小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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ラウラside-


イーリスとの対戦から既に3日を過ぎた夜


ラウラは士の部屋の前に来ていた


最近は忙しくて添い寝をすることができていなかった彼女にとって今日は待ちわびた日だった


彼が忙しくなく、疲れが見えない日を狙っていた


そして、シャルロットが寝静まったことを確認して今に至ったのだ


「よしっ!」


すでに馴れたピッキングで士の部屋を開けて中へ


手前のベッド眠っているだろう彼の傍へと向かう


「士……」


ベッドの脇に立ち、そう呼ぶ


私は……こんなに楽しくていいのだろうか


毎日がこんなに充実していていいのだろうか


皆と仲良くして、でも、士は取り合って


IS操縦や知識を教えたり、教えられたりして


時たま迎えるピンチすら武者震いを覚えるほどで


いつか、答えは見えるだろうか


そうして彼のベッドへ忍んだ


少しの違和感を覚えて……


「(……ん?)」








翌朝


「う、うう……朝か」


目覚めはよかった


今日は日曜日


買い物にでも誘おう


そう思ったラウラは彼を起こそうとシーツをめくる


「っ!!」


その瞬間、ラウラは硬直した


「どういうことだ……」


続いて聞こえたのはノック


そして、ドアが開く音


「士さん!昨日、お約束したお買い物……早速行きましょう!」


こんな時間から店が開いているわけがないだろう


意外に冷静な突っ込みをいれた私はその声の主を見た


「あら、ラウラさん……って、また勝手に士さんと添い寝なんて、羨ましいですわ!」


セシリアだ


そして、彼女は気づく


隣にいるのは士ではなく















士によく似た―――少年ということに


「ラ、ラウラさん……これは……」


「私にも分からん……どうなっている」


さらに


「士!今日は遊びに行くわよ!」


鈴が入ってきた


「あ、ラウラはまた添い寝してたわけぇ?いい加減にしなさ―――誰よ……」


おい、鈴


ここでは甲龍を展開するな


部分展開でもだ


「私もセシリアも何がなんだかさっぱりだ……助けてくれ」


「……箒を呼ぶわよ」


数秒、間を開けて言った鈴の一声は意外なものだった


「どうしてですの?」


「昨日まではちゃんと士だったのよ?そして、ここは士の部屋……その士がそっくりな顔した子供に戻ったってことはこの子が士って考えるのが妥当よね


ここで、箒を呼ぶ理由は2つあるの


1つはあの娘は私が関わったときよりも小さいときの士を知っている


そして、もう1つは束博士なら……ってね」


「冷静すぎだ!」

「どうしたんですの!?鈴さん!顔が何かを悟ってますわよ!」


2人の突っ込みを彼女は悠々と受け流した



ラウラside out






数分後


「確かに、初めて会ったときの士とよく似ている……そして、姉さんならやりかねん」


部屋に来た箒がため息をついた


「小さいときの士は可愛かったんだね〜」


シャルロットが間延びした声を出す


廊下で出会ったらしい


「ん……う〜ん」


すると彼は……少年は、ゆっくりと体を起こした


そして、目を擦りながら一言


「おねえちゃんたち……だれ?」



ズキューーーーン!!


