小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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おはこんばんちは、神谷士です



突然ですが皆さんは最長どれくらい正座したことがありますか?

葬式なんかに行くと結構な時間してますよね



ちなみに俺は3時間です



長いわ!



俺の目の前で脚を組んで座っているちふ……織斑先生に俺はあれこれ3時間正座した状態だった



いくらなんでも長すぎる……



「聞いているのか?」



「はい、聞いてます」



怒られている理由としては更識さんを助ける際に置き去りにした資料を完璧に忘れていた事と



整備室を爆破したのがなぜか俺のせいになってる……なんでやねん



「はあ……もういい、授業に戻れ」



「はい、すいませんでした」



ふう……やっと終わった



ちなみに今戻れば……3時限目か



よいしょと立ち上がろうとした時



「くわ!いって!」



……あ、と思ったときにはもう遅い



正座で足が痺れてしまっている俺はそのまま体勢を崩して織斑先生の方へ

まだそれだけならよかった



結果は大惨事……俺が押し倒すような形になり挙句、俺の手は……



「い、いつまで掴んでいるつもりだ///」



織斑先生の豊かなそれを掴んでいた



「す、すいませーーーーん!」



死ぬ前に逃げるぜ!











千冬side−



そんな中、千冬は一人にやけていた



「(ま、まったく……士は……触りたければそう言えばいいものを///)」



そしてハッっと気づく



「(な、何を考えているんだ!私は!……で、でもあんなに顔を赤くして

か、可愛かったなー)」



織斑千冬……まだまだ恋する乙女である



士side-



「それしーか無いけど、それさーえあれば負けやしーなーいー♪」



落ち着くためにいつもより音を大きくして教室へ戻る



「はあ……まだ足いてーよ」



教室に入る



「すいませーん、遅れましたー……て、あれ?」



イヤホンを外しながら教室を見渡すが先生の姿はない



「先生は?」



シャルルに聞く



「いや、それが……彼氏が急に倒れたとかなんとかで病院に……」



何やってんだ……



「はあ……意味分からん」



教室では皆まじめに自習をしており時折話をしている娘もいるがたいして騒がしくない



シャルルの横の席に腰掛ける……



すると



「おい」



と、話しかけられた



お、ラウラか……転校してきたんだな……でも一応……



「誰?」



隣のシャルルに聞いてみる



「ああ……ドイツの代表候補生のラウラ・ボーデヴィッヒさんだよ」



「ふーん、よろしくな」



そして飛んでくる張り手……まあ分かってるんだけどね



俺はその手を握手の形までもっていく



「随分と荒っぽい握手だな……ドイツ流か?」



「な、……!は、離せ!」



お前からやってきたんじゃねぇか……



とりあえず手を離した



「わ、私は認めないぞ……貴様が教官の弟分など!」



「認める、認めないは勝手だけど……俺達は実際そういう感じで育ってきたからなー

お前が決めることでもない」



「だ、黙れ!……」



そうして席に戻っていく



声がでかい……











昼休み……腹が減っていた俺はトンカツ定食(ご飯大盛り)を平らげ、食器を片付けるべく立ち上がる



「はやっ!」



一緒に食べていた鈴の突っ込みに「こんなもんさ」と答え



食器を返却口まで……そしてテーブルに戻る途中……



「ん?あれは……」



ラウラだった……いや、今はまだボーデヴィッヒのほうがいいか



なんか、箸を持ったまま硬直している

あ、美味しそうな魚



食わないのか……?

