小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「ってことで、皆心配かけたな」


寮のロビー


俺はいつもより大きな声でそう告げた


ただいま


そう続けて……


「ほ、本当ですわ……」


「そ、そうだな……」


ん?


「まったく……」


「士は……」


あれ?


なんか……


「つ、次はないからねっ!」


「心配、した……」


よそよそしい?


どうした……?


顔も、なんか赤い気がするし……


緊張、してんの?


よく分からん


「どうしたの?皆……なんか、よそよそしくない?」


俺が尋ねると、皆の肩がビクッと震える


「そ、その……何かあるといえば……あるというか……」


「言いたい、ことがある……というか……」


夏海も楯無さんも……


歯切れ悪いし……


「ちょ、皆っ。どうしたんだ?体調悪いのか?」


さすがに、少し嫌な感じがするぞ


怪訝そうな表情が思わず……


すると、楯無さんが立ち上がった


「皆!……この時が、来たわ」


この時?


「そ、そうね!いつまでも逃げられないからね!」


鈴も声を張る


え?なんか、始まんの?


俺が首をかしげると


「で、では……私から!」


箒が、俺の前まで歩いてきた


その頬は真っ赤だ






―――そうして、これから始まる10分にも満たないこの時間を



―――俺は、絶対に忘れないだろう








「士っ!///」


「は、はい」


思わず返事してしまった













「す、好きだっ!」












目をぎゅっと瞑って、告げられた


「……え?」


一瞬、頭の中が真っ白になる


「わ、私はお前が……大好きだ!異性として!一人の男として……ずっと、大好きだった!」


顔は俺が見た箒の中で一番、赤くなっている


「ううぅ……」


顔を俯かせて、表情はもう見えなくなってしまったが


綺麗な黒髪から覗く、耳は真っ赤だ


「え、えっと……」


俺がしどろもどろしていると


「つ、士さんっ!」


セシリアが俺の前へ立った


そして……








「わ、わたくしも……士さんのこと……ずっと、お慕いしていました!……大好き、です!」


あのプライドが高いと


そう評価されていた彼女がそう……告げた


このときの彼女は貴族だとか、そんなのは関係ないように見えた


「男なんて……そう、思っていたわたくしを変えてくださいました


弱いわたくしを変えてくださいました


そして、わたくしに絆の大切さを、教えてくださいました……」


そうして、目を閉じたセシリアはありったけの声を振り絞った


「大好き、ですから〜!」


セシリア……


お前……


「士!」


振り向くと、意外にも余裕の表情の鈴


「り、ん……」


声が震えた


「なんて、顔してんのよ。アンタらしくもない……」


鈴は笑う


この笑顔は……


あの時から……












「私も……アンタのこと……好き、だから……」


俯いて告げる鈴


誤魔化さずに……


包み隠さず……


鈴は、言った


「小学生のときから……ずっと……」


にっと笑って見せた


「つ、士……」


シャルが、俺を見上げていた


潤んだ瞳からは涙が浮かんでいそう


シャルは数秒黙って……


そして、意を決したようにまた俺を見上げて……










「ぼ、……私も、士のこと……好きです!」


そんなシンプルで……だから、一番心振るわせた


「僕が、こうやって居られるのも……士のことをこんなにも好きで居られるのは……全部、貴方のお陰です!」


シャルは笑う


いつもと変わらないお母さんのような優しい笑顔で


「僕の気持ち……受け取って、欲しいな……」


本当に、どこまでも明るい


「嫁!」


ん?


腰元の感触に俺は目線を下げる


ラウラだ


また、そうやって俺に抱きついた……


いつも、そう抱きついてたのは……


「嫁っ!もう、分かっていると、思うが……言うぞ」


「あ、ああ」










「……、……。ぅぅ………そ、その……だ、…………っ!……だ、い…………ええい!お前は私の嫁だ!故に、好きなのなんて当然なんだからな!忘れるな!」


いつもじゃ想像できないくらい顔を真っ赤にしたラウラが叫ぶ


そんなに……


「あんな態度を取っていた私を……お前は、家族だと……仲間だと言ってくれた……そんなお前が、私は大好きだからなっ!」


そして、いつもじゃ想像できないくらい


いい顔で微笑んだ



くいくい


袖が引っ張られた


「ん?」


「あ、あのね……」


簪だ


「わ、私……弱くて……こんな話し方だし……性格も……だから、お友達も、できなかった……でも!」


簪は眼鏡がずれるくらい必死に顔を振るい、叫ぶ


「そんなっ!私に、友達を……お姉ちゃんとの、時間を……そして、人を好きになる、ってことを……教えて、くれた……っ」


簪は言う


















「大好き、だよっ……士」


笑った


何でだろう


照明が当たったみたいに輝いて見えるのは……


「つ、か、さ、くん♪」


腕に当たる柔らかい感触


「楯無さん……」



















「私も、士くんのこと……好き」


いつもは無邪気というか……天真爛漫な感じなのに


腕に抱きつきながら、急にそんなしおらしくなられると……


「初めて……なのっ。こんな気持ち……お姉さんらしくしないとって……いいとこみせよって……男の人にそう思ったのは……」


楯無さんは続ける


「士くんだから、だよ?」


上目遣い


でも、真剣なその眼はいつもの茶目っ気はなかった


「士」


短く呼ばれて、振り返る


夏海が腕を組んで、それを崩して、前に組んで、後ろに組んでとせわしく腕を動かしていた


「あ、あのね……わ、わたしも……貴方のことが……」


そうして、夏海は顔を上げた


あ、ああ……


俺は、気を失いそうになる……


それは、苦しさとかそんなんじゃなくて……


だから、いい意味なんだけど……















「大好きよ。士……そして、ありがとう」


首をかしげて、笑う夏海


「貴方は私に前を向かせてくれたわ……生きていくことが何なのかを……」


夏海は俺の手をとった


「貴方が居ないと……もう、だめみたい。ずっと……そばにいて?」


いつもの夏海らしくもない……でも、真剣なその表情は夏海で
















「皆……」


数秒くらい俺は何を考えていたのか分からない


この状況のことを整理しているだけの余裕は俺にあったか……


「私たち皆……」


はっと前を向くと、皆が並んで俺に笑いかけていた


その暖かい笑顔は……



































「お前のことが、」

「士さんことが、」

「アンタのことが、」

「士のことが、」

「嫁のことが、」

「士の、ことが、」

「君のことが、」

「貴方のことが、」





































「「「「「「「「大好きですっ!!!!!!!!」」」」」」」」

-109-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




IS <インフィニット・ストラトス> ポス×ポスコレクションVol.2 BOX
新品 \3680
中古 \
(参考価格:\4200)