小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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「ふぁぁぁ」


眠いな〜


神谷です


何にもない、とある日


いつにも増して眠いな〜


……でも、それ以上に


「暇だな〜」


ほのぼのした日差しと少し、寒い程度の気温


本当に適当にブラブラ歩いていると校門の前まで来てしまった


あ、しまった


……戻るか


道を戻ろうと足を向けた瞬間


「せいれーつっ!!」


うわっ!


びっくりした!


なんだ!?


敵か!?


ん?


「ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長に、敬礼!!」


またも校門の方を振り返ると


異様な光景が広がっていた


黒いスーツに黒いネクタイ。下も黒いミニスカートに赤のラインが細く走っているという服装


右腕の腕章には眼帯をした黒ウサギが刻まれている


なんだ?あの人ら?


敬礼の号令をかけた人は……明らかに少女達を束ねる年長者


歳は26といったところだろうか


気づけば全員が眼帯をつけている


あの、ベレー帽……あんまり似合ってないな


なんて、思って気づいた


ん?


眼帯?ラウラ?


「あ」


気づいたときには既に俺の目には見知った顔が敬礼を返していた


「ラウラだ……」


すると


「ん?嫁ではないか!こっちに来い」


ラウラが俺の方を振り向き手を振った


え?なに、俺が?


仕方なくイヤホンを外して歩み寄った


「紹介しよう。我等、シュヴァルツェ・ハーゼの隊員たちだ……こっちはクラリッサ・ハルフォーフ大尉。この部隊の副隊長だ」


そういやこいつ軍人だったな


すっかり忘れてたわ


「あ、えっと神谷 士です。ラウラとは仲良くさせてもらってます……よろしく」


頭をペコッと下げる


「何を謙遜しているんだ、嫁よ。もっと堂々としていればいいだろう」


「日本人はそういう民族なんだ」


息を吐いて答えた


「ふむ……嫁よ。今から私は教か……織斑先生にクラリッサを挨拶させに行く。隊員をその間、任せてもいいか?」


はぁ!?


俺が!?


「え、マジで?」


「マジだ……」


あくまで淡々と答えるラウラ


まぁ、どうせ暇だし……


「……しゃーなしだぞ」


「助かる。では、行くぞクラリッサ。こっちだ」


「はっ」


そうしてラウラとクラリッささんは立ち去っていった


早く帰ってきてくれ


「えっと……とりあえず、座ろうか」


残ったのは4人


短く薄い赤色の髪をした娘


頬には少しのそばかす、黄土の髪を首元で切り揃えられている娘


紫の髪を三つ編みにしている無表情な娘


そして、茶色い髪をキレイに伸ばしている一番清楚な感じがする娘


「は〜い♪」

「はいっ」

「……はい」

「はい」


四者四様


いい返事ありがとう








とりあえず、カフェテリアまで来た俺たち


「ほい、俺のおごりね」


ミルクティーをテーブルに並べる


「えっと……じゃあ、自己紹介してもらおうかな」


名前が分からんからな……


「はいは〜い」


手を挙げて返事したのは薄い赤の髪の娘


「ヘルタ・アーベルで〜す。よろしくぅ」


……お前、本当に軍人か?


「あ、ミリヤム・ビショフです。よろしくおねがいします」


そう自己紹介してくれたのは、少しだけそばかすがある娘


緊張してんのか?


「……コリンナ・カロッサです」


短く自己紹介したのは紫の髪を三つ編みにした無表情の娘


「あ、あの……エミ・フィンクです。仲良くしてください」


やだ、この娘可愛い


本当軍人?


茶色の髪をキレイに伸ばした彼女はペコリと頭を下げた


「さっきも自己紹介したけど神谷です。よろしくな」


「士さんって呼んでもいいですか〜?私の事は、ヘルタでいいですよ〜」


お前、絶対軍で浮いてるだろ


「ああ、いいよ」


「やった!」


なぜか、ガッツポーズで無邪気に笑うヘルタ


「神谷さん」


隣に座ったコリンナが俺の袖をちょんちょんとつつく


「ん?」


「ラウラ隊長とはえっちしましたか?」


「ブーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


思いっきり吹き出した


紅茶、もったいね


でも……


「何言ってんの!?」


「していないのですか……嫁と呼ばれている割には軟弱な度胸の持ち主ですね」


やかましわ


てかさ……


「嫁ってのは勝手にそう呼ばれてるだけだぞ?」


「こ、こらコリンナ。そんなこと言っちゃだめでしょ」


エミ。お前はなんていい奴なんだ


しかも、ミリヤムも俺が吹き出した紅茶を嫌な顔一つせずせっせと拭いてくれている


この二人が一番まともだけど、軍人向きじゃないような……


コリンナは一番、それっぽいな


ヘルタはもう辞めちまえよ


「か、神谷さんはIS学園で一番のIS操縦者なんですよね!なんでも、ロシアの更識楯無を倒したんだとか……」


「まぁ、一番かは分からんけど……楯無さんは倒したことあるぞ?二回」


エミが緊張気味に問うた


俺もそれに答えてやる


「に、二回もですか!?す、凄いです!」


ミリヤムが短い髪を揺らして目を細めた


「こ、今度!ご指導いただいてもよろしいですか?」


「わ、私も!」


この二人は本当、いい娘だな〜


「自分もよろしいですか?」


コリンナも手を小さく挙げた


「おう、いいぜ。また学園に来たときな」


「……私は整備担当なんでいいです〜」


お前には聞いてねぇよ


半眼で睨みつける


「いやん♪そんなに見つめないでください」


こいつ……


楯無さんか!


