小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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今回はside-が複雑に変わりますのでご了承ください









「―これほどの数のISを一度に、搬出するなんて、前例がありません―」


「―IS格納庫の点検を、警備の立会い無しで行うなど―」


「―この日だけ、警備が手薄になっちゃいますね―」


「―何? 緊急のレーダー点検だと?―」


「―ダメです、スケジュールの変更は認められませんでした―」


ひとつひとつは、ほんの少しの違和感でしかなかった


焦っているようで、どこか余裕がある対応


カタカタとキーボードを叩く音も、飛び交う指示もどこか焦っていない


それはあの最強。織斑千冬ですら




想像できなかった


まさか、この後……最悪の事態が起こることなど



士side-


こんにちは、神谷で〜す


今日は、二年生が飛行技術の催し物を見せてくれるんだって


一年は先輩の晴れ姿


三年は後輩の晴れ姿


楽しみだな〜


そういや、朝から海東見てないけど……どこ行った?


………まぁ、いいか


ちなみに俺はグランドの隅で誘導員をすることになっている


今は控え室で待機


なぜか、俺だけ


他の皆はアリーナで見てるらしい


羨ましい


すると


「ねぇ。IS来ないんだけど」


「うそ!?」


そんな会話が聞こえてきた


この催し物は専用機持ちではなく将来有望な操縦者が見せるもの


よって使用するISも訓練機なんだけど


「ふむ……」


俺が顎元に手をやったとき……










ドオォオオオオオオオオォオン!!



爆発音が鳴り響いた


それは凄い衝撃で


「グランドのほうか!」


控え室を飛び出した


「皆さんは避難してください!急いで!」


そういい残して






グランドに出ると一機のISが浮遊していた


目立つ拳の右腕


サイズのいいライフル


それでいてボディはスラッとしていて動きもよさそうだ


でもあの背中のパックは……どこかで……


「くそっ!」


でもまぁ、とりあえず!


「変身!」


『KAMEN RIDE・DECADE』


ライドブッカーをガンモードにして光弾を放つ


しかし、それは左手に握られたライフルで弾かれた


「何者だ?」


俺は問う


「アタシは『亡国機業』のヘビー♪よろしくぅ〜」


ふざけた野郎だ


「目的は?」


「君の捕縛♪」


言いながら彼女はその大きな拳を振り上げた


俺はカードを挿入する


『KAMEN RIDE・HIBIKI』


ドドン!という太鼓の音の後に俺は鬼の力を操る響鬼へと姿を変えた


全ライダーの基本形態中、もっともパワーのある響鬼


「おらっ!」


その拳を拳で殴り返した


「あはは。やるねぇ〜。ならこうしちゃう♪」


そう笑った彼女はライフルを向けた





観客席に



「バーン!」


おいおいおい!


くそがっ!


『FORM RIDE・FOURZE・FIRE』

『ファイヤー・オン』



強力な炎エネルギーを含有し、ヒーハックガンを装備するとともにフォーゼがファイヤーステイツへと変身する


背中のジェットパックで宙を飛びながら更にカードを挿入



『ATTACK RIDE・ SHIELD』

『シールド・オン』


スペースシャトルを模した小型の盾を装備


これでなんとか!


しかし、彼女の猛攻は絶えない


「ほらほら! ライフルのいい的だよ!!」


「ぐ……、くうっ……」


だめだ!


防ぎきれない!


「避けないのかい!? どんどん当たっちゃうよぉ!」


「(後ろには避難中の生徒が……!)」


いるんだよ!


俺はシールドを振り回すように弾丸を払い、ヒーハックガンの火炎弾を放つ


「そうだよねぇ、避けられないよねぇ!……だったらそのまま、デクになってておくれよぉぉぉ!!」


「ぐ、ぐうううう……!」


ま、まずい、……ての






学園side-


「織斑先生! 神谷君が……!」


「わかっている!くそっ、設備点検とISの大量搬出はこれの布石だったか……!」


所変わり、モニタールーム


千冬と麻耶は懸命にこの状況を分析していた


「織斑先生は悪くないですよ!日程変更や警備増員の申請もしましたし!それが全部却下されたんですから……!」


「(やはり内通者がいるのか?)」


千冬はこの段階で既に内通者の存在を怪しんでいた


しかし、それは特定できない


「(……いや、今はそんなことより!)」



「状況は!」


千冬が怒鳴りつけるように言った


「学園を包囲するようにISと武装兵が展開しています。教員と上級生が応戦に向かっていますが……」


「数が足りんか……」


「突破して神谷君が相手しているのは、どうやら相手のエースのようですね。動きが格段にいいです。装備はライフルと……あの大きなバックパックは何でしょう?」


麻耶はキーボードを操作するのをやめずに淡々と続ける


「IS格納庫の扉もロックされていて、どうも扉の裏に爆発物が設置されてる可能性があります。強行突破も難しいようで……通信もジャミングされています。レーダーの精度も普段より格段に落ちています!」


