小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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箒side-


士の誘拐事件はああして解決?した


学園に戻った後、あいつは事情聴取に身体検査


報告書を書かされて泣いていた


オータムとエムはIS審問会に身柄を確保されて現在、懲役中


たしか、懲役749年とかなんとか……ア〇アの母親みたいだが深くは考えないでおこう


士の証言のもと、亡国機業のアジトとして使われていたというマンションも捜査されたが何も残っていなかった


行動の早い女だ


あれから一週間……


暦は九月も終わり


寒さが少し目立ち始めるこの季節


私は……











「はああああ!!」


「甘いぜ!箒!」


『ATTACK RIDE・CLOCK UP』


その瞬間、目の前にいたはずのカブトムシはいなくなり背中に強烈な衝撃が襲う


持っていた「雨月」も「空割」も砕かれた


『Clock Over』


「終わらせようか……」


彼の見慣れた仕草……手を弾くように叩くのを見た後


『FINAL ATTACK RIDE・ka,ka,ka,KABUTO』


回し蹴りをかまされ……負けた





「お疲れちゃん、箒」


「ああ……ありがとう、士」


その彼、神谷 士からスポーツドリンクを受け取りながら礼を言う


「もう、お前とは特訓したくない!」


「え?」


急に言われたその言葉に意識が跳びそうになる


嘘……なんで……そんな……


目に涙が浮かびそうになったとき


「だって、お前強いもん〜。勝てなさそうで怖い」


そういうことか……


胸が大きく撫で下ろされるのを感じながら


「でも、本気ではないのだろう?」


と、拗ねたような声を出す


「本気も本気だよ」


士は手をぶらぶらと振りながら答えた


「嘘をつくな……お前は既に第三形態移行までを自力で変化できる……それをしないということはまだまだ本気ではないだろう」


「まぁ、そうは言うがなぁ」


困ったよう肩をすくめる彼は面白くて


「本気では相手してくれないのか……?」


彼を見上げるようにして問うた


すると士は顔を赤くして顔を背け


「そ、そういうことじゃなくてだな……」


「じゃあ、どういうことだ?」


「……だから、その……あれだよ……あれ……………ああああああ!!分かったよ!悪かったよ!」


頭を抱えて落ち込むようにうなだれる士はどこか可愛くすら見えて


「ふふっ♪ではな……」


最高の気分で控え室を出た


「くそ……あいつ、いつか倒す」


士のつぶやく声は聞こえなかったが……






その夜


特訓の疲れも出たのか……すぐに寝床へと身を任せた


そして、ものの数分で深い眠りへとついたのだ






夢を見た……


懐かしい夢



今の私がある夢

今の私がこんな感情を抱いた原因となった頃の夢

今の状況にやきもきしながら過ごしている原因の夢


決して忘れない……それは小学生の四年だった





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「やーい男女!おとこおんな!」


「今日は木刀持ってないのかよ〜」


それは、例の彼が姉に連れてこられる形で家の剣道場に来て一年が経とうとしていたときだ


放課後、掃除の時間に少女は三人の男子に囲まれるようにしていた


少女―――私、篠ノ之箒は


「……竹刀だ」


としか答えない


否、答えられない


「へへ、お前みたいな男女には武器がお似合いだよな〜」


「喋り方も変だもんな〜」


私は何も言わない


「やーいやーい、男女〜」


「……やーい、やーい、いじめっ子〜」


「おっ!神谷も言うか?もっと言ってやれ!」


「おう!任せろ!やーい、いじめっ子〜。女の子相手に三人掛りとかマジで情けねぇ〜。男やめろよ」


「ん?なんか、アレだけど……もうチョイ言ってやれ」


「よし!ばーか、ばーか!掃除しろや。てか、男女とかネーミングセンスなさすぎだろ。てか、文で書いたら「だんじょ」とも呼ぶんだぜ。ばーか、ばーか」


「お前、それ俺達のことだよな!?」


「そだよ」


彼はキョトンとした顔で言った


当たり前だろとでも言いたげに


「なんだよ、神谷。お前はこいつの味方かよ」


「へへ、この男女が好きなのか?」


