小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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鈴side-



んーっ!!今日は超いい天気!



って事で、皆元気?凰鈴音よ



今日も暑いわね



クソ暑いったらありゃしない



昔から、この国の夏は嫌いだ。大ッ嫌い



それでも今日は一人でショッピング



生活に必要な物を買いに来たのよ



ってことで駅を降りたところで



士を見つけた……



「…………………」



えええええええぇぇぇぇ!?



何で!?なんでいるのよ!?



昨日誘ったら明日は無理だって言ってたじゃない!



そう、私は昨日士をこの買い物に誘った



なのにアイツは―――あのバカは



『わりーな鈴、明日はちと用事があるんだ……また今度な』



って言ってた



なのにアイツはーーー!



黒のTシャツ(胸元には鬼神の文字が……)の上に袖のない少し小さめな赤のパーカー、色がところどころ剥げているジーンズの中央に光るベルトは前のカラオケの時と同じ髑髏が刻まれている

首からはやはり前と同じ十字のネックレス、右手の中指と小指にはボリュームのあるリングが光っている

更に、いつもと違い小さめのヘッドフォンで音楽を聴いており、壁に片足を立て体重もその壁にかけて立っている



あのバカーーー!



私の誘い断っといてめちゃめちゃ気合い入れた格好してるじゃない!



…………か、格好いいしさー///



誰かと会う約束だろうか?駅の前の広場に立っている時計を気にしている



私を指しぬいて誰かと会う約束ですって!?



誰よ!?



箒!?セシリア!?シャルロット!?ラウラ!?簪!?



…………誰なのよぉ



「お待たせー」



来た!



下が短いのでその健康的な白い太ももがむき出しになった肩が露出している黒のワンピースを着たその人は



………誰よ!?



なんか、知らない人が来たわよ!?



誰!?あの女ーー!



ハンカチをイーッと噛む



すると、士もその女性に気づいたのか



「お久しぶり?ですね、ナターシャさん」



ヘッドフォンを肩にかけながらにこやかに返事をする



ナターシャ?



はて、聞いたことあるような……ないような……



「暑いわねー、日本は」



「そうすね……喫茶店でも入りますか。あっこに美味しい紅茶飲める店知ってるんですよ。行きません?」



「いいわね……行きましょっ♪」



ナターシャと呼ばれた女性が士の腕に抱きつく



「ちょっ!何、やってるんですか!?」



ホントよ!何やってんのよ!



「いいじゃない、このくらい………久しぶりに会ったんだしさー」



「何か、言いました?」



「何でもないわよっ!」



顔を近づけて聞く士に同じく顔を赤くしながら……でも頬を可愛らしく膨らませるナターシャ



…………



年上……よね?



とても年上とは思えない立ち振る舞いと言動



そのくせどこか大人びているところもあればスタイルもいいので出るところは出ている



(あの噂、本当なの?……)



先月の終わりに偶然耳にした噂



それも、昨日……いや、今の今まではまったく気にもとめていなかったのに、今になってそれが落ち着かなくなる



いわく、『神谷 士は年上が好き』



(何の根拠もないつまらない噂話と思ってたけど………)



さっきから鼻の下伸ばしてデレデレしてる士(鈴にはそう見えている)を見てるとあながちウソでもないように思えてきてしまう



(年上って、それはどうにもならないじゃない……。はぁ………)



同い年で生まれた以上、いきなり自分が年上になることも、相手が年下になることもない



そんな、努力でどうにかならないものを求められても困る



……どころか迷惑だ



なんなのよ、もう!



こうなったら買い物なんてしてる場合じゃない!



「……追けてやる」



いつかのように追跡することを決めた鈴は



コンビニへダッシュした











30秒後



嵐のような速さと勢いで商品―――サングラスを買った鈴はそれをかける



さらにツインテールを下ろしラウラのように真っ直ぐに



―――よしっ!



まったくもって意味不明な決意をした鈴は士たちの追跡を再開した













士side-



はぁー、このお店は落ち着くなー



神谷 士です



今日は、なんか呼び出されましたねー



……ナターシャさんに



福音戦……いや、正確には福音戦のあと以来何度か連絡を取り合ったことはあったけどこうして会うのは初めてだ



それにナターシャさん……そのー、格好が……なんというか……エロイ



うん、下が短く肩が露出している黒のワンピースを着ているナターシャさん



その……太もももそうだけど、何より……サイズ合ってんのか?と疑いたくなるくらい……あのー、谷間が……ヤバイ



溢れるんじゃね?とか思わせつつ、整った形をしている女性特有の膨らみは正直やばい



「あら?どこ見てるの?」



「あ、いや……綺麗だなーと」



なんか、バレた!?



