小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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楯無さんとの同棲生活の波乱1



「疲れた〜」



「おかえりなさ〜い」



部屋に帰る度になぜか俺より早く帰ってきて、出迎えてくれる楯無さん



「あ、ただいまで〜す……ってなんて格好してるんですか!?」



そして、ほぼ絶対面積の狭い服or水着を着てる



今回はなんと、下着にワイシャツ……思いっきりブラ見えてる



恥ずかしくないのかよ……



「ん?士くんを誘惑してるのよ?」



「自分で言うんですか!?」



俺の突っ込みにケラケラ笑いながらベッドに座り、足を組む



……いや、だからダメだって



「いいから、服着てください……風邪引きますよ?」



毛布を投げる



「あら、優しい」



「俺は紳士な男なんです」



落ち着け、落ち着け



焦ることはない



小さい頃には母親と風呂入ったりしてたんだろ?



まして、母親の胸をアレしてたんだ……たった一つしか変わらない人のこんな姿……



「士くん」



「はい」



「鼻血出てる」



そう言いながらティッシュを差し出してくれる



「あら、優しい」



言い返すしかないだろう?







楯無さんとの同棲生活の波乱2



「さて、風呂だ風呂」



今、楯無さんはいない……てか、いなかった



なので風呂に入ってしまう



シャルみたいに入ってこられたらまずいし、ここは大浴場じゃなく部屋のシャワールーム



故に狭い



「さっさと洗おう」



髪を洗おうとシャンプーハットに手を伸ばすと



「はーい、おねーさんが洗いに来たわよー!」



「頼んでねぇよ!」



乗り込んできやがった



……半分予想できていた俺が対策に持っていたタオルがなんか悲しい



「まあまあ、そう言わず……おねーさんに任せなさい」



勝手にシャンプーを手に垂らし、勝手に洗い出す



でも……



「気持ちいいっす」



「それは良かった♪」



こう、強すぎるわけでも弱すぎるわけでもない本当に絶妙な力加減に力が抜ける



「楯無さん上手いですね」



もう今の状況は無視だ



どうせ、楯無さんも水着は着ている



何も、裸の付き合いとかじゃない



「そう言ってもらえると嬉しいわ♪」



「これも簪にもやってあげてください」



生意気かもしれないけど言ってやった



「うん……」



おいおい、急に落ち込み始めたぞ!?



手も若干弱々しくなったし……何なんだよ!



「楯無さん……任せといてくださいよ。今日はまた会ってないですけど、絶対解決します……」



「そ、そうね!任せたもんね!」



そう言って髪を洗い流してくれる楯無さん



それでもその動きは頼りない



……くそっ







楯無さんとの同棲生活の波乱3



「楯無さーん。お茶入りましたよー」



「ありがと♪」



楯無さんとの対戦が明日に迫った今日



それでも俺達は互いに牽制することもなく平和に過ごしていた



「ついに、明日ね」



「そうすね」



お茶を啜る……虚さんのお茶の方が美味いや



「……余裕ね」



「そんなことないっすよ」



どのライダーでいくか……悩むなー



「そうだ!代表候補生の子達から聞いたわ!織斑先生にやったって言うマッサージ!私にもやって!」



「はい?」



何を言ってるんだ?この人は……嫌に決まってるだろ?



この人の体を触るなんて……理性がどっかにいっちまいそうだ



「むー。やってくれてもいいじゃない!おねーさん疲れてるのっ……明日はフェアでやりたいでしょ?フェアで」



なにがフェアだ



ああああっ!俺の腕をブンブン振るなーー



「分かりましたよ!やりゃいいんでしょ!」



「お願いしまーす♪」



ベッドにダイブする楯無さん



「じゃ、じゃあ足から……」



―――むにゅ



やばいやばい!



足でこんなに柔らかいのかよ!



「ねー、早くお尻〜。座ってばっかりでこってるの〜」



嘘だろ?



…………………



ええええいい!



もう知るか!やってやるよ!



