小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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叫び声は大きくなる一方でさすがに痛々しくなってきた


「おっと……」


ファイナルコンプリートを継続していられるのは5分程度まで


そうこうしているうちに基本形態へと姿を戻した


「ちっ!」


舌打ちが出る


「どうしたもんかね……」


そうして黒い霧に包まれた彼女は大きなそれはまさに怪獣とでも言った方が的確なくらいの巨大なものへと姿を変えた


そのとき―――


左腕に装備されたレーザー砲を放つ


そのレーザーは極太なんて言葉では生ぬるい


「やばいっての!」


それを避けてライドブッカーをガンモードへ変えて射撃する


しかし……



「効かない……か?」


カキンカキンと綺麗な音を立てて銃弾が弾かれる


右腕のブレードを構えた瞬間


キャロル―――もとい黒いそれは突っ込んでくる


おいおいでかいって!


『FORM RIDE・FOURZE・FIRE』

『ファイヤー・オン』



強力な炎エネルギーを含有し、ヒーハックガンを装備するとともにフォーゼがファイヤーステイツへと変身する


背中のジェットパックで宙を飛びながらヒーハックガンの火炎モードで撃ち抜く


上手く錯乱させられてるな


「おらおら!」


引き金を引く


すると


「うおっ!?」


なんと火炎弾が跳ね返ってきた


「嘘だろ!?」


避けきれずに直撃し、地面に倒れこむ


くそっ!


背中が弱点なのに背中狙えないのかよ


キャロルは俺に近づき頭を鷲掴む


「ぐおっ……!」


そのままブンブンと俺を振り回して壁へとたたきつけた


「がぁ!」


くそ……が


フォーゼのファイヤーステイツはその姿をディケイドへと戻す


「士!」


アリーナの入り口で俺を呼ぶ声……


これは……


「シャル!」


「士、下がって!」



シャルはラファールを展開し銃撃へと移った


高速切替(ラピッド・スイッチ)を器用に使い、ハンドガン、サブマシンガン、アサルトライフル、ライトマシンガン、ショットガン、スナイパーライフルと使い分ける


「はぁあああ!」


最後に呼び出したのは巨大なレーザー砲だ


シャルの身の丈以上の巨大すぎる砲身は光を蓄え



レーザーを放った




ドオオオオオオオオン!!




巨大な爆音が鳴り響く


「皆!今だよ!」


シャルが声を張ると同時に専用機持ちが飛び出す


どっから来たんだよ


「食らええええ!!」


箒は穿千(うがち)



「狙いは完璧ですわ」


セシリアはスターライトmkIII


「ほらっ!もらっときなさい!」


鈴は龍砲


「私の仲間を侮辱した罪は重い……思い知れ!」


ラウラはパンツァー・カノニーア


「援護……」


簪は山嵐


「シャルロットちゃんを苛められると困るのよね〜」


楯無さんは蒼流旋(そうりゅうせん)を構えた



「いっけーーーー!!!」


鈴が叫ぶと同時に皆が一斉射撃する


更なる爆撃


しかし……


「「「「「「「きゃぁあああ!!」」」」」」」



その攻撃全てが反射され、それぞれの攻撃は自分へと降りかかった


ぐっ……体が動かねぇ


でも……皆だけは……!



震える足を叩き、立ち上がる


「おらっ!こっちだぜ!」


ライドブッカー・ガンモードで銃撃しながら皆からの距離を伸ばす



でも俺の攻撃で足りるか?


