小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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ど〜も、神谷士です


鈴に屋上へ呼び出されました


土曜日の今日は午前までの授業


昼飯も食べて今から、ゆっくりしようと思ってたのに


ったく、寒いしさ〜


屋上への階段を上がり、重いドアを開ける


鈴は既にベンチに座っていて、俺に気づいたのか駆け寄ってきた


「よぉ、待たせたな」


手を振りながら、俺も歩み寄る


「お、遅いわよ……待ったじゃない」


怒る彼女の声にいつもの元気はない


「すまんすまん。で?どうしたよ?」


俺が尋ねると彼女は目をふっと伏せた


「い、いや……その、さ……」


「おう」


どうした?本当に元気ないな


「私、もしかしたら……」


そうして続けた彼女の言葉は


ここ最近で一番の衝撃をもたらした






















「私、中国に帰る……かも」


「え?」


腑抜けた声


秋の冷たい風が、俺たち二人の間をすり抜ける


「嘘……だろ」


震える声


ヤバイ……


何でだよ!


なんで……


「なんで、お前が中国に帰るなんてことがっ!」


思わず彼女の肩を掴んでいた



「私、最近成績が結構よくなってさ……自惚れかも知れないけど、実際結果も出てて」



まぁ、確かに俺たち一年の実力を順位で表すとしたら


俺、ラウラ、シャル、簪、鈴、箒、セシリア


だったのが、最近は俺、ラウラ、鈴、シャル


と結果を伸ばしてる


「それで、中国政府が代表候補から国家代表への選考会に出席しろって……もし、そこで受かっちゃったらもう、日本には……」


俺は言葉を失った


そんなの……


そんなのって……!


俺からは、何も言えないじゃねぇか……


もし、それが彼女自身の問題なら解決することが出来たかもしれない


でも、これが国のレベルになるともはや話は変わる


「ちなみに、代表になること……半分決まっちゃってるみたいでさ。しかも選考会、明日なんだ……」


不器用に笑う鈴


その肩は震えている


おいおいおいおい


急すぎるだろっ!


「お前は……」


震える声で続けた


「お前は、代表になりたいのか?」


答えなんて決まってる質問


それでも、しなくてはならない


「そ、そりゃ……でも!」


鈴は目に涙を溜めて


「皆と、士と離れるのは……もっと嫌っ!……こんなことならっ!代表なんてなりたくない!皆と、いたいよぅ……」


ツインテールが揺れる


「うっ、うう……どうすれば、いいの……?」


上目遣いに俺を見つめる鈴


その瞳からは涙が


「うっ……」


「ねぇ……士、私は……どうすれば……!」


頭がくらくらする


目の前がぐにゃってなるし


訳が分からなくなってきた


「お、俺は……」


答えが見つからない


「俺は……答え、自分で見つけるべきじゃないかと……思う」


そう、答えた


否、答えてしまった


「っ!……ばかっ!」


俺を通り抜けて、走る鈴


「あ、おい!」


振り返ることなく走り続ける鈴


その背中はいつもより小さく見えた
















「ねぇ……」


「うん」


「どうしたの?」


「うん」


「はぁ……貴方のイヤホン、ぶっ壊すわよ」


「うん」


「これは……重症ね」


部屋に戻った俺


相も変わらず、何も考えられずにいた


どうすりゃ、いいんだよ


さっきから、夏海に話しかけられてる気がするけど……どうでもいいや


「くそっ……」


ゴミ箱を蹴飛ばした


「………」


空だったので、中身が飛び散ることはなかった


どうすりゃ……いいだよ


こういう時、なんて言えば正解なんだよ


なにしてやればいいんだよ……


拳を握り締める


「士……」


夏海が俺の目の前に立った


聳え立つように


「なに?」


不機嫌さを隠さない俺の声


彼女は









パシンッ!!




俺の頬を思いっきり引っぱたいた


あまりに急なことで倒れこむ


「ってぇな!」


勢いよく立ち上がり夏海を睨みつける


「ふざけないで!」


夏海も俺の胸倉を掴みあげた


「いい加減にしなさいよ……!なに、格好つけて悩んでますって振りしてんのよ。貴方はそんなに器用じゃないでしょう!どんなに無理なことでも必死になんとかするでしょう!」




―――本気、魅せなさいよ!