銃声が彼女達の心の中で鳴り響いた


「「「「「(((((か、可愛いすぎる!!)))))」」」」」


「お、お名前は?」


セシリアが恐れるように聞いた


「かみや、ちゅ、……つ、つかさ、です!」


元気良く答えた彼の笑顔は太陽より眩しかった



すると、シャルが駆け寄っていき


「僕は、いくつかな?……何歳?」


と、柔らかい物腰で聞いた


「ぼくは……ごさい!」


右手を勢いよく突き出す彼にまた全員が心を打たれる


「あっ!ほうきちゃんと、りんちゃんだ!」


「「えっ!」」


どうやらこの2人は幼馴染ということもあり記憶にあるらしい


セシリア、シャル、ラウラが肩を落とす


「りんちゃん!」


箒ではなく鈴に駆け寄るところを見ると過去の印象的には鈴のほうがいいのだろうか


ベッドから飛び降りた士……いや、つかさは鈴の元へ飛びついた


「士……いや、つかさ!」


迎えに来た母親のように彼を抱きしめる鈴


「ず、ずるい……私だって」


「お腹は空いてない?」


普段では想像できないほど優しい声音の彼女の問いかけに


「うん!」


と答えるつかさ


「じゃあ、ご飯食べにいこっか!」


と鈴は手を引く


「ま、待て!」


「わたくしも行きますわ!」


「ほらっ!箒も行くよ!」


こんなときでもライバルの手を引いていけるのは彼女の優しさの現われだろう





さて、食堂だが


「つかさは……朝から日本!って感じだね」


白米に焼き魚、白菜の漬物に味噌汁と和食の典型だ


それに習い、5人も同じものを食べる


「いただきます!」


つかさは大きな声で告げて、ご飯をかきこむ


休日ということもあり、食堂には人はいなかった


「おいしい?」


鈴は尋ねる


「うん!りんちゃんも、いっぱいたべてね!」


幼少の頃から気遣いのできる子だったらしい






数分後には朝食も食べ終わり、食堂で一日を過ごすことにした専用機持ちはそれぞれ分担してすることがあった


箒は束への確認


セシリアは千冬への状況の説明。これにはラウラも同行する


鈴はつかさの世話を


シャルはそのサポートだ


「うむ。やっぱり姉さんの仕業らしい……一日もすれば元の士に戻るんだと」


携帯をしまいながら箒はため息をつく


「連れてきましたわ」


セシリアの声と共に千冬と麻耶、さらに簪に楯無も入ってきた


「わあ……士くんは小さいときこんなに可愛かったんですかぁ〜」


麻耶が感激の声を上げた


すると入ってきた千冬に気づいたつかさは……


「ちーねぇ!」


そう呼びながら彼女の豊満な胸元へと飛び込む


「まったく、小さくなったな」


言いながらも和んだ声の千冬に誰もがどこか安心感を覚えた


「うう……ごめんね」


つかさは不安げに千冬を見上げた


「なにを謝ることがある?」


「だって……ぼく、ちいさいから……」


「いいや、お前は大きいし強いさ……私の弟が小さく弱いわけなかろう」


優しく頭を撫でる千冬


その笑顔は育ての親のようだ


「ち、ちーねぇ!」


またも彼女に抱きつくつかさ


「まったく、甘えん坊にもなったのか」


言いながらも千冬は背中をさすり、彼を諭した






「私は仕事もあるし、束をシメなければない……世話は任せたぞ」


千冬は背中を向けて彼女達に告げた


「私はお手伝いですね」


「分かっているじゃないか……行くぞ」


「はい」


そうして去っていく二人は大人の風貌だった


「さてと……なら、今日一日は私達がつかさくんのお姉さんね♪」


楯無が声を張った


「う、ん……」


簪が頷き、彼の元でしゃがみ込む


「私は、更識簪。お名前は?」


彼女も馴れた様子でつかさに声をかけた


「かみや、つかさだよ……おねえさんは、かわったなまえだね」


「ふふ……好きな呼び方してね?」


「えっと……じゃあ、かんざしおねえちゃん!」


「そのまま、だね」


やさしく笑いかけて頭を撫でる簪


「かんざしおねちゃん……やさしい」


彼もお気に召したようだ


「次はわたくしですわ!」


プライドの高いセシリアだが、いとも簡単に膝を折った


彼女も小さい子供の扱いは慣れているらしい


「つかささん……わたくしはセシリアですわよ」


「せしりあ?」


「はい」


「おねえちゃんは、としうえなのになんで「けいご」なの?」


「よくそんな言葉知ってますわね……偉い偉い。わたくしのこれは癖ですから気にしないでください」


頭を撫でる彼女もまた優しく微笑んだ


「おねえちゃん、おはだきれい」


