小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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居間に入るとそれはもう旅館みたいだった


臨海学校で行った旅館みたいな感じ


超すげー


「あら、士くん」


「こっち、座って……」


簪に勧められ隣に座る


「虚ちゃん、本音。着替えてきなさい」


楯無さんが少し離れた位置に立っていた虚さんと本音ちゃんに声をかけた


「しかし、お嬢様……」


「いいのよ……勝負はフェアにね」


そう言ってウィンクした


「ありがとうございます」


虚さんは頭を下げたがそのころにはもう本音ちゃんはいなかった


「お姉ちゃん……」


「ん?簪ちゃんも着替える?」


簪の呼びかけに楯無さんは意味深な笑みを浮かべる


「ううん。だいじょうぶ」


「そう」


ところでさ……


「あの〜」


「「ん?」」


楯無さんと簪が同時に俺の方を振り向く


「なんの話ですか?勝負とか着替えとか……」


物騒なこと言ってるな


「士くんは知らなくてもいいのよ……」


「うん。士は知らなくても……いい」


姉妹で同じこと言うなんて


仲良くなったな〜


「「なんか、違う!!」」


はは、違うんだって


「つっち〜♪」


後ろからむぎゅっという効果音が聞こえそうなほどの勢いで本音ちゃんが飛びついてきた


「本音ちゃん。危な……い、だ……ろ……」


え?


俺の知らない本音ちゃんが立っていた


胸元がバッチリ開いた起毛レース袖のカットソーに2段に黄と赤のフリルがついているミニスカート


雰囲気もなんか大人っぽい


「えへへ〜。ごめんね〜」


本音ちゃんってこんなにも可愛かったんだな……


「ん?どうしたの〜?」


「え?何もないよ、うん」


本音ちゃんにずいっと寄られて思わず顔を反らす


「本音……その、服……買ったの?」


簪がオズオズと聞いた


「ふぇ!?か、買ってないよ……ま、まえからもってたよ」


明らかに動揺する本音ちゃん


アセアセとせわしない


「本当……?」


簪が詰め寄る


「う、うん……」


そんなやり取りを二人がしていると襖が開き


「士君……」


小さい声で俺を呼びながら虚さんが入ってきた


「う、虚さん……」


「な、なにかしら?やっぱり似合わない?」


そう言ってモジモジと体を揺らす虚さん


「い、いえ……」


艶かしい太ももがむき出しになったデニムの短パン、それでいて上は大人しい白の肩レースタンク姿


制服ばっか見てた皆の服装は俺のイメージを遥かに越えていた


「虚ちゃん」


「はい……?」


「買ったの?その服」


姉妹揃って同じ質問


「………いえ、前から持っておりました」


そして同じ返答


同じ慌てっぷり


顔には出てないが指を後ろに組んでもじもじしてる


「本当かしら?」


「は、はい」


またも詰め寄る更識姉


「あ、あの……昼飯食いません?」


そんな布仏姉妹に助け舟


昼飯を提案する


「そ、そうね……すぐ用意するわ」


「あわわわわわ。お姉ちゃん、わたしも〜」


そう言ってバタバタと出て行った


「士くん」


「はい?」


「本音の胸……見てた、でしょ……」


と簪


「虚ちゃんの足……綺麗だったわね……」


と楯無さん


「い、いや〜ははは。どうしたんですか?」


「「ふんっ!」」


怒らせちゃいました……








昼飯はサンドイッチだった


新鮮な野菜や肉厚なハムがただのサンドイッチでないことを表していた


そして、お昼


俺は真剣な面持ちで簪を見つめていた


「う〜む」


「……………///」


「ん〜………これだ!」


そう言って彼女がかざしていたカードを取る


「よしっ!ババ回避!……はい、本音ちゃん」


「またつっち〜が一抜けだよ〜」


そう俺達がしているのはババ抜き


ちなみに俺は現在十五戦で十勝と絶好調


「……ん。あがりました」


そう言って虚さんがカード置き、お茶を啜る


「はい!私もあがり!」


そう言ったのは楯無さん


「また、勝負……だね、本音」


「まけないよ〜かんちゃん!」


そしていつも最後を争うのはこの二人


顔に出やすいんだよな、この二人


本音ちゃんがこれまた面白くて俺がジョーカーを取ろうとすると花が咲きそうに笑う


俺が他を取ろうとすると泣きそうな顔をする


挙句、自分がジョーカーを取るとこの世の終わりみたいな顔をする


可愛いな〜


「勝った……」


簪がカードをテーブルに置いた


「まけちゃった〜」


本音ちゃんもパラパラとカードを崩す


「これで、私と本音は……八勝七敗」


「うぅ〜」


「はい、罰ゲームね」


そう言って楯無さんが少し離れた位置に勧める


そう、この十五戦目から導入された罰ゲーム


「好きな曲を熱唱。しかもガチで」


というもの


歌手になりきり手振りだのなんだのを使って一曲を丸々熱唱する


「辛いな〜」


俺が呟くと


「つっち〜……なに歌えばいいの〜」


本音ちゃんが泣きそうな顔で聞いてくる


「好きな歌を歌えばいいんだよ」


「好きな、きょく……」


ないのかな?


