小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

翌日


IS学園の屋上


夕焼けが赤く学園を照らしていた


それは、この屋上も例外ではない


俺の目の前には八人の女の子


俺は、今から考えて……考えて……考え抜いたこの【答え】を伝える


箒に、


セシリアに、


鈴に、


シャルに、


ラウラに、


簪に、


楯無さんに、


夏海に……


もう、迷わないし後悔もしない


そんな納得のいく答えを俺は用意した


ロマンは……どこだ


「答えは、出した?」


簪がゆっくりと喉を振るわせた


その声は緊張で振るえていて、泣き出しそうな表情だ


「ああ……ちゃんと、決めてきたよ」


皆の肩が……震える


決めたという言葉に反応するのは、誰も同じなんだな


なんてことを考えながら、息を一つ吐いた


「聞かせてもらえるかしら?その答えを」


楯無さんが微笑む


でもその肩は、表情は、瞳は、揺れていた


だから、俺は……


包み隠さず伝える


入学は四月


今は、十月


この半年で


俺は色んな人に出会って……


沢山の事を学んで……


多くの優しさをもらって……


特にこの八人は、その中心にいて


想いを伝えてくれた


俺が……こんな俺が、好きだと……


だから、俺もそれに応える


言え


今しかない


考え抜いたこの答えを……


さぁ!


息を吐いて


また吸った


一度、目を瞑って開く


心臓が信じられないくらいに高鳴っている


そして、俺は伝えた











































「好きです!!超、好きです!! 【皆】 彼女にして……絶対、幸せにしてみせるから!」





俺は、吼えた


転生したのは、学園に入学する三日前なので、前世と変わらない十六年間で一番の声で


吼えた


何度か、山びこのように声が続いたようにも聞こえた


俺の全てをぶつけた


ぶちまけた


…………………


…………


……


それが、十分なのか


三十秒なのか


分からなかったが、俺には凄く短く感じられた


初めに口を開いたのは、夏海だった


「それが、貴方の答え?」


「ああ、考えたんだけどさ……付き合うとか、もうそんなんじゃないんだよ」


俺は歩く


皆の方へ


「さっき、彼女にしてって言ったけど……正直、皆はもう違う……」


「違う?」


箒が首をかしげた


しかし、その動きは固い


「こう言うと逃げてるように聞こえるかも知んないけどさ……」


俺は、言う


当然だから


だから、言った










「なんてかさ、付き合うってのも『今更?』って感じがするんだよな……


たいてい一緒にいて、危険な相手と戦ったり、危険なところにいたり。一緒に訓練とか頑張ったり……


だからさ、俺の中では―――」




もう、  付き合うとか、付き合わないとか、そんなところに皆はいないんだよ。俺の中の、もっと深いところに……


もう絶対に切り離したりできないところにいるんだよ






俺は、できるだけ優しく伝えた


正直なこの気持ちを


その答えに、応えに皆が肩を落とした……そんな気がした


「それが、士さんの本心……ですか?」


「うん」


「間違いないよね?……嫌だよ、実は嘘でしたなんて」


「そんな、ことしねぇよ」


セシリアとシャルがどこか穏やかにそう確かめるように聞いた


だから、俺は簡単に答えた


もう見えてるから


「アンタらしいっちゃ、アンタらしいけど……」


鈴がむくれたように頬を膨らませる


ラウラは……でも、誇らしげに胸を張った


「それが、私の嫁だな」


「士……後悔、しない?」


「ん?」


簪が不安げに俺を見上げる


楯無さんも首を縦に振った


「そうよ。普通は納得できる答えじゃない……私だけを見てってそう考えるのが普通なのよ」


箒も続く


「それを、お前は皆を取ると言ったんだ……世間的にだって……それでも、お前は……」


「ああ」


俺は頷く


深く


「これをきっかけに私たちが険悪になったら、どうするの?貴方は少し、愛されてるんじゃないとか……私だって……ってなったら……」


夏海が、どこか試すように聞いた


でも……


「下手したら、そこにも気づかないかもしれない……なんせ、今まで私たちの気持ちにも気づかなかったんだから」


皆も頷く


不安に思ってるのは共通らしい


「ああ、そうだな……俺は、今まで気づかなかった。皆の好意に……


こんなにも想っててくれたのに……」


確かにそうだ


でも……


「皆が言うとおり、今まで本当に気づかなかった。実は、皆が俺に好意を抱いてたのは知ってました……


なんて、サプライズはもちろんない。俺は、バカみたいに気づかなかった―――でもさ」


俺は言う


自虐するように、そして自慢するように、俺のこれまでの全てを口にした










































「俺は気づかなかったけど、築かなかったわけじゃない」




























ずっと、築いてきた


気づかなかった俺だけど、気づかないなりの人間関係を


「だから、これで皆の心が……絆が、バラバラになるなんて俺は、これっぽっちも考えてないよ」


俺にしか出来ない人間関係を、築いてきた


「それが、もう一つの答えね」


不敵に俺は笑った


「……気づかないと築かないをかける……お前には緊張というものがないのか?」


箒が呆れたように、頭を抑えた


その表情はにやけていたが……


「だから、皆……俺と、一から歩み直して下さい」


俺は頭を下げた


「私は、いいよ……」


簪が俺の手を握った


「わ、た、し、も♪」


楯無さんが逆の腕に抱きついた


「私もだ!」


ラウラが正面から抱きついてきた


「ちょ、ちょっと!おいおいおい!」


危ない、危ない


「わたくしも、ですわ」


セシリアは俺に寄り添うように体を寄せた


「僕も♪」


背中に柔らかい感触


シャルか


「私もだぞ!」


箒がラウラとの間に無理矢理体を入れてきた


「おっとっと」


よろけそうになる体を支える


「仕方ないわね……それが貴方の答えなら、付き合うわ……」


夏海も簪が握ってきてる方の腕を組んできた


「ちょ、ちょっと!私も入れなさいよ!」


鈴が楯無さんが抱きついてる方の手を握った


これから、忙しくなりそうだ


俺は、静かに息を吐く


でも、ま……












これが、いいかな……






秋の夕焼けがどこまでも俺たちを照らしていた







-111-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




TVアニメ IS<インフィニット・ストラトス> VOCAL COLLECTION ALBUM
新品 \2300
中古 \1546
(参考価格:\3000)