小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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簪side-



第二整備室で簪は士と切磋琢磨していた



あの後、そのまま整備室で延々と3時間弱の時間「打鉄弐式」の整備室とアリーナの間を行き来していた



現在、午後4時30分

日も傾き始めていた



簪の隣では士がキーボードを叩いている



「(かっ……こ、いいな……)」



さっき自分を身を挺して助けてくれた士

そんな自分に何の嫌な顔一つせずまた手伝ってくれている



「(なんで、だろう……?)」



「よし、簪!できたぞ!とりあえず……もう一回テストいこうぜ」



本日何度目の移動だろうか……



小さく頷き、士の後を追った……



士side-



こんにちは……神谷 士です

いやー、簪の機体が何度目かの調整でやっと動きそうです



「簪、いける?」



「う、ん……」



不安もあるのだろう……でも、やってもらうぜ



そして、静かに飛び立つ……



縦横無尽にアリーナを飛び回る簪



いいぞ……いいぞ……いけ!



飛行のあとに打鉄弐式の装備「山嵐」をターゲットの的に放つ



全弾命中!



そのあとも順調にテストを終え……



「よっしゃーー!」



「で、でき……た……!」



ガッツポーズをする俺と本当に嬉しそうに笑う簪



「お疲れー更識さん!良かったな」



展開を解除しながら駆け寄ってくる更識さんの頭を撫でる



「う、うん……あの、本当に……ありが……ありがとぅ……///」



「いやー、疲れたなー

もう疲れたからテンションもあがらねーよ」



「あ、あの……ご、ご飯……たべに……いこっ……」



お、なんか元気だな……



「元気だなー……よし、行きますか」











ご飯を食べた午後7時30分……シャルルは何かクラスの女子と遊びにいってまだ帰っていない



まあ……ゆっくり遊んでほしいね



「ふわぁ……」



あくびが出る



寝るにはまだ早いし、報告書を書かないといけないし……



……風呂はいろ



簪side-



「……」



簪は寮の調理室を借りていた



ガスオーブンの前で座っている簪は今か今かと抹茶のカップケーキの出来上がりを待っていた



「(かみやくん……た、食べてくれるかな……)」



チンッ!



「あっ……!」



できた!



ぱぁっと表情を明るくしてカップケーキを取り出す



「(う、うん……うまくできた……)」



用意していた袋に一つ一つカップケーキを入れてリボンで縛る。



「(あとは……神谷君に食べてもらえば……)」



―――嬉しい



「(さ、冷めちゃう前に……)」



カップケーキをを3つ両手に抱いて早足で廊下を歩く



「(えへへ……)」



自然と笑みがこぼれる



自覚した私は彼のことが―――神谷 士の事が好きだ……



あんなにも私を助けてくれた彼の事を好きにならないわけが無い



「(会いたい)」



会いたい、会いたい、会いたい



次の角を曲がれば士の部屋だ



「すう……はあ……」



一旦立ち止まり、呼吸を整える



「(よし……!)」



ドアをノックする



コンコン



「……はあーい」



ドアの向こうから少し曇った声



それを聞くだけでテンションがあがる



「はい、どちらさ……お、更識さんじゃん。どしたの?あがってく?」



風呂上りなのだろうか……タオルを首からかけ、黒のTシャツに黒のジャージという軽装で頬はわずかに紅潮している



それだけで格好よく見えるのに、優しく部屋へあがるように勧めてくれる



「う、うん……」



「ん……あがり」



と、部屋へ入れてくれる



「(緊張……する……///)」



先を歩く彼の背中には踊り字で「最強」と書かれていた



「す、すご……い、Tシャツ……だね……」



思わず声にだす



「(ああ……こんなこと、言ったらーーー)」



「お?分かってくれるか、さすが!」



「(ほっ……なんか……よかった……みたい)」



「で、どうしたの?急に?」



そこで、簪はさっき作ったカップケーキを差し出す



「あ、あの……つくっ……た、から……食べて……///」



士side−



「あ、あの……つくっ……た、から……食べて……///」



さっきからしていた美味そうな匂いはこれかー



「おお、ありがとねー

3つあるなら更識さんも食ってけよ……今、紅茶入れるな」



「う、うん……ありが、とう……」



ミニキッチンに行き紅茶を入れる



『Anything goes! その心が熱くなるもの

満たされるものを探して

Life goes on! 本気出して戦うのなら♪

負ける気しないはず!♪』



いやーオーズはよかったなー

早くカメンライドしたい



「この、歌……いい歌……だね」



おっ!分かる人だなー



「やっぱり更識さんは分かる人だなー

さあ、食おうぜ!……いっただきまーす」



「ど、どうぞ……」



一口パクつく……こ、これは……



「う、うまいいいいいーーーーーー!!」



思わず立ち上がる



な、なんだ!?ふっくらしてるとかは、よく分からんけど……う、うまい!