そう、怒鳴られた


はっと目を見開く


こいつ……


「どうすれば、いいのか……分かってるでしょう」


不意に優しくかけられる声


暖かく、柔らかい


「そう……だよな」


俺は指をポキポキと鳴らす


「このまま、引き下がれないよな……」


上着を掴み取る


「行くの……?」


「ああ!お陰で目が覚めたわ!今度、何か奢るから!」


「行ってらっしゃい」


「おう、ロマンはどこだ」


部屋を飛び出した


扉が閉まり、静かになった部屋で夏海は呟く


「きっと、そこよ……士」














「お願いします!」


職員室の隅に設けられた小さな個室


テーブルと椅子が二脚しかない椅子と質素な部屋で俺は頭を下げていた


相手は、千冬姉だ


「……だめだ」


千冬姉は首を横に振る


「なんとかならないんですか!?……特記事項は!」


「残念だが、例外がある……諦めろ」


千冬姉も心苦しそうに目を伏せた


「鈴だって、学園を去りたくないって言ってた!皆だって絶対そう思ってる!」


半ば、叩きつけるように怒鳴る


テーブルに拳をぶつけた


「士……もう、いい」


千冬姉は俺を抱きしめた


強く、強く


「中国政府が直接、圧力をかけてきているんだ……デュノアのようにはいかん」


「そんな……」


力が抜ける


崩れ落ちてしまいそうだ


「IS学園は既に一国として見られているが、所詮そんなものだ……国からの直接的な力には、抵抗できない……せめて、アイツが……ん?」


そこで千冬姉ははっと顔を上げた


「いけるか……?いや、時間が……」


ぶつぶつ言い出した千冬姉


何だ?



