小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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アリーナの通路


暗がりの向こうに見える光に向けて俺と、夏海は歩みだす



遠くから聞こえる歓声と、少しの緊張が入り混じり、心を高揚させた


「夏海……」


隣を歩く、相棒に声をかける


「何かしら?」


いつもと変わらない少し冷めた声


しかし、どこか今日の彼女の声は胸の高ぶりを抑えれていなかった


「後ろ……預けたぜ」


俺は前回、ラウラと戦った際に癖や対策を立てられている


早めに彼女を倒して、シャルの相手をする夏海を援護しに行く戦法だ


「任せなさい」


夏海は優しく微笑んだ


「貴方の背中は、私が……私の背中は、貴方がね」


「おう」


そうだ……


同じ仮面ライダー同士


ライダーに変身できる男と、召喚できる女


この二人が組んで負けるわけがない


俺たちはグランドへ伸びる通路の最後の曲がり角を真っ直ぐに進む


すると……


「士くん!海東さん!」


山田先生がその曲がり角の奥から駆け寄ってきた


「どうしたんですか?」


俺は、心を落ち着けた静かな声で問うた


山田先生は息を切らしていて、その度に大きなそれが揺れる


「はぁはぁ……実はですね……大変なお知らせがあるんです!」


息を整えた先生は……


「デュノアさんとボーデヴィッヒさんが棄権しました」


そう告げた


「「え?」」


夏海と声が重なる


何故だ?


昨日は対策を立てると気合を入れていた二人なのに


棄権なんてありえない


「いえ、棄権というよりは棄権にしました」


と、山田先生が続ける


「どういうことですか?」


先生の発言に俺は首をかしげる


何があった?


まさか、何かの事件に巻き込まれたか?






















「実は、二人して風邪を引きまして〜……今日はお休みです!」


「はあああああああああああああああああ!?」

「えええええええええええええええええええ!!」


おい!


何か、いい感じで描写してた俺の心情返せよ!


なんだったんだよ!


『後ろ、預けたぜ』とかめっさ恥ずかしいじゃん!!


うわ〜〜〜!!


しかも、風邪って


「なんか、二人して長風呂して40度のお熱です」


「あいつ等ああああああああああああああああ!!」


お見舞いなんか絶対に行かん!


「ははは……無駄に気張ったわね」


夏海も渇いた笑みを浮かべて不気味に笑っている


「なので4回戦はシードで2時間後に、5回戦やってもらいますね」


「は、はあ……」


なんか、凄く疲れた


「では2時間後、お願いしますね〜」


山田先生は試合データの分析もあって忙しいのかトコトコ可愛らしく歩いていった


「夏海……」


「何かしら?」


「もう、疲れたよ」


「奇遇ね……私もよ」


















そうして、訪れた2時間後


「今度こそ……」


暗がりの向こう―――もう、いい


「相手は……そういえば、知らされてないわね」


夏海がドライバーをガチャッと構えながら首をかしげた


「そういや、そうだな……まぁ、なんとかなるだろ」


「それもそうね」


グランドに出る


歓声が俺の耳に届く


「さ、ロマンはどこだ」


『KAMEN RIDE・DECADE』


「きっと、ここよ」


『KAMEN RIDE・DIEND』


ディケイドとディエンドに変身した俺たちが見た相手は……






「箒……と千冬姉!?」


「……なんで、織斑先生が」


前方には緊張した表情を浮かべる箒と


微笑を浮かべた千冬姉が腕を組んでいた


千冬姉は訓練機の打鉄


スペック的には、訓練機の中では一番性能が良く


特に、加速力と攻撃力に特化している


その反面、防御力が高くなく、武器もレーザーブレードとエネルギーナイフに自動拳銃だけと心許ないが


それをカバーするようにシールドエネルギーの増量、武器もシャルのラビットスイッチ並に早い


スマートなボディアーマーのため、扱いが困難なのが最高の弱点だ


しかし、使うのが千冬姉ってのはな〜


「何、弟がどれほど強くなったのかを確かめてやろうと思ってな……」


ニヤニヤと嬉しそうに笑う千冬姉


「箒……」


隣の箒に声をかけると


「士……助けてくれ。プレッシャーが……」


箒〜〜〜〜!!