麻耶の表情は険しくなるばかりだ


「余程、入念に準備されていたようですね……」


「くそ、楯無がロシアの連邦会議でいないこのときを狙っていたというのか!」


そこまでのことを知っている……それは内通者は一般生徒ではないことを示していた


「くっ、致し方ないか……。あいつらを戦わせたくはないが……ボーデヴィッヒ、聞いていたな?」


『はっ、教官』


モニタールームから直接、チャンネルをつないだ相手はラウラだ


「お前はドイツの衛星とリンクして情報をこちらに。学園の目になれ」


『了解しました』


こういう事態に落ち着いて対応できるのが彼女の最大の長所だ


「オルコット!お前はボーデヴィッヒの護衛だ」


『えぇ!?わたくしは士さんを助けに!」


「リンク中のボーデヴィッヒは戦えん。全周囲を瞬時にカバーできるのはお前だけだ!」


『わ、わかりました!』


セシリアもまた、士との約束


彼なら今、どう望むか……


それを考え、それを全力で行動する


その心を思い出した


「篠ノ之! お前はIS格納庫に行け。扉がダメなら、隔壁を斬るんだ!」


『隔壁を……ですか?私に出来るでしょうか』


「お前は束の妹なんだ。出来ないことなんてないさ」


「はい!」


箒はその言葉でやる気のメーターの限界を超えた


この期待は姉さんのものでもある


これは、裏切れない


「更識!お前は篠ノ之と行け!爆発物は任せたぞ!」


「はい」


暗部出身の彼女も不測の事態えの対応は心得ている


「凰とデュノアは神谷の援護だ!急げ!」


『言われなくったって……!』


『向かっています!』


「いいか、相手は単騎だが、恐らくお前たちより数段強い。無理せずに戦え!」


『士を助けられたら考えます!』

『了解!』


よし、この二人も意中の男のためにと熱くはあるが冷静さは欠いていない


いけるか……!


