小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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ベンチは重いムードだ


3−0


初回のチャンスを活かせず、返しの守備で二点追加


きついね〜


それでも、俺は声をかけた


「よしっ!点、取りますかね〜」


メットをかぶる


「士……」


箒が俺を見つめる


ふざけた声を出している場合かと……


それでも俺はバットを器用に回して


「俺ら一組が初戦で終われるかっつーの!」


「点差は三点だぞ!これからも相手の攻撃が止まらないとなると……」


箒の声に誰も何も言わない


「じゃあ、諦めるか?まだ二回だぜ?」


「え……?」


「諦めんの早すぎ……ってね」


皆を見渡す


「こっから勝ったら、俺ら、超凄くね?」


そう笑った


「士……」


「嫁の言うとおりだ!」


ラウラが立ち上がる


「あのスライダーは捨てろ!真っ直ぐにだけ意識を持つんだ!ベルト辺りに来た甘い球は絶対に打て!」


ラウラすげ〜


「しゃあ!ロマンはどこだ」











『二回の裏、一組の攻撃は四番、キャッチャー、神谷君。背番号2』


体を伸ばしながらホームベースへ歩き、左のバッターボックスに入る


俺、右投げ左打ちなんだ


「士く〜ん!!魅せろー!」

「よめー!」

「士ー!落ち着いてー!」


観客席から色んな声援が聞こえるが、一人だけ確実にわかる奴がいるな……


てか、ベンチからだけど……


そんなことを思いながらゆっくりと構える


ピッチャーも小さく振りかぶり……一球目を……投げた!!





スライダー!


俺は振る素振りだけ見せて、バットを引く


「ボール!」


変化量に助けられ、ボールに


二球目はどう来る?


バッターボックスの土を削りながら考える


スライダーか……ストレートか……


二球目を投じるピッチャー


これはまた、その球は内角をえぐるように差し込むスライダーだった


しかし、俺は軽くバットを回した


空振り


三球目


ここでようやくストレートを


しかし、外角へのボール球


カウント1エンド2


その四球目


スライダー


相変わらずキレのある球だ


変化することで真ん中へ来たが見逃す


「ふぅ……」


静かに息を吐いた


追い込まれた俺に投じられた五球目はボール球の





真っ直ぐ……!


俺は体とバットを伸ばしてボールに当てる


片手打ちだ


「抜けろー!」


思ったよりも打球に勢いがあり、三遊間を抜けた


『しゃあああああああああああ!!!』


割れんばかりの歓声が起こる


ファーストベースコーチの谷本さんに肘当てを渡す


「ナイスバッティン!」


「さんきゅ」


短く答えて、俺はリードを取る


『五番、ファースト、篠ノ之さん。背番号3』


続いて、バッターボックスには箒が入る


その初球……










俺は二塁へ走った


盗塁


なかなかのスタートだが、ピッチャーが気づき、すかさず軌道を修正


キャッチャーも素早く反応


大きく外されたボールを掴み、二塁送球


それでもショート、ティナが捕球するタイミングで俺はベースへ滑り込んでいた


「っし!」


思わずガッツポーズをした


歓声が上がる


「ナイスラン!!士!」


「いいぞーー!」


「よめー!」


……もう、何も言わんぞ


二塁へついた鈴が声をかけてくる


「いい、盗塁ね」


「へへっ!このままじゃ終われないからな」


「そう来ないとね!」


鈴はグラブを叩き守備位置へ戻る


箒への二球目は高く浮いたボール球だった


それでも箒はそれに食らいつく


タイミングがずれるが強い打球だ


一二塁間を抜けようかという打球













バシッ!!


またもグラブにボールが入る音……鈴だ


恐ろしいくらいの反応スピードで打球を追い、必死に腕を伸ばしたのだ


マジかよ……


素早く立ち上がり、ファーストに送球


その間に俺は三塁ベースを踏んだ


箒は悔しそうにメットを取り、地団駄を踏む


それでもワンナウト三塁


最高のチャンスだ


犠牲フライでも一点のこのチャンス


『六番、レフト、オルコットさん。背番号7』


安打製造機セシリアが左のバッターボックスに入り、バットを右手で掲げて左手でユニフォームの袖を引っ張る。狩人が弓をひいて獲物を狙うポーズ……


どこのメジャーリーガーだ……そう言い得ざるをえない


それでもセシリアの目は真剣だ


その第一球


大きく曲がるスライダー


初球からきたか……!


セシリアからすれば、内角を攻められるスライダー


これは見送るしか――― 




カーーン!!


大きな音を立てて打球はピッチャーと二塁の頭を越えてセンターの少し、左側に落ちる


……すげー


思わず、手を叩きながらホームへ戻る


ナイスバッティン


あのスライダーを初球で?


セシリアは一塁止まりだ


それでも3−1


一点を返す



「ほらほらっ!まだ始まったばっかだぜ!」


ベンチに駆け寄って声を出す俺


いつの間にかベンチのムードもよくなっていた


一塁ベースでは、セシリアが優雅に見えるポーズを決めている


続く八番、サード、鷹月


彼女への一球目は外角へのストレートだった


初球から振っていった鷹月だが惜しくも空振り


二球目はスライダーだったがその変化量が仇となりボール


続く三球目もストレートが高く浮き、ボールに


バッティングカウント、ワンエンドツー


鷹月が気合を入れるため大きく肩を回した


次の球は……ストレート内角低め!