そして気づく



ああ、なるほど



席に近づき……



「おい、食わないのか?」



と、声をかける



「き、貴様には関係ない!」



おお、顔が若干赤いでっせ……こりゃ決定だな



「お前……箸苦手なの……?」



まあ、シャルルも苦手だしな



「なっ……!ば、馬鹿にするな!こんなものなど私がその気になればすぐにでも……」



その気になれば箸が使えるようになるのもあれだけどな



「ちょっと待ってろ」



「?」



俺は一度、返却口まで戻りおばちゃんに声をかけて……また戻ってくる



「ほい、このスプーンとフォーク使え」



と、もらってきたスプーンとフォークを差し出す



「余計なお世話だ!……だ、第一な……!」



「いいから使えって、ほら」



ボーデヴィッヒの手を取り、無理矢理に握らせる



「ご飯もったいないだろ……それにちゃんと食ったほうがいいのも確かなんだから」



「……れ、礼は言わないぞ?」



「別に、礼を言われたくてやった訳じゃねぇよ……じゃあな、ゆっくり食えよ」



うん、うん、いい事したな俺



戻ってきた俺は



箒に小突かれ、セシリアにつねられ、鈴に足を踏まれ、シャルルにもう片方を踏まれた

……なんでやねん











放課後……俺は更識さんと機体の組み立てをしていた



と言っても、もうほぼ完成しておりあとは細かい調整だけとかなんとか

やっぱりスゲー



「更識さん……このファイルここ置いとくよー」



「う、うん……ありがと、う」



「もうチョイだなー」



「う、うん……これも……神谷君の、お陰」



「ん?俺はなーんにもしてないぞ?」



そんなに俺なんかしたかな?



「う、ううん……やっぱ、り……一人、じゃダメ……本当に……感謝して、る」



「まあ感謝されて悪い気はしないけどな……さあ、もうひとがんばりしようぜ!」



「うん……!」











翌日、土曜日……午前中で授業が終わるため午後から遊びに学園外に行く生徒も多い



「で、でき……た」



そんな中、俺と更識さんは一応、完成した「打鉄弐式」を眺める



「ふうーーーー、できたできた!ちょっと休憩して、第六アリーナ行って飛行テストしようぜ!

よし、出発!」



「ちょっ……ちょっと、まっ……て!言ってる、ことが……矛盾、してる……」



こら失礼……いやー、でもスゲーわ!



自販機で勝っておいたブドウジューズで喉を潤す



その横に更識さんが座る



「そ、その……あ、ありがとう……わ、私……ひとりじゃ、できなくて……あ、あの……本当に……本当に……ありが……ありがとう……」



恐縮そうに言う更識さんの頭を優しく撫でてやる



「はぅ……?」



「前にも言ったろ?俺がわがまま言ってやらしてもらってんだから……気にしちゃだーめだっつの」



「う、うん……ありが……とう」



「しゃあ!休憩終わり!更識さん、いける?」



大きくうなずいたその目は希望で染まっていた









第六アリーナ……他のアリーナと決定的に違うのは、空が完全に開放されていて、学園の中央タワーをコースに制限なしの飛行ができる俺とはもっとも無縁のアリーナである



簪side-



「スラスターの出力……チェック……」



第六アリーナのビットで「打鉄弐式」のコンソールを開きながら、全ての数字に目を通していく



士のおかげで作業も捗り、彼自身なにかで勉強したのかアドバイスをくれたりもした



「…………」



でも、それ以上に彼自身の存在が大きかったのかもしれない



「(な、なに……考えてるの……私……)」



赤くなりそうな頬をごしごし擦る



そんなことをしていると士からプライベートチャンネルが入る。



士もディケイドになってタワーの頂上にいる



「どう?いけそう?」



「う、うん……」



「じゃあ、待ってるから無理せずおいで」



「わ、分かった……」



そして、飛び立つ……



士side-



タワーの頂上で更識さんを待っている俺は関心していた



「速いなー、ブルー・ティアーズと同じくらいかな?」



そして、おかしなところに気づいた



動きは安定しているのだが、どこか速度が遅くなったり速くなったり……



なんてことを考えていると「打鉄弐式」の右脚部のブースターが爆発した



「なっ!?」



更識さんは機体ごと大きく傾いて中央タワーの外壁へと突っ込んでいく



「くそっ!」



頂上から飛び降り、ライドブッカーに手をかける



こういうときに便利なライダーは……



『KAMEN RIDE・―――』



お前だ!



