小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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「え?」


さて、こんにちは


神谷です


大会も終わったある日の放課後


箒と訓練していた俺はその終わりに控え室で彼女に尋ねられた


「いま、なんて?」


しかも、その話が大きい


大きいんです


「だ、だから!黛先輩の姉が専用機持ち……ようするに私たちにインタビューをしたいと言って来たのだ!」


そんなに怒るなよ……


「インタビューね〜」


待てよ……


「黛先輩の姉貴ってさ……まさか……」


「ああ、確か……渚子さん……だったか?」


「あああああああああああああ!!」


やってしまった〜!


できれば会いたくない〜!


うわああああああああああああ!!


そう、俺は更識家へいらっしゃ〜いで起きた事件のとき、渚子さんと対面している


しかも、めっちゃ迷惑かけた〜!


「い、嫌か?」


「ヤダ!」


凄い罪悪感するもん!


俺は会わんぞ〜


「え、ええと……この前の事をチャラにして欲しければ来い……こういえば士は来ると言っていたが……」


「あああああああああああああ!!」


やってしまった〜!


借り作ってた〜!


「……受けます」


泣きそうだ


お詫びの品持って行かないと


「そ、そうか!黛先輩の話だと豪華一流ディナー招待券が報酬らしいぞ!お前も行くだろう!?」


おっ……そいつはいいな


「へぇ〜。箒がいいなら良いけどな」


「当然だ!私は柔軟な思考の持ち主なんだ」


そう言ってその大きな胸を揺らす


「こういう話は嫌がると思ったんだけどな……」


ボソッと呟いた俺の言葉は


「つ、士とディナー……士とディナー」


と呟いている箒には届かなかった


士にも彼女の言葉は届かなかったが……










そうして、迎えた取材の日


日差しは暖かく、秋の風は涼しい


いい天気だ……


「もうすぐか?」


隣を歩く箒に尋ねる


「ああ、この辺りだな」


そう答える彼女の声は上擦っていた


どんだけ楽しみなんだよ……


「それにしても、その服いいな」


彼女の今日の服装と言えば、黒のミニスカートに白のブラウス。アウターに薄手の秋物パーカーコート


明るいタンポポ色が目に優しく映る


「そ、そうか……に、似合うだろうか///」


上目遣いで尋ねる箒の頭を撫でてやった


「ああ、似合ってる……可愛いと思うぞ」


「か、かわっ……!///」


ボッ!という爆発音と共に彼女の頭は耳まで赤くなる


「い、行くぞ!」


「あ、おい!待てって!」


早歩きしていく彼女の背中を俺は小走りで追った












「どーも。神谷くん……この前は随分と楽しかったわね〜」


しばらくして、たどり着いた事務所


取材のためと言われ、通された部屋は大きく小さなソファが3つ


「はは……ども」


苦笑いで俺は答えた


この人、怖い


隣の箒も怖くてなにがあったか聞いてこなかった


「あの後、私がどうなったか知ってる?教えて欲しい?教えてあげようか?」


「け、結構です!は、話をす、すす、進めましょう!」


ヤバイ


この人ヤバイ!


「はぁ〜。そりゃさ、妹の頼みだし?妹の友だちの頼みなんだし、聞いてあげたいなとは思ったわよ?」


変なスイッチ入った〜!


語りだした〜!


