小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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決勝戦が終わり、無事に大会自体を終えた夜


第七アリーナと八アリーナの二つで宴会が行われた


これには、教師も参加


食堂のおばちゃんの優しい味から


国際的に活躍している一流シェフが作る絶品まで


色とりどりで各国の特色ともいえる料理が並ぶ


夜とはいえ、スポットライトとアナウンスから流れる楽しげな音楽のお陰で、昼間のような楽しげなムードに包まれる学園


俺は、少しそんな第七アリーナの隅に即時設置されたベンチでコーラを飲みながら空を眺めていた


クラスの皆と適当に食べたので、腹は膨れている


「ふぅ……」


息を吐く


空は暗いが星達は輝いている


喧騒は心地よく響き、俺はまた微笑を浮かべた


「あら、士さん。こちらにいましたの」


セシリアがキレイな金髪を揺らして、こちらに歩み寄ってきた


「よっ。楽しんでるかよ?」


「ええ、とても」


優雅に微笑んで彼女は俺の隣に座った


「お疲れちゃん」


俺はセシリアの頭を撫でる


「っ!///コ、コーラがもうありませんわね!わたくし、いただいてきますわ!」


そう言って彼女は俺のコップをひったくるように掴み、走り去った


今度は、ファンタでも飲みたかったんだけどな……


「士〜」


「づがざ〜」


うわっ!


お化け!?


妖怪!?


ゾンビ!?










あ、シャルとラウラだ


「うううぅ……戦うことなく、終わっちゃったよ〜」


そりゃ、風邪だったからな


「づがざ〜」


「あんなけ張り切って、長風呂とかすんなよ」


俺が半眼で睨むと


「だって〜」


「づがざ〜」


だってじゃないよ……


「ったく、次は気をつけろよな?」


「うん……」


「づがざ〜」


「うるせえええええええええええええ!!ってか、こえええええええええええ!!」


堪らず叫んだ


「さっきから、怖いわ!俺の名前はづがざじゃなくて、つかさ!」


「うううううう」


呻くなよ


「ぐすん」


鼻を啜りながら彼女は俺の膝に座った


「……ったく、しゃあねえな〜ラウラはよ」


俺は仕方なく、ラウラの頭を撫でる


「……///復活!」


両手を振り上げてラウラは叫んだ


「そうかい、よかったな」


「うむ!嫁も撫でてやろう!私からの祝いだ」


そう言ってラウラは俺の頭を不器用にも必死に撫でる


可愛い……


「ぼ、僕も……!」


シャルも俺の頭に手を伸ばすが……


「むっ!シャルロットはいい!」


と、ラウラに弾かれた


「ええええ〜〜〜!!」


シャルは目を丸くする


「ずるいよ!ラウラばっかり!」


「夫婦の特権だ!諦めろ!」


「い〜や〜だ〜!」


……珍しいな、シャルが駄々こねるなんて


てか、俺の頭で争うなよ


で、ラウラ降りろよ


そろそろ、おも―――


ベシッ!


「痛っ!」


「なんだ?文句でもあるのか?」


滅相もございませんラウラさん


やめて、睨まないで


「ふんっ!」


あ、どっか行っちゃった


「ぼ、僕だって」


シャルはまたも俺の頭に手を伸ばそうとする


しかし……


「やっほ〜士!優勝おめでとう!」


「うむ、さすがだな」


鈴が俺に飛びついてきて箒は俺の隣に座った



「うわああああああああああん!」


あ、泣いてどっか行っちゃった


「ふん、甘いのよ」


「渡さんぞ〜」


どうしたよ、怖いぞ?


「それにしても、コテンパンにされたわ〜」


「私もだ……まぁ、海東にだが……」


箒が苦笑する


「そんなことないぜ、箒。十分強かったよ」


俺は隣の箒を撫でてやる


「むぅ……私は!」


鈴が頬を膨らませて、俺の頬をつねる


痛い痛い


「ん。お前も腕上げたな〜」


鈴の頭も撫でてやる


「えへへへへへ///」


頬が緩む鈴


そんな、俺たちに近づく二つの影


楯無さんと簪だ


「はぁ〜い。士くん……仕返しにきたわよ〜」


「なんでですか!」


「こんばんは、士……仕返し、しに来ました」


「来ないで!?」


なんで、二人して怒ってるんだよ!


「もうちょっとだったのに〜」


「夏海さんとは、いい空気に……なるし」


楯無さんはむくれてる


簪も頬を膨らませて俺をジト目で睨んだ


「え、いや……あれはさ、ほら……ね?」


俺が取り繕うとあたふたしてると


「そ、そうだ!士!最近、夏海といい感じらしいじゃない!」


鈴も参加


「ほぉ……詳しく聞かせてほしいな」


箒さん、後ろに立っているのは、鬼ですか?



え?千冬姉?


なるほど……


ん?


「千冬姉!?」


「どういうことか、聞かせてもらおうか」


え?まさか、ヤバイ?


「そうだよ!僕は断固、説明を要求するよ!」


あ、シャル


「づがざ〜」


あ、ラウラ……復活してる


「士さん?わたくしがコーラをもらってきてる間に……うふふふふふ」


セシリア、その笑いやめて……


「「「「「「「「覚悟ぉ!!!!!」」」」」」」」



ギャアアアアアアアアアアアアア!!










なんとか、アリーナを抜けて中庭まで逃げた俺は人影を見つけた


近づいていくと


「夏海」


夏海が、夜のベンチに一人


「あら、楽しんでるかしら?」


夏海が微笑みながら、俺に尋ねた


「ん、いやまぁ……ちょいちょいな」


「ふふっ、その調子だと「また」かしらね」


夏海はそう言ってまた微笑んだ


「お前といると楽でいいよ」


「え?////」


夏海が顔を赤くして、隣に座った俺を向いた


「気楽だしさ……こっちからむしろ絡みたくなる感じ?」


「ほ、褒めすぎよ……///」


顔赤くして、可愛いな


「あ、これ……」


彼女が取り出したのはケータッチ


もう、シアンからマゼンダに色を戻している


「ありがと……助かったわ」


「おう」


俺は受け取りながら応えた


「ごめんな」


自然と謝っていた


「何がかしら?」


「ま、まぁ約束のことだよ」


俺はそっぽを向く


気恥ずかしいな〜


「もう、気にしてないわよ……だから、忘れないでね」


「はいよ」


俺は返事して、また空を仰いだ


キレイだな


「綺麗ね」


夏海が小さく漏らした


「そうだな」


俺も当然否定せず、返す


月明かりが二人の影をどこまでも伸ばしていた

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