「こ、こっちだよ!」


俺と同じく誘導するような射撃を放つISが


「シャル……!」


俺が呼びかけると彼女は少し微笑み―――



「GYAAAAAAA!!」


咆哮のような叫び声をあげたISはその巨大な腕を振り回した


「がはっ!」

「ぐふっ!」



その一撃で俺とシャルは並ぶようにそして、滑り込む形でノックアウトされる


「がっ!……シャル、逃げ……ろ」


血を吐くように喉を鳴らし、俺は小さく言った


「……嫌、だ!」


「っ!?」


断るとは思っていた


でも、こんなに必死になって


「ここは俺がもう一回コンプリートになる。コンプリートならまだ、なれそうだしな」


ケータッチをとりだした


しかし


「い、嫌だ……!」


シャルはその手を押さえつける


「ぼ、僕が……助けるんだ!」


シャルは何の迷いもなく強い眼差しでISを睨みつけた


「シャル………相手は、お前を苦しめたやつだぞ……」


「分かってる。でもこのままじゃ嫌だ……友だちになりたい」


「アイツはお前が助けたことなんてなんとも思わないかもしれない……それどころかもっとひどいことを言われるかもしれないぞ……」


「それでもいい……僕は助けたいから助けるんだ……!士だってそうするでしょう?」


そう言ってシャルは笑った


ニッコリといつもの笑みだ


「まったく……勝てないよ。お前には」


頭を撫でながら立ち上がる


「えっ……?」


立ち上がった俺はシャルを立たせる


「シャル。一発アイツに言ってやれ」


「……っ!うん!」


シャルは少し前に出て


「キャロル……ごめんね。僕はキャロルの事を考えずに生きて来たかもしれない……どんなに否定したって僕はあの人の娘なのに……


そしてあの人は貴方の大切な人をこ、殺して……しまったのに……


絶対に許されないと思う……この状況でも助けてくれなんて言わないと思う……でもね、僕は助けるよ


キャロル……僕は、君と友達になりたい!だから、どれだけ拒絶されたって絶対に助けるからぁあああ!!」














―――ブゥウウオン


ライドブカッカーがエンジン音を鳴らす


独りでにそのカードは俺の手に収まり光り輝く


それは図柄が斜めに分割されていた


左上にシャル右下には腕時計のような装備が


「シャル……俺にもそれ……手伝わせてくれないかな」


「うん。おせっかいな士君にはお願いしちゃおっかな♪」


おどけているようで真剣な声色


「行くぜ……」


『FINAL FORM RIDE・ra,ra,ra,RAFALE REVIVE』


「ちょっとくすぐったいぞ!」


背中に両手を突き刺すように手を伸ばし、左右に広げる


「きゃ!?」


可愛らしい声と同時にシャルはファイズアクセルのような腕時計より心持ち大きい装備


『ラファール・リヴァイブカスタムC』へと姿を変える


それは俺の右腕に装備された


「よし!いくか……皆!協力してくれ!」


俺は倒れこんでいたはずの仲間たちへと声をかける


「当たり前ですわ!」


セシリアが声を上げる


皆も頷いた


「しゃあ!こっちから行くぜ!」


右腕にそうびされているカスタムCのダイヤルを回す


そのダイヤルがカチッと音を立てて止まり小型のディスプレイに映し出されているのは四機のビットだった


まずは……


スイッチを押す


『ATTACK RIDE・BLUE TEARS』


いつもの低い機械音ではなく高く合唱のようなきれいな声


そして告げられた装備はセシリアのブルーティアーズだ


俺は周りには四機のブルーティアーズが浮遊している


「うおおおお!」


俺は神経を集中させながら突っ込む


ブルーティアーズは思ったよりも……いや、俺が思う以上に動いてくれる恐らくシャルのお陰だろう


走りながらさらにダイヤルを回しスイッチを押した


『ATTACK RIDE・SOUTEN GAGETU』


大型の青龍刀が装備される


ブルーティアーズの援護射撃を受けながら双天牙月を器用に振り回した


アギトのストームハルバードより使いやすい


更に切り込むスピードをあげて切り刻む


「はぁ!」


大きく切り込み、距離を開けた


「まだ、終われないよな?」


『ATTACK RIDE・PANZER KANONIER』


ラウラの装備パンツァー・カノニーアを肩に装備


更に……


『ATTACK RIDE・AMADUKI KARAWARE』


箒の装備、雨月と空割を装備した


砲台で隙を突き、二刀流の剣戟をお見舞いする


蹴りで距離を開ける


ダイヤルはもう回してあった


『ATTACK RIDE・YAMAARASI』

『ATTACK RIDE・SOURYUSEN』


足元には山嵐


手元には蒼流旋が握られていた


「よしっ!」


山嵐のターゲットはただ一箇所


その弱点……背中!


