小説『とある白井黒子の兄』
作者:葛根()

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第三章 主人公と兄




「当麻く〜ん」
「げ、レッドさんじゃないですか」

とある日の事。
上条当麻の部屋には白井紅太が遊びに来ていた。
それも、女の格好で女体化している容姿で、誰もが振り向くような美女だ。
白井紅太の普段の髪の色は茶色であるが、今日は黒髪のロングであった。
上条当麻の反応を精査した結果。黒髪ロングのお姉さん系巨乳が弱いとわかった。
ならば、弱点属性で遊ぼうではないか。
胸元は開き、谷間が見える服に、短めのスカート。その下にはちゃんと女物の下着を穿いており、どう見ても女である。
それこそ街を歩けば誰もが振り向くような容姿であり、その娘を隣に歩けば嫉妬されるのは必須であった。

「あの、視線が怖いのは私(わたくし)の勘違いでしょうか?」

部屋から飛び出して街で買い物をする。
上条当麻の左腕には柔らかい刺激と良い匂いのする塊が当たっていた。
周りの男。羨ましい。けしからん。死ね。
その視線の先の上条当麻の心境は複雑であった。



こいつは男、コイツは男。
男だー!
はは、羨ましいか! そこの羨ましそうな目で見ている奴!
中身は性悪な男だぞ! でもな、オパーイの感触とか、肉々しい体つきとか女の子そのものなんだぜ。
良い匂いするのは香水か。手が込んでいる。
いやいや、冷静になれ。上条当麻!
こいつは男なんだ。
ほら、女の子同士で仲がいいと手を繋いだり腕を組んで歩いたりするだろ。
今の状況はそれだ。
不幸の根源の右手。
女の子にモテたりしないし、あらゆる不幸が付いてまわるが、今の姿はどうだ?
客観的に見ればそれはカップルという言葉が当てはまるだろう。
青春してる。勝ち組だと高らかに誇れる。
そう、相手が本当に女の子だったらな。
いや、見た目は完璧な女の子だ。
だから、街を歩いている際の男からの嫉妬の視線が。
女の子達はなんであんな冴えない男にあんなキレイな女の子がという疑問の視線が振りかかるのだ。
かくいう今も、

「はい、あーん」

とクレープ屋で彼女が購入したクレープを差し出されており、その周りの人、特に男性からの視線は強くなる一方である。
客商売であるクレープ屋の兄ちゃんでも一瞬こいつに見とれたのを見逃さなかった。

「あの、レッドさん?」

紅太はよく人の食べ物を欲しがる。
いるだろ? それ一口ちょーだいって言う奴。それだ。
あーんの前に、俺のクレープを一口食べた。その後、これだ。
あーんである。
乗るか反るか。

「なぁに? "いつもみたい"に、口移しじゃないと嫌?」

ざわっと、周囲がざわついた気がした。
気のせいだ。気のせいにしてください。
不幸だー!



精神的に消耗した。
憧れの女の子からのあーんがアレほどの破壊力と羞恥心と精神力を使うとは思いもしなかった。
クレープの先。谷間とか見えるし、その顔は美人である。
だが、男だ。もう男でも……。いや、ダメダメ。その一線を超えちゃあ駄目!
不幸にも、周りから見れば幸福にしか見えない状況だったと思う。
街に出て僅か2時間。あっという間に過ぎ去る。
それは楽しいからだ。
もちろん、恋人同士のデート的なものではなく、友人同士の交流という意味である。
不幸体質を理解している友人はそれを最小限にする。
つまり、金銭は彼が持ち、食事の持ち運びや、道端のトラップに気を配り事前に知らせてくれるのである。
端から見ると亭主関白の男に従う女の姿であるが、それはいつもの事である。
鳥の糞が飛んでくれば、引き寄せてくれて回避。
バナナの皮が地面に転がっていれば彼が拾ってゴミ箱へ。
先ほどのクレープも彼が購入して彼が持ち運び、あーんされた。
あの発言は嘘だ。いつもみたいにという発言だ。
周りの反応と俺の反応を楽しんでいただけである。
それが、性悪の証なのだ。
だが、その性悪を打ち消す行為が俺のサポートのような動きである。
正直、有り難い。
本当、女の子だったら是非お付き合いを申し込みたい。
いや、むしろその先、いやいや、結婚を前提に。いやいやいや、諦めろ。こいつは男だ。

そして本当の地獄はここからだった。
セブンスミスト店内の一箇所。
女性物の下着を扱うランジェリーショップである。
そこにそぐわない人物。
男である上条当麻がいた。
当然、男である上条当麻は居心地が悪い。
だが、更衣室の中。
時折カーテンを開けて見せてくる。

「おわー! 見えてるから! 丸見えですよ! レッドさん!」

ブラと下着のみの格好を見た。それは艶かしく、思春期の男子高校生には刺激の強いものである。
それを気にすることもなく、

「やっぱ当麻はこっちのブラがいいかな?」

その場でブラを取り外し、双山の頂と突起物まで丸見えのままで付け替える。

「ぶふぁぁあああ、見ちゃいましたよ。目視しちゃいましたよ。刮目しちゃいましたよ!」
「何やってんのよ! アンタは!」

それはそうだ。
女性物下着の店でココは更衣室前だ。その先のカーテンは開かれており、中にはブラとパンツのみの女性がいる。
客観的に考えるなら俺がカーテンを開けて覗いたとも取れる。
変質者である。それを咎めるビリビリ中学生は正しいと思う。

「ビリビリ中学生か、お前にはまだ早いだろ! アレこそがお似合いという言葉にぴったりな人物ですよ」

指差す先は更衣室内である。

「こぉんの、ド変態がぁあ!」



「所で当麻くん。この女、誰? 浮気?」

さすがに御坂美琴も店内で暴れる事無く、上条当麻に対して腹部への打撃。
その後、バックドロップという荒業で事済んだ。
しかし、ランジェリーショップの横の通路で修羅場が生まれ始めていた。

「え? いや、知り合いと言うか、付け狙われているというか」
「ストーカーねぇ。まだ中学生じゃない」
「なんですってぇ!」

店内に響く程の声をあげる御坂美琴だったが、ココが公衆の面前であることを思い出して大人しくなる。

「と、とにかく。今こそ因縁の決着を……」
「ダメよ」

遮る様に言い放つ。

(当麻、話を合わせろ)
(り、了解であります)

小声で御坂美琴に聞こえない程度に上条当麻と会話した。

「なんでよ! アンタには関係ないでしょ!?」
「あるわよ? 私達、これから新しい下着を脱がす行為をしにホテルに行くんだから」

一瞬、御坂美琴が停止した。
だが、言葉の意味を知り、顔が真っ赤に染まる。

「な、なな何言ってるのよ」
「当然、ナニよ。ねぇ、当麻くん。これから大人のお楽しみするんだからね?」
「そ、そうだ。残念だったな。ビリビリ中学生」

何故か上条当麻も顔が紅いが、

「じゃ〜ねぇ。さ、行きましょ」

上条当麻の腕を取ってその場を後にする。
その姿に御坂美琴は声を掛けられずいた。
他人の恋路を邪魔する程無粋でもなく、何よりこの後するであろうあの二人の行為を想像してしまい、戦うどころではなかったのだ。



とある日の上条当麻遊び
配点:(幸)



-4-
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