「交戦中の全員に通達!神谷の奪還作戦と同じように教師1と生徒2の3機でチームを作れ!敵には2チーム以上で当たるように!編成は任せる!」


『りょ、了解です!』


「生徒の避難が最優先だ! 物的被害は無視しろ!」






セシリア、ラウラside-


「セシリア、私はこれから動けなくなる……後は頼む」


ラウラは何の不安もなく言った


「おまかせください、わたくしが必ず護ります」


それだけの信頼を得て、本当の親友を持っていることに彼女は気づいていた


「クラリッサ! 状況は分かるな?」


『把握しております、隊長。こちらも全力でバックアップします』


「ハーゼとツヴァイクの二重リンクを行う!衛星をフル稼働させるぞ」


『了解!』


「リンク、開始……!」


彼女は目を閉じ、手を少しだけ広げる


『レーダー回復!す、すごい精度です……』


通信越しに聞こえる彼女の声は驚きを隠せなかった


「……」


「こちらに向かうミサイルを確認しましたわ。全方位より数は……118、更に増えてますわね」


彼女はレーダーをフルに活用し、そのことに気づく


「お行きなさい、ブルー・ティアーズ」


四機の頼りになる装備を彼女は四方へと飛ばした


「約束しましたの……!何人も、ラウラさんには傷つけさせませんわ!」





鈴、シャルside-


「士!生きていてよね!」

「もうすぐ着くよ!」


彼女達は迂回してグランドの方へと飛んでいた


暗い通路を抜けて明るい風景が目に映った瞬間


「「士!」」


「おや? ナイト様のご到着かい?」


「鈴……、シャル……」


見るのも辛い


フルアーマーなんて関係ないぐらいの傷を負った士が……


「」


そのとき、鈴のなかで何かが音を立てて、切れた


「ウチの士に何してくれてんのよぉ!!」


彼女は龍砲を惜しげもなく放った


「はははっ!怖いねぇ!」


「士!今のうちに下がって!」


シャルは士を庇うように飛びまわり、銃を連射する


「だ……ダメだ……、俺が下がったら……避難してる生徒をこいつは撃つ……」


「わかってんじゃないのオトコノコ! 女心が分かる子は好きだよ!」


「ふっ……ざけんなぁぁ!!だったら! あんたを先にヤりゃいいのよ!」


「はははっ! 出来るのかい? ヒヨッコちゃん!」


鈴の見えない弾丸


それに加え、シャルのラビット・スイッチで絶え間なく放たれる弾丸すら彼女は軽く避けて見せていた


「(強い……!僕と鈴が全力で向かっても当たらない!)」


「こんのぉぉ!!」


鈴はそれでも、砲撃をやめない


「鈴!熱くならないで!」


「よくも!よくも士を!」


シャルの警告も聞かず彼女は飛びまわり、放つ


「ははっ!怖い怖い!……こんなに怖いから……ミサイルでもバラ撒こうかねぇ!」


背中のパック……それはミサイルだった


「ロックオン式小型ミサイル?こんなもの、ISの速度で当たるもんですか!」


「そうだねぇ……。ならイッパンジンならどうだい!」


「鈴!ミサイルは生徒を狙ってるよ!」


「なんですってぇ!」


後ろにはまだ避難途中の生徒が……


「ミサイルは1パックで108発!たった一発でも10人は即パズルさ!」


「くっ……」


苦しげに呻く鈴


「鈴! 全部撃ち落すよ!」


シャツは冷静に指示を飛ばした


「わ、わかった!」


「そうそう、がんばってね☆」


相変わらず余裕の笑みは消えない


「あんた……後で覚えてなさいよ!」


「こわーい♪ 怖いから……お代わりも夜・露・死・苦☆」


「なっ!?」


彼女が背負っていたのは一つだけではなかったのだ


「鈴!急いで!」


「くっ!」


「合計たったの216発♪ よろしくにゃーん☆」



士side-


ふざけやがって……


強いとかのレベルじゃない


酷い


あまりにも容赦がなさすぎる


「さぁて……、お待たせダーリン♪」


こいつ……


楽しみすぎだろ


「はぁー……はぁ〜……」


息をもう一度整える


「逃げずに居たのは褒めてあげようか」


「……逃げる、かよ」


「いいねぇ……、その反抗的な目……いたぶり甲斐があるってものさね!」


彼女はまたもライフルを振りかざし、向かってくる


『KAMEN RIDE・―――



彼女の突進をかわして、バックルを回し



―――RYUKI』



仮面ライダー龍騎へ変身する


『ATTACK RIDE・STRIKE VENT』


ドラゴンの咆哮と共に俺の右腕にドラグレッダーの頭部を模した手甲ドラグクローを装備する


さらに、


『ATTACK RIDE・SWORD VENT』


ドラグレッダーの尾を模した青龍刀のような剣ドラグセイバーを装備する


「もらっとけや!」


ドラグクローから炎を吐き出し、ドラグセイバーで斬り付けた


「はっ♪まだまだ元気だね〜」


だめだ……最初に体力削られすぎたか……!


「もう、終わりかい!」


右拳がとんできて俺は即座にドラグクローでガードするが


「無駄無駄!」


叩き割られた


うそ、だろ……


「あんたのナイト達は動けないみたいだよぉ?」


視線を向けた先には鈴とシャルがミサイルを必死に撃ち落している姿が





鈴&amp;シャルside-


「くそっ!くそっ!」


216発……それは並の数ではない


「落ち着いて鈴!士が護ってる人達を、僕達も護るんだ!」


「わかってるわよぉ!でも士が……、士がぁ……!」


「まずはミサイルを落とすんだ!」


「誰か……!誰でもいいから士を助けて!!」



そのとき、あの女に戦艦の主砲のような弾があたった





士side-


だれだ?


クウガのドラゴンからディケイドに強制的に姿を戻された俺は、負けたと思ったが……


そして、俺は気づいた



……水?