「お、おい、しい……?」



どこか不安げに聞いてくる



「う、うまいよ!更識!うまいよ!」



おっと……思わず呼び捨てにしちまったぜ



「……じゃ無くても……いいよ……?」



「ん?」



「だ、だか……ら、……し、下の名前で……いい、よ?」



「え?じゃ、じゃあ簪さん?」



「よ、呼び……捨てで……呼んで……」



顔を真っ赤にして、上目遣いで言ってくる



「えっ……と、簪?」



「う、うん……えへへ……」



「な、なら簪も俺の事下の名前で呼んでいいぞ」



「ふぇ?……えっ……と、つ、つつ、つ……つか……さぁ///」



俺の名前呼ぶのってそんなに恥ずかしいか?



「おう……あ、そうだ!今度のダッグトーナメント俺と組もうぜ!」



「えっ……!?」



そんなにびっくりすることか?



「だ、か、ら!今度のダッグトーナメントで俺と組んでくれよ簪」



「………な、なん……で?」



「ん?」



「な、なんで!つ、つか……さは、私に優しく、してくれるの……?」



優しく……ねぇ



本人に言うようなことでもないんだけどなー



「俺……さ、初めて簪に会ったときから思ってたんだ……

こいつはどこか心から笑ってないなって……



こいつが本当に笑ったらきっといい顔するんだろーなーって



それだけ、ちなみに打鉄弐式ができた時の笑顔はすごく……その、可愛かったぞ

だ、だからもう一回見るために今度はトーナメントで優勝できたらって思ったんだよ



俺に関わってくれる人には心から笑ってほしいから……さ



まあ俺から関わりにいったんだけどな……ははっ」



すると、肩に暖かい感触が……



簪が肩に寄りかかってきたからだ



「簪?」



「あ、りがとう……そ、その……ISのことも、だけど……私の……ことも……ありが、と……///」



そして、



「わ、わたし……から、も……おねがい……します」









士と簪がタッグを組んだその翌日



「あら?」



鈴は学年別トーナメントのための特訓のため、アリーナに来ていた



すると後ろから声をかけられ振り向くと

セシリアがいた



「ん?早いわね」



「てっきり私が一番乗りかと思っていましたのに」



「あ、聞いた?今度のトーナメント士は4組の簪って子と組むらしいわよ……」



「ええ……聞きましたわ……」



「い、いまいちテンション上がらないけど、あたしはこれから学年別トーナメント優勝にむけて特訓するんだけど」



「ええ、私もまったく同じですわ」



「「・・・・・・」」





「この際どっちが上かはっきりさせとくってのも悪くないわね」



「よろしくてよ。どちらがより強く優雅であるか、この場で決着をつけてさしあげますわ」



「もちろん私が上なのは、わかりきっているけど」



「ふふ、弱い犬ほど良く吠えると言うけれど本当ですわね」



「どういう意味よ!」



「自分が上だってわざわざ見せようするところなんて典型的ですもの」



「その言葉そのままそっくり返してあげる!!」



二人はISを展開し、まさに戦いの火蓋を切ろうとした瞬間



ドゴォォォォン!







何者かが砲撃してきた









見てみると漆黒のISを装着した-ラウラ・ボーデヴィッヒ-が……



「ドイツ第三世代機・シュヴァルツェア・レーゲン!!」



「ラウラ・ボーデヴィッヒ・・・・」



「どういうつもり!?いきなりぶっぱなすなんてなかなかいい度胸してるじゃない!!」



「中国の甲龍にイギリスのブルー・ティアーズか‥‥‥‥ふん、データで見た時の方がまだ強そうではあったな」



「何?やるの?わざわざドイツくんだりからやって来てボコられたいなんてたいしたマゾぶりね。それともジャガイモ農場じゃそういうのが流行ってんの?」



「あらあら鈴さん、こちらの方はどうも共通言語をお持ちでないようですから、あまりいじめるのはかわいそうですわよ」



「貴様達みたいな奴が私と同じ第三世代の専用機持ちとはな。数くらいしか能のない国と、古いだけが取り柄の国はよほど人材不足と見える」



その一言がきっかけに



「この人はスクラップがお望みみたいよ!」



「そのようですわね!」



若干キレて

そしてとどめに



「ふん!ふたりがかりで来たらどうだ。下らん種馬を取り合うようなメスに、この私が負けるものか」



完全にキレてしまった



「今なんて言った!あたしの耳には『どうぞ好きなだけ殴ってください』って聞こえたけど!!」



「この場にいない人間―――ましてや、わたくしの思い人の侮辱までするなんて。その軽口、二度と叩けぬようにしてあげますわ!!」



「ふっ、とっとと来い」





「「上等!!」」





俺は今、シャルル、簪と廊下を、歩いていた……



箒、セシリア、鈴、シャルルには今日の朝、謝り倒した



だって……みんな俺と組もうって言うんだよ

無理無理



まあシャルルは案外早く諦めてくれて助かったけど……本当にいい子だ……



などと考えていると





妙に騒がしいのに気づいた





そして女子達の会話を聞いてみると代表候補生三人で模擬戦をしているらしい





気になり行ってみると







『ドゴォン!』



急いでピットに出ると爆発音がした。煙が晴れると

 



