小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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「あっつい〜」



日本の夏は暑いんだよ、神谷 士です



くそっ、暑すぎる



ディケイドのデータを取りたいってことで山田先生に呼び出された帰り、寮の廊下を俺はだらだら〜だらだら〜歩いていた



すると、



「おっ、嫁ではないか!」



ラウラだった



「よ〜ラウラ……暑いな」



「このくらいの暑さ……軍にいたときに比べれば―――」



「―――待て待て待て待て」



軍とか言うなや、何か怖いわ……



「あ、ラウラ……俺の部屋来る?夏休みになってからはあんまり会ってないしな」



「いいのか!?」



ラウラが俺に掴みかかってくる



と言っても背が低いラウラは俺の腹辺りしか掴めないんだが



それがまた小動物みたいでやばい



「お、おう……冷えたお茶もあるしな」









というわけで俺の部屋



「ま、適当に座ってくれ」







ラウラside-



士とばったり会えてかつ、部屋まで入れたのは良かった……



でも……



「(う、うう〜!緊張、しているのか?私が?)」



柄にもないことは分かっている



いつも、ことあるごとに士の膝の上に座り、皆に見せ付けているようにしているのだが……



「(膝の上に座るのだって、本当は照れくさいと言うのに……まして二人きりだと……)」



そう、彼女も元軍人とはいえ今は恋する乙女



その意中の男性の膝の上に座るのもライバルに見せ付けるためにやっていること



…………まぁ、何か暖かい気分になるのも一つではあるが



それでも今日は二人きり



箒もいなければセシリアや鈴、シャルロットも簪もいない



部屋に入ってベッドにかけて、早速まずいことに



「(士はなんというか……いい匂いがするな……あ〜……うー……)」



ばたばたと足を動かしてもがきたいけれど、そんな姿を士に見られたくなくて、結局、もぞもぞと小さく体を揺る



「ほい、お茶……ちゃんと冷えてるよ」



「う、うむ……いただこう」



そして、一口ゴクリ……と、飲んだところで気がついた



ん?もしかしてこのコップ…………普段、士が使っているコップなのではないか!?



そう思うと顔がどんどん赤くなって



「どうした?ラウラ?顔真っ赤にして……あ、暑いのか……」



士に気づかれてしまう



「まぁ、もうちょいしたらエアコンももっと効いてくると思うから我慢してな」



言いながら頭を撫でてくる



理由は全然違うがまぁ、よしとしよう



「それにしても、夏休みってのも暇だな〜」



ふと、士が言ってくる



「普段はさ、授業があって訓練があってで忙しいけど、いざこうやって休み重ねられたら暇になるよな〜」



「私は常にトレーニングを欠かしていないからな……暇ではないぞ」



本当の事だった



軍人である以上、常にトレーニングは欠かせない



今日はたまたま、ぶらぶらと歩いていたがトレーニングに夏休みなどない



「偉いな〜ラウラは……俺なんて、もう何にもやってないや」



「嫁は強いからな……またISで手合わせ願いたいものだ」



「また、今度な……」



「それにしても嫁のISは変わっているな……よし、少し嫁のISについて暴こう」



もともと、興味がなかったといえば嘘になる士のIS。それは教官ですら詳しいことは分かっていないらしい



「まぁ……答えられる範囲ならな」



「よし、さっそくだ……まずは、姿を次々に変えているが何種類あるんだ?」



士のISは基本スタイルのマゼンダ色をしたあの形態からたくさんの姿になることができる



「えーと、まず基本はディケイドってやつね



で……クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、W、オーズ、フォーゼの13体かな?」



「多いな……」



13種類だと?

聞いたこともなければ見たこともないそのISは13種類もの姿に変われるらしい



「まぁな……」



「よし、まずクウガから教えてくれ」



隣に腰掛けた士に半歩だけ寄りながら問う



士は頭を撫でながら答えてくれた



「クウガはかなり使いやすい形態なんだ……夏休みに入る前にお前と特訓したろ?あのときに使った奴だよ」



「あれか……」



覚えはあった……とても苦いものだったが



私がAICを発動するよりも早くに剣で斬りかかり



肩の砲台「パンツァー・カノニーア」は素早い動きで避けられロッドで反撃をくらい、止めはボウガンのような銃で打ち抜かれた



あまりにも一方的に



「あれは色がころころと変わっていたな」



「ああ……これから話すと思うけど、クウガ、アギト、電王、キバ、W、オーズ、フォーゼはさっき言ってた色が変わる……フォームチェンジって言うんだけどそれが豊富だから、たいした疲労は残らないんだよね



でも、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブトはなんて言うのかな?フォームチェンジが特殊なんだよね……一種類しかないんだ。だから疲労はとてつもない……」