「どうしたんだよ?千冬姉」


「士、選考会は明日と言っていたな」


「あ、ああ……」


「間に合えばいいが……いいか、士。鳳を学園に置いておける方法が一つだけあった」


「本当か!?」


思わず、掴みかかる


「ああ」


そうして、千冬姉はその「方法」を告げる


「な、なるほど……」


正直、びっくりした……


そんな手が……


「時間がない。急げ……山田先生にも協力してもらうとしよう」


千冬姉は携帯に手をかけた


「俺も行くわ!ありがとっ」


扉を勢いよく開ける


「士!」


不意に、千冬姉が俺を引きとめた


「ん?」


「いや、なんでもない……行け」


「了解!」


そうして、校舎へ走る


「ああ、山田先生か……データの改竄を頼む……なに、責任は私がとる。弟の為だ……ああ、頼んだ」


千冬は携帯をテーブルに置き、椅子に腰掛けた


「まったくあの馬鹿は……」


そう呟く彼女の頬は緩かった






「楯無さん!」


俺が向かったのは生徒会室


扉を開けると、楯無さんが1人、資料を整理していた


「あら、士くん」


「頼みがあります」


そう、笑いかけた










鈴side-


士に帰国を告白した翌日


すでに、鈴はIS学園を後に空港へ


荷物は軽いもので、後々学園から取り寄せることになっている


このことを知っているのは学園の教師陣と……最愛の想い人である士だけ


皆には、学園を去るときに告げると決めている


「なにをそんなに浮かない顔をしているのですか」


飛行機の隣で管理官の楊 麗々が声をかけた


中国の候補生管理官で


20代後半の女性で目は切れ長、眼鏡はエッジの鋭いもので、スーツを着用している。常にどこかに苛立ちがあるような神経質そうな顔立ちをしている


「別に……なんでもないわよ」


鈴も素っ気無く返事をした





しばらくして、飛行機は中国へ到着


そこから、黒塗りのベンツで移動


着いたのは、中国中央IS行政機関の本部


ここで、中国政府が行う全てのISに関する事項は決定される


その最高会議室にあたる部屋で鈴は、20はいるだろう国の重要人物を前に、小さく座っていた


「鳳鈴音代表候補生……君を、我が中国の国家代表IS操縦者に指名したい。異議はあるかな?」


頭の男だろうか


立派な髭を蓄えた強面の男が鈴へ問う


しかし、それは否定を許さない威厳のあるものだった


「そ、その……私は……」


鈴は、必死に舌を回そうと口を動かす


口は渇き、軽い眩暈すら覚えそうだ


それでも、彼女は喉を振るわせた


「あ、あの……!そのお話はなかったことにできないかな〜……なんて」


頬を吊り上げただけの渇いた笑みは、しかしすぐに凍りつく


「ふざけているのか!」


「貴様は、何を言っているんだ!」


「国家代表だぞ!」


言葉責めにあう鈴


言い返せず、俯く


その目にはいっぱいの涙


「ううぅ……」


彼女はそんなとき、1人の男を思い浮かべていた


どんなときでも、皆のことを優先していた男


自分が辛いときは傍にいて、時には抱きしめたりしてくれた男


嫌われてでも一生、傍にいようと誓った男


しかし、今回ばかりは……


そんな時、広い部屋で爆発が起こった


屋根が砕けて、瓦礫がぱらぱらと落ちる


そこから、降ってきた一つの影


基本カラーはマゼンタ・白・黒で、複眼の色は緑。ボディの至る所に「10」を意味する「十」・「?」の意匠が取り入られているその姿は


「そ、そんな……」


「待たせたな、鈴!」


聞きたかったその声の主は手を弾くように叩いた






「士っ!!」


鈴は彼に飛びついていった




士side-


「間に合ってよかったぜ」


結局作業は、今日までかかってしまった


いや〜楯無さんゴメンなさい


「ばか……ばかぁ……なんで来ちゃうのよ!」


鈴が俺にしがみつきながら泣きじゃくる


「来ないほうが良かったか?」


「ううん!……来てくれて、ありがとうぅ」


そう礼を述べて、また泣きじゃくる鈴


「ったくよ」


そんな彼女を俺は優しく抱きしめた


「貴様!何者だ!」


偉そうなおっさんが俺を指差し、怒鳴りつけた


「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」


ケータッチを取り出す


「ぐっ!IS部隊!!アイツを仕留めろ!」


おっさんが叫ぶと同時に凄い量のISが入り込んでくる


「おお……パーティの始まりだ」


鈴を放して、部屋の隅へ


ケータッチに浮かび上がる紋章をタッチする


『KUUGA・ULTIMATE』

『AGITO・SHINIMG』

『RYUKI・SURVIVE』

『FAIZ・BLASTER』

『BLADE・KING』

『HIBIKI・ARMED』

『KABUTO・HYPER』

『DEN-O・LINER』

『KIBA・EMPEROR』

『W・EXTREME』

『OOO・PUTOTYRA』

『FOURZE・COSMIC』

『FINAL KAMEN RIDE・DECADE・COMPIETE』



ヒストリーオーナメントの12体のライダーのカードは最強のフォームを表し


俺はファイナルコンプリートへと姿を変える


素早く、ブレイドの紋章をタッチ


『BLADE・KAMEN RIDE・KING』


俺の目の前に、基本カラーは金


全身のアーマーがディアマンテゴールドへと進化し、左右の肩・上腕部・太腿・膝・脚部および右下腕部の11箇所にカテゴリー2-Qまでの紋章〈アンデッドクレスト〉、胸部にカテゴリーKの紋章が追加されたライダー


ブレイドのキングフォームを召喚した


「さぁ、|十三の物語(サーティン・ストーリー)を始めよう―――」


右手の小指と薬指をほんの少しだけ折って、胸元で左から右へと流すように振る


「ディケイド、私に任せておけ」


おおっ!開始そうそうなんて頼もしいんだ!