『―――FOURZE』



仮面ライダーフォーゼになり、さらにカードを挿入する



間に合え!



「更識ーーー!!」



簪side-



「(反重力制御が効かない……!?な、なんで!?)



ディスプレイに浮かぶエラーの数々



タワーの外壁はもう目の前まで来ていた



反射的に目を閉じる私に

刺すような強い声が―――



「更識ーーー!!」



『ATTACK RIDE・ MAJIC HAND』



『マジック・ハンド・オン』



低く響く音声の後に続く機械的な高い音声



「(かみ、や……くん?)」



士side-



『ATTACK RIDE・ MAJIC HAND』



『マジック・ハンド・オン』



独特な二つの音声の後に右腕に最大10mまで伸張する多関節のロボットアームが装備される



複雑なコントロールが可能で、人を抱えたり可能なほど保持力・強度も高い



届けーーー!



更識さんを掴み、抱き寄せる



……しかし



「ぐはっ!」



背中から外壁に衝突する



いってーーー!



こんなことならクウガのタイタンとかキバのドッガとかの硬いライダーになってりゃよかった



まあそんな暇なかったんだけど……



「か……かみや……くん……」



「は、はは……だ、大丈夫か?……ちなみに俺は超いてぇ」



更識さんを安心させるために不器用ながらも笑う



「あ、あ……あの……あのっ」



「更識さんは大丈夫か?」



「え……?う、うん……」



「なら、いい……」



『ちょっ、ちょっとそこの生徒!何が起きたの!?こっちではタワー破損の表示が出てるけど!?』



「どーもすいませーん、IS訓練中の事故ッス。ちなみに一年一組神谷士です」



「い、一年……四組の、更識簪……です」



「事故!?怪我してないわよね!?大丈夫なの!?」



数学教師落ち着きなさい、声がでかい……



「えっと、とりあえず怪我はないです。今からピットまで戻るんで下でいいですか?」



「お、オーケー

ゆっくり降りてきてね」



通信が切れる



「またシステムエラー発生したら、笑えないからな……このまま降りるよ?」



「う……うん……」



『ATTACK RIDE・PARACHUTE』



『パラシュート・オン』



左腕のコンテナパックから3つのパラシュートを展開する



ゆっくりそのまま降下する









「ああああ……報告書かー、めんどくせーなー」



ピッドに戻り先生に事情を説明するとレポート用紙を20枚ほど渡された



だるーー



隣を歩く更識さんは申し訳なさそうに俺を見ている



「どうかしたか?」



「あ、あ……の……、私の……せいで……、ご、ごめんなさい……」



「どした?急に?機体の事故じゃしょうがないでしょ……気にしない気にしない」



「う……」



そんなに落ち込むなよ……



「なあ、更識さん?」



「な……なに……?」



簪side−



申し訳なさでいっぱいだった



あんなに痛い思いをしたはずなのに私の隣で彼は笑っている



「(は、……はじめ、て……男のひと……の、か、……体に///)」



嫌ではなかった……彼だからだろうか……うん、彼だから―――士だからだと確信した



心臓が痛いほど鳴っている



「(で、でも……もう……手伝って、は……もらえない……だろう、な……)」



あんなことの後だきっと……断られる



やっぱり……私なんて……



彼の顔を見る



「なあ、更識さん?」



「な……なに……?」



どうしたんだろう?



やっぱり、断られるのかな?覚悟は半分できて―――







「―――整備室は第二でいいよな?俺、スパナとか取ってくるから、先に行ってて



……あ、シャワーとか浴びたいなら浴びてきてもいいよ」



「……え?」



一瞬、意味が分からなかった



なぜ?なぜ彼はこんなになっても私を助けてくれるのか……



勢いで了承してしまった



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