楯無さんのお尻に手を伸ばす



―――むにゅうぅ



や、柔らかい



でも……



「……こってますね」



「でしょう?」



頼まれたし、しっかりやっといてやるか



自然と、気は抜けていた



俺、千冬姉とかにもやってるじゃん



何を今更



「……楽になりましたか?」



「…………」



数分後……色んな所をマッサージした俺は楯無さんに問うが



「寝ちゃった」



俺のベッドなんですけど……



とりあえず毛布をかけて俺はテーブルの椅子に座る



え?ベッドで寝ないのかって?



バカか……俺のベッドは楯無さんが寝てるし、楯無さんのベッドは……ねぇ?



寝れそうにないし



なら、こっちのほうがマシだ



……お休み〜







楯無side-



「あら?士くん寝ちゃった」



なぜか寝た振りをしていた彼女は寝ている自分に士が何をするか試していたことに気づく



「(なんか、期待してるの?……わたし)」



机で寝ている士を見る



可愛い寝顔してる



自分のベッドでは私が……添い寝なんて論外で私が普段使わせてもらってるベッドは勝手に使わない



「紳士……ねぇ」



『楯無さん……任せといてくださいよ。今日はまた会ってないですけど、絶対解決します……』



士はそう言った



「任せる……か」



簪とは仲直りしたい……でも仲直りできたら私と士くんの関係は?



考えると胸が苦しくなる



その理由を楯無は微かに理解していた







簪side-



「はぁ……」



今日、何度目のため息だろう



考えているのはもちろん士……いや、楯無の事



優しい姉であり、優秀な人であり、強い人間であり、魅力的な存在であり―――完全無欠



いつからだろう?



―――その背中を追わなくなったのは



―――その顔を見つめられなくなったのは



―――同じ名前を背負うことを、苦痛に感じ始めたのは



そして、追い討ちをかけるように士の顔が浮かぶ



信じていた



士は―――士だけは私を私で見てくれると



更識家の女がその名を呼ばせるのは深い意味がある



私を簪と呼んでくれるその存在は大きく―――私の支えだったのかもしれない



その支えを失くした私は落ちていくしかないのだろうか……



―――嫌だ……やっと、見つけた……のに



生徒会室で士が楯無に勝負を挑んだとき私は士を止めた



でも、士はソレを振り切った



それが、格好よかった



『信じろって……男にはな負けられないときがあるんだよ……それは、何かを守るときと……自分より上のやつと戦うときだ』



どこか、おどけたような口調のなかにある熱いもの



それに縋るつもりでいた



『さっきから聞いてりゃ、自分がいらない子みたいに言いやがって!自分がどんだけ思われてると思ってるんだ!』



『1人で歩き出せないなら俺が手を引いてやるよ。歩きたくないなら、俺が運んでやる……歩きたくなる場所まで連れて行ってやるよ。一歩踏み出せない奴に優しさとか、強さは付いてこないよ……誰かの手を借りても一歩踏み出せた奴が強かったり、優しかったりするんだよ』



『さぁな……でも、弱くても……優しくないことはないと思う……偉そうに言ったけど俺だって一歩踏み出すのは超怖かったからな……だから、簪も怖くても大丈夫だ。俺がお前を引っ張る主人公になってやる……頼りないかもしれんけどな……』



士の言葉が頭の中で流れる



「(私はどうしたいの?)」



明日は、士と楯無の対戦の日



もし―――いや、ありえないが……



もし、士が勝てば―――



勝って勇気をまた士がくれたら―――



一歩



「踏み出して……みよう、かな」







士side-



試合当日



俺の前には楯無さん



どうやら、ラウラと同じであまり飛行向きではないのかな?



空中ではなく俺と同じ地上で試合開始のときを待っている



その表情は余裕たっぷりと言う感じで笑みを崩さない



試合に使っているアリーナには生徒が溢れており、教員の姿まで



それもそうだろう



ロシア代表操縦者で最強の生徒会長―――更識楯無と世界で唯一の男操縦者、神谷 士がISを使っての対戦をするのだから



「それでは、両者試合を開始してください」



ブザーがなる



「行きますよ!」



「かかってらっしゃい!」



ライドブッカーがエンジン音のような効果音を鳴らす

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