「待たせたな、嫁」


ふと、後ろから声をかけられ振り向くとラウラとクラリッサさんが立っていた


「お疲れ、ラウラ。クラリッサさんもお疲れ様です」


「いえ、我々が学園での隊長を一目見ようと勝手にしたことですので……」


クラリッサさんも淡々と答えた


が、急に俺の方へずいっと顔を寄せる


ちょ、近い近いですって!


三センチぐらいしかない距離で見つめられること数秒


「ふむ。さすが隊長が認めた男ですね」


「そうだろう、私の嫁だからな当然だ」


なんで、そんなにドヤ顔なの?


で、何事もなかったかのように会話を進めるな、お二人さん


「隊長、士さんのどういうところが好きになったんですか〜?」


ヘルタェ……てめぇ、後で校舎裏な


「あ、あの……そ、それは……ううぅ///」


ラウラがしぼんだ!?


皆も、そんなに興味津々な顔で見てやるなよ


「よ、嫁は……///」


「無理に言わなくてもいいぞ」


なんか気恥ずかしいし、もうやめよ?


「そんな、神谷さんは?」


コリンナは相変わらずの無表情だ


はい?


俺?


「お、俺も言うの?俺は別に……」


ギロッ


「なんでもないです」


忘れてた


こいつ等、軍人だった


一瞬でナイフがちらついたぞ


クラリッサさんとか……もう、銃持ってんじゃん


ここ日本だよ?


「えっと、ラウラは……確かに不器用なところもあるけど、凄く仲間想いで、努力家で、だから空回りしちゃうこともあるけど……そういうところもまた可愛いところなんじゃないかな……」


ちらっとラウラに目を向けると


プルプルと震えていた


泣いちゃった?いいこと言ったし―――



「ヘブッ!!!」


思いっきり殴られました


吹き飛びました


「ば、馬鹿者!皆の前で……〜〜〜〜〜〜っ/////」


顔を真っ赤にしたラウラ顔は士には見えなかった









「………っ。あれ?どこ、ここ?」


……医務室か


そういや、殴り飛ばされたんだったな


「あ、神谷さん。起きたんですね」


エミが脇の椅子に腰掛けていた


「……よく寝ていました。いたずらしそうでした」


しばくぞ、コリンナ


「ははは。隊長に殴られて気絶しちゃうとか、もっと鍛えたほうがいいんじゃないですかぁ?私が相手しますよ?」


よし、決めた


絶対泣かす


もう、ヘルタだけは絶対泣かすって今決めた


「わ、私もお付き合いできますよ!」


ミリヤムも本気にしなくていいよ


「ったく……てて」


痛む体を起こし、ベットから降りる


「だ、大丈夫ですか?」


「おう」


と答えたものの、皆俺をいつでも支えられるように手を軽く伸ばしている


初めて赤ちゃん抱いた子供じゃないんだから


すると、扉が開いた


入ってきたのはラウラだ


「よ、嫁……大丈夫か?すまない」


「大丈夫だよ。気にすんな」


頭を下げているラウラに笑いかけた


「そ、そうか!」


笑顔で顔を上げたラウラは俺を見た瞬間


凍りついた


端から見れば四人の女の子に囲まれている男


「落ち着け、私……クラリッサにも言われたばかりだろう……落ち着くのだ」


意味も分からず、俺は首をかしげた




「では、隊長。失礼いたします」


「たいちょー。士さんと仲良くしてくださいね〜」


「あ、あの……また来ますね」


「……お邪魔しました」


「今日はありがとうございました」


「うむ、気をつけて帰ってくれ」


そう言って、ドイツ最強の部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ」は祖国に帰った


「ふぅ……疲れた」


「ふん!」


なんか、さっきからラウラの機嫌が悪いんだけど


「どした?」


「……お前が」


ラウラは俯いたまま、小さく呟く


「ん?」


「お前が!いちゃいちゃするからだろう!エミとミリヤムには鼻の下伸ばすし!」


あれ?


「もしかして、妬いてんのか?」


ニヤニヤしながら問いかける


「ぐっ……!ううぅ」


うめき声を上げるラウラ


「ははは、ほらなんか食べに行こうぜ」


「あ、おい!」


そうして、俺達も校門をくぐった




後書き


まぁ、今回はラウラというより黒ウサギ隊の話でしたね


お楽しみいただけたでしょうか?


あと、年末に予定していたウィザードの話を……次の簪の次にするか


それとも、もう少し待つか……皆様の投票にお任せしたいと思います


よろしくお願いします。投票はコメントで^^

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