これからはブレイド召喚しよう


ブレイドは、巨大剣型カードリーダー「重醒剣キングラウザー」を構える


「はあああああああああああああ!!」


勢い良く駆け出すブレイド


俺もライドブッカーのガンモードで牽制しつつおっさんたちに近づいていく


「おい、おっさん」


胸倉を掴み上げ、無理矢理立たせる


腰抜けてんのか


「これ、読んで」


俺は一枚の紙を取り出して渡す


「…………なっ!?これは……」


「そゆこと。じゃあな」


『Spade10,Jack,Queen,King,Ace』


ブレイドはキングラウザーに5枚のカードを読み込ませる


『Royal Straight Flush』


ラウズしたカードが眼前に出現し、突進して切りつけるパターンと一閃して光線を撃ち出した


一刀両断されたIS部隊はその部屋ごとがたをつかせた


敷地を出た俺たちに中国のトップ操縦者


李正桂が立ちふさがった


「止まれ。ここで帰すわけにはいかん」


男のような名前に口調


厳しそうな目の吊りがいかにも厳格さをかもし出している


「ったく、楯無さん!」


「はいは〜い。楯無おねーさん。参上」


俺が呼びかけるとここまで連れてきてくれた張本人


楯無さんが姿を見せた


「鈴ちゃん」


楯無さんは鈴の肩に手を置いた


「あなたは、あなたの信じた道を歩みなさい……そのお手本を見せてあげるから」


「えっ」


優しく諭すような声


鈴を暖かく包んだのは、妹を持つ


姉の寛大さだった


「士くん。お願い」


「はいはい」


『FINAL FORM RIDE・my,my,my,MYSTERY ASS LADY』


「ちょっとくすぐったいですよ」


「優しくして」


甘い声で呟く楯無さん


なんか、腹立つから思いっきり、背中に両手を突き刺し広げた


「んっ……ごーいん♪」


うぜ〜……


そうして変わった楯無さん


主力武器「蒼流旋」に似せたそれは巨大な槍だ


瞬時加速で突進してくる李正桂


俺は躊躇いもなく槍を叩きつけた


「はあっ!」


大量の水しぶきをあげて、吹き飛んだ


『FINAL ATTACK RIDE・my,my,my,MYSTERY ASS LADY』


付近にある水から、地脈を流れる水までもが槍に集中する


「終わりだ……吹き飛べ!!」


水の龍が襲い掛かり、爆発した
















その3日後


IS学園の講堂にて


俺たち全校「生徒」は集められていた


新任「教師」の歓迎会のため


「それでは、今日からこの学園でIS実習、座学を教えることになった、鳳鈴音教諭だ」


千冬姉が微かに笑いを浮かべて紹介する


舞台に立ったのは鈴


その格好は見慣れた、肩を露出させたカスタム制服ではなく


若干、似合わないスーツ姿だった


「え、えっと……鳳鈴音です。皆さんと同年代ですが精一杯がんばるので……よろしく!」


そう、ウィンクした













放課後の屋上


「よっ、鈴先生」


「やめなさいよ!」


鈴の肩を叩きながら俺はニヤニヤと笑う


「でも、ま……上手くいってよかった」


「う、うん……千冬さん。よく考えたわね……私をIS学園の教師にするなんて」


「そうだな……俺もびっくりしたぜ」


缶コーヒーを口に運ぶ


すっきりした苦味が喉を潤す


「でも、あの署名……『鳳鈴音を教師として迎え入れる』ってやつ……全校生徒の分、よく集めたわね」


「まぁ、あれは楯無さんが頑張ってくれたんだよ」


土曜日で学園の外へ遊びに行っている生徒の分を楯無さんが頑張ってくれなかったら、今頃


まぁ、俺も寮の全部屋回って署名してもらいましたけど?


山田先生はデータの書き換えで鈴の一般科目の成績をあげてもらったし……


本当、みんなのお陰だな……


「士……」


後ろに立ってる鈴が呼ぶ


「ん?」


俺が振り返ると








唇が押し付けられていた






「……っ!」


「……あ、ありがと//////」


蕩けるような長い時間のあと鈴は顔を真っ赤にして駆けていった


俺はそれから10分間


身動きが取れずにいた









後書き


最近、コメント返せてないですね


すいません


一応、ちゃんと読んでますよ^^


さて、皆さんお分かりかと思うんですが


これから、夏海を除く主要キャラの話を何本か要望でありましたんで書きます


まぁ、今回夏海、結構いい役でしたが


……気にしちゃいけません


鈴が教師になりました


後悔はしてません

-91-
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IS (インフィニット・ストラトス) シャルロット・デュノア シルバーペンダント
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