彼はそこで不機嫌そうに眉をひそめて


「聞いててイライラするんだよ。掃除の邪魔だからどっか行けよ。てか、掃除しろ」


「へっ。まじめに掃除なんかしてよー、バッカじゃねーの―――おわっ!?」


私は気づけばその男子の胸倉を掴みあげていた


ヒビの鍛錬で鍛え上げられた腕力はすでに同じ歳の男であろうと負けはしないだろう


「まじめにすることの何がバカだ?お前らのような輩よりははるかにマシだ」


「な、なんだよ……何ムキになってんだよ。離せっ、離せよっ」


少し頭が冷えた私はその胸倉を離す


すると他の二人がニヤニヤと笑いを浮かべながら


「あー、やぅぱりそうなんだぜー。こいつら、夫婦なんだよ。知ってるんだぜ、俺。お前ら朝からイチャイチャしてるんだろ」


朝錬のあと一緒に来ていることがそう取られたのか……


彼は何度か言われたことがあるそうだが……私は初めてだ


「だよなー。この前なんか、こいつリボンしてたもんな!男女のくせによー。笑っちま「あ、ごめーん!!」へぶっ!?」


彼は少年の一人を殴り飛ばした


……謝りながら


「な、なんだよ!神谷!」


「だから謝ったじゃん!ゴメーンね♪」


「うわっ!こいつキモッ!」


「アレ?」


がっつり傷ついている彼は同い年とは思えない雰囲気だった


「……いってー!神谷、何すんだよ!」


「おう、お前らは全員殴る。とりあえず」


「はぁ!?」


「リボン……似合ってたろうがああ!」


急に天井に向かって彼は叫んだ


「笑う?面白かった?てめえらの頭の方がよっぽどおもしれーよ」


「せ、先生に言うからな!」


「おう、いいぜ。でもお前ら。それは俺と喧嘩してからな……勝てるだろ?三対一なんだから」


嘘だ……彼は自分が負けるなんて微塵も思っちゃいない


だって……


「やってやるよ!」


彼は……


「先生に言うなよ!」


私が何度やっても絶対勝てない相手だから


「一分で終わらせてやるよ」





一分後……


「ううっ……」


「ママぁ……」


「いってーよ……」


三人は床に倒れていた


彼は手を弾くようにして叩き


「ジャスト一分だ……悪夢(ゆめ)は見れたかよ?」


そう声をかけた






「これ、言ってみたかった」


そう続けて









後日


「お前はバカだな……」


「はぁ?俺はバカじゃねーよ!バカ!」


剣道の稽古が終わり、顔を洗っているときに彼にそう声をかけた


「あんなにまでしたら千冬さんに迷惑がかかるとか考えなかったのか?」


「まぁ……考えたっちゃ考えたけど……考えた結果ボコボコにした」


顔をタオルで拭きながら答える彼


そして、彼は家路へと着こうとして


振り返った


「そうそう、前にしてたリボン。似合ってた……またしろよ」


「ふん。私は誰の指図も受けない」


「そーかい……ま、いいか。帰るわ、じゃあな篠ノ之」


「―――だ」


「ん?」


立ち止まり、こちらに歩み寄りながら彼は腑抜けた声を出した


「なんだって?」


「箒だ!私の名前。この道場は父も母も姉も篠ノ之なんだから紛らわしいだろう。次からは名前で呼べ!いいな!」


「なら、士な」


「な、なに?」


「俺だけ名前で呼ぶとかヤダ。だから、俺のこと士って呼んでくれ」


「う……む」


「本当に分かったのかよ……リボンもちゃんとしろよ」


「……てやる」


「あ?」


「今からしてやるから少し待っていろ!」


つい大きい声をだしてしまう


「……おい、後ろ向け」


「え?」


「いいから」


渋々、後ろを向く私


すると彼は私の髪を優しく掴み


「な、何をしている!」


「すぐだから」


少しして


「ほら、出来たぜ」


小さな鏡を私に向けて微笑む


「っ……」


これが私?


リボンをするだけでこんなにも変わるのか……


「やるよ。プレゼント……今日、誕生日なんだろ」


言われて気づく


そういえばそうだった


覚えていたのか……


自己紹介でした程度の、そんなことを


そんな彼―――神谷 士は私の頭を優しく撫でて


「じゃあな……あと、誕生日おめでとう、箒」


そう言って笑った

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TVアニメ IS<インフィニット・ストラトス> VOCAL COLLECTION ALBUM
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