しっかりしろぉ!


「では、始めようか……」


ブザーが鳴り響く


「……いいぜ。やってやる」


「士?」


夏海が俺を見上げた


「男ってのは、負けられないときがあるんだよ!」


今回は、一撃一撃が重い


俺も素早く動きたいが、その反面やはり防御力に欠ける


ならば……


俺は重く行く!


『FORM RIDE・DEN-O・AX』


電仮面は斧型のレリーフがレールを伝い眼前に固定。外側が左右に展開して「金」の字を象っている。オーラアーマーは単純にソードフォームの前後が入れ替わった状態


電王のアックスフォームだ


「ふふっ……なら、頑張りなさい」


夏海は静かに俺の肩を叩いて、箒の方へと駆けた


ありがとよ


「さあ、勝負だ。千冬姉」


「ふん、かかって来い」


千冬姉はレーザーブレードを構えた


デンガッシャーを組み立てて、アックスモードへ


「うおおおおお!」


振り上げて走る


「おらっ!」


アックスの一振りは重い


ISの装備では防げないはずだが


「うむ……確かに重い。しかし!」


千冬姉は受け止めた


片手で


「まだまだだな!」


千冬姉は受け止めていたブレードの刃を右に反らし、俺の状態を不安定にさせる


よろけた俺に振り下ろされるブレード


俺は、必死に体を曲げて、デンガッシャーをぶつけた


火花が散る


さらに振り下ろす、振り下ろす、振り下ろす


何度も何度も


しかし、千冬姉はその戦斧の一撃一撃を確実に受け流した


「遅いぞ!」


千冬姉はブレードを粒子化して、再び粒子を形成


現れたのは、自動拳銃だ


その12mm弾が放たれる


『ATTACK RIDE・TSUPPARI』


その弾丸を高速でつっぱりして叩き落す


「ほぉ……遅いと言ったのは取り消してやろうか……」


千冬姉は再びブレードを形成


俺に斬りかかる


『FORM RIDE・W・HeatMetal』


体の右側は赤色、左側は銀のWヒートメタルへと電王は姿を変えて、メタルシャフトを装備する


「そらっ!」


高熱を纏ったメタルシャフトでブレードを叩きつける


「まだまだ!」


一瞬の隙を逃さない


否、逃せない


『FORM RIDE・W・LunaJoker』


右側を黄、左側を黒のルナジョーカーへ


体の右側をくねくねと伸縮させながら、鞭のように撓る右腕、右脚で攻撃する


「……やるな」


千冬姉は呟き、ナイフを投じる


それすらも叩き落とした俺はカードを挿入


『FORM RIDE・W・CycloneTrigger』


サイクロントリガーへとフォームチェンジして、トリガーマグナムを装備


疾風を伴った弾丸を放つ


千冬姉もナイフで応戦


銃撃戦のようになる


それにしても千冬姉は凄ぇな


エネルギーナイフでサイクロントリガーの銃弾に付いてこられるなんて


なんて、考えてる一瞬の隙


それを、千冬姉は見逃さなかった


「っ!しまっ!」


イグニッションブースト


瞬時に加速して俺に体当たり


ごろごろと転がった俺に千冬姉はブレードで追撃を量る


まずい!


『FORM RIDE・FOURZE・MAGNET』


「エヌ、エス、マ〜グ〜ネ〜ット。オン」


磁力属性形態。基本カラーは銀色、複眼の色はオレンジ色、シグナルの色は黄色


黒一色となったヘルメットとアーマーの一体化・両腕に装着された手甲・左右の肩や大腿それぞれに走る青と赤のライン・背中のブースターの変形と、他のステイツと異なりシルエットが大きく変化するフォーゼ・マグネットステイツへ


