小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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想いを伝える


それは、難しいことだ


今日、俺はそれを実感した


それは、多分……


彼女達が本気で俺に気持ちを伝えてくれたからで……


だから、俺もあんなに緊張して……はち切れそうになって……そして、頑張ったんだと思う


そんな日の夕食


「さてと……」


今日は、めでたいので奮発してやった


ステーキハンバーグだ!


はははははは!羨ましいだろう!


そうだろう、そうだろう


え?最初のいい感じの雰囲気?


知らん知らん!


「まったく、ハンバーグって子供ね……」


そう言って俺の隣に座る赤い髪の女の子


紹介しよう。俺の【彼女】海東夏海だ


「いいだろ!別に!……好きなんだから」


「そういうところ、可愛いわ」


夏海は目を細める


……くそ、可愛い


「ったく、さて……皆は……」


辺りを見渡すと


「おっ!こっちこっち!」


俺が手を振った先に


「なんだ、ここか……探したぞ」


そう言ってポニーテールが揺れる


紹介しよう。俺の【彼女】篠ノ之箒だ


え?違和感?


気のせいじゃない?


「箒は……お前はいつでも和だな」


魚て……


こういう日くらい……ねぇ?


「私はいつだって和食オンリーなんだ」


うん、和と洋がまさに融合したね


何を思って言ったのかは優しい神谷くんは聞きません


「おっ!美味しそうじゃない!」


そう言いながら、俺の前に座るのは【彼女】の鳳鈴音


「あっ!士〜」


「嫁!私も同じハンバーグにしたぞ!どうだ!嬉しいだろう!」


「もう、ラウラ。あんまり食べ過ぎちゃだめだよ」


なんて、仲良く隣に座ったのは【彼女】のシャルと【彼女】のラウラ


え?……まぁまぁ言いたいことは分かるけど、もうちょい待てって


「あら、皆さん。こちらでしたか」


優雅な振る舞いで席に着いたのはセシリア


【彼女】です


美味そうなクリームシチューだ


「士くん、お邪魔するわよ〜」


「士……ハンバーグ。美味しそう、だね」


姉妹揃ってのご登場は【彼女】の楯無さんとその妹で【彼女】の簪


さてと……そろそろ説明しようか……


え〜。この八人


皆、俺の彼女です


ハーレムとかじゃねぇよ


彼女だから


うん。決して、ヒモとかじゃないから


「士、食べよう?」


簪が可愛らしく、首をかしげた


「へいよ……んじゃま、いただきます」


「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」








「それにしても……」


鈴が、麻婆豆腐をほふほふさせながら口を開く


「付き合うことになったっても……なんか、実感わかないわね〜」


「そうか?」


「まぁ、メンバーがメンバーだから」


シャルがあははと苦笑い


「???」


よく分からんぞ?


「実は、私たち……よく、遊びに行ってたのよ。貴方抜きでも」


えええええええ!?


「嘘だろ!?」


「本当よ♪」


楯無さんがウィンクする


「え?じゃあ、たまに誰も居なかったのは……」


「うむ、出かかけていたな」


ラウラが鉄板の上の焼き人参を頬張る


「そんな〜……」


え、じゃあ何?


俺、はぶられてたの?


ガクッとうなだれる俺に箒とセシリアが声をかけてくれた


「お、落ち込まないでくれ!これからは士もな?」


「そ、そうですわ!別に、士さんがどうこうとかでは……」


ま、まぁ……


「頼むよ……」


唇を尖らせながらハッシュドポテトをつつく


「うっ……士くんが拗ねてる」


「可愛い……」


なんでやねん














そうして、晩飯後


「さてと……わり、夏海。先、帰ってて……俺、寄り道」


「あら?浮気?」


ぶっ!


「ば、ばか!そんなんじゃ……」


「冗談よ……」


ふふふと、笑う夏海


んだよ……ったくよ


「じゃ、行ってき〜」


「はいはい、いってら」


夏海、大分ノリいいな









そうして、やってきたのは中庭


月明かりなんかは綺麗で、昼とは違う姿を見せてくれる


そんなベンチに足を組んで座る千冬姉が……


後ろから、ベンチへ


「よ、千冬姉」


「士か……いい顔をしてるな……」


なんで、こっち見てないのに分かんの!?


「ま、まあな……」


よく分からない恐怖に怯えながら俺は隣に、腰掛ける


「で、どうした」


「お礼と……伝えたいことがあってさ……」


買っておいた缶コーヒーを一つ手渡した


「……言ってみろ」


千冬姉は静かに


でも、どこか……焦っているようにも聞こえる口調で


そう、尋ねた


「まずは、ありがとな……」


「ああ」


「千冬姉が、背中押してくれたから俺は皆に気持ち、伝えられたよ」


「そうか」


千冬姉はコーヒーを一口煽る


「それとさ……」


俺が、続けると


千冬姉の肩が震えた


「……なんだ?」


さてと……


言うか……


二度目は緊張しねぇな


「千冬姉……」


俺は、発した


彼女達に伝えたように、素直な気持ちで
















「好きだ……」












風が吹いた


秋の涼しい風だ


花びらが舞う


カランと缶が落ちる音がした


「……士」


「俺は、千冬姉も……好きだ」


あの時、千冬姉は俺に言ってくれた


『それでも、いい』


だから、俺は伝えた


「それは……」


震えた声


千冬姉だ


「それは、きょうだ―――」


「一人の女性として……だ」


強く言い返す


彼女が全てを言い切る前に……


「普段は、皆の憧れの凛々しい人なのに、家ではぐうたらしてる千冬姉が……


一番に、俺の心配してくれる千冬姉が……


そんな、世界でたった一人の俺の家族の千冬姉が……俺は、一人の女性として好きだ」


千冬姉は目を丸くして、俺を見た












「ずっと俺の傍にいてくれ………千冬」







肩を抱いた


静かに唱えるように伝えたこの言葉は、どう届いただろう?


果たして、千冬姉は隣で震えだした


見ると、彼女は泣いていた


「千冬姉?」


「あんまり………嬉しいことを、言うな」


すすり泣きながら、千冬亜鉛は


「そんなこと……言われたら、私は……私は……」





―――もう、歯止めが利かなくなってしまうではないか……っ!







「千冬姉……」


「好きだ!……私も……私だって!好きだ!……あいつ等に負けないくらい好きだ!」


千冬姉は俺の胸にしがみついて、泣いた


数分して……


「落ち着いたかよ?」


「あ、ああ……」


「千冬姉」


俺はそんな彼女の頭を撫でながら、優しく声をかけた


「?」


「姉弟とか、関係ねぇ……家族とか関係ねぇ……だからさ、傍にいてくれ」


そうして、千冬姉は俺の胸元で


「はい」


と、返事をしてくれた


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