小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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「これで、終わりか?」


オーガを何とか倒した俺は夏海に歩み寄る


「ま、まだよ……!」


『KAMEN RIDE・RIOTROOPER』


撃ち出されたのは量産型の戦闘用特殊強化スーツ


「騒乱の兵士」を意味するライオトルーパーだ


それも、5体


「数で押し切らせてもらうわ……」


「いいぜ、付き合ってやる。10秒間だけな」


『FORM RIDE・FAIZ・AXEL』



胸部アーマー・フルメタルラングが展開して肩の定位置に収まり、複眼は赤、フォトンストリームは銀色のシルバーストリームに変化しファイズアクセルフォームにフォームチェンジする



「なっ!?」


左手首にあるファイズアクセルのスタータースイッチを押した



『Start Up』



超加速モードに移行する


「好きにはさせないわ!」


『KAMEN RIDE・CAUCASUS』


モチーフはコーカサスオオカブト。基本カラーは金色の「黄金の仮面ライダー」


コーカサスを召喚


即座にクロックアップした


「邪魔くせぇんだよ!」


それでもファイズのアクセルには関係ない


コーカサスやライオトルーパーでも追いつけない速度で攻撃を続ける


『3』


終わらせてやる……!


左腰にあるライドブッカーからカードを取り出しバックルに挿入した


『2』


『FINAL ATTACK RIDE・fa,fa,fa,FAIZ』


デジタルカメラ型パンチングユニット「ファイズショット」を装備


『1』


アクセルグランインパクトをそれぞれ6体に叩き込んだ



『Time Out』


手を弾くように叩くと同時に


『Reformation』


の音声とともに通常のファイズへ戻る


「くっ……!」


次のカードを挿入しようとする彼女に俺は


『FORM RIDE・KIBA・BASSHAA 』


右腕が半漁人の魚になっている、基本カラー緑のライダー


キバのバッシャーへと変身


装備したバッシャーマグナムで大気中の水分と酸素を水の銃弾・アクアバレットを放った


銃を使用するライダーフォームの中で最も命中率の高いこの銃は


精確にディエンドライバーを弾いた


「諦めろ……お前じゃ俺に勝てない。今の俺には……絶対に」


自分でも驚くぐらい低い声だった


「なんで……なんでよ……!」


彼女は膝からガクッとうなだれた


震える拳を叩きつける


「なんで、貴方はそんなに強いのよぉ……!」


変身が解除された


そんな彼女は泣いている


「戦闘データは何度も見た……貴方の癖も理解した……なのになんで!」


俺も変身を解除する


グランドの隅で本音ちゃんと虚さん、山田先生が皆を介抱していた


下手に動かせないのだろう


「また……また、そうなの……!」


不意に彼女が口にしたその言葉


「また?」


俺が問うと


「そうよ……!折角、手に入れたこの力も……なんの役にも立たないじゃない!」


初めて発された怒声にも似た大声


それは、あまりにも衝撃的だった


「お前……まさか……」















「私は……転生者よ……!!」



視界がグニャっと歪む


転生者は……俺だけじゃない?


「こんなこと言い出して、また私は……!」


この口振りは……


「俺も転生者だぞ」


「……えっ?」


腑抜けた声だった


「いや、お前……一回……」


俺は彼女の前でしゃがみ込む


「私は……前世で苛められていたの……ひどかったわ。やっていた本人たちはそんなに大した事じゃないかもしれないけど……私には考えられないほどだった……


当時から、こんな性格でね……自殺しようとしたの……そしてマンションから飛び降りたわ。でも……」


「死ねなかった……いや、死んだが二回目の人生を手に入れた」


「ええ……今度は絶対に負けない。そんな力を手にしたかった。転生先なんてどこでもよかったわ……この……ディエンドの力を手に入れたから」


彼女の涙は乾いていた


「転生して数日は与えられた家で過ごしていた……そして一人の女が私に声をかけたの……」


俺はその名前を口にされる前に言った


もう検討はついている


「『亡国機業』スコール……」


「え、ええ……よく分かったわね……」


少し、驚いた表情の海東


「ああ。アイツには色々と世話になったからな……!」


拳を打ち付ける


「本当はこんなことしたくなかった……できるなら、普通の学校に通って、また苛められるようなら力を使う程度に考えていた……なのに」


奴お得意の口車に乗せられたのか……


本当にどこまでも……


「私は……どうすればいいの?……どこに行っても……力を手にしても……!」


またも瞳に涙を浮かべる海東


「言いたいこと、分かるぜ」


「っ……?」


俺の言葉に顔を上げた海東


「綺麗ごとでも夢も見れない明日なんて要らない……格好つけても何かを守れない力なんていらない……」


彼女は俺を真っ直ぐに見つめている


俺も見返した


「お前は……どんな明日を見たいんだ!お前は!何を守る力が欲しいんだ!」


肩を掴んで、怒鳴りつけるように叩きつけるように


「お前は!本当のお前は、何を望んでいるんだ!」


そう告げた


大きく目を見開く海東


何かに気づいたように……


何かを……見つけたように……



「一人で出来ないことなら、俺も背負ってやるよ……一人で出来ることでも俺が支えてやるよ……」


初めの怒り?