そう言ってつかさはセシリアの頬を撫でる


「あら……レディの顔を勝手に触るのは失礼ですわよ」


「あ……ごめんなさい」


「ちゃんと、謝罪できるのはいいことですわ……ご褒美にいっぱい触ってくださいまし」


彼女は彼の手を自分の頬へ持っていく


つかさはまた嬉しそうに笑った


「つ、次は僕だね!」


少ししてシャルが名乗り出た


「シャルロットです。よろしくね」


「うん!おねえちゃんはやさしい、かおしてるね」


「そうかな……嬉しいな〜」


頭を撫でるとくすぐったそうに目を細めるつかさもまた可愛らしい


「次は私だな!」


そうしてラウラが前に出たが


「ううう……あのおねえちゃん、こわい」


つかさはシャルの影に隠れてしまう


「なっ!?」


衝撃の一言だった


「わ、私は〜、こわく、ないぞ〜」


必死に優しい声を出しながらラウラは彼に近づく


「お、おねえちゃんはなんで、おめめかくしてるの?」


素朴な質問


しかし、彼女の素性を知る皆は固まった


見せるのか……


しかし、小さい子にとって恐怖の対象になるんではないだろうか


ラウラは迷う


それを救ったのは簪だった


「ラウラさん……だいじょうぶっ。つかさ、だから……ね?」


「簪……」


そしてラウラは意を決してつかさの前でしゃがみ込んだ


「私の左目は……こうなっていてな」


眼帯を外すとそこには遺伝子強化試験体として生み出された試験管ベビーである証が


彼女はISとの適合性向上のために行われたヴォーダン・オージェの不適合により左目は金色へと変わっている


しかし、彼は……


「きれい……」


そう、呟いた


「へ、変ではないのか……?」


「へん?ねこさんも、おめめのいろ、ちがうし……かたっぽだけ、いろがちがうのもキレイだよ」


彼は臆することなく言った


周りでは皆が「ああ、士だ」と言わんばかりに微笑んでいる


「そうか……キレイか」


「うん!」


「ありが、とう」


涙を必死に隠して彼女はつかさを抱きしめた


つかさは何も言わずに彼女の頭を撫でる


こういうところは今も昔も変わらない



「士!私が相手してやろう!」


少しして箒が声を張った


「ほ、ほうきちゃん」


つかさは困ったように笑う


「なぜだ……」


「アンタは普段からキツイからね〜」


「昔、剣道で怖い印象でもあったんでしょか」


鈴とセシリアの分析に箒はうなだれた


「そんな……」


しかし、


「今日だけ私は、生まれ変わる!」


そうしてつかさに近づいた


「つ、つかさ……もう私は怖くないぞ〜」


彼女はあくまで優しく声をかける


「ほんとう?」


「ああ……ほら、飛び込んで来い」


両手を広げた彼女の腕の合間にすっぽりと収まるつかさ


「ほうきちゃん。やわらかい」


「そうか……」


ふふふと笑う箒


「変わるもんだね……」


「あの箒がな……」


シャルとラウラが呟くと


「う、うるさいぞ!……あ」


「や、やっぱりこわい……」


「い、いや……ち、違うぞ!つかさ!つかさぁ〜〜〜!!」


彼は鈴の方へとかけて行った


箒はシクシクと泣いている


「次は私がご挨拶かしら」


楯無がつかさの前でしゃがみ込んだ


「楯無よ……よろしくね」


「おねえちゃん……それなに?」


つかさが指差したのは扇子だった


「これはね扇子って言うのよ」


「せんす?」


「そう。こうやって……開いて……パタパタパタ〜ってね」


そう言ってつかさを扇いだ


「すずしいね〜」


「そう?良かったわ」


楯無は優しく微笑む


「さて、散歩でも行きましょうか」


楯無が提案するが


「私、まとめないと……いけない、資料が」


「あ。今日中だったかしら?」


「うん……」


「手伝う?」


「いいよ。お姉ちゃんは、つかさの……相手、してあげて……その代わり」


「分かってるわよ」


簪が離脱。さらに


「僕も専用機の調子をフランスに報告しないと……キャロルが面倒みてくれるみたいだから迷惑かけられないし……」


「私も今日、部活に顔を出さないと……考えただけでも恐ろしい」


シャルと箒も帰っていった


これでセシリア、鈴、ラウラ、楯無が残っている


「じゃあ行きましょうか」






中庭に出ると


「いい、おてんきだね〜」


つかさは間延びした声で言った


「そうだな」


「ラウラちゃんは、はれすき?」


「ま、まぁ……嫌いではないな」


「えへへ〜、ぼくも〜」


つかさはまた無邪気に笑った


すると……