「なるほどなるほど」



「で、クウガだけど、これはとても使いやすくて戦いやすい形態なんだ

その分、ずば抜けて凄い能力があるわけじゃないんだ……」



「つまり凡庸率が高いほうと言うわけか」



「うん、次はアギト

こいつは戦闘特化って言うのかな?力はそんなに強くないんだけどその分「技」がある」



「うーむ……細かい動きが得意な感じか?」



「まぁ……間違っちゃいないか……次は龍騎

こいつは、とにかく硬い……簡単に言えばドラゴンを召喚できるから強く思えるかもしれんけどそんなに使い勝手はよくなかったな〜」



「ふむふむ……」



「今度はファイズ……こいつも結構平均的なところはあるけど、とにかく身体能力が高い

足はそれなりに速いし、跳躍力もわりとある

で、一番の特徴が……」



「特徴が?」



ゴクリとつばを飲み込む



「オートバジンっていう簡単に言えば戦闘用ロボを召喚できるんだ……だから一対二とかだったらかなり楽になるかな?」



「ほぉー」



「お次は、ブレイド……こいつは俺が福音のときにお前らを助けに行ったときの奴だな……」



「ああ、あれか」



あれは綺麗だった……



「あれは特別なフォームチェンジってのに入るから乱用は出来ないんだけどな……あいつはわりと攻撃方法が豊富なんだ

続いて、響鬼……こいつはとにかくパワーパワー!」



士が握りこぶしを作って見せてくる



いい筋肉だ……///



「続きましてカブト……こいつはとにかく速い……攻撃スピードも移動速度もな」



「一度見てみたいな……ドイツにはカブトムシはあまりいない……」



「また今度な……採るなよ?」



苦笑いしながら士が言う



「次は電王………こいつは……なんて言うか個性的なんだよな……」



「個性的?」



「まぁ、簡単に言えばフォームチェンジが強力……かな?」



「曖昧だな……」



「許してくれ……次のキバも電王と同じでフォームチェンジが強力なんだ

強いて言えば、技術的にはキバ、力量的には電王って感じ」



「データで見たぞ……鈴との対戦で使っていたな……」



「そうだな……続いてのWも鈴との対戦で使ったな

Wは風、火、そして変形的な属性と身体、シャフト、マグナムの3属性3種類の武器を使う」



「なるほど、名の通り2つを組み合わせるのだな」



「そゆこと……ラウラは偉いな」



士がお茶のおかわりを入れてくれた



「次のオーズはややこしいぞ……オーズは頭、体、脚の3つの部分を変えることができるんだ」



「うむ」



「頭はタカ、クワガタ、ライオン、サイ、シャチ、体は、クジャク、カマキリ、トラ、ゴリラ、ウナギ、脚は、コンドル、バッタ、チーター、ゾウ、タコがある」



「ややこしくなってきた……」



すると士は私の後ろに回り、頭のマッサージをしてくれる



……気持ちいい



「それぞれ、「タカ クジャク コンドル」「クワガタ カマキリ バッタ」「ライオン トラ チーター」「サイ ゴリラ ゾウ」「シャチ ウナギ タコ」を組み合わせるとコンボってのが発生する

さっき、フォームチェンジが豊富な奴は疲労は溜まらないって言ったけどこれは別

一番、疲労が溜まるから、かなり危ないんだよ。とくに「クワガタ カマキリ バッタ」を組み合わせたガタキリバコンボはな」



「危ないのは……士が傷つくのは嫌だ……」



「大丈夫だよ……よっぽどなことがないと使わないから」



腰に抱きついた私の頭を撫でてくれる士の手は暖かい



「最後は、フォーゼだな……フォーゼはとにかく武器数が多い!色々な敵、状況に対応できるんだ」



「たしかに私もコテンパンにされたな……」



私の頭には宇宙飛行士のようなあの白い姿が目に浮かぶ



「こんな感じ……ごめんね、あんまりちゃんと説明できなくて」



「いや、私も士の事が知れて………そ、その、う、うう、嬉しかった///」



よし、言ったぞ!



「ん?もっかい言って?」



………………



聞こえていなかったらしい



「もう、いい!」



「あ、おい!怒るなよ!今度はちゃんと聞くからー」



「ふん!怒ってなどない!」



「怒ってるじゃん……あ、じゃあ今日は飯奢ってやるよ……どっか食べに行こうぜ」



士の提案に



「二人でか?」



と、聞いた



「ん?」



「だから、ソレは二人でかと聞いている!」



「あ、ああ……皆を誘いたいなら皆誘うぜ……でも、今日はラウラと二人で行きたいなーなんて」



照れくさそうに言う士の言葉を聞いたその瞬間



「ほ、本当か!?」



「ああ……あんまり二人で食事ってのはしないからな」



「よしっ!今行こう!今すぐに行こう!」



士の手を引っ張る



「あ、おい!引っ張るなよ!……ったく」



文句を言いながらもその顔は優しく微笑んでいた



とある夏の日だった

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