小説『とある白井黒子の兄』
作者:葛根()

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第七章 虚空爆破事件と兄 前編




夏。
自販機の前で二人の少女は話す。

「また例の事件?」

自販機で購入した缶ジュースを飲む。
変わったラベルだが、御坂美琴はこの缶ジュースが気に入っていた。

「これで五件目ですの。例によって爆発そのものは小規模で怪我人は無し、けれど――」

対して報告の様に語るのは白井黒子である。

「愉快犯にしてもあんまり笑えないわね。で? 犯人の目星は?」
「昨日、ようやく手掛かりが掴めましたの。お姉様、重力子(グラビトン)ってご存知ですか?」

記憶を探り思いだすように言う。

「重力子の事だっけ?」
「どのケースも爆発の直前に重力子の急激な加速が衛生によって観測されていましたの。アルミを起点に重力子の速度を爆発的に加速させ、一気に周囲に撒き散らす。つまりアルミを爆弾に変えていた、ということですわ」

御坂美琴はそれならデータバンクで調べて犯人はすぐ捕まるなぁと思った。
それを口にしたのだが、

「該当する能力者はずっと入院していてアリバイがありますの。一連の事件を起こすのは不可能ですわ」

どうやら苦労しているらしい。
ならば、その犯人を見つけようではないか。
そして、相手次第で腕試しでもしてやるか。
だが、心を読まれたかのように釘を刺された。
事件を解決するのも学園都市の治安維持活動と平和を守るのは風紀委員(ジャッジメント)の仕事だと。
そして、

「スカートの中に短パンを穿かない!」
「それは関係無いでしょうが!」

常盤台のエースとしての己を振り返れ、女らしくしろと言われた。
余計なお世話よ!



とあるコンビニで爆破事件が起こった。
それが、威力、範囲を拡大し、場所も時間も関連性が認められず手掛かりがない連続虚空(グラビトン)爆破事件の始まりであった。



爆破事件から一週間後。
風紀委員(ジャッジメント)の第一七七支部所属に訪れた男がいた。
支部に居たのは訪れた男の妹は風紀委員(ジャッジメント)に所属していた。

「場所も時間も関連性がなくて、遺留品を読心能力(サイコメトリー)で調べても何もでない。その上に風紀委員(ジャッジメント)の同僚が9人負傷している。手掛かりがなくて困った果てに兄に頼る妹が可愛くて仕方ありません」
「そういうのはいいですから、何かありませんの?」

白井黒子はこの事件の手掛かりのなさに忙殺されていた。
遺留品を調べても、現場を調べても何も手掛かりがない。
新しい発見もなく、知恵も出したがそれでも何の手掛かりも掴めない。
ならば、風紀委員(ジャッジメント)ではない人物に相談することで何か新しい考え方が発見できるかもしれないと思い兄を呼び出して相談して見たのだ。
疲れて思考がおかしくなっていたのかもしれないと後悔した。

「黒ちゃん。短期間で急激に力を付けた能力者の犯行かもって言ったね」

それは可能性の問題である。

「それ、合ってると思うよ」

何故かというと、

「場所、時間の関係性は無視して、能力の威力測定。段階的に強くなっているね。だから犯人は喜んでいるんだね。自分の能力に。そんで、一週間前の風紀委員(ジャッジメント)に被害があった事件から、被害者が風紀委員(ジャッジメント)になってるね。目的がどこかで移行したんじゃない? いや、初めから狙いは風紀委員(ジャッジメント)だったのかも。少なからず、風紀委員(ジャッジメント)の仕事に不満がある人物が引き起こしていると考えると繋がるね」

感心と驚き。そして、

「つまり、犯人の狙いは風紀委員(ジャッジメント)?!」

結論が出る。
見計らったとうタイミングでそれは来た。
衛生が重力子(グラビトン)の爆発的加速を観測したのだ。
その観測地点は――。



「へー、超電磁砲(レールガン)ってゲームセンターのコインをとばしているんですか」
「そうよ。まあ、50メートルも飛んだら溶けちゃんだけどね」

セブンスミストで洋服を選びながらの会話である。

「必殺技があるとカッコイイですよね」

本来は四人のはずであったが、誘ったルームメイトは仕事だと言って断られた。
随分と珍しいと思ったが、それだけ事件に切羽詰っているのだろうと思う。
結局、初春さんと佐天さんと私だけセブンスミストで買い物することになった。

「私もインパクトのある能力だったらいいなぁ」

佐天さんの望みはわかる。
地道に能力開発訓練を始めていると聞いた。その時の顔は希望に満ちていた。
きっと良い能力者になると思う。

「初春、こんなのどうじゃ?」

初春さんに見せたのは紐パンであった。

「はい?! 無理無理。無理です。そんなの穿けるわけないじゃないですか!」
「これならスカートめくられても堂々と周りに見せつけられるよ」

初春さん苦労してるなぁ。

「御坂さんは何を探しに?」

唐突に話を振られた。

「あ、私はパジャマとかね」
「それならこっちの方に……」

先行して初春さんがパジャマのあるコーナーに向かう。
展示品のパジャマ。
これ、可愛いなぁ。

「アハハ、見てよ。これ。こんな子どもっぽいの小学生くらいまで来てたよねぇ」
「そうですねぇ。小学生くらいまではこういうの着てましたよ」

い、いいもん。どうせパジャマだし。他人に見せる訳じゃないモノじゃない。
だから、小学生が着ようと私が着ようと可愛いものなのだからいいじゃない。
二人は別の服を見ている。
今の隙に……。
合わせる!

「何やってんだ。オマエ?」



幼女の頼みは洋服店を探しているということで、紳士たる上条当麻は嫌な顔一つせずに案内した。
セブンスミストだ。
そこで、会いたくない人物が鏡に向かってコソコソと何かしていたので声をかけた。
変質者め。

「な、な、何でアンタがこんな所にいるんのよっ!」
「いちゃいけないのかよ」

公共の場であり、洋服店だぞ。俺だって服くらい買う権利はあるはずだ。

「おにーちゃーん」

幼女だ。お兄ちゃんと呼ばれるのは悪くない気分だ。
あー、癒される。

「アンタ、妹いたの?」
「いや、俺はこの子が洋服店探しているって言うから案内しただけだぞ」

クラスの外道どもに見つかったら通報物だ。

「今こそ因縁の決着を今ここで……」

駄目だこいつ。早く何とかしないと。
事あるごとに因縁を付けてきて暴力を振るってくる相手だ。

「オマエの頭ん中にはそれしかないのかよ。大体、こんな子供の前で始めるつもりかよ。それにココじゃまずいだろ。文句があるならすぐに視界から消えるよ。さー、行こうか」
「うん、お兄ちゃん! じゃあねー。お姉ちゃん」

天使の加護を得た。ビリビリとの対決を回避したぞ。



能力の上達を確認。
望みは破壊と創造。
配点:(爆弾魔)

-8-
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