「でもさぁ!爆発させる!?普通!!」


「し、しないです……ねぇ」


もう涙目じゃん


「めっちゃ、怒られたわよ!」


「ごめんなさい……」


うううう……アレだって事情があって


「ったく、今日は根掘り葉掘り聞くから正直に答えるように」


「俺の全てをさらけ出します」


「それでよし」


渚子さんは満足したのか、箒に向き直った


「ごめんね〜。えっと、雑誌『インフィニット・ストライプス』の副編集やってる黛渚子よ。今日はよろしくね?」


「篠ノ之箒です」


箒も恐縮そうに答えた


「じゃあ、早速やってこうか!その後に写真撮影するからよろしくね」


渚子さんはICレコーダーを取り出した


「ではまぁ……神谷くん。早速だけど、女子高に入学した気持ちは?」


眼鏡をくいっと上げた


「いきなり……」


「読者のアンケートでも君への特集リクエスト、すっごく多いんだから」


「えーと……すっごい数の女の子がいます」


「分かってるわよ!それ、アメリカにはすっごい数の外国人がいますって言ってるのと同じじゃない!」


「あと、男子トイレありません」


「だから、分かってるわよ!女性専用車両があるのに男性車両がありませんって言ってるのと同じよ!」


凄い突っ込みだな……


俺は半ば、感心しながら考える


でも、気持ちって言われてもな〜


「まぁ、話してることが分からなかったり、気遣ったり……結構、大変ですよ」


「どんな話が分からないの?」


「服の事だったり、買い物の事だったりとかは、俺では分かりかねます」


「なるほどね〜。たしかにそれはあるかもしれないわね」


渚子さんはふむふむと頷いた


「篠ノ之さんには、お姉さんの話を聞きたいわね」


「姉のですか……」


箒が首をかしげる


「お姉さんから、専用機をもらった感想は?どこかの国家代表候補になる気はない?」


「紅椿は感謝してます。今のところは代表候補に興味はないです……」


相変わらず、真面目だな〜


固いよ、箒さん


「オーケー、オーケー。神谷くんと篠ノ之さんはどっちが強いの?」


「俺です!」


間髪いれずに答えてやった


これは譲れないな〜


「そうなの?」


渚子さんが箒に訪ねた


「ええ、まぁ……恐らく学園最強……いや、かなり腕は立つのではないかと」


「と、言うと?」


箒はいいのか?と俺を見上げる


いいんじゃない?と肩をすくめた


「既に学園最強の楯無先輩や、イギリス、アメリカの国家代表……最近では織斑千冬さえも倒しましたから」


「ええええええええ!?あの楯無ちゃんだけじゃなくて、織斑千冬も倒しちゃったの!?」


「ええ、そうですそうです。ええ……はははは」


ニヤニヤが止まらない


いや〜、気持ちがいいね〜


「神谷くんは、どっかの国家代表にはならないの?」


「う〜ん。スカウトは来ますけどね……まだ、考えてないですね」


「そう……いいこと知ったわね。これはいいネタよ」


渚子さんは目を丸くしていた


「え〜と、二人から来年入学する後輩に向けてなにかあれば」


そろそろ締めか?


「箒、先ヨロ」


「うむ……厳しい訓練が待っている……一筋縄ではいかないことも多い。しかし、私たち先輩が必ず手助けをしてやる!不安だけでなく、希望と期待も持って共に頑張ろう……ですかね」


いいこと言うな〜


ジーンと来たわ


「いいわね〜。はい、神谷くんからは」


おっ、俺か……


「ま、いいことばっかじゃないけど頑張ろうぜ。通りすがりの仮面ライダー、神谷士はいつでも皆の味方だからな!」


「はい、ありがとう……じゃあ、地下のスタジオ行きしょうか。更衣室があるから着替えてね。そのあとメイクして、それから撮影よ」


本格的だな〜


「へ〜い」


俺は答えて、歩みを進めた





箒side-


士と別々の更衣室に入った箒は、着替える衣装には目もくれず胸の前で両手を重ねた


「はぁ……」


漏れるため息は桜……いや、真ッピンクだ


「(神谷士は、いつでも箒の味方……か。あいつめ!あいつめぇ!)」


にやにやと頬の緩みが止まらない箒


かなり、自分に好都合な聞き間違いだが、彼女には関係ない


「そうか……そうかぁ……!ふふふ、うふふふふ!」


上機嫌でモデルの衣装を手にした彼女は動きを止めた


さっきまで緩んでいた頬も固まる


「う……。こ、これは……」


かなり大胆に胸元が開いたブラウスに、フリルが可愛らしいミニのスカート、それにショート丈のジーンズアウターだった


「こ、これを……私が?」


戸惑いながらも、意を決した彼女は自分のブラウスのボタンを外した


…………………。


……………。


……。


「(つ、士はまだか?この格好、妙にすーすーして落ち着かないのだが……)」


スタジオの椅子に腰掛けたまま、箒は身をよじる


その格好はプロのメイキャップアーティストが施した薄化粧によって見間違えるほど綺麗になっていた


先程から、アシスタントやカメラマンの男性が熱っぽいため息を溢している


だが、彼女には関係ない


もし、仮にだが


士がこの格好を褒めてくれたら、今日の夕食は私が誘うんだ!私が!


