小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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はよざいまーす。神谷 士です


千冬姉に呼ばれたんで今は職員室目指してまっす


そんなこんなで職員室


「失礼します」


一言、断ってから職員室に入り千冬姉を目指す


「来ましたよ」


「ああ、悪いな。座ってくれ」


そう言われて今はいない隣の山田先生の机の椅子に座る


「それで?頼みたい事ってのは?」


早速本題へ


「ああ。今回は少し大変な頼みなんだが聞いてくれるか?」


今回はって。セシリアと戦い、鈴と戦い、その最中にゴーレムと戦い、ラウラと揉めて、福音倒して、生徒会長にちょっかいかけられて、その姉妹仲も治して、悪者に誘拐された俺が今頃、大変もくそも……ねぇ


「大丈夫ですよ。やれるだけはやってみますから」


「助かる。お前には今回、ある人物の世話をしてやって欲しい」


「赤ちゃんでも来るんですか?」


「真面目な話だ」


そりゃ、失礼


謝るからそんなに睨まないで


「すいません……で?その人物ってのは?」


そこで千冬姉は俺に一枚の資料を渡し


「キャロル・ブーケ……フランス代表のIS操縦者だ」


その資料にはセシリアよりはシャルに似た金髪に俺達と変わらない……どころかそれより幼く見える少女が


生年月日が示すのは


「同い年じゃないっすか……それで代表ってすげーな」


「そうだな……彼女が明日からIS学園に一週間ほど留学することになっている。フランス政府が勉強の為にと要請がきた」


「なるほど……って、フランスっつうと……」


「ああ。デュノアとは知り合いらしいからな……今回はデュノアと組め」


「了解」


ん?てかさ


「何でシャルは呼ばなかったんですか?一緒に説明すればいいんじゃ」


俺が聞いた瞬間、千冬姉の肩が震えた


「い、いや……それはだな……(うう。言えないではないか……お前と二人きりで話したいなんて……//ただでさえ最近は、いなくなることが多いのに……)」


なんか、ちょいちょいブツブツ聞こえるんだけど、どした?


