。
さながら授業参観だ。

「まさかこの常盤台中学に授業参観、というか、親族用の案内マニュアルが存在するなんて思いませんでしたの」

常盤台中学の入学費用や教育費がいったい幾ら掛かっているか知らない。

「まあ、ここよりもレベルの高い学校もあるし、常盤台中学から見れば優秀なレベル4の親族の依頼を無視するわけにもいかないよ」

兄が言う。
どこで知ったのか、それとも調べ上げたのか。
夏休み期間に常盤台中学に在学させている親が子供の学生生活を視察できるシステムの存在があったらしい。
兄は首から許可証明書をぶら下げており、これがある限り常盤台中学学内、寮を視察できる。
どうか、お姉様に出会いませんように。



「あれ? 紅太さん? どうして常盤台中学の寮に?」

御坂美琴の問に白井紅太は答える。

「ん? 黒ちゃんの学生生活の視察」

そう言って許可証明書を見せてくれた。
なるほど。
私はその行動力に驚く。
本当に妹思いだなぁ。

「お兄様、もう時間ですの」
「ああ、そうだね」

どうやら制限時間があるらしい。

「美琴、下着はちゃんと片付けような……」
「なっ! 見たの?!」

同室の黒子。
許可証明書。
つまり、部屋にまで入ることは容易に想像できた。

「見た、ではなく。視界に入った。まあ、可愛らしいプリントを付けた下着だが、そろそろ年齢的に卒業したほうがいいと思うがね」
「――」

顔に熱が灯る。
恥だ。
電撃を浴びせようとしたが、

「視察は終わりましたね? それではこちらの書類に記入をお願いします」

寮監が現れたので不発に終わってしまった。



顔つきが変わった様に思えたのに結局はいつも通り。

「全くお兄様は阿呆ですわね。その無駄な検索能力と頭脳をもっと意義のあることに使えませんの?」
「黒ちゃんと言う意義のあることに使ってるよ」

真顔で答えられても困る。
日陰になっている公園のベンチで会話する。
お姉様も呆れ顔ですわね。

「家族思いなのはいいんじゃない? まあ、紅太さんみたいに度が過ぎると鬱陶しいけど」

お兄様に対してどこか容赦が無くなって来ている気がしますの。

「考慮しよう。短パンを穿いて、その下にプリント付きの下着をつけている美琴の貴重な意見を心に留めておこう」
「ぐっ!」

お姉様に対して全く容赦がないですわね。
それは置いておいて、疑問をぶつける。

「所でお兄様、何か私に用があったのでは?」

視察後に公園まで引き連れてきたのだから何かしらの用件があることは明白だ。

「幻想御手(レベルアッパー)事件の話を聞こうかなって、少しは俺、役に立った?」



「木山春生が犯人ねぇ。脳のネットワークを通して多才能力(マルチスキル)を使ったか。見かけによらず無茶苦茶な事する奴だね。美琴は大いに活躍したようで」
「べ、別に私は……」

大したことはしていない。
だが、それを言う前に、

「お姉様ったら色々と活躍しましたわ。傷まで付けて」

黒子によって防がれた。
そのついでとばかりに抱きつかれたので電気ショックを与えてやった。
日常だと思う。普通の学生生活かどうかは知らないが夏休みは始まったばかりだ。
唐突に声が聞こえた。

「白井紅太。そこで何をしているのですか?」

ベンチ横の階建を降りてくる人影。
背は高く、髪は長く、巨乳で、格好がおかしい美人だった。
そして、その美人がこちらに近づいて来て紅太さんの前に立つ。

「神裂じゃん。何してるのってこっちのセリフじゃね?」
「いや、私は、その、例の事をどうすべきかと考えながら散策していたのです」

知り合い?

「お知り合いですか? お兄様?」



似ている。
白井紅太の妹だ。
見れば分かる顔ですね。
偶然出会った白井紅太と妹。それに……誰だ?

「神裂は俺の友達だ。んで、こっちが妹の黒子で、そっちが妹の友達の御坂美琴ね」
「そうですか……」

友達と言う響きに僅かに嬉しさがこみ上げる。
妹がいると聞いていたが確かに可愛らしい。
その友達の御坂美琴という女の子も可愛い。
嫉妬ではない。
こみ上げる若干の怒り。
例の事とは対価の支払方法。
そして、

「私は白井紅太の物です。以後お見知りおきを」

口が滑ったとしか言い用がないほどに流暢に言葉が出た。

「なんですってぇー!」

この日、この時。一人を除いて、白井紅太の驚いた顔を始めて見たのであった。



妹と御坂美琴
妹と神裂火織
妹と白井紅太

配点:(驚愕)




そんな訳で2クール分で収まりました。
最後までこのSSを読んでくださった方々に感謝します。

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