だから俺は褒めてごまかす



我ながらいい策だ。孔明さんもびっくりだな



「ふぇ?……そ、その……綺麗って……///(そ、そんなにストレートに言われても……///きょ、今日は意識してもらえるようにあえてちょっと胸が出るようにしてるんだけど変じゃないかな?……う、ううーー///)」



「そ、そんなことより……なんですか?見せたいものって?」



今日俺が呼び出されたのは他でもないナターシャさんに見せたいものがあるって言われたから





……べ、別にごまかそうなんて思ってないんだからねっ!



「そんなこと?」



おおっと……ナターシャさん



そんなに睨まれたら士君泣いちゃいます



「はぁ……私だってそらバスに乗ってた子達みたいに毎日会えないわよ?でも、いや……だからこそこういう時しか会えないんだから優しくしてくれてもいいのに」



なんか、さっきからぶつぶつ言ってるけど店の流れているクラシックのせいでよく聞こえない



てか、聞き取れってほうが難しい



「えっ……と、ナターシャさん?」



「分かってるわよ、分かってる……貴方に見せたかったのはこれよ」



そう言いながら、ファイズギアボックスの小さい版みたいな箱を取り出す



「なんすか?これ」



「開けてみて」



そう促され、箱を開ける



そこには



「ケータッチ……」



タッチパネル式携帯電話型ツールで黒い筐体にマゼンタのストライプが入った外観のケータッチが入っていた



「これをどこで?」



紅茶を飲みながら



「私がアメリカのテスト操縦者なのは知ってる?……まぁ、そうなんだけど……そのテスト飛行中に偶然見つけたのよ……最初は誰かに渡そうと思ったんだけど、このマゼンダ色は貴方のISの基本形態なのを思い出してね……見せに来たのよ」



「なんで知ってるんですか?……俺がナターシャさんにIS見せたときはブレイドのジャックだったような……」



ふと思った疑問に思う



「えっ?……いや、それは……あ、あの……データ……そう!データで見たのよ!(士君の写真が見たくて必死に画像探したなんて言えないじゃない!)」



なんか、急にきょどり始めたけどどうしたんですかね?



「そうなんすか……確かに、これは俺に関係してるっちゃしてますね……譲ってくれませんか?」



これから俺の原作知識じゃ、まかえなくなるからな



できれば欲しい



ってか、コンプリートカードは?



まぁ、今はいいか



「いいわよ♪」



なんかあっさり



「でも……条件があるの」



悪戯っぽく笑ったナターシャさん



「な、なんですか?」



少し、身構える



「そんなに身構えなくても…………今日……その、一日付き合って?//」



上目遣いで、もじもじさしながら言ってくるナターシャさん



あれ?可愛いぞ?



まさかのナターシャさんルート?



「い、いいですよ」



「本当っ!?」



ははは……目ぇ、キラッキラッしてまっせ



「じゃ、早速行きますか!」



「ええ♪」









所変わってとあるショッピングモール



ちゃんと来ましたよ。ナターシャさんと



「で?なにが欲しいんですか?」



「そうねー………服?」



首を可愛らしくかしげるナターシャさん



「服っすか……なら4階ですかね」



そういい、エレベーターを上る



「ここが一番プレゼントするにはちょうどいい値段のお店なんでここで勘弁してください」



情けないけど俺だって高校生



そんなにいい服はプレゼントしてあげられない



「あら?プレゼントしてくれるの?」



「ケータッチのお礼もありますけど……せっかくナターシャさんにも会えましたしね、何か買ってあげたいわけですよ」



「う、ううーーー///(だ、だめ!だめよ士君!そんな優しい笑顔でそんなこと言われたら……わたし、私………もっと―――)」



「ナターシャさん?」



なんか、俯いてるけどどした?



「調子でも悪いんですか?急に外との気温が変わりましたからね……大丈夫ですか?」



「え、ええ……大丈夫、行きましょう」



そう言って俺の手を引いた







「本当に良かったんですか?それだけで」



「うん♪」



そういいながら抱きしめるように俺が買ったあげた少しオシャレな程度のポロシャツが入った紙袋を持つ



「あんまり派手なのは仕事の時、着れないからねー」



嬉しそうに頬を緩ませて言うナターシャさん



「仕事の時に着てくれるんですか!?」



え?めっさ嬉しいぞ



「ええ……大切に着させてもらうわ……その、士君だと思って……///」



赤く頬を染めた理由はイマイチよく分からんが、気に入ってもらえたならいいかな



「でも、もう少しくらいなら値が張るものでもいいんですよ?………あ!お揃いのストラップみたいなの買いますか?」



「……いいの?」



ナターシャさんが少し、歩くスピードを緩める



「何がですか?」



振り返る



「私ばっかりにこんなにサービスしちゃって……他にもこういうことしてあげなくちゃいけない娘がいるでしょう?」



ナタ−シャさんがどこか悔しそうに―――どこか、寂しそうにも見える表情で言った





―――ちょっとくらい……格好つけてもいいよな?