飛んだね〜


いや、人間なんてそんなもんだよ?


そんな俺は海東の頭に手を乗せる


「あ、貴方は……」











「俺は……お前よりずっと前から……通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」


そこで海東はふふっと笑い


「なぜか、台詞を取られた気がするわ」


「どうだろうな……」


なんだ、分かってんじゃん





「あら?士くん……また女の子を侍らしてるの?」


振り返る意味もない


だから、俺はゆっくりと立ち上がった


「スコール……!」


振り返った先には綺麗な金髪が揺れている


「は〜い。元気だったかしら」


手をひらひらさせて応じるスコール


「てめぇは……」


「私にそんな態度を取らないほうがいいわ。ねぇ?夏海さん?」


振り返る


すると、彼女は俺を思いっきり殴りつけた


「がっ!」


「神谷 士!」


海東の声


普通、殴った人間を心配そうな声で呼ばない


これは……


「そうよ。貴方にもした筋肉の神経回路の麻痺をこの娘にもしておいたの……貴方は精神が強すぎたせいで、上手くいかなかったけど……この娘は……」


立ち上がった俺を襲ったのはローキック


「ぐっ!」


続いては、顎を貫くアッパーだ


声にもならなかった


倒れこむ俺を見て海東は体を震わせていた


「大丈夫……だ」


それでも……いや、だからこそ俺は立ち上がる


「女の子に殴られた程度でへたるかよ……」


「神谷……士」


海東はディエンドライバーを握っていた


「逃げて……逃げて!」


引き金が引かれる


『KAMEN RIDE・DECADE』


ディケイドになり、銃弾をライドブッカーのガンモードで弾く


さらに、


『KAMEN RIDE・BLADE』


ブレイドになり、新たなカードを挿入しようとして……


「止まりなさい!」


スコールが告げた


「動けば、ここにいる娘はみんな死ぬわよ……」


皆……?


俺が振り向くと


三人のスーツを着た男が背後で銃を皆に向けていた


「ちっ!」


「さぁ、解除して頂戴」


俺は指示通り変身を解除する


「さぁて……貴方は頑張りすぎた。もう死になさい……」


またも海東は俺に銃口を向ける


「避けないで頂戴ね……避ければ、あの娘達は……死ぬ」


まずいな……


八方どころか十六方塞がりだ


どうするか……


「さようなら、通りすがりの仮面ライダーさん」


そうして銃弾が放たれそうになった瞬間








「「「ぐわ〜〜っ!!」」」



男達のうめき声


「なに!?」


スコールが意識をそちらに向ける


ここしかねぇ!


「海東……いや、夏海ぃ!」


走る


スローモーションのような感覚


「力抜いて、今一番何がしたいか!俺を本当に撃ちたいのか!決めやがれぇ!!」



走る


手を伸ばした


「私は……」


銃口はスコールに向いていた


「私は……今こそ……」


そうだ


それで、いい


「私は、今こそ呪われた過去を撃ちぬくわ!通りすがり仮面ライダーの2人目として!」


放たれた弾丸はスコールへと飛んだ


素早く、ISを部分展開してそれを弾いた彼女は舌打ちをする


「ふん!ここは退くわ」


「逃がすかよ!」


『KAMEN RIDE・DECADE』


そろそろ、いいだろ


「さようなら……」


「士!危ない!」


不意に届いた夏海の声に反応した俺は身を退く


すると、ミサイルが降り注いだ


「ったく!面倒くせーな!」


全て避けた先に見えたのはまたも無数のIS


「なんでこんなにISがあるんだ!」


「今はそこじゃないわ……皆が逃げる時間を稼ぐのよ」


おおおっ


優しいねぇ……


くるくるとディエドライバーを回して彼女はカードを挿入する


『KAMEN RIDE・DIEND』


「ほんならまぁ……やりますか!」


「ええ……撃ちぬくわ。私が私であるために」


もう、立ち直ったな……


「さぁ、ロマンはどこだ」


20を軽く越えるISの方へ、2人のライダーはゆっくりと歩みを進めた

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