「士くんに……何をしてくれてるのよぉ!!!」


目にも留まらぬ速さ……


そう表すしかなかった


水を撒き散らしながら、槍を払うその人は


「楯無さん!」


高圧水流を発することができる蛇腹剣「ラスティー・ネイル」でヘビーを吹き飛ばしてこちらに振り返った楯無さん


その笑みは優しく、柔らかかった


「お待たせ。士くん」


優しく頬を撫でられた


「遅い、ですよ……」


「ふふっ、ごめんなさい」


片目を瞑る楯無さん


「士くんは嫌かもしれないけど……ごめんなさい。おねーさん、今回は容赦できないなぁ……」


そう呟くと彼女は走りこんだ


「アイツが学園最強、さらし―――」


ヘビーは台詞もロクに言えないまま、ラスティー・ネイルで斬りつけられる


「(セリフ喋る暇も無いのかよ!何だ!?)」


動きが荒くなってくるヘビー


「ぐぁぁぁ!(なんて速さだ! 回避どころか防御もできねぇ!)」


水の残像を視界に写らせた瞬間、背中から斬りつける


「絶対に……許さない……!」


「くぅぅぅ……!」


そして、握られていたライフルは真っ二つに裂かれた


「(ライフルを斬られた!?盾も兼ねる特別製だぞ!?)」


ヘビーは真っ二つのライフルを投げ捨て拳を構えた


「くっそぉ!なら直接ぶっ潰してやる!(両碗ナックル展開!イグニッション・ブースト……)」


それでも、楯無さんは焦りの表情も見せない


「散りなさい……」


指を鳴らす


清き熱情(クリア・パッション)


ラスティー・ネイルで時たま、水流を発射していたのは……このため


「こ、こうなりゃ……残りのミサイル全部食らえよ!!」


フラフラと立ち上がった彼女は残りのミサイルパックを放った


しかし……


「士くん……あとは、任せれる?」


「うっす……」


俺は、震える足を叩いて立ち上がる


立ち上がった俺は手を弾くように叩いた


「ミ、ミサイルがまだあるだろうが!生徒が死ぬぞぉ!」


ヘビーは叫ぶ


「いつまで生徒がいると思っているのかしら?」


「っ!?」


「もうとっくに避難は完了しているわ……士くんが命懸けで稼いだ時間でね」


楯無さんは嬉しそうに笑った


「うちの一年生舐めないでね♪」


「士ぁ!」


鈴が俺の元で降り立った


「デュノアちゃんと私でミサイルを片すわ。よろしくね」


「当然!」


楯無さんはそれだけ言い残してミサイルを破壊するため走った


「士……」


鈴が不安げに見つめてくる


「大丈夫だよ……ありがとな。お前の心配はちゃんと伝わったよ」


頭を撫でながら俺は優しく声をかけた


「ばかぁ……心配、かけないでよぉ……」


涙ぐんでいる彼女も必死に目元をこする


「てめえらぁ!!殺してやるからなぁ!」


ヘビーはまたも拳を振りかざした


「無駄だぜ!」


突進してきた彼女の元へライドブッカーからカードが飛び出し、彼女を攻撃した


「な、なんだ!?」


そのカードは俺の元へと戻り、光り輝く


それは、図柄が斜めに分割されている「あの」カード


左上には鈴が笑顔で


右下には赤みがかった黒い球体が二つ


「ロマンはどこだ……」


呟いた俺はカードを挿入する


『FINAL FORM RIDE・she,she.she,SHENLONG』


「ちょっと、くすぐったいぞ!」


背中に両手を突き刺すように手を伸ばし、左右に広げる


「臨むところよ!」


さすが鈴だ


それは甲龍の特有武器。龍砲だ。両肩へと装備される


言うならば、龍砲Ver鈴だろうか


「いくぜー!」


俺はヘビーに向かって走る


「舐めんなぁ!」


彼女もまた隠し持っていたリボルバーを放つ


が……


龍砲の一機がその銃弾を精確に弾く


「おらよ!」


俺が右腕を払うともう一機が八の字を描くようにヘビーを攻撃する


まだまだ!


今度は両手を払う


すると、龍砲は二機ともがはしゃぐ子供のように激しくヘビーを攻撃した


「ぐあああはぁ!」


吹き飛ばされるヘビー


終わらせるか


『FINAL ATTACK RIDE・she,she.she,SHENLONG』


二機の龍砲は姿を変えて、大型の青龍刀へ


赤みがかった黒に輝く双天牙月Ver鈴を投げつけた


それは四方八方からヘビーを切り刻んだ


「ふ、ざけんなぁ!」


ちょうど、その台詞と被って撃ち落されたミサイルが爆発した

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IS (インフィニット・ストラトス) シャルロット・デュノア シルバーペンダント
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