小説『とある白井黒子の兄』
作者:葛根()

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第四章 超電磁砲と兄




御坂美琴と白井紅太は相対する。
人気のない川縁に佇む二人。
事の始まりは、御坂美琴のメールであった。

『会いたいから来て』

それに釣られたのが白井紅太であった。
御坂美琴の性格を知った上で、勘違いした。
告白か!
いや、決闘の申し込みでした。

「さて、告白かと思って来てみれば色気のない決闘の申し込みとはね」
「いやいや、紅太さん。あって間もないですから告白とかないですよ」

決闘はありなのかよと突っ込みたい。

「んで? 黒ちゃんには内緒で呼び出してまで何でよ?」
「ま、黒子も貴方の事疑ってた見たいだし、レベル4の割にはどうも強過ぎるって」
「それは黒ちゃんの勘違いだね」

黒子の手札を知り尽くしているからな。

「それでも、強いんでしょ? 私、強い人に興味あるのよねぇ」

ちょっとエロく聞こえた。
遅かれ早かれ戦う事になっていたんだろうな。
自制のないエロ女め。

「なら俺は弱いから、むしろ降伏ということで決着つけね?」
「はっ! 馬鹿いってんじゃないわよ」

バチッと帯電する音が聞こえる。

「ま、お嬢様には似つかわない言葉遣いだな。いいよ。遊んであげるからかかってきなさい」
「なぁんですってぇえ!」

バチバチッと帯電する。感情の読みやすい相手だ。
御坂美琴の前髪から角のように青白い火花が散る。
それは槍の雷で一直線で襲いかかってきた。
迸る青白い電撃の槍の先。
御坂美琴は確かに当たったと確信したのだ。



爆破音に砂塵。
地面が抉れて砂が舞う。
御坂美琴は驚愕するのだ。
背後に感じる。

「何をやったのよ?」
「聞くバカがいるのかよ。それに答えるバカもいるわけないだろ」

言われて戦闘中だったと思いだす。
振り向いて無傷の相手を確認した。
やっぱりとんでもないとこだわ。
学園都市で私と戦える相手なんてアイツ以外にいるとは思わなかった。
記憶を探る。以前見た高速移動だろう。
だが、光の速さで落ちる雷を目で見て避ける事が出来るのだろうか?
私の攻撃は落雷と同じスピードだ。

「考えながらも手を休めちゃあいけないよ? 美琴ちゃん」

それは黒子に対するように兄が妹に説くような口調であった。

「ナメんじゃないわよ!」

自身を中心に360度範囲に放電する。
今度は当たったのを目視で確認したのだ。
しかし、

「なんていうか、勿体無いな」
「! どうして?! 確かに当たったはずよ!」

無傷であった。
そして右腕が振り上げれて、

「人間の限界を超えた一撃って見たことある?」

解答の前に私の足元に振り下ろされる。
轟音と震撃。

「え、あ、あ? 嘘?」

土だ。
尻餅をついて周りを確認して理解する。
それは、隕石が落ちた後にできるクレーターである。
直径5メートル。深さ1メートル弱。
刻まれた痕跡は私と彼を地面の下に移動させるものであった。



種明かしをしよう。そう前置きをされた。
私達はあの場所から逃げた。
彼の一撃で学園都市では珍しい予測されない地震が起きたせいだ。
決闘場所から離れたファミレス。そこで夕飯を食べながらのことである。

「絶縁体で防がれたわけね。身体操作(ボディコントローラー)ってそんな事もできるわけ?」
「黒ちゃんには内緒ね」

しかし、よく食べるなぁ。三人前は食事をとっている紅太を見て呆れる。
どうも、能力の代償か使うと腹が減るらしい。
う、羨ましい。どれだけ食べても太らない。むしろ能力を使用すればカロリーを消費するという。

「でも、まあ、最後の一撃はなによ? アレ、手榴弾以上の破壊力じゃない?」
「さあ? 測ったことないからわかんね」
「はあ?」

測定テストがあるはずだ。
高速移動と容姿の変態。それに怪力。
大能力者のレベル4とは軍隊において戦術的価値を得られる力が必要である。
その事を彼の説明で理解はできる。

「つまりは、高速移動で戦況をかき回したり、変態で仲間に紛れ込んで暴れたり怪力で色々殴り倒したりという戦術的価値が認められたということだな」

事前に敵対する軍の司令の容姿がわかっていればそれに容姿を変えて味方に有利な戦況を作り出せる。
潜入と謀略が学園都市にレベル4として認められた価値だということだ。
だからこそ疑問に思うのは彼のレベルは正しいものではない。
だが、その答えは単純であった。

「全力で戦えるのって30分が限度なんだよね。それを超えると栄養失調になって倒れる」

1人1秒で倒せるとして、1800人以上の軍隊を組めば彼は倒れる。
確実性を増すのなら3000人〜5000人で編成された軍隊を用意すればいい。
そうやって己自身を評価する。

「代償ね。私も使いすぎると電池切れで動けなくなるし」

納得出来無い事も多い。
されど、目の前の幸せそうな食事を取る光景は見ている私までも幸福にさせるのだ。



「あ? お、お兄様とお姉様?」

それは偶然である。
ファミレスから常盤台中学の寮までの道のりで、白井黒子の先に見慣れた二人の姿があった。

「落ち着きなさい。白井黒子。あれは、きっと偶然道でお姉様に会ったお兄様が夜道を送るという名目で私に会いに寮付近まで来るというシスコン行為なはずですの」

それでも焦燥感が湧き上がる。
兄か、御坂美琴か。
二人が男女の仲になり、結婚したら正式なお姉様の義理妹になれるのだ。
だが、それを良しと思えない。
話が飛躍し過ぎていますわね。
たかだか二人が偶然帰り道が同じになっているだけである。
ならば、今は二人の仲を進展させるのではなく、邪魔をする。

「おー、黒ちゃんだ」

抱きついた先はお姉様だった。

「いきなり抱きつくんじゃないわよ」
「ぐぇっ」

首根っこを掴まれた。体重は重くない。だが、女の子一人を軽々と片手で持ち上げる兄。

「さっきソコで偶然美琴に会ってね、ついでに今日の見納めに黒ちゃんに会いに行く所だったんだ」

ホッと心の焦燥感が消える。
やはり予測は正しかった。
そして、抱擁された。

「んー、これだ」
「ち、ちょっとお、お兄様!」

それはいつもの行為である。
狭い腕の中、膝打を決めようとしたが、

「はは、じゃーねー」

私とお姉様の後ろ5メートル程の所におり、手を振っていた。

「嵐のような人ね。まあ、良い人じゃない。妹思いの」
「それをシスコンっていうのですよ。お姉様」



超電磁砲と身体操作。
果たしてどちらが強いのか
配点:(勝負)



-5-
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