無理に打ってしまった鷹月は打球を詰まらせサードへ小さく浮かす


サードも難なく取り、セカンド送球


鈴もボールを掴んで一塁へ投げた


この試合二度目のゲッツー


それでも、一点返したのは大きい


そして、迎えた三回の表


清香ももう点を与えるつもりもないだろう


小走りでマウンドへ向かいその気合いを魅せる


『三回の表二組の攻撃は、3番、レフト……』


しかし、始まるのは三番からのクリーンナップ


三人で抑えるのは難しいかもしれない


「清香!!切り替えて!」


「打たせていけ!」


声を受けながら投げた第一球


低い、低いストレートのストライク


いいコースだ……!


続く二球目もインコースのボール気味のストレート


これは相手が良かった。バットを回してくれたのだ


これでツーストライクノーボール


清香に要求した最後の球は……外角高めのカーブ


完全にタイミングを外された三番は思いっきり空振り、三球三振


「っしゃあ!!」


グラブの背を叩きながら清香が吼える


『四番、ファースト……』



来たか……


俺は思わず、顔をしかめる


先制打を放った四番はランナーのいないこの状況でも長打がある


内外野を後ろに下がるように指示し、清香がモーションに入る


その初球……


ガッキーーン!!


またも大きな音


それは後ろに下がっていたセシリアの真ん前でワンバンする


これで二打席連続のヒット……しかも、どちらも初球だ


五番が左のバッターボックスに入る


ワンナウト一塁


五番ということもありバントはない


四番は体が大きいこともあり、盗塁もなければゆさぶりもただのブラフ


気にせず投げろ……清香


その初球はカーブだ


インコースをギリギリついた球はストライクとの判断


二球目は外角へストレート


これはボール


続く三球目


少し、詰まった打球がピッチャーの清香を襲う


ピッチャー強襲の打球


清香は取れるはずもなく、センターへ抜けるかと思われたが……


「いい加減に……しろっ!」



そう叫びながらラウラが滑り込む


その球はラウラのグラブに収まり、瞬時に


「シャルロット!!」


叫びながら、シャルへグラブトス


二塁の手前で待っていたシャルはその球を受け取り、二塁踏んで一塁送球


体を伸ばしてそれを掴んだ箒はマウンドへボールを転がし、ベントへ下がる


割れんばかりの歓声はラウラに向けられた


セカンド、ラウラの好プレー


クリーンナップを塁に出しさえしたが三人で終わらせたことはかなりでかいだろう




『三回の裏……一組の攻撃は……八番、ライト、布仏さん』


「はいさ!」


なぜか返事をしながらフラフラとバッターボックスに入った本音ちゃん


大丈夫かよ……


そんな初球


相手も油断していたのだろう


軽いストレート


コースはいいが、球威を感じないその球を本音ちゃんは






ガンッ!!


サードを強襲する強烈な当たりになった


サードはグラブを弾き、ボールはファールゾーンへと転がる


その間には本音は悠々と一塁を踏んでいた


「「「っしゃーー!ナイスのほほんさん!!」」」


皆が褒めると



「いや〜、てれちゃいますな〜〜」


と、頭の後ろを撫でる


ブレないね〜


だが……


『九番、ピッチャー、相川さん』


ここでは迷わず、バントの指示


初球を上手く勢いを殺して転がした


本音ちゃんは二塁へ到達


ワンナウト二塁


『一番、セカンド、ボーデヴィッヒさん。背番号4』


打順は一番帰ってラウラ


これからの打順を考えれば、かなりいい働きだ


ランナーを抱えた状況での初球はまたもスライダー


「一度打てた打球だ……二度目も……当てる!!」


思いっきり引っ張りライト前まで飛ばした


守備でもファインプレー、打てば二打席連続ヒットと絶好調なラウラ


これでワンナウトランナー、一塁三塁


最高のチャンスだ


次のシャルは厭らしく粘り、ファールを挟んだ8球目……カウント、ツーストライク、スリーボールからの九球目


ここはシャル」の選球眼が勝った


フォアボールだ



これでワンナウト、ランナー、満塁


ここで三番の櫛灘だが


チャンスに弱いのか打球はショートの深いフライに




『四番、キャッチャー、神谷君。背番号2』


ここで、俺


打たないと男じゃないだろう……


ゆっくりと構えた


初球は高めのストレート


見送り、ボール


次の二球目


俺の狙い球はスライダー


自信のあるであろうその球を……打つ!!


そして、投げられたのは内角へのスライダー


これを流し、三遊間を抜けて、レフトへ


本音ちゃんラウラが走る


本音ちゃんは悠々ホームへ


三塁を回ったラウラはレフトのバックホームで……



アウト


一点は返したもののこれで3−2


同点に焦ったか、ラウラも反省を隠さなかった


それでも3−2


二組リードのままゲームは中盤へと入る

-78-
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