倒れているセシリア、鈴。そしてそれを見下ろしているボーデヴィッヒ





「くらぇぇぇ!」



鈴が衝撃砲を放ったのだが



「ふん無駄だ、シュヴァルツェア・レーゲンの停止結界の前では。」





そう言い右手を出すと、ボーデヴィッヒは一切被弾していなかった。





「龍咆を止めた?シャルルあれって・・・・・」



「うん、AICだね」



「そうかあれを装備していたから龍咆を避けようとしなっかたのか」



原作で知ってるけど……やっぱりすごいな



「シュヴァルツェア・レーゲンの第三世代兵器。アクティブ・イナーシャル・キャンセラー

実際相手にするには厄介すぎるな」



それからはもうボーデヴィッヒの一方的な暴力であった





ラウラのワイヤーブレードで首をしめ、鈴とセシリアを殴る蹴るの繰り返し



とうとう生命維持警告域超過の警告が出た





しかしまだ攻撃を止めない





そろそろ止めるか・・・・・だがこのバリアが邪魔だ



まあ、破るんだけどね



「簪、シャルル、援護頼んだよー

俺がセシリアと鈴を撤退させるその40秒を稼いでくれ」



「わかっ……た」



「了解……でも、ここにはバリアが……」



「破るさ―――」



『KAMEN RIDE・―――』



「―――こいつでな」



『DECADE』



ディケイドになりそのままカードを挿入する



……そういや、初めて使うな



『ATTACK RIDE・SLASH』



ライドブッカー・ソードモードの刀身を分裂させバリアを切り裂く



「さあ、切り込むぜ……」



簪とシャルルがそれぞれの遠距離武器で攻撃する



「ちっ!」



「邪魔するよ!」



「………」



よし、俺は今のうちに……



「セシリア、鈴!大丈夫か?」



「ええ……」



「格好悪いところ見せたわね……」



「馬鹿が……ちゃんと戦ったんならそれでいい……格好悪いことなんてあるかよ

あとは……任せろ」



二人の頭を撫でてやりながらアリーナの隅まで移動する



「よしっ……行きますか」







「やはり、私の敵ではないな……」



「くっ!」



「う、うう……」



シャルルは左腕を簪は右腕をワイヤーで縛られ、ボーデヴィッヒに引っ張られていた



そしてプラズマ手刀を出し



「いくぞーー!!」



シャルルに向かって、切りかかってきたが



『ATTACK RIDE・BLAST』



ライドブッカー・ガンモードの銃身を分身させ光弾をラウラに向け、連射する



「なっ!?き、貴様邪魔をするなぁ!!!」



「悪いがそれは出来ねえよ……フォークとスプーンに免じてこれくらいに……」



「ふざけるな!!!」



「ですよねー」



シャルルを縛っていたワイヤーを消し、さらに切りかかってきたがそれをかわし



「シャルル、簪とりあえず下がれ」





「で、でも「頼む」・・・わかったよ。でも気を付けてね。」



「がん……ばっ……て」





「はいよ……じゃあボーデヴィッヒ続き……やるか」



「貴様あああぁぁぁ!!」







ワイヤーブレードと両腕のプラズマ手刀を器用に使い分け、近距離戦を行っている俺とボーデヴィッヒ



ブッカーのソードも案外、使えるんだな……



なんてことを考えていると



「もらった!」



と片腕を前にだす



だが……



「お前のAICの弱点くらい知ってる」



『ATTACK RIDE・ILLUSION』





自身の分身体を6人生成し、攻撃するイリュージョン



多量の集中力が必要なAICは、複数相手の相手には機能しない



「さあ、動き……とめてみろよ」



言いながら、全員でいっせいに飛び掛る



ガンモードで援護射撃してくれるやつと、ソードモードで直接ダメージを与えていくやつとで別れる



「くそっ!卑怯な!」



ごめんね……でも



「終わりだ……」



『FINAL ATTACK RIDE・de、de、de、DECADE』



自分と標的の間に現れる13枚のホログラム状のカード型エネルギーを潜り抜け跳び蹴りを叩き込むディメンションキックを決めようと跳んだ瞬間



「いい加減にしろ!」





見るとボーデヴィッヒに刀を突きつけている織斑先生がいた



とりあえず変身を解除した



「はぁ〜、やれやれこれだからガキの相手は疲れる」



「模擬戦をやるのは構わん。だがアリーナのバリアーまで破壊する事態になられては教師として黙認しかねる。この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」



「教官がそうおっしゃられるなら。」



素直にボーデヴィッヒはISを解除した





「神谷、デュノア、更識お前たちもそれでいいな?」



「うっす」



「僕もそれでかまいません」





「わか……り、ました」





「では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。解散!」





そう言いこの場を納めた



帰り際に織斑先生が俺に





「話がある。あとで来い」



とだけ言って去って行った



……なんすか?

-12-
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