「ああ〜!!噂のつっち〜だよ!お姉ちゃん!」


「本当に小さくなっているんなんて……でも、可愛いわ」


本音と虚だ


「貴方たちは……」


「はい。先程、資料の提出が終わりました」


楯無の問いかけに虚が答えた


「つっち〜」


「ほんねちゃ〜ん」


いつの間にか仲が良くなっているつかさと本音


「あはは〜。つっち〜は、いくつになってもつっち〜だ〜」






本音と虚は仕事が残っているためそのまま別れた


気づけば校門前だ


「わ〜……おおきい」


校門の大きさに驚いているつかさ


すると


「楯無お嬢様」


女性にしては低い声


さらに


「へへっ!その歳でもう子供産んでたんですかい」


色黒な肌にスキンヘッド、サングラスにスーツ姿











更識家の護衛班、攝津香菜


そして、運転手のボブだ


「あら?貴方たち……」


「前の坊主に礼を言いに来たんですよ。妹の墓に花を供えてもらいましたから……ったく、何にも言わねぇで花供えるなんざ、キザな真似しやがる」


「私も……簪お嬢様からあの後、士様がお嬢様に刑を軽くして欲しいとお願いされていたと聞いたので」


2人は笑ったが


「その坊主はこの子なのよ……事情があって説明は面倒なんだけど……」


その言葉で固まった









「おにいさん、すごいきんにくだね」


「そうかい、そうかい」


つかさはボブと遊んでいた


ボブも子供にはどうも甘いらしい


「ボブ……帰るわよ」


「へいよ」


「おにいさん。帰っちゃうの?」


ボブが帰ると聞き、途端に寂しそうな顔をするつかさ


「ああ。また会おうぜ、坊主」


「うん!」





そして、その夜


「ぼく、きょうはつかれちゃった」


つかさは自室のベッドで横になっていた


「たくさん遊んだからね〜」


鈴が腰に手を当てる


「みんな、きょうはありがとう」


つかさはそれから数分もせずに目を閉じた



翌日、一日の記憶がないつかさ……士が恐怖に怯えていたのはまた別の話



















とある森のログハウス


その地下は射撃訓練場のようになっていた


「ふぅ……」


彼女―――海東夏海は息を吐く


的になっていた人型の板は全て頭部に穴を開けていた


「神谷 士……」


そっと、ターゲットの名前を呼ぶ


今回は殺しじゃない……あくまで生きたまま連れ去ることだ


「撃ち抜くわ……あなたの全てを」


そっと笑みを浮かべた













後書き


黒猫です


えっと……なんか、後半適当ですいません


学校も始まって、バイトもあってで忙しく執筆する時間がなくなりがちなんですよね


僕、高1なんで色々しないといけなくて……(涙)


今日(8月29日)もバイト先で少しありまして最後は適当な感じに


提案してくださいました「星に願いを」様には大変、申し訳ないと思っております


さて、次回からはディ〇ンドの話です


案外、楽しみにされてる方も多いらしく頑張っていきたいと思っています


まぁ、彼女にも士のハーレムには参加してもらう予定なんですが、皆様的にはどうでしょう?


もういらねぇよ……って思われてる方もいるでしょうか?


よろしければ回答を


それと前に聞きました野球回の件ですが


意外に皆さん、お好きなんですね〜


僕もやってはいないんですが好きなので野球回を書きたいと思います


まぁ、ディエ〇ド編を終えたあとくらいかな?


話の提案や、いいと思うところ、悪いと思うところ


あんまり言われると調子に乗ったり、落ち込んで投稿しなくなったりするので、ちょっとだけ言ってもらえると嬉しいです^^


また、フォーゼが終わり、今週からウィザードが始まりますがこれも、もちろん話を考えます


そうですね〜。年末あたりを予想していただけたら幸いです


まだまだ、未熟ですが皆様の暖かいコメントだけでこの作品続いています


応援のほどこれからもよろしくお願いいたします




そうそう、僕の携帯のメールアドレスを知りたいと言って来る方がたまにいます


まぁ、プライベート(と言っても携帯のメールですが)でも関わってくださる方ですね


もちろんOKです^^


よければ交換いたしましょう!


スカイプとかツイッター、ブログ類をやっていないのでこういうのでしか皆様とは関われないんですよね


なんで、連絡くださればいつでも交換いたします^^


それではまたお会いしましょう!

-69-
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