小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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今日も一日お疲れ様!俺


……神谷士です


今日はなんか疲れた


帰って夏海に紅茶でも淹れてもらうか


なんて考えながらぶらぶら寮を歩いていると水色に揺れる髪を見つけた


楯無さんより背も低いし、小柄だから……


「簪!」


呼びかけると同時に駆け出した


簪はゆっくりと振り返る


そこには……


真っ赤になった顔と、気だるげな表情だ


「簪!?」


一気に加速して肩を抱く


「おい、大丈夫か!?おい!」


「つ、士……ちょっと、具合……悪い」


ちょっとどころじゃねぇだろ!


目も虚ろだし……


ひとまず部屋まで行かないとな


「部屋まで連れてく。肩貸すから」


そう言って、無理矢理肩を組み歩き出した


ったく、厄介なことに……




簪の部屋には生憎、同居人がいない一人部屋


鍵をポケットから出した簪


強引に掴んで開ける


何度か来たことのある部屋は綺麗にされていた


「とりあえず、着替えられるか?制服のままじゃ不味いだろ」


「う、うん……」


「誰か呼ぶか?」


ベットに腰掛けさせる


「う、ううん……士が、着替えさせて……?」


うっ……


こんな状況だってのに思わず、ときめいてしまった


頬は赤く染まり、上気しており上目遣いで弱々しく言われたら……なぁ?


だが、俺だって男だ


やらなきゃならん時は、全力で!


「分かった!後悔すんなよ!」


半ば、やけくそで制服に手をかけた


綺麗に畳まれていたネグリジェを脇から持ってきて渡す


直視することなんてもちろん出来ないから目を反らしながら慎重にだ


……ん?


なんだ?この柔らかいの……


「つ、士……!そ、そこ……胸……////」


うわああああああああ!!


「す、すまん!!」


慌てて手を離す

慌てて手を離す


大事なことなんで二回言いました


もう一回言おうかな


それから、なんとか下着とか見ないように頑張りながら着替えを終えた


うん、見ないようにしてた


だから、簪の下着が水色とか知らない


絶対にだ


ベットにようやく横になった簪


「熱、測ってみるか」


体温計を持ってきて脇へ


少ししてピピッと音がしたので見てみると


「39度7分……結構あるな」


「ううぅ……ごめんなさい」


「何を謝ってんだ……何か欲しいもんあるか?」


頭を撫でながら優しく問いかける


まぁ、病人には優しくしないとな


簪だからとかじゃないぞ


絶対にだ


「お、お水……欲しい。冷蔵庫に……ある、から」


「水だな……待ってろ」


簡易キッチンにある冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、コップに注ぐ


「へいよ」


パッと目に付いたストローを挿して、差し出した


体起こすのも辛いだろ


この熱じゃな


「あ、ありがと……」


一口、二口と喉を鳴らした彼女は眼鏡を外した


……え?


待って


滅茶苦茶、可愛いやん


「……?どうしたの?」


「な、なんでもねぇです。はい」


不謹慎だな


「あと、なんかして欲しいこととかあるか?」


「え、えっと……こ、ここに……いて?」


「任せろ」


間髪入れずに答えた


当然だ


あんな誘いを断るやつがいるなら連れて来い


説教だ


「お前が元気になるまで居てやるから……だから、今は寝てろ」


「う、うん。一応、お薬だけ……」


「あ、了解」


簪が指差した箱から風邪薬を取り出して渡した


風邪薬を飲んだ彼女はしばらくして寝てしまった


これでなんとかなったか……


さてと、傍にいてやると約束したけど……


「無防備すぎだろ……」


完全に安心しきった表情だ


「ったく……」


苦笑しながら彼女の頭を撫でる


「早く治せよな」


優しく声をかけた俺はとりあえず、暇なので本棚から適当な漫画を借りる


「ふむ……」


懐かしいな……神〇み


〇馬、格好よすぎだろ


で、天〇可愛すぎだ


……伏字多いな


まだ、続いてるし頑張って欲しいね


そっと本棚に直した俺は


「ん?」


不憫な表紙の本を見つけた


なんか、男の人二人が抱きついてる


……嘘やろ


嘘やん


B〇やん


「勘弁してくれよ……」


ペラペラとページをめくる


って、おいいいいいいいいいいいいいい!!



18禁じゃねぇか!


うわ……おい


やめろって


思わず、ケツ抑える俺


本当、勘弁してください


しかも、この主人公ちょっとおれに似てるじゃねぇか


簪ェ……


こりゃ、治ったら説教だな


本棚の奥の方にしまった


ふぅ……


さてと、暇だ


「う、んんっ……士……」


簪がうなされてる


大丈夫か?


傍まで行って手を握ってやった


「も、もう……食べられ、ないよ」


べったべたな寝言ありがと


てか、その寝言


俺がなんか、無理矢理食わしてるみたいじゃん


「あれは、鳥?……飛行機?……いや、スー〇ーマン」


なんてハッキリした寝言だ


起きてんの?


しかも〇ーパーマンって


懐かしいな


「士……私の、ヒーローで、いて……」


……………


んだよ、そんなの……


「当然だ。俺を誰だと思ってんだよ」


ふっと不敵に笑う


あ、眠くなってきた


俺も寝よう


そのまま俺の意識は夢の中へ


格好つけて失敗した〜






簪side-


あまり、好ましくない体調で私は目を覚ました


皆さん、こんにちは更識 簪です


今日は、少し調子が悪いです


目を覚ますともう外は真っ暗だった


最近、陽が落ちるのも早くなってきた


ふと、手に温もりを感じて目を向ける


士だ


その、最愛の人物が私の手を握って


寝ていた


「んん……簪、俺がいるからー」


相変わらず腑抜けた声


でも、今はその声がとても嬉しい


「傍に……」


いてくれる


それだけで私の心は満たされる


嬉しい……


ただ、嬉しい


そんな心を迷わず解き放った私は……


体を傾け












―――そっと彼に口付けした


甘く、蕩けてしまいそうな時間


頭の中なんて真っ白でなんにも考えられない


「………///」


口を離して彼を見てみるとどこかくすぐったそうに体を揺らしていた


「もう……」


そう、頬を膨らませるが表情はにやけきっている


少し、卑怯な気もするけど今日くらい許して欲しい


「絶対、振り向かせる……」


改めて決意した私は、彼を起こした


「士、起きて……」


その声はどこか弾んでいる

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