「私は士君より年上だし……やっぱり同年代の娘の方が―――」



「―――ナターシャさん」



優しく呼びかける



「俺、実は今日……すげー楽しみで来たんすよ。テスト操縦者とはいえ専用機を動かせるし国の代表でもある感じでしょう?……もちろんそれだけじゃないですよ?こんなに美人な人と俺がこうやって出かけちゃってもいいのかなーとか



なのにそんなのこと言われたら、なんか俺といるのが楽しくないみたいな―――」



「―――そ、そんなことない!」



ナターシャさんが声を上げる



「士君といるの楽しいわ!すっごく……でも、私が……私だけが……こんなに楽しくてもいいのかな?って……あの子だって苦しい思いをしてるのに」



あの子とは「銀の福音」のことだろう



それは、まるでわが子を心配する母親のような表情だった



―――だから



「なんか、あったんですか?」



そう、察した



ナターシャさんがコクリと頷く



「銀の福音が―――あの子が凍結処分から廃棄になるかもしれないの……」



そう小さく、しかし確かに言った



「まだ、確定じゃないけど『銀の福音』をベースに置いた別の機体を作るんだって……だから―――ちゃんと、反論もしたわ……私の大切な機体なんですって……でも、そんなちっぽけな情は捨てろって……」



泣いていない―――泣くのを堪えている



人通りが少ないこの階だから今しかない



「大丈夫ですよ……あなたはただ、自分にとって大切なものを守ればいい……」



「だから、そんなちっぽけなものって―――」



「―――ちっぽけだから守らなくちゃいけないんだろっ!!」



「―――っ!」



「何甘えたこと言ってるんだよ!あんたの大事な―――大事なもんなんだろうが!



なら、守ってやれよ!ちっぽけなら、なおさら守ってやれよ!



………そうしたいようにやればいいじゃないですか、それで失敗しても誰も咎めませんし……俺が咎めさせませんよ



言いましたよね?あんたの刃になるって―――その刃は普段は頼りないかもしれないっすけど……こういう時、して欲しいことくらいしてあげられますよ」



「じゃ、じゃあ……ぎゅって……―――」





バサッ





ナターシャさんが言い終わる前に抱きしめる



これくらいしか出来ないんだよ……通りすがりの刃にはな









数分後



「また、みっともないとこ見せたわね……」



目元を拭いながら、ナターシャさんがにっこり笑う



その笑顔は吹っ切った顔だ



「そんなことないっす……さっ!ストラップ、買いに行きましょう!」



ナターシャさんの手を引っ張る









「今日はありがとね……その、色々」



「いやいや、こちらこそですよー」



夕暮れ時、晩飯を共にするだけの時間は残されていないらしいナターシャさんと公園を歩いていた



「コレ、大事にするね」



そう言って俺の前にかざしたソレは狸が背中に丸っこい情けなさそうなその狸の身の丈くらい包丁を背負っているストラップだった



「はい、俺も……」



俺は、ナターシャさんがお返しにとくれた音のならないベルが付いたストラップ……なんでも、音が鳴ったら願いが叶うとか



「じゃあね♪士君」





チュッ





前は頬に………今回は























―――口同士だった











「へ?」



楽しそうにスキップしながら駅の方へ行く彼女を黙ってみてることしか出来なかった







―――ゾクリ





「は?」



思わず腑抜けた声を出す



どえらい殺気だ



振り返ると……



「鈴じゃねぇか!どした?お前も買い物か?」



鈴でした……



「だれ?」



「ん?もっかい言って」



声がちっさいぞ



「誰よ!あの人!」



鈴がうっすら目に涙を浮かべて訴えてくる



「福音の操縦者だよ……ほら、臨海学校で倒したあの福音の」



必死に説明する俺



だってなんかどっからか包丁出てきそうだもん



「じゃ、じゃあ何でキスしたのよ!全部見てたんだから!」



そこまで見てたの!?ってか全部!?



なら、ある程度分れや



「いや、あれは俺も急でなにがなんだか……」



嘘はついていない



「ほ、本当でしょうね……」



ジト目で睨んでくる鈴



「本当だって!」



「じゃ……にも………して」



「へ?」



「わ、私にもしなさいよ!」



ん?何を?



ああっ!





「いいぞ」



「ふぇ?」



「して欲しいんだろ?」



なんか、挙動不審になってるけどどうした?



「ほ、本当に!?」



「うん、ほら行くぞ」



「え?そ、そんな急に……でも、強引なのも悪く……」



「何言ってんだ?ほら早く」



何をボーっとしてるんだ?鈴のやつ?















「プレゼントだろ?早くしないと店閉まっちまうぞ」





このあと、どうなったかは街中とか関係なく「甲龍」を展開したとだけ言えばお分かりいただけるだろう



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