両肩の専用モジュール・N・Sマグネットキャノンを操作して、千冬姉を近づけさせない


「ぐっ!」


またも自動拳銃を構えるが


「させないぜ」


マグネットステイツの能力でそれを吹き飛ばす


「なっ!?」


千冬姉が初めて驚きの表情を浮かべた


「さぁ、始めようか」


俺は砲撃を開始


千冬姉も背後へ回ろうと動き回るが砲撃のスピードに追いつけず、ダメージが溜まる


『FINAL VENT』


低い音声が鳴り響き、目を向けると


夏海が召喚したであろう、仮面ライダーゾルダがカードを挿入していた


バッファロー型モンスターで、ミノタウロスと二足歩行のロボットを融合させたような姿をしている『鋼の巨人マグナギガ』


そのマグナギガの背中に専用武器「マグナバイザー」接続し、マグナギガの全身から大量のミサイルやレーザーを一斉射撃する


「ぐわああああ!!」


箒は全てを防げずに、シールドエネルギーを0にした


「なら、俺も……」


『FORM RIDE・OOO・BURAKAWANI』


『ブラカ〜ワニッ!』


頭部はコブラ、身体はカメ、脚部はワニのオーズ爬虫類系コンボ。基本カラーはオレンジで全身が橙色に輝くとともに亀の甲羅のようなエフェクトに包まれた


地面を滑るように移動し、ノコギリ状に発達したラインドライブ・ソウデッドサイザーにエネルギーを送り、蹴撃に合わせてオレンジ色のワニの頭部を模したエフェクトを放って蹴りを入れた


「はあああああああ!」


「ぐっ!」


連続で蹴りつける


しかし、千冬姉はナイフを脚部に投じる


「うおっ!」


その隙に身体に剣戟を叩き込んで距離を開けるが……


「残念だけど、今の俺には一拍でもあけないほうがいいぜ」


ダメージが一瞬で再生される


これがブラカワニの固有能力『瞬時再生』


身を流れる生体強化物質・ソーマ・ヴェノムのお陰で俺は受けたダメージを皆無にできるのだ


ここだ……!


「夏海!笛貸して!」


箒を倒して、通路の方まで俺と千冬姉の戦闘の邪魔にならないように待機していた夏海に叫ぶ


「笛?……ああ、そういうことね」


『KAMEN RIDE・IBUKI』


威吹鬼を召喚して、鬼面のついたホイッスルのような笛『変身鬼笛 音笛』を奪うように掴み取り俺に放る


俺は千冬姉が繰り出す、ブレードの剣戟を両前腕部にカメの甲羅を模した盾・ゴウラガードナーで防いで


ラインドライブ・ソウデッドサイザーで蹴りつけた


その隙に笛を受け取る


「って、小さくない?」


「文句言うの?」


「何にもございません」


なので、ディエンドライバーこちらに向けないでください


では、ご清聴あれ


『〜♪〜♪〜♪』


笛を吹き始めた


すると、後頭部の弁髪をコブラとして実体化させて操る特殊技「カぺロブラッシュ」を発動


コブラは千冬姉を襲う


「ぐっ!くそっ!」


纏わり着かれて、無理矢理振りほどこうとする千冬姉


だが……


「終わりだ」


動けない千冬姉を見て俺はカードを挿入する


『FINAL ATTACK RIDE・O,O,O,OOO』

『スキャニングチャージ!』


「ハアアアアアアアアアア、セイヤッー!」


両足蹴りの体勢でスライディングし、3つの橙色のオーリングを潜りながら千冬の目前で飛び上がり、より巨大なワニの頭部を模したエフェクトが発生し、挟み蹴り「ワーニングライド」を叩き込んだ


『OOO』の文字が浮かび上がる


「ふぅ……」


座り込んだ千冬姉の元へ変身を解除して歩み寄った


「お疲れ、千冬姉」


「ああ、久しぶりに身体を動かした」


差し出した俺の手を握って、千冬姉は立ち上がる


「それにしても、強くなったな///」


おっ?この人が褒めるなんて珍しい


頑張ったからな〜


「そうかな……ま、千冬姉も俺が守ってやるからな!」


「ふ、ふん!まだまだ、甘いところはある!これからも訓練に励むんだな!///」


顔を赤くして、立ち去る千冬姉


恥ずかしかったのか?


「多分、違うわよ」


夏海が肩を落として、呟いた


「心読むなよ」


半眼で睨む


歓声はまだ、止みそうにない

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