「ファイアーー!!」


俺が叫ぶと同時に48発のミサイルが発射された


そのミサイルは迷うことなくその背面へと向かう


しかし、ミサイルは弾かれ適当なところで爆発してしまった


が……


「ミストルティンの槍………発動!!」


アクア・ナノマシンを一点に集中。攻性成形することで強力な攻撃力とする一撃必殺の大技


ミサイルのカウンターで一瞬弱まったその背中に叩き込むのは容易なことだった



「ふぅ……ジャスト三分か……夢は見れたかよ?」



そう息を吐いた





















翌日―――


VTシステムの発見でフランスへ強制帰国を命じられた彼女は翌日には帰ることになった


「そ、その……世話、かけたわね」


見送りはなぜか俺だけ


皆報告書だのなんだの忙しいんだって


くそ……俺だって疲れたのに


「ああ。ま、向こうで頭冷やすんだな……」


「う、うん……」


力なく項垂れるキャロル


「キャロル……」


「なによ……」


俺は彼女の頭に手を置いた


「シャルはお前が思ってた通りの憎い相手だったか?」


「え?」


「人間ってのは憎しみとか嫌なことがあるとつい自分と対等だったり弱い相手にその原因を押し付けたくなる

相手は仮にも企業の社長……たしかに強いな。でも、だからってシャルに逃げるなよ……」


「っ!」


「少しでも弱い人間が欲しかった。だからシャルにした……やめようぜ、そんなつまらんことはさ」


「で、でも……なら、私は……!」


涙ぐんだ彼女は目元を押さえた


「俺がいるだろ」


「えっ……?」


「憎まれたりするのは嫌だけど、まぁ……八つ当たりくらいなら笑って流してやるよ。なっ?」


そう言って俺は笑った


少ししてキャロルも笑う


「アンタって変なやつね」


「さあ?どうだろうな……おっと、これからはあいつのターンだ」


「?」


疑問に首をかしげる彼女もすぐにその意味を悟る


シャルが駆けてきたのだ


俺は少し距離を置いた


「キャロル……はぁはぁ……よかった……はぁ、間に合って」


シャルは肩を揺らしながら声を出した


「シャ、シャルロット……そ、その……ごめんなさい」


「え?」


頭を下げたわけではないが涙を目に浮かべて彼女は言った


「貴方は……なにも、悪く……ない、……のに……!わたじぃ……ぐっ」


涙が流れていた


大粒の涙だ


目を必死に拭いながら彼女は言葉を繋げる


「あ、あれ……?私なんか……泣く資格、ない……のにぃ……ひっく……ぐずっ……涙、が」


「もう、いいよ」


彼女はそう言ってキャロルを抱きしめた


「っ!」


「僕はキャロルと友だちになりに来たんだよ」


「とも、だち……?」


「うん!僕、キャロルと友達になりたいな〜」


「シャ、シャルロット〜〜〜!!!」


そして、キャロルの涙腺は爆発した


彼女の胸に顔を押し当て涙を流す


「うっ!うぐっ!あ、ありがどう!……ううぅ……ご、ごめん……なざい!」


「よしよし」


優しく頭を撫でるシャルは俺をチラッと見てもう片方の手でピースした









「もう、行くわ」


少したって彼女は体を離した


「うん……またね」


「ええ」


そう言って笑いあう二人は微笑ましい他ならない


「あ、神谷 士……」


「なんだ?」


彼女は俺にビシッ!と指差し


「シャルロットに手を出したら許さないからね!」


そう言い放った


「はぁ?」


「私がフランスに帰ってまたこの学園に来るまでの間にシャルロットに少しでも触れてみなさい……殺すわよ」


怖ぇよ!


「あわわわわ!殺しちゃダメだよ!」


シャルも慌てた声を出した


「大丈夫よシャルロット。この男の毒牙からちゃんと守ってあげるから」


毒牙って……


「それじゃあね、シャルロット」


「う、うん……またね」


そうしてキャロルは去っていった


「なんだ?あいつ?」


「さ、さあ?」


「まぁ、なんにせよ良かったな友達になれて」


「うんっ!」


そうしてシャルは俺の手を掴んだ


「え?」


「行こっ♪士!」






彼女の笑顔はやっぱり優しい

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IS <インフィニット・ストラトス> 第1巻 [Blu-ray]
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