小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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ケーキを食べてもらった後、キッチンで七人分の皿を洗う俺


背後を一瞥すると、楯無さんが中心となってガールズトークに花を咲かせていた。本当にあの人は“人たらし”というか、人を丸め込むのが上手いというか……


その中にあの簪もいるところを見ると、本当に変わったんだなぁと思う。

初めて彼女と会った時は人を寄せ付けない雰囲気を醸し出し、孤立していた感じだったが、楯無さんと和解してからはかなり明るくなった


やっぱり兄弟や姉妹は仲が良いと他人ながら気持ちがいいな


「士くん?」


「うわっ……っと、楯無さん。何ですかいきなり」


「ふふ、ゴメンね。ちょっと君にお礼が言いたくて抜け出してきちゃった」


「お礼って……俺、何かしましたっけ?」


「してくれたじゃない。私と簪ちゃんの仲、元通りにね」


ああ、なるほど。けれど俺自身、大したことはしていないと思ってるんだよね


最後は結局、楯無さんが簪に言葉を掛けたからこそ、仲が戻ったんだから


「実を言えば、今日ここに来たのも、君にお礼を言うためだったりして♪」


「あっ、えっ……そうだったんですか? そんな、わざわざいいのに」


「生徒会長として、お礼くらいはちゃんとしないとね」


そう言うと、楯無さんの顔が俺の頬に近づいてきて――





…………えっ? 何か温かいものが触れたような……


「次に来る時は、ちゃんと事前に連絡を入れるわ。でも士くんの方から誘ってくれると、おねーさん嬉しいなぁ♪」


悪戯っぽい笑みを浮かべ、楯無さんはリビングへ戻っていき、再びガールズトークの輪の中に入った


「あ……」

今されたことをゆっくりと思い返す。自然と自分の顔が熱くなるのを俺は感じた


駄目だ。俺はこの人に一生勝てそうにない


ISでは勝ったけどな!


リビングにいる箒から呼ばれるまで、石のように固まったままだった





それからしばらくして……


「なんだ、やたら靴があると思えばお前らか……」


「あ、士くん!お、お邪魔しますぅ〜〜///」


千冬姉と……山田先生!?


「あれ?山田先生まで?」


「ああ……お前のケーキを一口食べたいと言い出してな……連れてきたのだが……まさか」


「すまん、食べちった。千冬姉の分しかないわ」


俺が片手で平謝りしていると


「いえ、いいんですよ。突然来てしまったので……」


「いや、すいません。あ、とりあえず座ってください。お茶入れますね」


無くなりかけてたお茶を沸かしながら、残していたケーキと……


「山田先生には何をだそうか……」


「来客用の羊羹が冷蔵庫にあったろう」


「羊羹?……あったあった!」


一番上の段に高そうな包みに入った羊羹らしき長方形を発見!


「山田先生はたくさん食べるからな……全部だしてやれ」


「そんなに食べませんよ〜」


目をバッテンにして手をブンブン振る山田先生


可愛いな……


「はい。お待ちどうさま……千冬姉には紅茶とケーキ。山田先生にはお茶と羊羹っす」


「ああ、いただこう」

「いただきます」


ふぅ……これで一段落……


「ところで、何故こいつらがいる?」


ビクッ!!


全員の背中が震えた


楯無さんまで……


「いや、何か皆急に来ちゃってさ〜」


「士!」

「まずいですわ」

「こ、殺される……」


箒とセシリア、鈴が呟く


「ほぉ……急に、なぁ」


千冬姉は笑顔だ………笑顔だ


「僕が士一番だったのに……」

「うう……いくら教官でも私の恋路は……いや、しかし……」

「すごい、殺気……」


シャルとラウラ、簪も何か怯えている様子


「織斑先生」


声を上げたのは……楯無さん?


「なんだ?更識姉」


「いえ、突然お邪魔してしまったことをお詫びしようかと」


「ほう、士の袖を掴みながらか……」


千冬姉に言われて気づいた


たしかに楯無さんは俺の袖を掴んでいる


「あ、あの……これは……」


「寒かったですか?まぁ、もう九月ですしね……」


俺が窓を少し閉めて振り返ると……


皆がすごい目で見ていた


「嘘だろう……」

「冗談にも程がありますわ」

「なんて言ったらいいのよ」

「つ、士……」

「さすが、嫁だな……」

「どん、かん……」

「ふん。こんなものだ」

「士くん、凄いですね〜」


え?何?

どうしたの……


「ぶぅ〜。士くんは〜」


はは……楯無さん。可愛いですよ






「あ、皆は今日晩飯食ってくだろ?」


「いいのか?」


箒がおずおずと千冬姉の方を見ながら言う


「ああ、いいぜ。今日はバーベキューでもして盛り上がろうぜ!」


「バーベキュー。野うさぎでも捕まえるか?」


「そんなことしなくてもいいよ」


ラウラの頭を撫でながら答えた


「バーベキュー、楽しそうだね」


「そうですね〜。バーベキューなんていつ振りでしょうか……」


シャルに山田先生が続いた


「折角だし、本音ちゃんと虚さんも呼びましょうよ……楯無さん」


「分かったわ」


「ダリルさんとフォルテさんは……」


「あの二人は母国で専用機の調整中だ……」


千冬姉が言う


「そうか、じゃあ二人が来たら役割分担だな」


それから数分後……


「呼んでくれてありがとー、つっち〜」


「ありがとう、士君……お嬢様よろしいのですか?」


「ええ。呼んでくれって言ったのは士くんだしね」


本音ちゃんは俺に抱きつきながら感謝の意を


虚さんはお菓子を持ってきてくれた


感謝感謝


「さて、じゃあ準備しますか!役割分担だな……とりあえず買い物班と準備する班、あとはおかず作る班だな……さすがに肉と野菜焼くだけじゃな……」


「そうだな……」


千冬姉……アンタは料理できないんだから納得しなくてもいいんですよ


「さて、千冬姉と山田先生は省いて……俺は準備する係りかな」


「いや、お前は買い物に行って来い……この辺の地理にはお前の方が詳しいし、バーベキューの準備だろう?倉庫から運ばせるくらい私に任せておけ……」


「じゃあ、私はお料理の準備をお手伝いしますね〜」


「ありがとうございます。じゃあ俺と買い物行くのは誰にする?一人でいいよ。てーあーげて」


ピシッ!!


って、全員かい!


本音ちゃん、そんなにシャキンってしたキャラじゃないだろう


「えーと……はは……じゃあ、じゃんけんで」


その後、なぜか軽傷者まで出たじゃんけん大会の末


買い物班 俺、虚さん

準備班 箒、セシリア、ラウラ、本音ちゃん

料理班 鈴、シャル、簪、楯無さん


となった

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