そう、心の中で呪文のように唱えていたからだ


すると、通路のメイク室からスタジオスタッフの声が届いた


「神谷士くん、入りまーす」


ドキッ!


つ、士が来る……


箒は前髪を弄って平然を装うが、顔は赤い


「ふぁ〜あ。なんか、眠たくなってきた……昨日、簪の部屋でゲームしてたのが夏海にばれて怒られてたからな〜」


なんて、欠伸しながらぼやく彼はカジュアルスーツをバッチリ着こなしていた


恋しているというのを抜いてもかなり格好いい


今度は女性のアシスタントから熱っぽい吐息がこぼれる


「つ、士……」


「お、待たせたな」


「う、うむ……」


箒は指をもじもじと弄りながら、やっとの思いで発した言葉は小さいものだった


「に、似合っているぞ……その、格好いい」


「さんきゅ……箒こそ……ま、まぁ可愛いぞ」


照れた顔で士は言う


か、かわっ―――!!


箒は思わず、ガッツポーズを小さく取ってしまった




士side-


いや〜、びっくりしたな〜


箒、めっちゃ可愛いですやん


ミニスカート、エロイし


なんて、下心満載で彼女を見てしまった俺も正直、そんなの関係なく、見惚れてしまった


メイクってすげ〜


「神谷くん、篠ノ之さん。もっとくっついて、もっと」


そう促されて俺は緊張気味に箒に近づく


箒も顔を赤くして寄り添うようにしてきた


うわ!マズいって!


「こんなもんすかね?」


俺は声が裏返りそうなのをなんとか、耐える


「あー、ダメダメ。もっと!もっと!熱くなれよ!」


「なんの話だよ!」


なんで、修〇やねん


「なんか、違うのよね〜……神谷くん、篠ノ之さんに腰抱いて」


「は?」


何言ってんだ?


そんなことしたら……


「こ・し・を・だ・い・て!早く!」


「ひいいいいいい!!」


この人こわい〜


情けない声を出しながら、俺はゆっくり箒の腰に手を回す


箒も身を預けてきた


「(うっ……おいおい)」


バニラの甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる


箒は上目遣いで俺を見つめた


「お、落ち着け……落ち着いて」


俺は繰り返してそんな言葉を心の中で唱える


「なんだかな〜……あ、篠ノ之さん……神谷くんの首に手、回してみようか……そうそう!いい感じ」


箒が俺の首に手を回す


顔と顔との距離、およそ10センチにも満たない


こ、これは……


引き、込まれ……る


カシャッ!


突然のフラッシュにはっと我に返る


「いい絵、撮れたわ〜。はい、お疲れ様……その服あげるから、持って帰っちゃって〜」


渚子さんはそのままスタジオを後にした















「緊張、したな」


「そ、そうだな」


帰り道


俺と箒は少し距離を開けて、歩いていた


「……」


「……」


無言辛い


でも、声かけづらい


そんな状態が続いている


「つ、士!」


不意に箒が声をかけた


「ど、どした?」


俺も震えそうな声をなんとか、持ちこたえる


「そ、その……よかったら、食事にでも……どうだ?」


箒が俯きながら小さな声で言った


そういや、緊張解けて、腹も減ったな……


そう思うと自然と


「んじゃ、行こうか」


そう、箒の手を引いていた


「あ、ああ!」


箒もまた明るい笑顔でついてくる


秋の夕日は2人を明るく照らす

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IS <インフィニット・ストラトス> ポス×ポスコレクションVol.2 BOX
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