小説『とある白井黒子の兄』
作者:葛根()

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第六章 日常生活の兄



バランスという物がある。
それは学校でも必要なものである。
上条当麻や土御門元春が所属するクラスははっきり言ってバカクラスである。
クラス総合のテスト評価然り、所属する人物たちも癖のある人物が多く所属するのだ。
その中に白井紅太もいる。
校長の策である。
苦肉の策であった。
優秀な人物を果たして最下層とも言えるクラスに入れて良いものかと。
だが、入試試験の成績トップを入れてやっとプラスマイナスゼロなのだ。
教育者として、底辺の成績を収める人物達を一つのクラスに集めてそのクラスだけ見放すということはできなかったのだ。
優秀な成績を持つ人物がおればそれに刺激されて、勉学に励む者もいるだろう。
また、学業で不明な点があれば、先生に聞くよりも同級生に聞いて理解を得たほうが刺激になる。それに、色々な相談もできるのだ。
学友同士で互いに高めあう事ができれば良いと想う。
そして、学業以外にも青春を楽しんで欲しい。



「小萌先生とはつまり、年上なのに年下で先生なのに幼女という矛盾を抱えた存在だ。身長135センチ、容姿は外見十二歳だが、実年齢は――」
「はーい、白井ちゃーん。ちょっと来てくださいですよーっ!」

笑顔に青筋を作り明らかに怒っている様子である。
月詠小萌。学園都市の七不思議に指定されている大人の女性だ。
大人の女性だと言うには容姿は12歳程度であり、身長も低い。パッと見小学生高学年位にしか見えない。ヘタをすれば小学生低学年に見える。
どちらかと言うと、後者に見える人物が多いようである。
海外で大学を飛び級で卒業した教師という経歴はないのだ。
つまりは自分たち高1の年齢からプラス10歳以上は離れているはずである。
学園都市某一位には不老不死実験の被検体と揶揄(やゆ)される事だけはある。
その幼い容姿で目に涙らしき物を溜めて上目づかいで睨まれるとどうしてもこちらが悪いことをしている気になってしまうのだ。

「小萌先生、ごめんなさい。すいませんでした。許してください。もう年の事は言いません。いや、むしろ貴方のその容姿は愛でるべきものであり、決してその容姿についての追求など今後いたしません。
だからお願いです。その泣きそうな顔をやめて、俺とその容姿に疑問を抱いた上条当麻をお許しください」
「あれれ? 上条さんもさりげなーく悪者になってませんか? なってますよね?! すいません。ごめんなさい。
そこ! 筆記用具を投げつけない! 繊細な上条さんが傷つくでしょ!?」

これが日常的な風景である。
フラグメーカーの上条当麻と自称優等生の白井紅太は成績の差は天と地の開きがあるが、友人としての付き合いは密接である。

「カミやん。地雷を自ら踏むなって言ったはずだにゃー」



愛玩奴隷上条当麻となったのは一体いつからだっただろう。
入学した頃の学生服が衣替えをした辺りだろうか。
夏服から見える下着だったり、生脚のその先に見える理想郷だったり、屈んだ時にクラスメイトの谷間に興奮してしまったり。
それら全ては黙っていれば分からないものを、土御門であったり、青髪が叫ぶものだから不幸なことに巻き込まれたのだ。
つけ込む隙があれば容赦なしに攻めてくるのが白井紅太であった。
上条当麻は男にも色目を使うド変態である。同性愛者だ、と。
体育の着替え。
偶然に視線が白井紅太に行く。
ああ、コイツはやっぱり男なのか。
改めて確認したのが間違えであった。
それは青髪が普通に、

「いける! いけるでぇー! 俺、普通に興奮できる。なあ、カミやんもそう思うだろう」

同調を求めてきたのだ。
土御門以外にの男子が何故か胸と股間を押さえていた。
どこからかその事が女子に伝言されてそれ以降、上条当麻の格は底辺に落ちた。



とある日の放課後。
2つの陰が道路に伸びる。
夕暮れ時。
他愛もない光景だ。
それが兄妹の在り方である。
並んで歩く。歩幅はゆっくりとしたものである。
流れる風景。

「平和ですわね」
「そうだね」

それだけで通じる。
平和な時間。幸せな時間。
望むものがあるのだ。
女の子と呼べる年の少女はこれを守るために風紀委員(ジャッジメント)として使命を果たしている。
一方、男はそれを見守るだけである。
同系の髪色に、血の繋がりを示す顔。
手を繋いでいる。客観的に見て仲の良い兄妹に見える。
事実、嫌がる素振りのない妹とそれに満足する兄がいる。
兄離れ出来無い妹ではなく、妹離れ出来無い兄なのだ。
兄妹という関係は死ぬまで続くだろう。
いつかは兄が離れていく。
それは絶対だ。
その時に私はどう思うのだろう。
奪われたと思うのか、やっと妹離れしたかと喜ぶのか。
その時が来るまでわからない。
空間移動(テレポート)能力を使える程の頭で持ってしても人の心というものはわからないのだ。

「じゃ、また明日な」
「ええ、それでは」

手が離れて温もりが消える。
ただのいつもの別れだ。
また明日。
頼んでもいないのに一緒に帰る事になるだろう。
それで、お姉様が気を使って先にどこかへ行ってしまう。
あら? 結構おじゃま虫ですわね。
お兄様は放っておいても良いけど、お姉様は放っておけませんですわ。



いつもの日常。
いつもの兄妹。

配点:(兄弟愛)


-7-
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