俺は曲が好きだからすぐに出れるけど


「なら、俺も歌ってやろうか?デュエットデュエット」


そう言って立ち上がろうとしたとき


「「「だめ!」」」


三人に止められました


う〜む、厳しい










そんなことをしているうちにもう夜


夕飯の時間だ


「そろそろ夕飯にしましょう」


そう言って虚さんが立ち上がった


ここには料理人がいて誰かが料理を作ることをしなくてもいいらしい


もう驚かんぞ


「そうね」


楯無さんにつられて俺達も食卓へと座る


「「おおお〜〜」」


俺と本音ちゃんが同時に声を上げた


「すげー」


「ごうせいだね〜」


本音ちゃんも続いた


「さあ、二人とも座って。いただきましょう」


楯無さんに足されて椅子に座った


「え〜では、ゴホン」


可愛らしく咳を一つした楯無さんが続けた


「今日は士くん。家に来てくれてありがとう」


「いえいえ」


「初めて同年代の男の子を家に入れたわ」


初めて男………やめとこ


「では、その偉業を祝してかんぱーい!」


偉業って……


「「「「かんぱーい!!」」」」


俺は飲み物などさっさと飲んでしまい


料理に手をつける


刺身に鍋


から揚げや蟹グラタン


など色とりどりに並べられた料理はどれも美味かった


「がつがつ、くん……ふぅ……がっ、がつ、はむ……おふおふ……ゴクゴク……プハッ」


うめ〜!


「良く食べるわね、士くん」


「美味いっす」


「たくさん食べてね」


「美味いっす」


「お〜つっち〜。ぼうしょく〜?」


「美味いっす」


「士?」


「美味いっす」


俺は幸せだな〜


「なんか、こんなキャラだったかしら?」


「食事は人を変えるんですね」


「つっち〜……ちょっと怖い」


「冬眠前の……熊、みたい」


何か言われてる気がするけど知らねぇや!


箸が進む進む


そんなこんなで


「ごっそうさん!」


箸を置き手を合わせた


「よ、よく食べたわね」


「完食するとは……」


「いいたべっぷり〜」


「お粗末様」


ふぅ〜お腹いっぱいです












少しして簪は部屋に着替えを


本音ちゃんと虚さんも同じく部屋を後にした


「楯無さんはいいんですか?」


「ええ……私はすでにおいてあるの」


そうすか


「それにしても、ごちそうさまでした」


「ふふっ……沢山、食べたわね」


「ええ……そういえばご両親は?」


この家に来てから一度も会ってないが


「父はいないわ……家は対暗部用暗部の更識……私はその当主なの。言ってなかったかしら?」


「そう……でしたか」


「ええ……あなたも運転手のアレックスを見て思ったでしょう。普通じゃないって」


はい。まぁ彼はボブですけど


「それは家柄もあってなの……一応、この家には20人ほどのSPがいるわ。当主を守るためのね。それはあの、シコルスキーみたいな運転手だったり、さっきの料理を作ってくれた料理人もそうなのよ」


そうなんすか。まぁ彼はボブですけど


「銃だって持ってる。私は持ってないけどね」


「まぁ、IS使えますからね」


「そういうこと」


ん?待てよ


「お母さんは……?」


「母は日本にいないわ……アメリカでF〇Iの特殊部隊の訓練してるわ」


母さんすごっ!


「あとKG〇の特殊武装隊の隊長だったかしら」


思い出す職業じゃない


「まぁ、そんな感じよ」


「なんか、すいません。変なこと聞いて」


「いいのよ♪……士くんには何でも知って欲しいから……」


そう言って楯無さんは俺の後ろに回る


「えっ?」


そのまま俺の肩に優しく手を乗せた


「知りたい?……私のこと……」


耳元で囁かれる甘い声


「え、えっと……」


「はむっ♪」


うわっ!耳になんかあったかい感触が!


