小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

秋の夜


それは、短いようで長く


寒気を帯びている


虫の鳴き声が心地よく響き


月明かりはよく映える


そんな季節


そんな風景


そんな夜風


学園の中庭で、俺……神谷 士はベンチで一人頭を下げていた


「ふぅ……」


ため息のように漏れる息


寒いようで暑い


「どうすっかな〜」


何事も無いような声音で


でも、心の中では未だ信じられなくて……


皆が……俺のこと好き、か……


皆から一斉にしてもらった告白


俺の答えは……




『少し……考えさせてくれ』


逃げてるだけだよな


頭を振って、自分の情けなさに思わず嗜虐的に笑う


誰かを好きになる


誰かに好いてもらう


これは、必然のようで……誰もが通る道で……


告白してくれた皆



まず、箒


『お前は、私の幼馴染だからな……』

『士!今日は私が訓練をしてやろう!』


小さい頃から剣道を一緒にやっていて


一時、離ればなれになったけど


それでも会えたときは嬉しかった


綺麗な黒髪は日本人らしいし……


気の強いところだって、魅力を感じられる





セシリア


『わたくしはオルコット家の当主ですから!』

『つ、士さん!わたくし、今日こんなものを用意いたしましたの!よろしければ、一緒に……』


学園で知り合った最初の仲間


最初は反発し合ってたし、仲だっていいなんてものじゃなかった


でも、それはアイツの過去を思えば仕方ないし、それがどうこうなんて思わない


チョコチョコっと可愛らしく歩いてきて……ロールが綺麗な金髪を優雅に靡かせて……


垂れた目は優しくて……







『士!はい、これアンタの分の酢豚!ちゃんとパイナップル入れたわよ!』

『アンタのそういうところが嫌いになれないのよね〜』


箒とは入れ違いにやってきたもう一人の大事な幼馴染


明るくて、元気で、いないとなんか不安で……


太陽みたいな笑顔は見られるだけでこっちが元気になれる


左右に揺れるツインテールと小柄な体型


天真爛漫な性格……



シャル


『士〜。今日は、どこ行こうか?』

『ははは、皆〜。気をつけてね〜』


最初は男ってことで入学してきた女の子


元男のくせに、今は全然そうでもなくて


お母さんみたいな包容力


優しい……優しすぎるその表情はいるだけで安心できる


気配りが上手で、誰かを嫌いになれない優しい性格で


あれ?シャルは優しいとかそんなばっかりだな



ラウラ


『嫁〜!見てくれ!これが日本のお茶菓子というものらしいぞ!』

『嫁!お前は私の嫁だぞ!どっかに行ったら嫌だぞ!』


千冬姉を驚くくらい尊敬していて、憧れているからこそ


こんな俺が邪魔に思ってたらしい


でも、気づいた。憧れの人を追うには、その周りにも憧れることに……


常識知らずだけど、それがまた可愛くて


知っている知識を披露してやると、自分のことのように喜んでくれて


表情がコロコロ変わって笑った顔は見てるこっちが笑顔になれるような……


そんな娘






『士……私の、ヒーローで、いてね?』

『むぅ……お姉ちゃん、ばっかり……ずるい』


内気だけど、優しい性格の女の子


姉貴へのコンプレックスを克服して、今はその姉を補佐する役割まで……


ヒーローが好きで、誰よりも俺のISに興味を示してくれて……


小動物みたいに潤んだ瞳は綺麗で……


だから、守ってあげたい


でも彼女自身、戦っているものもある


それは、静かに応援してあげるとことで


彼女の成長が垣間見れるところでもある




楯無さん


『はいは〜い♪楯無おねーさんで〜す!』

『士くん!士くん!これ、私が作ったの!どう?凄い?』


この学園の生徒会長で、大事な先輩


先輩のくせに時々年下みたいで……


でも、たまに見せる本気では年上の風格を思い知らせてくれる


元気で、明るくて、綺麗で、可愛くて、スタイルもよくて、優しくて、厳しくて、妹思いで、仲間思いで


そして……皆のことを考えている


だから、甘えたくなることもあるだろう


それを支えてあげたい


甘えさせてあげたいと思えるそんな人



夏海


『早く、お風呂入りなさい。冷めちゃうわよ』

『はい、30分経ったわ……テレビ消して寝るわよ。明日も早いんだから』


俺と同じ転生者


前世の辛い過去を乗り越えて、俺を信じてくれる


冷たく見えるだけで、とても優しくて、仲間思いの素直になれない奴


同室の俺のことを一番に考えてくれる、シャルよりもお母さんな奴


赤い髪は綺麗で、触りたくなってしまう


それは、髪だけでなくて彼女自身も辛い過去を暖めてやりたい









そんな素晴らしい彼女達から告白をしてもらった


冗談抜きで、いいのか?


俺なんかが……


そう思う


でも……ふざけた様子なんてもちろん無かったし


そんな可能性は考えてない


だから今、こうやって悩んでるんだ


「はぁ〜」


「なんだ、ため息なんてついて……」


不意に聞こえる声に俺は思わず飛び上がる


「って、織斑先生」


「今は、いつも通りでいい」


我が姉だった


「で、どうした?」


……さすが、姉貴だな


「実はさ……」


俺は、今置かれているこの状況を丁寧に話した







「……そうか」


話を聞いた千冬姉はいい顔をしていた


「あの小娘共がな……」


「悩んでる内容は……一応、これ」


「いい悩みではないか……普通の男子ならお前はいつ殺されてもおかしくないんだぞ?」


怖いこと言うなよ


……背筋、ゾクッてなったわ


「私は、何にも言えん。これはお前が決めることだからな……でもな」


ん?







「絶対に、後悔する道を選ぶなよ……それだけは絶対に許さないからな」





月明かりに照らされた千冬姉の目は真剣だった


いつも以上に厳しい目で、でも……優しい目


そして……どこか、寂しげだった


「それだけだ……」


だから、俺は……


「千冬姉!」


「……何だ?」


こちらを振り返らずに聞く千冬姉


その声は震えていた


ぎゅっと抱きしめた


これ以上ないくらい


ぎゅっと……ぎゅっと……


「な、何をしている!私は……わた……s……わたしは……告白、……してない……ぞっ」


「じゃあ、なんで泣いてんだよ」


姉だから?関係ないね


「わ、私は、……お前の、姉だから……」


「ああ……だから、なんだ?」


「え?」


「んなの、関係ないよ……言ってくれよ、千冬姉……言いたいことがあるならさ……俺の答えは、決まった」


千冬姉の肩が震えた


それは、俺の「決めた」という言葉に反応したのか


「わ、私は……私だって、お前のことが、好きだ……」


「ああ、俺もだよ…………」


千冬姉の体を離す


俺の目と千冬姉の目が合った


「でも……」


俺は続ける


「俺の答えは……これで、終わらない……まぁ、聞いてくれよ」


そうして、俺は決めた【答え】を話した


「………そうか。それが、お前の答えか……」


「ああ……」


「なら、私は何も言わない……お前が決めた道だからな。私も、それで……いい」


「ありがと」


そうして、千冬姉は「風邪は引くなよ」と笑顔で言い残した


「さてと……」


伝えに行きますか……





















答えを

-110-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




IS <インフィニット・ストラトス> 第1巻 [Blu-ray]
新品 \4780
中古 \800
(参考価格:\7665)