顔も若干赤いような……


「大丈夫……ですか?」


「だ、大丈夫だ!分かったら速くデュノアに伝えてこい!」


「は、はいいい!」


自分でも思うくらい情けない声を出しながら職員室を出た



「(あああ。行ってしまう……なんで、あんな言い方をしたんだ!私は!)」


士が出て行った後、千冬姉のデスクがへこんだことを教員の誰も責めることは出来なかった





「シャル〜!」



教室に帰る途中シャルを見つけたので声をかける


「あ、士。織斑先生とのお話は終わった?」


相変わらず、優しい笑顔


本当に癒されるわ


「おう。それでな、今回はシャルにも協力もしてほしいことなんだ」


「僕にも?」


「うん。明日からフランスの代表操縦者のキャロル・ブーケって人が来るんだけど……」


「キャロルが!?」


俺がその名前を告げた瞬間シャルは飛び上がり、驚いた


「どうした?」


「ううん。なんでもないよ……あはは」


そう言う彼女はどう見ても大丈夫じゃない


どこか怯えたような様子でもある


「じゃ、じゃあね、士。また明日!」


そう早口で言った彼女は走って行った


「なんだ?」



シャルside-


部屋に帰ってきた彼女はベッドへと潜った


「キャロルが……日本に……ここに……来る?」


そう思うと恐怖心が蘇る


それは彼女がまだ小さいとき……そう、母親がまだ生きているときのことだ


自分が愛人の娘であること……


自分が必要な人間ではないこと……


自分がISを動かせることができるだけの……IS開発の道具であるということ……


ありとあらゆる負の事実を叩き込まれた


「ううっ……」


涙が出そうになる


きっと士に出会えていなければこんな涙も流していないだろう……


それが嬉しいようで……でもやっぱり辛くて


「どうした?」


声がする


その声の主であろう人物はベッドのシーツを強引にめくった


「……泣いて、いるのか?」


綺麗な銀髪が輝った


「ラウラぁ……」


「何も言うな……」


そう言ってラウラは抱きしめる。その壊れてしまいそうな人を





「ありがとう、ラウラ」


数分して落ち着いたのかシャルはラウラから離れた


「もう大丈夫か?」


「うん!ごめんね。心配かけて」


「ふん。理由は聞かん……が、辛かったらまた呼ぶといい」


顔を赤くしてそっぽを向く彼女は、しかし頼もしく見えた






士side-


翌日


どこか吹っ切れた様子で俺の目の前に現れたシャルと千冬姉、生徒の長として……そして、同じ代表ということもあり楯無さん率いる生徒会の面々も校門の前で到着を待っていた


いや〜、授業受けないでってのはなんか良いよね


なんか、堂々さぼってる感じがね


「はぁ〜。たいくつ〜!士く〜ん!遊ぼ〜!」


楯無さんが俺に抱きつきながら駄々をこねる


「あああああ!!抱きつかないでください!あと、子供みたいなこと言ってないで大人しくしていてください!」


「だって〜!シャルロットちゃんには悪いけどフランス代表がアジアの代表待たせるっておかしくな〜い?格が違うの〜!」


ちょっ!本当、胸が当たってるから!



「知りませんよ!一応、お客さんなんですからちゃんとしてください!」


楯無さんの頬を押しながら言う



「ぶぅ〜。士くんのいけず」



「可愛く言ってもダメです」


そんなやり取りしていると


「士……私も……」


なんて言いながら簪が抱きついてくる


……また?


そうそう、この簪


楯無さんとの姉妹仲の改善後、生徒会副会長になっている


……まぁ、俺が薦めたんだけど


「ちょっと!かんちゃ〜ん!私も〜!」


なんて言いながら本音ちゃんも抱きついてくる


「おいおい!なんだって、どうしたんだ!」


なんとか振り切ると


「………」


虚さんが無言で俺の袖を掴む


「えーと……虚さん?どうしました?」


「わ、私も……///」


oh……


可愛いぞ……


でも、皆急にどうしたんだ?


「士……」


千冬姉が声をかける


「はい?」


「本当になぜか分からんのか……?」


うん?軽く心を読まれてる気がするんだけど


「いや、最近は寒いですからね〜」


「「「「「違うっ!!」」」」」


あれ〜?


なんで皆で否定するの?


本音ちゃん……キャラ変わってますよ〜


それから数分後


「来たよ〜」


本音ちゃんがその長い袖を振り回して言った


「よしっ!気合入れていきますか!」


俺が言ったと同時に黒塗りのベンツがとまり


中からIS学園の制服を着たキャロル・ブーケが降り立った


「初めまして、皆さん。フランスの代表IS操縦者。キャロル・ブーケです……短い間ですけどよろしくお願いします」


そう言って頭を下げた


「織斑千冬だ」


「はい、会えて光栄です。ブリュンヒルデ」


「その名で呼ぶな……次は許さんぞ―――」


「ひっ!」


おいおい、ビビッてますやん


そんなに睨んでやるなよ


本音ちゃんも簪もビビッてるぜ


「―――この男がな」


「なんで俺やねん!」


おっと思わず関西弁になっちまった


「初めましてね、キャロル・ブーケさん。更識楯無よ」


「い、いえ、こちらこそ。十七代目楯無」


「その名で呼ばないで。次は許さないわよ―――この男が」


「だからなんで俺なんだよ!」


何?俺は名前かなんかを司っている神なの?


「えっと……貴方が」


「ああ、えっと神谷 士です。今日から俺が貴方の世話係的なのやるんでよろしくお願いします」


「ええ。よろしく」


そう言って微笑んだ彼女は可愛いというより綺麗で……思わず、見とれてしまった


「「「「「むっ!」」」」」


はは……皆さん、痛いよ


「久しぶりね。シャルロット」


「う、うん。そうだね、キャロル」


ふと、目を配るとシャルとキャロルさんが挨拶を交わしていたが


なんか様子、変だな


シャルはどこか怯えているようで、キャロルさんはどこか嗜虐的な笑みを浮かべている


なんか、引っかかるな……


昨日から様子が変なシャルに


俺は注視することを決めた








「ここが、ISアリーナです。主に訓練とかはここでします。」


皆が授業を受けているその時間


俺とシャルはキャロルさんの校内案内をしていた


「ねぇ」


「はい?」


キャロルさんはいかにも面白くなさそうに


「敬語……やめていいわよ。同い年だし」


「でも……」


「私がいいからいいの」


「はぁ……じゃあ、ブーケ」


「キャロルって呼んで。その名前は嫌いなの」


注文が多いな……


「……キャロル。ここまでで何か質問は?」


「そうね……なぜ、この女がここにいるのかしら?」


キャロルはシャルを睨むようにしながら言葉を続けた


「あ?」


「だから、なぜ、この女はIS学園なんかで代表候補生をやってるのって聞いてるの」


何を言ってるんだ?