「ちょ、楯無さん!?」


そのとき襖が開いた


二箇所同時に……


一箇所からは簪


もう一箇所は虚さんと本音ちゃん


「士……」


「つっち〜……」


「士君……」


三人とも固まってしまっていた


「え、えっと〜、ははっ……失礼します!!」


そう言って逃げ出した







ふぅ……危なかったぜ


なんとか部屋まで戻った俺は着替えを取り出す


俺も風呂もらおうっと


あれ?そう言えば風呂ってどこだ?


楯無さんたちに聞くか


そう思い居間まで行ったが……


「あれ?」


いない


どこだろう?


適当にブラブラと歩いていると運転手のボブに出会った



「あ」


「あ?」


俺は単純な「あ」


ボブは不機嫌そうな「あ?」だった


「どうも」


頭を下げる


「てめぇは……昼間の」


「はい。神谷 士です」


超怖いんだけど……


膝の震えよ……とまれっ!


……止まりませんでした


「……楯無には気をつけろよ」


「え?」


ボソッと彼が呟いた


「アイツは危険な女だ……俺も身をもって知らされたからな」


「どういう意味ですか?」


「俺の妹はアイツに殺されたんだ」


室内を気にせず彼はタバコをふかす


そのライターは火の量を調節できる高級なものだった


「本当、ですか……」


昼のやり取りを見ている限りそんな感じはしなかったんだがな……



「ああ。まぁもう割り切ったことだけどな」


「……そ、そんなことより何してたんですか?」


「ああ。昼間怪我してな……その処置だよ」


足に巻かれた包帯を見せてくれる


「じゃあな……坊主」


そう告げて彼は俺の前を後にした









さっきの話本当かよ……


ぼんやりするが良く考えれば


ここは暗部の家


そこに仕えてる人間の妹が亡くなるのも……ない話ではないか


そんなことを考えてると声が聞こえてきた


皆の声だ


「ここかな」


部屋を開けるとそこは着替え室でその奥が浴室になっていた


なるほど。皆が先に入ってたわけね


そう思い静かに撤退しようとすると


「きゃあ!!」


と悲鳴が


「どうした!?」


急いで扉を開ける


すると


「「「「え?」」」」


「あれ?」


一瞬時が止まった


楯無さんの豊満な胸


本音ちゃんの丸く形のいい尻


虚さんのスレンダーな体


簪の小動物を連想させる表情



そして



「「「「きゃああああああああああ!!!!!」」」」


今日一番の悲鳴があがった
















「大変申し訳ありませんでした」


土下座する俺はなんとも情けない


俺の貸し部屋で土下座していた


とりあえず風呂に入れられ部屋に戻ると皆がいて


そこからはご想像にお任せする


「もう!」


「つっち〜は〜」


「驚きました」


「責任……とって」


皆さんご立腹なようで


「ど、どうすれば許してくださるでしょうか……」


頭を上げると


「とりあえずこの部屋で私達も寝るわ」


と、楯無さん


「嫌とは言わせないわ」


と、虚さん


「私、つっち〜のとなり〜」


と、本音ちゃん


「私も……」


と、簪


「そ、それは……」


「「「「なに!」」」」


「なんでもございません……」


俺、よえ〜


そうして眠りについた










皆が寝静まった頃……




ドオオオオオオオンン!!



爆発音がした


「なんだ!」


襖を開けると少し遠いが、離れが燃えていた


その火は大きく、今にも燃え移りそうだ


「士くん!行くわよ!」


「了解!」


「本音と虚ちゃんは皆を集めなさい!簪ちゃんは退路を封鎖!」


「はい!」「はいさ〜」「分かった……」



各々が動き出す


「士くん……」


『KAMEN RIDE・DECADE』


楯無さんと俺は同時にISを展開する


「なんすか?」


「ごめんね」


そう言って目を伏せる


「気にしてないですよ」


「え?」


目を見開く楯無さん


「こっちの方が退屈しないですみます」


「……ありがと」


「いえ」


そしてまた走り出す


「火を消すわ!」


「了解!」


『FORM RIDE・OOO・SYATORABA』


オーズの亜種コンボ


頭部はシャチ、身体はトラ、脚部はバッタのシャトラバコンボへ姿を変えた


「よし!」


楯無さんはミステリアス・レイディの左右一対で浮いている「アクア・クリスタル」から水を放出する


俺もバッタレッグの跳躍力を活かして跳び


シャチヘッドから水流を発射


トラクローの真空刃を放ちその水を広げる


……もう少しだな


『FINAL ATTACK RIDE・O,O,O,OOO』



『スキャニングチャージ!』



「ハアアアアアア、セイヤーー!!」



そうして消火された

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