「意味が分からないんだが……」


シャルを横目で見ると肩は震えて、俯いている


「あら?知らないの?なら、教えてあげる」


キャロルはまたも嗜虐的な笑みを浮かべた


「い、いや……やめて」


シャルの小さな頼みも聞かず彼女は言葉を続ける


「いい?よく聞きなさい。神谷 士……この女はね―――










―――愛人の娘であると同時に人殺しの娘なのよ」





そう、言い放った


「……どういうことだ」


「言った通りよ。この娘が女であることを隠してないあたり、愛人の娘で会社の経営危機を救うために来たことくらいは知ってるわよね……でも、この娘の父親はね……人を殺してるのよ!」


「ち、ちが……お父さんは……」


「ええ、そうよね。貴方は所詮、愛人の娘。それに会社とはもう決別してるもの。関係ないわよね」


「え、……あ、あ……いや」


シャルの声は震えている


「神谷 士。この女の父親は私のお父様を殺したのよ!……それも自分の会社の為にね!」


息が荒くなってきているキャロル


俺は何も言わずに耳を傾けていた


「デュノア社が経営危機に陥る少し前、当時そのデュノア社と1、2を争っていた私のお父様の会社ブーケ社……ある日、お父様の会社は倒産したわ……デュノア社のせいでね!」


シャルは既に涙を流している


「正面から堂々と1、2を争っていたお父様をあざ笑うかのようにデュノア社は裏で工作をしてブーケ社を追い込んだ……そして会社は倒産。お父様もショックで首を吊ったわ……それに続くようにお母様まで……」


キャロルが握っている拳は震えていた


「だから私はその復讐をしてやったのよ。愛人であるシャルロットの存在を突き止め世間に流出させたわ。それでもあの社長は『倒産した会社の一人娘が何を言っているんだ』って……


倒産したのはあいつのせいなのに……だからその矛先をこの娘に変えたのよ……愛人の娘のくせに悠々と暮らしている彼女にね!

いい!?私は絶対に許さないから!」


そう言ってからも息を切らしながらも彼女はシャルを睨みつけていた


「……話は、分かった」


俺は震える声を何とか出して答える


隣のシャルは俺を見上げた


その瞳には涙が溢れている


「ふん!分かったならいいわよ!」


「……ああ、分かったよ。お前がそれだけ弱い人間だってことがな!」


「え?」


キャロルは目を見開く


「確かに、シャルの親父は一発殴るって決めてたし、今回の話で完璧にボコボコにすることを決めた……でもな!


お前の言い分には絶対に賛成しない!


悠々と生きてた?本気でそんなこと言ってんのかよ……こいつが、シャルがどんだけ辛い思いしてここまで来たんだと思ってんだ!彼女は自分がどれだけ辛くても、苦しくても絶対にそんな面を見せずに俺達に微笑んでくれた

俺達が馬鹿やっててもあったかく見守ってくれて、笑ってくれた。お前が知らないところで俺に本当のことを打ち明けてくれた!


お前の被害妄想に付き合ってるほど……シャルは暇じゃないんだよ!」


壁を殴りつけながら俺は怒鳴る


「……るさい」


「あ?」


「五月蝿いわよ!そんなこと知ったこっちゃないのよ!」


このアマ……!


「……てめぇ、俺と勝負しろ」


「いいわよ!あんたとは気が会いそうにないし……フランス代表がどれくらいの実力か見せてあげる


言っとくけど、そこの候補生如きと一緒にしないでよ!」


「いいぜ……シャルがどれだけ俺達にとって大切な存在か……その身に刻んでやるよ!」

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IS <インフィニット・ストラトス> ポス×ポスコレクションVol.2 BOX
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